昨年は球団史上最速で18年振りのリーグ優勝を果たし、その勢いでオリックスとの関西ダービーを制して38年振りの日本一を達成した。
チーム初の連覇を狙った今季は強力投手陣を擁し、野手はレギュラーが固定され、優勝候補に挙げる声が大きかった。実際にスタートは出遅れたものの、4月中旬に首位に立つとそのまま行くかと思われた。ただ、交流戦で7勝11敗で躓くと主力の不振や離脱も相次ぎ、一度も首位に返り咲くことなく連覇の夢が潰えた。
そんななか岡田監督の退任が決まり、「日本一で監督に有終の美を!」の望みも空しく、1stステージでDeNAに1勝もできずに終戦…。鳴り響く岡田コールのなか監督退任のセレモニーや会見すら用意されておらず、後味の悪いシーズンになってしまった。
【24年度チーム成績…74勝63敗6分/2位】
24年/2位 23年/1位 22年/3位
防御率(失点数)…2.50②(420③) 2.66①(424①) 2.67①(428①)
打 率(得点数)….242⑤(485③) .247③(555①) .243⑤(489⑤)
守備率(失策数)….985⑤( 85⑤) .984⑥( 85⑥) .984⑥( 86⑥)
本塁打数/盗塁数… 67⑤/41⑤ 84⑤/79① 84⑤/110①
チーム防護率は12球団ナンバーワンの巨人と僅か1厘差で、先発・リリーフともに層は厚い。昨年同様、与四球297は12球団最小で、300を切っているのは阪神だけ。また、広い甲子園が本拠地と言えど被本塁打51も12球団最小、先発のクオリティスタートもリーグナンバーワンと万全な布陣をほこる。
今季は才木浩人(須磨翔風高~16年③)と大竹耕太郎(早大~17年育④)がエース級の働きで2桁勝利を上げ、村上や西勇輝(菰野高~08年オ③)の先発陣がゲームを作った。リリーフは石井から桐敷、新外国人のゲラからクローザーの岩崎優(国士館大~13年⑥)に繋ぐ必勝パターンが確立できた。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※③才木浩人(167回2/3)※⑨村上頌樹(153回2/3)
※⑩大竹耕太郎(144回2/3)西 勇輝(124回2/3)ビーズリー(76回2/3)
伊藤将司(74回)
☆ リリーフ…桐敷拓馬(70試合)岩崎 優(60試合)ゲラ(59試合)
石井大智(56試合)漆原大晟(38試合)岡留英貴(35試合)
島本浩也・富田 蓮(33試合)
盤石な投手陣とは裏腹に打線は昨年より成績を落とした。昨年もチーム打率は高くないものの、リーグ最多の四球を選び、断トツの出塁率で得点を重ねた。ただ、今季はその四球数がヤクルトに次ぐ2位で、出塁率.314(昨年は.322)はリーグ1位ながら大きく減少し、DeNA、ヤクルトとほぼ差がなく、得点力に直結した。
今季は一時期、4番に近本光司(大阪ガス~18年①)を据えるなど、打線のやり繰りに苦労した。大山悠輔(白鷗大~16年①)や佐藤輝の中軸の調子が上がらず、中野も2年連続全試合出場ながらリーグ最下位の打率で精彩を欠いた。来日2年目のノイジーとミエセスも期待を裏切り、CS前に帰国するなど主力の不振が最後まで響いた。
一方、2年目の森下が規定打席に達し、佐藤輝と並んでチーム最多の16本塁打を放ち、前川右京(智弁学園高~21年④)の活躍も明るい材料だった。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…梅野隆太郎(95/318)坂本誠志郎(64/218)
☆内野手…※⑰佐藤輝明(120/496)※⑳大山悠輔(130/545)
※㉔中野拓夢(143/634)木浪聖也(116/409)小幡竜平(50/135)
渡邊 諒(67/137)糸原健斗(89/128)
☆外野手…※⑧近本光司(141/639)※⑭森下翔太(129/526)前川右京(116/362)
ノイジー(49/149)
●藤川新監督を迎え、育成路線を継承するか。ファームにはブレイク候補がゴロゴロ
阪神のドラフトの潮目が変わったのは19年からで、大学生・社会人の即戦力志向から育成路線に切り替えた。特に19年は指名6名中5名が高校生で、結果はどうあれ驚きと感心を持ったことを記憶している。
実際に14~18年は、高校生7名、大学生12名、社会人(独立リーグ含む)11名だった指名が、19~23年は高校生15名、大学生11名、社会人7名と構成が変わっており、育成を基本にスケールの大きいチームを目指す姿勢が窺える。
ただ、急に方向転換した訳ではなく、14~18年で獲得した青柳晃洋(帝京大~15年⑤)や大山、近本、木浪聖也(ホンダ~18年③)が主力になり土台ができたところで育成路線に切り替えた。
残念ながら現時点では、及川雅貴(横浜高~19年③)と前川くらいしか及第点とは言えないが、投手ではファームで7勝の茨木秀俊(帝京長岡高~22年④)や今季一軍登板も果たした門別啓人(東海大札幌高~22年②)、50試合登板で防御率1点台の川原陸(創成館高~18年⑤)がいる。打者でも井上広大(履正社高~19年②)がファームで首位打者を獲得し、高寺望夢(上田西高~20年⑦)や井坪陽生(関東一高~22年③)等、ブレイク候補が控え2~3年後が楽しみに選手が揃っている。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年③…なし
20年③…佐藤輝明(近大/①・内野手)伊藤将司(JR東日本/②・投手)
村上頌樹(東洋大/⑤・投手)中野拓夢(三菱自動車岡崎/⑥・内野手)
石井大智(四国IL高知/⑧・投手)
21年②…桐敷拓馬(新潟医療福祉大/③・投手)
22年③…森下翔太(中大/①・外野手)
24年①…なし
↓↓
【阪神の補強ポイント】
投 手…高校生(将来のエース候補)、即戦力クローザー候補
捕 手…高校生または社会人捕手(左打ちならベスト)
内野手…大学生・社会人の右打ち
外野手…大学生・社会人の左打ち
☆投手~高校生(将来のエース候補)、即戦力クローザー候補
来季の先発陣は、才木に村上、左腕の大竹と伊藤が中心になり、ベテランの西純に青柳、今季復活した高橋遥人(亜大~17年②)がシーズン通して投げられれば万全だ。
リリーフは岩崎を中心に桐敷、石井、岡留の若手が経験を積み、岩貞祐太(横浜商大~13年①)や湯浅京己(BC富山~18年⑥)も来季は復活を期すシーズンになる。さらにファームでは川原や石黒佑弥(JR西日本~23年⑤)、佐藤蓮(上武大~20年③)はで好投していても一軍に呼ばないほど質量ともに層は厚い。
1位候補では、金丸夢斗(関大)と今朝丸裕喜(報徳学園高)、村上泰斗(神戸弘陵高)が挙げられ、当然、金丸を獲得できればさらに先発投手陣は厚くなるが、今の阪神にはじっくりと育成する時間があるだけに、今朝丸や村上を推したい。
昨年は高校生投手の指名がなく、今季は年齢構成でも必須だ。他球団同様、清水大暉(前橋商高)と柴田獅子(福岡大大濠高)が上位候補で、ゲームメークに長けている高尾響(広陵高)や吉岡暖(阿南光高)、最速150キロ超の山口廉王(仙台育英高)に昆野太晴(白鷗大足利高)、沼井怜穏(横浜隼人高)、川勝空人(生光学園高)、狩生聖真(佐伯鶴城高)もリストアップされている。
このほか、身長2メートルの菊池ハルン(千葉学芸高)は粗削りだが素材は一級品。茨木祐太(帝京長岡高)や塩貝迅平(京都翔英高)、大型左腕の森口大雅(汎愛高)は変化球の精度も高く、森口は奪三振率が高い。
大学生・社会人では、いずれも左腕の伊原陵人(NTT西日本)に吉田聖弥(西濃運輸)、佐藤柳之介(冨士大)が上位候補に挙がる。伊原は持ち前の投球術に加え、社会人で球速がアップした。吉田は多彩な変化球を持ち味に失点が少なく、佐藤はキレのある直球を武器に緩急も駆使する。荘司宏太(セガサミー)はリリーフに適性があり、最速153キロの宮原駿介(東海大静岡)も候補に挙がる。
このほか、林翔太(大経大)と廣地康士郎(東海大九州)は最速150キロを超える右の本格派で、鷲尾昂哉(三菱重工ウエスト)はフォークを武器に奪三振率が高いリリーバー候補、竹田祐(三菱重工ウエスト)と早川太貴(くふうハヤテ)は昨年、ドラフト候補に挙がっていたが、悔しい指名漏れを味わっただけに念願のプロ入りを目指す。
☆捕手~高校生または社会人捕手(左打ちならベスト)
今季も梅野隆太郎(福岡大~13年④)と坂本誠志郎(明大~15年②)がマスクを被り、ファームでは打撃の良い中川勇斗(京都国際高~21年⑦)や強肩の藤田健斗(中京学院大中京高~19年⑤)がレギュラーを争っている。
最大の懸念はFA権を取得した坂本の去就で、リードに定評のある坂本が宣言すれば移籍の可能性は高くなる。そうなると経験豊富な捕手が欲しく、石伊雄太(日本生命)は強肩でリードに定評があり、坂本が移籍した際は梅野との併用も可能だ。
また、年齢構成では高校生が欲しく、強肩強打の箱山遥人(健大高崎高)は将来の正捕手候補で中軸も期待できる。
☆内野手~大学生・社会人の右打ち
今季もレギュラーが固定され、一塁・大山、二塁・中野、三塁・佐藤輝、遊撃・木浪でシーズンを乗り切った。ともに30歳の大山と木浪、28歳の中野は脂の乗った世代で心配いらないが、課題は大山のFA移籍の去就と遊撃手になる。
正遊撃手の木浪は勝負強い打撃が魅力だが、打順は主に7~8番で、控えの小幡竜平(延岡学園高~18年②)も打撃が課題で、打線が課題のチームだけに打てる遊撃手が欲しく、宗山塁(明大)が加入すれば攻守に戦力が一変する。
このほか遊撃手候補では、石塚裕惺(花咲徳栄高)は各チーム上位候補に挙げるスラッガーで、広角に長打を打てる石見颯真(愛工大名電高)や守備に定評のあると岸本佑也(奈良大高)は他球団もマークしている逸材。浦田俊輔(九産大)は俊足で出塁率が高く、水島滉陽(NTT西日本)はミート力が高くパンチ力もある。
また、20~28歳の右打ちの内野手が不在で、長打力のある選手が欲しい。本来は外野手だが、渡部聖弥(大商大)は三塁も守れ逆方向にも長打が打てる。佐々木泰(青学大)も1年時から正三塁手として活躍し、確実性に課題はあるが捉えたときの打球は別格だ。高校生では谷村剛(和歌山東高)は体制を崩されても安打にするバットコントロールが魅力だ。
☆外野手~大学生・社会人の左打ち
中堅の近本に右翼に森下は攻守にチームの要になっており、若手の前川も来季はレギュラー獲りを目指す。ファームでは井上と井坪が好成績を残しており、補強ポイントとして優先順位は高くない。
内野手とは異なり、外野手は左打者が少ない。高校生ではスラッガーのモイセエフ・ニキータ(豊川高)と寺井広大(神村学園伊賀高)がリストアップされており、走攻守揃った柴崎聖人(大経大)はパンチ力もあり補強ポイントに合う。
●1位候補の投手は地元の逸材がズラリ!課題の攻撃力アップで
投打に期待の若手が揃っているが、チームは投高打低で投手なら高校生、野手なら即戦力の指名になると思う。宗山塁(明大)と渡部聖弥(大商大)はチームの補強ポイントに合い、2位以下で素質豊かな高校生を指名して良いが、一方で今朝丸裕喜(報徳学園高)や村上泰斗(神戸弘陵高)の地元エースの1位指名の可能性も高い。
一方、藤川新監督を迎え、新監督となると確実に計算できる即戦力投手も指名したいところだ。1位競合覚悟で金丸夢斗(関大)の指名もあり、外したとしても伊原陵人(NTT西日本)や吉田聖弥(西濃運輸)の即戦力投手も獲得したい。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~宗山 塁(明大・内野手) 今朝丸裕喜(報徳学園高・投手)
2位~石伊雄太(日本生命・捕手) 伊原陵人(NTT西日本・投手)
3位~昆野太晴(白鷗大足利高・投手) 柴崎聖人(大経大・外野手)
4位~佐藤柳之介(冨士大・投手) 佐々木泰(青学大・内野手)
5位~川勝空人(生光学園高・投手) 狩生聖真(佐伯鶴城高・投手)
6位~谷村 剛(和歌山東高・内野手) 早川太貴(くふうハヤテ・投手)
おススメは、史上初のNPBから指名を待つ150キロの本格派右腕の早川太貴(くふうハヤテ)で、二軍で阪神を抑え注目を集めた。市役所に勤務しながらクラブチームで腕を磨き、今季からNPBに挑戦した異色の選手がシンデレラストーリーを掴む。