3連覇が潰えた19年から4年連続でBクラスが続き、ファンとしては思い出したくもないだろうが、98年から12年までの15年連続Bクラスの暗黒期再来が頭が過ってしまう。
昨シーズンは序盤戦は好調で、投打が噛み合い開幕6連勝の好スタートを切ったが、昨年も鬼門は交流戦で、5勝13敗と3年連続の交流戦最下位でまたしても失速してしまった。ただ、リーグ戦再開後はチームも持ち直し、レッズから秋山翔吾(八戸大~10年西③)が電撃加入するなど明るい話題もあり、前半戦はリーグ2位で終えた。
しかし、地力が試される夏場から大型連敗が続き、新型コロナ感染による主力の離脱も重なり5位でシーズンを終え、佐々岡監督が退任。今季から新監督の新井を迎え、チームの再建を託されることになった。
【過去5年のチーム成績】
22年 5位 66勝74敗 3分 .257 91本 26個 552点 3.54 544点
21年 4位 63勝68敗12分 .264 123本 68個 557点 3.81 589点
20年 5位 52勝56敗12分 .262 110本 64個 523点 4.06 529点
19年 4位 70勝70敗 3分 .254 140本 81個 591点 3.46 601点
18年 1位 82勝59敗 2分 .262 175本 95個 721点 4.12 651点
【過去5年のドラフトの主戦力】
20年~栗林良史(投手~トヨタ自動車①)森浦大輔(投手~天理大②)
19年~森下暢仁(投手~明大①)
18年~小園海斗(内野手~報徳学園高①)島内颯太郎(投手~九共大②)
17年~なし
セ・リーグを連覇していた16~18年は、支配下指名19名中13名が高校生の育成主体のドラフトで、小園や坂倉将吾(日大三高~16年④)などの主力も誕生したが、既に6名(うち高校生は5名)が退団し、残念ながら成果が挙がったとは言えない。
一転して19~21年は、支配下19名中、高校生は6名まで減少し、即戦力中心にシフトしている。そのなかでWBC代表の森下や栗林を単独指名し、2年連続50試合登板の森浦など着実に結果が出ている。22年は1~2位こそ高校生を指名したが、下位で大学生・社会人を獲得したバランスの良いドラフトになった。
ただこの間、結果が出ているのは投手が多く、特に野手は鈴木誠也(二松学舎大高~12年②)移籍後、スラッガーと呼べるのは坂倉しかいない。この辺りを意識して、一昨年は中村健人(トヨタ自動車~21年③)に末包昇大(大阪ガス~21年⑥)を獲得した課題の解消には到らず、林晃汰(智弁和歌山高~18年③)も出てくる気配がなく、そんななか昨年ファームでチーム最多本塁打の正髄優弥(亜大~18年⑥)を放出したのも、今一つ理解できない。
●投手陣~先発4本柱に次ぐ選手の確立とリリーフ陣強化が課題
昨シーズンも大瀬良大地(九共大~13年①)に九里亜蓮(亜大~13年②)、森下、左腕の床田寛樹(中部学院大~16年③)の4本柱が健在で、特に前半戦は全員が抜群の安定感を誇りチームを支えた。
しかし、シーズンが進むにつれ徐々に崩れ始め、大瀬良と九里はともに貯金を作ることができず、床田は骨折で離脱…。森下がただ一人1年間ローテーションを守ったが、援護に恵まれずギリギリ2桁勝利に届くことができた。そんななか遠藤淳志(霞ヶ浦高~17年⑤)が100イニングを投げ4勝を挙げ、今シーズンに繋がる活躍を見せたのは収穫だった。
一方、一昨年に100イニングを投げ4勝を挙げた玉村昇悟(丹生高~19年⑥)は、イニング数も勝ち星も半減し、期待に応えることができなかった。新戦力ルーキーの森翔平(三菱重工ウェスト~21年②)は1勝、新外国人のアンダーソンも3勝で終わったのは誤算で、4本柱に次ぐ先発陣が不足した。
リリーフは栗林が、昨季も守護神として31セーブを上げ、防御率1点台と抜群の安定感を誇ったが、その栗林まで繋ぐ形ができなかった。後半になると、ようやく森浦~矢崎拓也(慶大~16年①)から栗林に繋ぐ形ができ、特にキャリアハイの47試合に登板し、17ホールド、防御率1点台の矢崎の覚醒はプラスになった。
ルーキーの松本やケムナ誠(日本文理大~17年③)も勝ちパターンを担う活躍を見せたものの、やはりリリーフ陣の層の薄さは否めず、経験のある中崎翔太(日南学園高~10年⑥)や一岡竜司(沖データコンピュータ教育学院~11年巨③)にかつてのような安定感がなくなり、ルーキー左腕の黒原拓未(関学大~21年①)も左肩痛で出遅れ、僅か12試合登板と新戦力の台頭も乏しかった。
【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア
・先発…☆森下暢仁(178回2/3)九里亜蓮(140回1/3)大瀬良大地(135回1/3)
床田寛樹(114回)遠藤淳志(105回1/3)アンダーソン(70回)
・救援…森浦大輔(51試合)松本竜也(50試合)栗林良史(48試合)
矢崎拓也(47試合)ターリー(45試合)ケムナ誠(43試合)
【今年度の予想】
・先発…九里亜蓮 大瀬良大地 森 翔平 森下暢仁 床田寛樹 遠藤淳志
(野村祐輔 ※益田武尚 高橋昂也 ※河野 佳 アンダーソン 玉村昇悟)
・中継…森浦大輔 中崎翔太 ケムナ誠 矢崎拓也 松本竜也 ターリー
(薮田和樹 黒原拓未 塹江敦哉 ※長谷部銀次 島内颯太郎 ※戸根千明)
・抑え…栗林良史
今季もエースの大瀬良が開幕投手に指名され、九里と森下、床田の4本柱は決まりで、先発は残り2枠の争いになる。最有力は遠藤で、今季は独り立ちし規定投球回数をクリアし、貯金を残す投球をしたい。
このほか、ともに2年目を迎える森やアンダーソンへの期待値は高く、玉村やベテランの野村祐輔(明大~11年①)、昨年ファームで好投した中村祐太(関東一高~13年⑤)もローテーションに返り咲きたい。ルーキーの益田武尚(東京ガス~22年③)に河野佳(大阪ガス~22年⑤)は、ともに先発もリリーフもでき、キャンプで適性を見極めることになるが、先ずは先発で試してみたい。
リリーフは、いかに栗林に繋ぐかがポイントになる。すべてリリーフ陣の責任ではないが、逆転負けはリーグ最多の34試合を数え、リリーフ陣強化は投手陣の優先課題になる。矢崎がセットアッパーを務め、森浦にケムナ、ターリーが勝ちパターンを担うと思うが、中崎や塹江敦哉(高松北高~14年③)など、かつて勝ちパターンを担った選手の復活や、新加入の戸根千明(日大~14年巨②)やルーキーの長谷部銀次(トヨタ自動車~22年⑥)に、2年目の黒原を加えた左腕トリオの活躍にも期待したい。
●野手陣~リーグナンバーワンのチーム打率も、長打力・機動力不足を解消できるか
不動の4番・鈴木が抜け心配された打線は、終わってみればチーム打率はリーグナンバーワンの.257で、得点数もリーグ2位と十分機能したと言える。特に坂倉は期待に十に応え、チームでただ一人全試合に出場し、打率.288で本塁打は日本人最多の16本を放ち、鈴木の穴を埋める活躍を見せた。
このほか、新外国人のマクブルームがチーム最多の17本塁打で期待に応え、内外野守れる上本崇司(明大~12年③)は、主に8番を打ちチャンスメークで上位打線に繋ぎ、勝負強い打撃でポイントゲッターにもなり、キャリアハイの成績を上げた。また、秋山の加入で、本来クリーンアップも打てる西川龍馬(王子~15年⑤)が1番を任せることができ、後半は野間峻祥(中部学院大~14年①)が右翼に定着し、盤石の外野陣を形成することができた。
課題は長打力と機動力不足で、本塁打数は12年以来、10年振りに100本を割った。ただ、本塁打数はリーグ4位とまだ許容範囲だが、酷かったのは盗塁数で、何と僅かに26盗塁と半分以下まで落ちてしまった。MLBでも確立の悪さから、盗塁が減少しており、元々以前からメジャーの野球を積極的に取り入れてきた歴史があり、まさかそれを標榜したわけだとは思わないが、かつて機動力を活かした野球がお家芸のチームが見る影もなくなってしまった。
【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入
捕 手…☆坂倉将吾(143/599)曾澤 翼(98/325)磯村嘉孝(43/126)
内野手…☆菊池涼介(123/522)☆小園海斗(127/511)☆マクブルーム(128/508)
上本崇司(94/300)堂林翔太(101/274)羽月隆太郎(44/99)
外野手…西川龍馬(97/424)野間峻祥(85/338)松山竜平(88/166)
秋山翔吾(44/174)中村健人(63/137)長野久義(58/134)
【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】
1)西川龍馬⑦ 1)野間峻祥⑨
3)小園海斗⑥ 3)西川龍馬⑦
4)松山竜平③ 4)マクブルーム③
5)坂倉将吾⑤ 5)坂倉将吾⑤
6)曾澤 翼② 6)曾澤 翼②
7)末包昇大⑨ 7)小園海斗⑥
8)上本崇司⑧ 8)上本崇司⑧
9)大瀬良大地① 9)森下暢仁①
【今シーズンの開幕一軍候補】
捕 手…曾澤 翼 坂倉将吾 磯村嘉孝(石原貴規)
内野手…上本崇司 堂林翔太 マクブルーム 菊池涼介 小園海斗 羽月隆太郎
※デビッドソン(田中広輔 林 晃汰 韮澤雄也 矢野雅哉)
外野手…西川龍馬 秋山翔吾 野間峻祥 宇草孔基 中村健人 松山竜平
(末包昇大 ※久保 修 大盛 穂)
【今シーズン予想~打順】 【今シーズン予想~守備】
1)西川龍馬⑦ 捕 手)坂倉将吾(曾澤 翼)
4)マクブルーム③ 三塁手)上本崇司(デビッドソン)
5)坂倉将吾② 遊撃手)小園海斗
9)大瀬良大地①
今シーズン最大の注目は、坂倉の捕手専任で、昨シーズンは曾澤翼(水戸短大高~06年③)と磯村嘉孝(中京大中京高~10年⑤)が主にマスクを被ったが、盗塁阻止率はリーグワーストの.204の結果から、坂倉が本職に戻ることになる。このほか坂倉の同い年の石原貴規(天理大~19年⑤)も力を付けてきており、間違いなく競争が激化する。
このほかのレギュラーポジションは、一塁にマクブルームがおり、菊地と小園の二遊間はリーグ髄一と言える。鉄壁の二遊間に挑むのは、打撃の良い韮澤雄也(花咲徳栄高~19年④)に守備の巧い矢野雅哉(亜大~20年⑥)、ユーティリティプレーヤーの羽月隆太郎(神村学園高~18年⑦)も二塁一本での勝負を明言しており競争が楽しみだ。
外野も昨年後半から左翼・西川、中堅・秋山、右翼・野間が定着しているが、若手から中堅に差し掛かる中村健や宇草孔基(法大~19年②)が控え、2年目の田村俊介(愛工大名電高~21年④)も一軍キャンプを完走した。
最大の注目は三塁で、昨年は坂倉が119試合に先発したが、捕手専任でレギュラーは白紙状態。本来は内野手の上本や復活を期す田中広輔(JR東日本~13年③)、新外国人のデビッドソン、林に二俣翔一(磐田東高~20年育①)と言った長距離砲も控え最大の激戦区になる。
一方で打線は強力だが、昨年からの課題の長打力と機動力不足が解消されたとは言えない。さすがに秋山が昨年のような成績で終わることはないと思うが、秋山に長打や盗塁を期待するのは酷で、ここは新戦力の台頭が待たれる。長打力ならデビッドソンや末包、機動力なら曽根海成(京都国際高~13年ソ育③)、ルーキーの久保修(大阪観光大~22年⑦)に期待がかかる。
●若手の台頭も待ち遠しいが、連覇を知っているベテランの奮起に期待
注目選手の投手は、巨人から移籍した戸根千明で、巨人では打撃の良さから二刀流挑戦など、今ひとつ中途半端な起用だったが、今季9年目31歳を迎え実績は十分。昨年もファームで最多登板し、長いイニングを投げきる体力に加え、左打者を打ち取る技術もある。左のリリーバーとしてセットアッパーの役割も期待でき、リリーフ陣の層の薄いチームにおいて期待がかかる。
野手は秋山で、もう一度西武時代のシュアなバッティングを見たい。昨年は3年振りのNPB復帰も44試合出場に終わり、打率.265、本塁打5本と不本意な成績に終わった。今季はオフからしっかり体調を整え大暴れして欲しい。昨シーズンは三番のみの出番だったが、個人的には一番・秋山がしっくりくると思う。どちらにしろ秋山が復調すれば、長打力はないがこの上なく嫌な打線になると思う。
4年連続Bクラスのチームを、新監督が立て直すのは大変だが、土台は出来つつある。ただ、昨年前半戦は決してマグレではないが、主力と控えの差が大きく、長打力や機動力などの課題が解消されたとは言えず、体的な底上げがないとペナントレースを勝ち抜くのは厳しい。