ペナントレースも終盤に入り、甲子園も京都国際高の初優勝で激戦の幕を閉じ、ドラフトまであと2ケ月まで迫った。そこで、現在注目されている選手を挙げてみたい。
昨年は大学生が豊作と言われ、今年も上位は大学生中心になりそうだ。ただ、豊作と言われた昨年は、即戦力を期待され大学生投手が8名が1位指名されたが、一軍に定着しているのは武内夏暉(国士館大~西武①)と古謝樹(桐蔭横浜大~楽天①)、西舘勇飛(中大~巨人①)くらいでプロの壁の厚さを改めて感じた。
今年も即戦力と言える選手は多くなく、高校生はもちろん、大学生も敢えて2年目以降に期待して指名した山崎伊織(巨人)や、4年目の今季ブレイクした鈴木昭汰(ロッテ)など2~3年かけて主力に成長させる指名になりそうだ。
【各チームの補強ポイント】
①広 島…投)高校生・大学生左腕 野)即戦力>高校生外野手
②巨 人…投)先発の即戦力と高校生エース候補 野)即戦力外野手と高校生捕手
③阪 神 …投)将来のエース候補と即戦力リリーフ 野)大学生の長距離砲
④DeNA…投)先発・リリーフの即戦力※先発は左腕 野)高校生(内・外野手)
⑤ヤクルト…投)とにかく投手(将来性・即戦力) 野)高校生・大学生外野手
⑥中 日 …投)即戦力の先発左腕と高校生投手 野)高校生の内・外野手
【パ・リーグ】
①ソフトバンク …投)将来のエース候補 ※出来れば左腕 野)右打ちの外野手
②日本ハム …投)高校生投手と即戦力左腕 野)左打ちの外野手と高校生捕手
③ロッテ …投)即戦力の先発候補と左腕全般 野)高校生・大学生(内・外野)
④楽 天 …投)即戦力投手 野)とにかく捕手、右打ちの外野手と左打ちの内野手
⑤オリックス …投)将来のエース候補と即戦力左腕 野)大学生の長距離砲
⑥西 武 …投)年齢構成で高校生 野)捕手を除く即戦力野手 ※特に長距離砲
●大学BIG3の1位指名競合は必至!12球団すべて競合抽選の可能性大
まさしくBIG3と呼んで良いと思うが、今年のドラフトの中心は①宗山塁(明大・内野手)と②西川史礁(青学大・外野手)、③金丸夢斗(関大・投手)で、12球団すべてが1位候補にリストアップしており競合は確実と言える。
宗山は20年に一人と言われる遊撃手で、卓越した遊撃守備にシュアな打撃で、10年は遊撃を心配しなくても良いとも言われている。今春に骨折し出遅れたが、ようやく実践復帰し、プロとの交流試合でも結果を残している。西川は今年3月の侍ジャパンに選出され、プロに混じり攻守でインパクトを残した。広角に長打を打てる打力は数少ない野手の即戦力と言える。金丸は3年時の昨年でも1位指名と言われた即戦力左腕で、最速153キロで球威、変化球、制球力どれも一級品で、1年目から先発ローテーションに入る力は十分にある。
宗山なら今宮健太の後継が欲しいソフトバンクやセンターライン強化を図りたい日本ハム、西川は外野手強化が課題の広島にオリックス、西武がハマり、巨人と中日、ロッテは宗山・西川どちらもウィークポイントを埋める。投手力が課題のDeNAとヤクルト、楽天は金丸が有力で、12球団すべてがこの3選手を指名して、抽選から次の指名になることも想像できる。
この3選手に続くのが④中村優斗(愛知工大・投手)で、公務員志望から一躍ドラフト上位候補に成長した投手で伸びしろは十分。最速157キロの真っ直ぐにスライダーで三振を量産し、先発よりもリリーフ向きと言われ1年目からクローザーを任せられるポテンシャルを秘める。
宗山と西川を外したチームが次に狙うのが、⑤渡部聖弥(大商大・外野手)と⑥佐々木泰(青学大・内野手)になり、渡部は西川と同じ右のスラッガーで、内外野を守れる守備力と走力も兼ね備えている。佐々木は高校時代から注目されている長距離砲で、リーダーシップにも優れているのもポイントが高い。
次に1位候補の高校生を挙げると、今年は遊撃手に逸材が揃うが、そのなかでも世代ナンバーワンと言われるのが⑦石塚裕惺(花咲徳栄高・内野手)で、今夏の甲子園では残念ながら初戦で消えたが、セールスポイントの打力以上に守備力と走力の高さが見られ、大型遊撃手の誕生を予感させるには十分だった。
投手では⑧今朝丸裕喜(報徳学園高)と⑨藤田琉生(東海大相模高・投手)は、ともに190センチを超える長身で、金丸や中村を外したチームが1位指名する可能性は高い。今朝丸は安定感抜群の投球で、昨年から評価は揺るがないが、それ以上に評価を上げたのが左腕の藤田で、フォームを変えたことで球速と制球力も上がり急成長した。
甲子園未出場組では、⑩川勝空人(生光学園高・投手)は球速が153キロを超え、2つの落ちる球を武器にする本格的右腕で、課題の制球力も改善した。また、ドラフト戦線に急浮上したのが⑪柴田獅子(福岡大大濠高・投手)で、最速149キロに加え高校通算19本塁打のセンスの良さは折り紙つきで、先輩の山下舜平大(オリックス)のようなサプライズ1位指名の可能性も高い。
ここまで高校生と大学生の名前が挙がったが、昨年の度会隆輝(DeNA)のように社会人の1位指名候補が見当たらないのが残念だ。そのなかで⑫石伊雄太(日本生命・捕手)は、大学時代もドラフト候補に挙がっていた選手で、強肩と卓越したインサイドワークに加え、課題の打力も改善しており、名門チームで1年目より正捕手務めており捕手不足のチームは上位で獲得したい。
●高校生~投手は長身の大型選手が揃い、野手は遊撃手に逸材が多い
先ず今夏の甲子園に出場した選手を挙げると、投手では⑬高尾響(広陵高・投手)と⑭坂井遼(関東一高・投手)、⑮有馬恵叶(聖カタリナ高・投手)が高評価だった。高尾は名門校で2年生からエースナンバーを背負った逸材で、上背はないがゲームメークに長けた投手で完投能力が高い。坂井はいずれもリリーフ登板で、以前から力のある真っ直ぐが魅力だったが、課題の制球力が改善され成長した姿を大舞台で披露した。有馬も今朝丸や藤田のように190センチを超える長身で、昨年まではベンチ入りしていない選手が一気にエースに急成長した選手で、さらなる伸びしろに期待できる。
投手で最もインパクトを残したのは、強豪を次々と撃破した⑯馬庭優太(大社高・投手)で、球速はないがストライクを取れる変化球を多く持っており、何より制球力が高く、プロで体力がつけば自ずと球速も上がってくるだろう。進学希望との話だが甲子園の活躍で全国区の選手になったことで風向きが変わる可能性もある。
野手では、⑰箱山遥人(健大高崎高・捕手)と⑱宇野真仁朗(早実高・内野手)、⑲中村奈一輝(宮崎商高・内野手)、⑳正林輝大(神村学園高・外野手)と㉑藤原佑(大社高・外野手)を挙げたい。
世代ナンバーワン捕手と言われる箱山は強肩がセールスポイントで、木製バットでも本塁打を放つ将来の正捕手候補。宇野は高校通算64本塁打の強打の2番打者として、その木製バットで今夏の甲子園でインパクトを残し、将来的には二塁の方がハマりそうだ。中村は高い遊撃守備に俊足、投手もこなす身体能力の高さが魅力で、打撃は課題だが長岡秀樹(ヤクルト)のような成長曲線が期待できる。
正林は2年夏から4番に座り、2年連続ベスト4の原動力となった。魅力は本塁打だが、守備や走塁も遜色なく上位指名もあり得る。藤原は超がつく俊足で一躍脚光を浴びた。右打ちながら一塁まで3秒超で駆け抜けるスピードは、入団時の荻野貴司(ロッテ)を彷彿させ、俊足を活かした広い守備範囲も魅力で、下位や育成で押さえておきたい選手の一人だ。
このほか、高校生の有力投手では、㉒清水大輝(前橋商高・投手)と㉓村上泰斗(神戸弘陵高・投手)の評価が高い。清水も190センチを超える大型投手で、最速148キロと変化球の精度も高く、昨夏の甲子園で強烈なインパクトを残した。村上は高校入学後に捕手から投手に転向した選手で身体能力が高い。最速152キロで変化球の精度も高く、制球力やフィールディングの課題が克服できれば上位指名もある。
㉔小川哲平(作新学院・投手)と㉕洗平比呂(八戸学院光星高・投手)は、ともに今年のセンバツで活躍した。小川は最速148キロの本格派右腕で、投手として総合力が高く今夏の県大会は無失点で終えた。洗平は強豪校で1年夏から甲子園を経験している最速147キロの左腕で、今夏は肘のケガで本調子ではなかったが、評価が揺らぐことはなかった。
中央では無名だが、最速151キロの㉖田中綾真(旭川実高・投手)も注目の本格派右腕だ。真っ直ぐの力強さに加え、変化球の精度も高く奪三振能力が高い。まだまだ粗削りな部分が多いが、素材の高さが評価されている。
野手の注目は、㉗モイセエフ・ニキータ(豊川高・外野手)で、今年の高校生でプロでも本塁打を量産できる4番候補が多くないなか貴重な長距離砲で、天性とも言える長打力とパワーが魅力だ。
今年の甲子園でも遊撃手に好素材が多かったが、地方の遊撃手も豊富で㉘斎藤大翔(金沢高・内野手)と㉙今坂幸輝(大院大高・内野手)、㉚岸本佑也(奈良産大高・内野手)に注目したい。走攻守揃った斎藤はスピード感のある守備力に定評があり、右肩上がりに成長を続けている。今坂は打撃がセールスポイントで、高い身体能力を活かした強肩・俊足の選手。岸本は身長180センチの大型選手で、投手もこなす強肩が魅力で、それぞれタイプが違う選手がどのチームから評価されるか楽しみだ。
隠し玉とは言わないが、異色の経歴で注目されているのが、㉛森井翔太郎(桐朋高・内野手)で、偏差値70の進学校のドラフト候補。高校通算45本塁打、投げては最速153キロを超える逸材で、日米スカウトから注目されている。進学校がゆえ、体力不足や(試合の)経験不足を不安視する声もあるが、森井がプロか進学かの判断で各チームの戦略も変わってくるだろう。
●大学生~大学BIG4に続く即戦力選手が並び、上位指名が期待できる
金丸や中村に続く大学生投手も逸材が揃う。球威が魅力の本格派右腕の㉜寺西成騎(日体大・投手)と㉝岩崎峻典(東洋大・投手)は上位候補の選手で、寺西は1~2年時はケガでリハビリが続いたが、ようやく昨年から復帰し、球速も最速153キロを超え奪三振率が高い。岩崎は制球力に課題はあるものの、真っ直ぐの球威とキレのあるスライダーが武器で、寺西は星稜高(石川)で3季出場し、岩崎は履正社高(大阪)で全国制覇しており、高校時代から注目されていた共通点もある。
総合力の高い即戦力投手では、㉞坂口翔颯(国学院大・投手)と㉟徳山一翔(環太平洋大・投手)、㊱篠木健太郎(法大・投手)の評価が高い。
坂口と徳山は1年時から主力として活躍し、先発・リリーフともにこなせる万能型の即戦力。坂口は多彩な変化球を駆使し打ち取る投球術に長け、どんな球種でもストライクが取れる。左腕の徳山は真っ直ぐを武器に制球力が高くる奪三振能力が高い。篠木は球速は最速157キロを超える本格派だが、多彩な変化球で緩急をつけた投球で抜群の安定感をほこる。
野手では㊲飯山志夢(立正大・外野手)と㊳飯森太慈(明大・外野手)は俊足巧打のリードオフマン。飯山は強肩で守備力が高く、飯森は163センチと小柄ながら俊足を武器に3年春には首位打者を獲得している。
一方で㊴荒巻悠(上武大・内野手)と㊵吉納翼(早大・外野手)は左打ちの長距離砲で、荒巻は規格外の飛距離で遠くに飛ばすことなら世代屈指魅のスラッガー。吉納は広角に長打を打て打率も稼げる。㊶柳館憲吾(国学院大・内野手)も左打ちの好打者で、3年春に首位打者を獲得しパンチ力も兼ね備えている。
●社会人~上位候補は多くないが、戦力の不足部分を補う実力派が揃う
社会人は昨年に続きやや寂しく、上位指名確実と言える投手は多くない。そのなかで㊷伊原陵人(NTT西日本・投手)と㊸沢山優介(ヤマハ・投手)の対照的な両左腕に注目したい。
伊原は170センチと小柄ながら、伸びのある真っ直ぐと打者の手元で変化する球が武器。一方で沢山は187センチの長身左腕で、今季は球速も150キロを超えた。静岡高時代もドラフト候補に挙がった逸材で、高卒3年目と伸びしろも十分だ。
同じ左腕では、㊹荘司宏太(セガサミー・投手)も評価が高く、スピードガン以上に球速を感じる真っ直ぐの質の高さが魅力で、チームではリリーフを担い経験も十分だ。
このほか、㊺鷲尾昂弥(三菱重工ウエスト・投手)は力強い真っ直ぐとフォークを武器に1年目はリリーフ、2年目の今季は先発を任せられている。チームメイトの㊻竹田祐(三菱重工ウエスト・投手)は、昨年指名漏れの悔しさを味わったが、最速153キロの真っ直ぐと多彩な変化球は健在でさらに安定感を増した。
野手では、社会人のU-23にも選出された㊼相羽寛太(ヤマハ・内野手)は、竹田同様に昨年指名は無かったが、高い遊撃守備の評価は依然高く、守備だけで飯を食べていける選手。源田壮亮(西武)や矢野雅哉(広島)も入団当初は打撃が課題だったが、現在はリーグを代表する選手に成長しており、高卒4年目で将来性も十分にある。
最後に独立リーグと新規でNPBに加入したチームからは、㊽工藤泰成(四国IL徳島・投手)は昨年の指名漏れから独立リーグに進み、プロ選手を多く輩出している徳島で9勝、防御率2点台の好成績を挙げ、最速159キロも計測した。
㊾早川太貴(くふうハヤテ・投手)も工藤同様に昨年指名漏れした選手だが、市役所職員からハヤテに加入した異色の選手。最速150キロの真っ直ぐを武器にウエスタンでは4勝を上げている。㊿知念大成(オイシックス・外野手)も沖縄電力からプロを目指しオイシックスに加入したヒットメーカーで、イースタンでは100安打を超え打率.321はリーグ2位の好成績をあげている。