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どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆楽天~得意のFAと即戦力偏重ドラフトで若手が不足し課題は山積

●貯金18→借金2の歴史的大失速でBクラス…投打に主力が高齢化し不安は多い

 自分の順位予想で、楽天が優勝するのであれば、今シーズンだろうなと思っていた。当初は予想通りではないが、開幕から快進撃を続け、球団新記録の11連勝に一時期は貯金18と断トツの首位で、このまま逃げ切るのではないかと思っていた。

 しかし、ゴールデンウィークが明けるとチームは歴史的な大失速に陥り、貯金をすべて吐き出し、借金2の4位でシーズンを終えた。今シーズンも昨年同様、序盤は好調も中盤から失速する同じ轍を踏んだ形になってしまった。

 私の「優勝するなら今年の」理由は主力選手の高齢化で、投手であれば黄金のローテーションとも言われた岸孝之東北学院大~06年西希)が投手最年長の38歳で、涌井秀章(横浜高~04年西①)が36歳、田中将大駒大苫小牧高~06年①)は34歳、則本昂大三重中京大~12年②)も32歳と、4人全員がパフォーマンスを発揮するなら今季がピークだろうと思った。

 打撃陣も、鈴木大地東洋大~11年ロ③)と岡島豪郎(白鷗大~11年④)が33歳、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)と島内宏明(明大~11年⑥)は32歳、西川遥輝智弁和歌山高~10年日②)も30歳になり、最も若いレギュラーは26歳の辰巳で、投打にベテランへの依存度が高い。

 積極的なFAや補強で豪華な主力陣を誇るが、若手の突き上げに乏しく、このままだとチームは下降線を下っていくだけで、気は早いが来シーズンの編成がどうなるかオフの動向が気になる。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 69勝71敗3分④

 防御率…3.47⑥(3.40④)打率….243③(.243③)

 本塁打…101③(108⑤)盗塁97②(45⑥)

 得点…533②(532④)失点…522④(507③)

 

●即戦力偏重ドラフトで若手が不足…野手は左打者に主力が多く全体バランス悪い

 個人的にどうも楽天のドラフトは、評価できないと言うか好きになれない。良く言えば個性的で大胆、悪く言えば奇をてらううと言うか、「俺たちはこんなドラフトが出来るんだ」と言う奢りのようなものが透けて見え、17年や19年、昨年のドラフトはその典型と言える。

 そしてとにかく大学生好きで、育成が二の次になっていると思う。直近5年の指名で高校生は11名、大学生は17名、社会人(独立リーグ含む)が7名と、即戦力に偏重したドラフトになっている。確かに獲得した即戦力が主力に成長しているが、育成に二の足を踏んではいけない。

 正直、高校生の育成は上手いとは言えない。投手では松井裕樹桐光学園高~13年①)と安楽智大済美高~14年①)が主力だが、先発投手に限ると田中将以来出てきていない。野手はもっと悲惨で、レギュラーとなると銀次(盛岡中央高~05年高③)まで遡らなくてはならなく、避けたい理由が分からない訳でもないが、これだけFA等で戦力補強できるチームなのだから、ドラフトではもっと育成主体にしても良いと思う。

 そんななか昨年は15年以来、高卒野手の1位指名で吉野創士(昌平高~21年①)を獲得したうえ、上位3名で野手を指名したが、私は奇策すぎて評価できなかった。チームの状況を見れば年齢バランスの悪い投手陣の強化が優先で、吉野を1位で獲得できたならば、なぜ2~3位で高校生の将来のエース候補を獲得しなかったのか?楽天らしい言えば、らしいドラフトだった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年③…なし

 18年⑥…辰巳涼介(立命大/①・外野手)太田 光(大商大/②・捕手)

 19年③…小深田大翔(大阪ガス/①・内野手)瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿/⑤・投手)

 20年④…早川隆久(早大/①・投手)

 21年③…なし

  ↓↓

楽天の補強ポイント】 

 投 手…投手全般(高校生、大学生、高卒3年目社会人)

 捕 手…高校生

 内野手…高校生・大学生スラッガー(右打ちならベスト)

 外野手…必要なし 

 

☆投手~投手全般(高校生、大学生、高卒3年目社会人)

 先ほど述べた黄金のローテーションだが、最多は則本の10勝で、岸と田中将は負け越し、故障の涌井は4勝に終わり、4人合わせて31勝31敗と貯金が作れなかった。

 期待の早川も5勝、昨年2桁勝利の瀧中も2勝と先発陣の立て直しが急務になる。辛島航(飯塚高~08年⑥)が、肘の手術から復帰し6勝を上げたが、その辛島も32歳…若手の顔ぶれを見ても先発タイプは早川と藤平尚真(横浜高~16年①)しか見当たらず、暫くはベテラン頼みになる。

 リリーフ陣は、クローザーの松井を中心に、西口直人(甲賀健康医療専門学校~16年⑩)がチーム最多の61試合、安楽と宋家豪がともに50試合登板し、序盤出遅れたが酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)も加わり勝ちパターンは形成できている。

 また、新戦力でルーキーの宮森智志(四国IL高知~21年育①)が25試合で防御率1点台、4年目左腕の鈴木翔天(富士大~18年⑧)も38試合登板で7ホールドと、リリーフ陣は厚みを増した。

 課題は投手全般で、防御率はリーグ最下位まで落ち込み、着実に世代交代を進めなくてはならないなか、19歳~22歳に僅か3名しかいない年齢バランスの悪さ、リリーフタイプは多いが不足気味の先発強化など課題は多い。

 今年は大学生に1位候補が多く、金村尚真(富士大)の1位指名が濃厚だ。金村は真っ直ぐも変化球も低めに集める制球力が高く、リーグ戦通算21勝で完成度が高い。

 また、矢澤宏太(日体大曽谷龍平(白鷗大)の両左腕に、吉村貢司郎(東芝も1位候補だが、このなかでは曽谷が次の候補で良いと思う。曽谷は制球力が課題も奪三振率の高いスリークオーターで、先発ローテーションに入る力がある。矢澤はどちらかと言うとリリーフ向き、吉村は安定感抜群の即戦力だが、大卒3年目で年齢バランスを考えれば金村と曽谷がベストだと思う。

 高校生では門別啓人(東海大札幌高)斎藤響介(盛岡中央高)が上位候補で、ともに中央では無名だが間違いなく上位で消える逸材だ。門別はキレのある最速149キロの真っ直ぐを投げる左腕。斎藤は細身ながら真っ直ぐに力があり制球力も良く、フィールディングなど投手としての総合力が高い。

 先述したが、今年は大学生投手が豊富で、菊地吏玖(専大青山美夏人(亜大)への評価も高い。菊地は元々真っ直ぐに力があったが、フォークを習得し投球の幅が拡がった。青山は派手さはいが、球を低めに集めゲームメークに長けた投手で、連投を辞さないタフさもある。

 今年も即戦力志向が高く、吉野光樹(トヨタ自動車関根智輝(ENEOS)大畑蓮(西部ガスも上位候補になる。吉野は最速150キロの本格派右腕で、名門チームでエースを務めるだけあって完成度が高い。関根も真っ直ぐは150キロを超え、多彩な変化球に制球力にも長けており、ともに即戦力として計算できる。

 吉野と関根が先発タイプのなか、大畑はリリーフタイプで、キレのある真っ直ぐと緩いカーブが武器の本格派右腕。リリーフの優先順位は高くないが、高卒3年目と若く年齢バランスでは必要な選手だ。

☆捕手~高校生

 開幕マスクはルーキーの安田悠馬(愛知大~21年②)が被り、松川(ロッテ)とルーキー対決が話題になったが、安田は僅か5試合の出場と明暗が分かれた。結局は、ベテランの炭谷銀仁朗(平安高~05年西①)が最多の95試合に出場し、太田が71試合と昨年同様、2人の併用になっている。

 その炭谷も来年36歳になり、太田がひとり立ちし、打撃の良い安田や田中貴也(山梨学院大~14年巨育③)が脅かす存在にならないと厳しい。ただ、太田も27歳と若く中途半端に即戦力を獲得する必要もなく、年齢バランスからも今年豊富な高校生に絞って良いと思う。

 高校生で評価が高いのが、清水叶人(健大高崎高)で遠投110メートル、二塁送球の最速1秒7の強肩に、高校通算24本塁打スラッガーで、打てる捕手として期待がかかる。このほか甲子園でも活躍した山浅龍之介(聖光学院高)土屋奏人(鶴岡東高)田代旭(花巻東高)など地元に逸材も揃っている。

 大学生では、土井克也(神奈川大)をリストアップしており、土井は強肩と勝負強い打撃が売りの強肩強打の即戦力だ。ただ、昨年も安田を指名しており、2年続けて大学生捕手は必要ないと思う。

内野手~高校生・大学生スラッガー(右打ちならベスト)

 打撃陣はリーグで最も多い6名が規定打席に達し、内野では鈴木大と浅村、小深田大翔(大阪ガス~19年①)がクリアしている。このほかベテランの銀次に茂木栄五郎(早大~15年③)、山崎剛(国学院大~17年③)とタレントは揃っている。

 ただ、不安も大きく、主力を脅かす若手がいない。小深田と茂木、山崎は働き盛りで心配する必要はないと思うが、年齢バランスが極端に悪く、何と19歳~24歳までで2名しかいない…これは12球団最小で、いくら主力が複数ポジションを守れるといっても、下からの突き上げが無ければ選手層は厚くならない。

 今年は高校生と大学生の獲得は必要で、欲を言えば浅村の後継を担えるようなスラッガーが理想的だ。

 補強ポイントに合致するのは、内藤鵬(日本航空石川高)内田湘大(利根商高)で、内藤は恵まれた体から高校通算52本塁打三塁手、内田は投手としても評価も高いが、個人的には打者でともに将来の主軸候補になる。このほか戸井零士(天理高)中田歩夢(東奥義塾高も右打ちのスラッガー、左打ちだが金田優太(浦和学院高)はシュアな打撃で評価が高い。

 大学生では、走攻守にアグレッシブなプレーが売りの奈良間大己(立正大)の評価が高く、スラッガータイプでは北村恵吾(中大)をリストアップしている。個人的には山田健太(立大)はパンチ力もある二塁手で、ポスト浅村にはもってこいの選手でおススメだと思うが…。

☆外野手~必要なし

 外野も島内と西川、辰巳が規定打席をクリアし、内外野守れる渡邊佳明(明大~18年⑥)や売り出し中の武藤敦貴(都城東高~19年④)、ベテランの岡島も控えており、補強を急ぐ必要はないが、ここもバランスが悪い。主力選手はすべて左打者で、右打者で最も打席に立ったのが、和田恋(高知高~13年巨②)の30打席は物足りない。

 ただ、優先順位は高くなく、今年は浅野翔吾(高松商高蛭間拓哉(早大の競合必至の1位候補がいるが、2年続けて高卒外野手指名は明らかにバランスに欠けるし、蛭間もチームに似たタイプの選手が多く、貴重な1位枠を使うことはないだろう。

 このほか、高校通算31本塁打三塚琉生(桐生一高がリストアップされており、右打ちに絞れば、勝負地強いスラッガー萩尾匡也(慶大)や、50メートル5秒9の俊足を誇る中尾勇介(日大)は獲得しても面白いと思う。

 

●FAに有力選手が揃うなか、投打に課題にどう向き合うか注目のドラフト

 チームが過渡期を迎え、課題の多いドラフトになる。ここ数年積極的なFAや補強で主力選手は固まったが、反面、若手の成長が乏しく選手層が厚いとは言えない。また、年齢バランスの悪さは早急に是正する必要がある。

 補強ポイントはやはり投手陣の強化で、先発に絞って良いと思う。金村尚真(富士大)を本命に、曽谷龍平(白鷗大)矢澤宏太(日体大が候補になる。高校生では門別啓人(東海大札幌高)は大学生を競合で外した際の有力候補になる。

【指名シミュレーション】 

1位~金村尚真(富士大・投手)…制球力に長け、安定感抜群の即戦力で通算21勝

2位~門別啓人(東海大札幌高・投手)…キレのある最速149キロのエース候補

3位~奈良間大己(立正大内野手…高校から注目された遊撃手のリードオフマン

4位~吉野光樹トヨタ自動車・投手)…最速150キロの本格派右腕で高い安定感

5位~金田優太浦和学院高・内野手…投手もこなす高いポテンシャルの遊撃手

6位~北村恵吾(中大・内野手…高校時代から注目された大型選手で長打力が魅力

 おススメの選手は、右打ちの内野手齋藤大輝(明大)を推したい。ミート力に長け、広角に打ち分ける巧打者で、50メートル5秒9の俊足は大きな武器になる。本職は二塁で守備力も高く、タイプは異なるがポスト浅村候補になる。また、横浜高~明大で、主将を務めるキャプテンシーも魅力で、楽天にフィットしそうな気がする。