ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年戦力展望☆オリックス~チームはまだまだ発展途上!全員で勝利を掴み3連覇を目指す

 終わってみればパ・リーグ連覇、そしてオリックスとしては26年振り、バファローズの名称としては初の栄冠に輝いた。CSでは最後まで優勝を争ったホークスを一蹴し、日本シリーズでは2敗1分からの4連勝でヤクルトを降した。

 しかし優勝への道は平坦ではなく、12年振りの開幕戦勝利も一昨年は一度もなかった5連敗を喫し、一時は首位から最大11.5ゲームの差があった。ただ、中嶋監督の采配はブレることなく、打線は繋がりを最優先にしスタメンオーダーは141通りを数え、投手は無理をさせないコンディション優先を貫き、先発の山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑥)とワゲスパックをリリーフで起用するなど、次々と打ち手が当たった。

 結果、何度もV逸の危機を乗り越え、一度もマジックが点灯することなく最終戦で逆転優勝した。2位ホークスと同率ながら、直接対決の差で手にした薄氷の連覇だった。

 【過去5年のチーム成績】

    順位    勝敗       打率 本塁打  盗塁   得点 防御率 失点 

 22年 1位 76勝65敗   2分 .246    89本   62個  490点  2.84  458点  

 21年 1位 70勝55敗 18分 .247  133本   50個  551点  3.31  500点

 20年 6位 45勝68敗   7分 .247    90本   95個  442点  3.97  502点

 19年 6位 59勝82敗   2分 .242  102本 122個  544点  4.05  637点

 18年 4位 75勝66敗   2分 .244  108本   97個  538点  3.69  565点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~なし

    20年~なし

 19年~宮城大弥(投手~興南高①)紅林弘太郎(内野手駿河総合高②)

 18年~中川圭太(内野手東洋大⑦)

 17年~田嶋大樹(投手~JR東日本①)福田周平(内野手~NTT東日本③)

 ドラフトの成果が出るのには5年はかかる。潮目が変わったとまでは言わないが、一昨年の優勝までの15~19年のドラフトでは、上記以外に、投手はエースの山本由伸(都城高~16年④)に山岡泰輔(東京ガス~16年①)、リリーフも山崎颯に近藤大亮(パナソニック~15年②)、吉田凌(東海大相模高~15年⑤)を獲得している。野手も吉田正尚青学大~15年①)に杉本裕太郎(NTT西日本~15年⑩)の両主砲、大城滉二(立大~15年②)と見事に主戦が揃う。

 また、1位指名選手の活躍も見逃せない。投手では山岡に田嶋、宮城、山崎福也(明大~14年①)、野手は吉田正に安達了一(東芝~11年①)がおり、今季のブレイク候補の山下舜平太(福岡大大濠高~20年①)に太田椋(天理高~18年①)、故障で育成契約になったが椋木蓮東北福祉大~21年①)も昨季2勝を上げ、1位指名選手が主戦に成長しており、ドラフトが理想的な形で機能していると言える。

 こうなると育成に舵を取ることができ、20年は山下から元謙大(中京高~20年②)に来田涼斗(明石商高~20年③)と1~3位を高校生で固め、昨季は高卒1年目ながら池田陵真(大阪桐蔭高~21年⑤)を起用するなど、育てながら勝つことが可能になる。FAやポスティング移籍の心配はあるが、暫く上位は揺るがない戦力になりつつある。

 

●投手陣~エース山本のNPBラストシーズン?さらなる投手王国の基礎を築く

  昨年も投手陣が盤石だった。エースの山本は2年連続で投手4冠(最優秀防御率最多勝、最高勝率、最多奪三振)に輝き、宮城も2年連続10勝を上げた。田嶋が9勝、山崎福と山岡は負け数が先行したが安定感のある投球を見せた。

 リリーフは平野が28セーブでクローザーを担ったが、敢えて固定はせずに打線の巡りや試合展開に合わせ、状態の良い選手を起用していった。序盤は近藤に黒木優太(立正大~16年②)、本田仁海(星槎湘南高~17年④)の故障組が揃って復活し、ベテランの比嘉幹貴日立製作所~09年②)はピンチの場面を何度も切り抜け、2年目30歳の阿部翔太(日本生命~20年⑥)がブルペンを支えた。

 後半戦になると、ビドルを先発に回し、逆に山崎颯とワゲスパックをリリーフで起用したのがハマり、さらにシーズン途中に支配下登録された宇田川優希(仙台大~20年育③)は、150キロ後半の直球を武器に19試合で10ホールド、防御率0.81の好成績で、まさにシンデレラストーリーでWBC代表にまで選出された。原則2連投までしかせない方針のもと、各選手がベストパフォーマンスを出せる状態を維持した。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆山本由伸(193回)☆宮城大弥(148回1/3)山岡泰輔(128回)

     田嶋大樹(125回) 山崎福也(114回2/3)ワゲスパック(72回2/3)

 ・救援…平野佳寿(48試合)阿部翔太(44試合)本田仁海(42試合)

       ビドル(35試合)近藤大亮(42試合)比嘉幹貴(30試合)

【今年度の予想】

 ・先発…山﨑福也 山下舜平太 宮城大弥 山本由伸 山岡泰輔 田嶋大樹 

      (※曽谷龍平 竹安大知 ※ニックス 黒木優太 東 晃平)

 ・中継…比嘉幹貴 阿部翔太 本田仁海 山﨑颯一郎 宇田川優希

    (近藤大亮 鈴木康平 ※コットン 山田修義 漆原大晟 吉田 凌)     

 ・抑え…平野佳寿 ワゲスパック

 今季も投手陣は万全で、12球団随一の布陣が揃う。なんせWBC代表の投手15名中4名(山本、宮城、宇田川、山崎颯)が選出されており、質量ともに充実している。

 先発はWBCで登板は遅れるが、山本と宮城を中心に、田嶋と山崎福の両左腕、山岡が控え、昨年の日本シリーズでにの登板も噂された秘密兵器の山下は、開幕投手の可能性もあり、今季のブレイクを予感させる。さらに先発転向の黒木、昨年2試合に先発した東晃平(神戸弘陵高~17年育②)、即戦力ルーキーの曽谷龍平(白鷗大~22年①)など楽しみな若手が控え、新外国人ニックスも故障が完治すれば面白い存在になる。

 リリーフ陣は今季も固定せずに、状況を見ての起用になる。クローザーで平野とワゲスパック、飛躍が期待される山崎颯に宇田川、阿部に近藤、比嘉と経験豊富な選手が揃い、新外国人のコットンも加入した。若手も本田や小木田敦也(TDK~21年⑦)、村西良太(近大~19年③)、復活を期す吉田凌に鈴木康平(日立製作所~17年②)、山田修義(敦賀気比高~09年③)もおり、勤続疲労を気にする声もあるが、乗り越えられるだけの戦力が揃っている。

 さらに育成選手にも逸材が多く、現状、支配下も63名と余裕があり、中田惟斗(大阪桐蔭高~19年育③)に、ルーキーの西濱勇星(BC群馬~22年育①)や才木海翔(大経大~22年育②)は、昨年の宇田川のようなブレイクも期待できる。

 

●野手陣~吉田正移籍の影響大だが、新加入選手、若手とベテランの全員でカバーする

 昨年のスタメンオーダーは143試合中141通りを数えた。理由は2つで、一つは選手の調子や相手投手との相性を見たオーダー編成。もう一つは新型コロナ感染が相次ぎ、選手の離脱が重ななったためである。

 特に序盤戦は厳しく、一昨年の本塁打王・杉本が大不振、福田と宗佑磨(横浜隼人高~14年②)もコロナ感染で離脱し、吉田正もコロナ離脱ののち、復帰早々今度は左太ももを痛めて再離脱するなど、ベストメンバーが揃わなかった。

 そんななか交流戦で杉本が首位打者を獲得し復調。吉田正もケガの復帰後はヒットを量産し、コロナ感染のなか一人気を吐いた中川圭とともにクリーンアップを形成。福田と宗の一・二番コンビ、下位打線で勝負強い安達や紅林が機能し、主力が調子を落としても、頓宮裕真(亜大~18年②)が持ち前の打力で4番を務め、ベテランの西野真弘(JR東日本~14年⑦)やルーキーの野口智哉(関大~21年②)など与えられた役割をこなし、リーグ最少本塁打でも繋ぐ野球で勝利を呼び寄せた。

 守備面では、失策数はリーグで3番目に多かったが、大事なところで堅守が光った。特に、伏見寅威(東海大~12年③)と若月健矢(花咲徳栄高~13年③)の両捕手は、守備率.990以上をマークし、宗は三塁で、紅林は遊撃でゴールデングラブ賞を獲得し、何度もチームのピンチを救った。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…頓宮裕真(81/271)伏見寅威(76/235)若月健矢(68/193)

 内野手…☆宗 佑磨(130/537)☆紅林弘太郎(130/495)☆中川圭太(110/468)

     安達了一(65/243)マッカーシー(59/212)野口智哉(54/167)

     西野真弘(43/130)パレラ(37/127)大城滉二(57/110)

     太田 椋(32/101)     

 外野手…☆吉田正尚(115/508)☆福田周平(118/502)杉本裕太郎(105/433)

     佐野晧大(78/118)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)福田周平⑧      1)福田周平⑧      

  2)宗 佑磨⑤      2)宗 佑磨⑤       

  3)吉田正尚⑦           3)中川圭太⑦  

  4)杉本裕太郎     4)吉田正尚DH     

  5)紅林弘太郎⑥     5)杉本裕太郎⑨   

  6)後藤駿太⑨      6)安達了一④      

  7)ラベロDH      7)マッカーシー

  8)若月健矢②      8)紅林弘太郎⑥  

  9)安達了一④      9)伏見寅威②

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…若月健矢 ※森 友哉 頓宮裕真(※石川 亮)

 内野手…安達了一 宗 佑磨 ※ゴンザレス 野口智哉 ※シュウィンデル

       紅林弘太郎 太田 椋 中川圭太

    (石岡諒太 西野真弘 大城滉二 山足達也 宜保 翔)

 外野手…福田周平 佐野皓大 小田裕也 T-岡田 杉本裕太郎

    (渡部遼人 元 謙大 ※杉澤 龍 来田涼斗 池田陵真 ※渡邊大樹)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)福田周平⑧      捕 手)森 友哉(若月健矢) 

  2)宗 佑磨⑤      一塁手)中川圭太(頓宮裕真)

  3)森 友哉②      二塁手)安達了一(太田 椋)

  4)杉本裕太郎⑨     三塁手)宗 佑磨(西野真弘)

  5)ゴンザレス⑦        遊撃手)紅林弘太郎(野口智哉)

  6)中川圭太③      左翼手)ゴンザレス

  7)シュウィンデルDH     中堅手)福田周平(佐野晧大)

  8)紅林弘太郎⑥     右翼手)杉本裕太郎

  9)安達了一④      D H)シュウィンデル

 今季の不安材料は、吉田正のMLB移籍と伏見のFA移籍で、西武からFAで森友哉大阪桐蔭高~13年西①)を獲得したが、さすがに打てる捕手の森でも、一人で穴を埋めるのは難しく、全員でカバーすることになる。

 WBCの活躍を見て再認識したように、吉田正の打率に出塁率、打点、本塁打で高い数字を残し、ここぞという時の勝負強さは、実績十分の森でも及ばない。ともに27歳で脂が乗る頃の宗や中川圭、頓宮。紅林や太田、成長著しい野口への期待は大きい。このほかにも、佐野皓大(大分高~14年③)に宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)、渡部遼人(慶大~21年④)の若手や、元や来田、池田などの新戦力にも十分チャンスがある。

 また、新外国人のゴンザレスはMLB通算107本塁打の長打力が武器だが、打っては両打、内外野も守れるユーティリティプレーヤーで起用の枠が広がる。シュウィンデルはMLB通算22本塁打の中距離打者だが、一昨年は打率3割、13本塁打の好成績を残しており、昨年の助っ人が不発だっただけに吉田正の穴を埋めて欲しい。

 伏見の移籍は、左腕投手のリードに定評があっただけに守備面で厳しいことが予想される。森と若月が主力だが、石川亮(帝京高~13年日⑧)や福永奨(国学院大~21年③)にもチャンスがあり、セールスポイントの守備面を磨き出番を増やしたい。

 さらにオリックスの強さは、中川圭や福田、野口に新加入のゴンザレスなど、内外野守れる選手が多く攻守のいバリエーションが豊富で多様なオーダーを組める。また、西野に大城、山足達也(ホンダ鈴鹿~17年⑧)や小田裕也(日本生命~14年⑧)といった守備固めや代走、犠打など献身的にチーム支えるベテランの存在も心強い。抜けた穴は確かに大きいが、全員で埋めていく中島監督の起用に今季も注目だ。

 

投打に期待の若手が多く、リーグ3連覇も夢ではない。課題は主砲の穴埋め 

 期待の選手には、投手では山崎颯一郎を挙げたい。昨年は本当に一年間、成長曲線を目の当たりにすることが出来た。当初は5試合に先発するも未勝利…しかしリリーフに転向すると快投を演じ、CSでは球団史上初の160キロを記録した。大きな印象wp残したが、試合数は15試合のみで、リリーフの10試合がどれだけ印象的だったか分かる。今季、シーズン通して出場できれば、どんな数字を残すのか楽しみは尽きない。

 野手は紅林弘太郎で、堂々とした体躯にパンチ力もあり打撃に目を奪われがちだが、失策数こそ多いが、軽快な守備に強肩で大型遊撃手としての期待は高い。昨年は6本塁打と一昨年より成績を落とし、物足りない数字に終わったが、開幕は5番を任せられるなど、期待はクリーンアップを担える選手に成長すること。吉田正が抜けた今季、終わってみれば紅林が埋めたというシーズンにしたいし、出来ると思う。

 昨年も発展途上のチームと評したが、今季もそれは変わらない。“全員で勝つ”をスローガンに、今季も戦いながら育てるシーズンになりそうで、3連覇そして黄金期到来も夢ではない。今季はソフトバンクと2強と呼ばれ、各チームのマークも厳しくなるが、盤石な投手陣を背景に3連覇は射程圏内と言える。