ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年戦力展望☆楽天~新戦力加入で打線は強化!主力の離脱が無ければ優勝を狙える

 昨年は開幕前にチームのレジェンド田中将大駒大苫小牧高~06年①)の復帰が決まり、スーパールーキー早川の加入もあって、優勝候補に挙げられていた。スタートは良く、4月を首位で終えると、その後は勝率5割を維持しながら前半戦は2位でターンした。

 ただ、後半戦に入ると勢いに乗れないゲームが続き、大きな連敗もないが連勝もなく、借金生活は無かったものの、結局は昨年より1つ順位を上げての3位でシーズンを終えた。結局は20年のシーズン同様、4~6月の前半戦はまずまずも、7月以降に失速し、2年続けて同じような流れになり、CSでもロッテに良いところもなく、1敗1分で早々と敗退した。

 一昨年は打線がリーグナンバーワンの得点数を上げた一方で投手陣が悪く、特にリリーフ陣が打ち込まれ、逆転負けを喫する展開が多かった。しかし昨年はこれが一転し、チーム防御率こそリーグ4位だが、リリーフ陣は12球団トップの防御率2.75まで改善した。

 しかし投手陣に反比例するように昨季は打線が奮わず、チーム打率こそリーグ3位だが、得点数は試合数の少ない一昨年よりも低かった。元々機動力は乏しく、打ち勝つ野球だったが、昨年はチャンスに1本が出ずに残塁が多く、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)や新外国人のディクソン、カスティーヨの不振もあり長打力も不足した。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 16年 3位 66勝62敗15分 .243  108本   45個  532点  3.40  507点

 20年 4位 55勝57敗  8分 .258  112本   67個  557点  4.19  522点

 19年 3位 71勝68敗  4分 .251  141本   48個  614点  3.74  578点

 18年 6位 58勝82敗  3分 .241  132本   69個  520点  3.78  583点

 17年 3位 77勝63敗  3分 .254  135本   42個  585点  3.33  528点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~早川隆久(投手~早大①)

 19年~小深田大翔(内野手大阪ガス①)瀧中瞭太(投手~ホンダ鈴鹿⑥)

 18年~辰巳涼介(外野手~立命大①)太田 光(捕手~大商大②)

 17年~なし

 16年~田中和基(外野手~立大③)森原康平(投手~新日鉄住金広畑⑤)

    高梨雄平(投手~JX-ENEOS⑨) 

  過去5年のドラフトは悪くない。高梨は巨人に移籍したが、田中和は18年に新人王を獲得し、早川と小深田も新人王を獲っても遜色のない結果を残している。瀧中も昨年10勝を上げ先発ローテーションの一角を任せられ、森原はここ2年は調子を落としているが、一時期はクローザーを務めリリーフエースを張る力はある。

 野手も、辰巳は12球団随一の守備範囲と強肩で、守備だけでも飯を食える選手になった。太田も強肩と守備力には定評がある正捕手候補で、上位で指名した選手が主力に成長している。

 課題は高卒選手の育成が乏しいことで、投手なら松井裕樹桐光学園高~13年①)、野手なら銀次(盛岡中央高~05年③)まで遡らなくてはならず、巧打者は多いが、今ひとつスケール感が物足りないのはこの辺りが要因かも知れない。平均年齢27.6歳は12球団でも一番高く、高校生を育てきれない状況を理解しているのか、即戦力中心のドラフトも要因の一つと言えそうだ。

●投手陣~実績のある先発陣と強固なリリーフ陣!主力の離脱が無ければ盤石の布陣

  田中将の加入もあり、岸孝之東北学院大~06年西希)と則本昂大三重中京大~12年②)、涌井秀章(横浜高~04年西①)の通算538勝カルテットは実績十分で、名前だけでも勝負できる布陣だ。

 しかしフタを開けてみると、則本こそ2桁勝利を挙げたが、田中将は打線の援護にも恵まれず4勝止まり、岸は9勝を挙げるも負け数のほうが多く、涌井に至っては防御率5点台で6勝、後半戦はリリーフに配置転換になった。黄金ルーキー早川も6月までは7勝を上げたが、最終的には9勝で2桁勝利に届かず、瀧中も10勝は上げたものの、不調で揃ってファームで調整するなど、シーズンを完走することが出来なかった。

 一方でリリーフ陣は盤石で、松井裕が故障でシーズン途中に離脱するものの、43試合で防御率0点台の圧巻の投球を見せた。宋家豪と酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)が安定感のある投球を見せ、安楽智大済美高~14年①)はリリーフで才能を開花させ、西口直人(甲賀医療健康専門学校~16年⑩)もロングリリーフでチームのピンチを救った。結果、形や順番に捉われることなく、登板間隔や状況によって組み替えられる盤石なリリーフ陣を形成できた。 

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆岸 孝之(149回)☆田中将大(155回2/3)☆則本昂大(144回2/3)

     早川和久(137回2/3)瀧中瞭太(103回2/3)涌井秀章(96回1/3)

 ・救援…宋家豪(63試合)安楽智大(58試合)酒居知史(54試合)

       松井裕樹(43試合)森原康平(34試合)西口直人(33試合)

       ブセニッツ(31試合)

【今年度の予想】

 ・先発…岸 孝之 則本昂大 田中将大 早川和久 瀧中瞭太

       高田孝一 涌井秀章 弓削隼人 高田萌生 辛島 航 石橋良太  

 ・中継…安楽智大 酒居知史 ブセニッツ 宋家豪 西口直人 福山博之  

       森原康平 福井優也 内間拓馬 ※松井友飛 ※西垣雅矢 寺岡寛治 

 ・抑え…松井裕樹

 先発は田中将に岸、則本、早川、瀧中の5人は決まりで、残り1枠の争いになる。順当にいけば涌井になるが、弓削隼人(スバル~18年④)に故障からの復活を期す辛島航(飯塚高~08年⑥)の両左腕、石橋良太(ホンダ~15年⑤)も控えている。若手では2年目の高田孝一(法大~20年②)、昨年開幕2戦目に先発した高田萌生(創志学園高~16年巨⑤)等が、残り1枠に挑むシーズンになる。

 リリーフ陣は、昨季12球団一だった安定感は抜群で、クローザーの松井裕は昨年のようなケガさえなければ問題なく、実績十分の酒居と宗家豪、安楽はリリーバーとして開花させた素質をさらに伸ばすシーズンになる。

 心配なのは選手層の薄さで、主戦級の選手が離脱すると一気にチーム力が落ちる可能性がある。辛島や森原、や福山博之(大商大~10年横⑥)以外は経験という面でも見劣りしてしまう。実際に岸が投手最年長の38歳、涌井は36歳、田中将が34歳で、則本も32歳と自慢の先発カルテットはいずれも30歳を超えている。

 故障癖のある岸は昨季のようにシーズン完走できるか?また涌井の不振も心配で、さすがにこれまでのような大車輪の活躍を期待するのは酷だ。世代交代が迫っているなか、2~3年後を考えれば不安要素が大きいか、今季だけを考えればベテラン頼みのシーズンになりそうだ。

 リリーフも今季は延長12回制になりことで、ロングリリーフが必要になる。救援陣の枚数は多ければ多いほど良いが、残念ながらここの枚数も決して多いとは言えない。ただ、経験も実績もある牧田和久日本通運~10年西②)を放出したのは、ある意味自身の表れと捉えたい。津留崎大成(慶大~19年③)や内間拓馬(亜大~20年④)、ルーキーでは松井友飛(金沢学院大~21年⑤)や西垣雅矢(早大~21年⑥)等、ここは若手の活躍に期待したい。

●野手陣~オフの的確な補強で課題を解消!一昨年の強力打線復活なるか

 一昨年のリーグ屈指の重量打線は影を潜め、昨年は塁上は賑わすが得点に届かないシーンを何度見ただろう。一昨年、本塁打王の浅村が本来の調子とは言えず、移籍したロメロの代わりに期待された両外国人はまるで戦力にならなかった。

 ここ数年固定できていない1番打者も、開幕時は辰巳が務めたが、課題の打撃が今ひとつで下位打線が定位置になり、結局は小深田に落ち着いた。その小深田も2年目のジンクスではないが、打率.248の物足りない数字に終わり、守備でも安定感を欠く場面が目立ち、後半は山﨑剛(国学院大~17年③)に定位置を奪われた。

 ただ、収穫も大きく島内宏明(明大~11年⑥)が打点王で初のタイトルを獲得し、岡島豪郎(白鷗大~11年④)も一時期は打率3割をキープしレギュラーに返り咲いた。鈴木大地東洋大~11年ロ③)も全試合に出場し、献身的なプレーでチームをけん引した。山﨑は9月以降に1番・遊撃に定着し、広い守備範囲と気迫を前面に打ち出す打撃スタイルでチームを盛り立てた。

 一方で若手の成長が今ひとつで、正捕手を期待された太田は精彩を欠き、シーズン途中に炭谷銀仁朗(平安高~05年西①)を補強するなど悔しいシーズンになった。同じ開幕スタメンに名を連ねた小郷裕哉(立正大~18年⑦)は打率.182、チームでは貴重な機動力も使える選手だったが盗塁も1つとチャンスを活かせなかった。ファームで打率3割の黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)も一軍の壁は厚く、村林一輝(大塚高~15年⑦)や武藤敦貴(都城東高~19年④)も代走・守備要員で終わってしまった。

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…太田 光(107/281)炭谷銀仁朗(51/124)田中貴也(43/38)

 内野手…☆鈴木大地(143/628)☆浅村栄斗(143/595)☆茂木栄五郎(122/466)

       ☆小深田大翔(121/455)山崎 剛(56/194)渡邊佳明(45/113)

       銀次(35/105)

 外野手…☆島内宏明(141/599)☆岡島豪郎(126/507)☆辰巳涼介(130/443)

       ディクソン(38/123)オコエ瑠偉(42/110)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)辰巳涼介⑧      1)小深田大翔⑥      

  2)小深田大地⑥        2鈴木大地③       

  3)島内宏明⑦           3)浅村栄斗④    

  4)浅村栄斗④      4)島内宏明DH     

  5)茂木栄五郎⑤     5)岡島豪郎⑨     

  6)鈴木大地③      6)茂木栄五郎⑤      

  7)田中和基⑨      7)渡邊佳明⑦      

  8)小郷裕哉DH     8)辰巳涼介⑧

  9)太田 光②      9)太田 光②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…太田 光 炭谷銀仁朗 ※安田悠馬(田中貴也)

 内野手…小深田大翔 浅村栄斗 茂木栄五郎 鈴木大地 川島慶三 山崎 剛 

       ※ギッテンス 渡邊佳明(黒川史陽 銀次 村林一輝)

 外野手…※西川遥輝 辰巳涼介 ※マルモレホス 岡島豪郎 島内宏明

    (田中和基 武藤敦貴 小郷裕哉 和田 恋)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川遥輝⑦      捕 手)太田 光(炭谷銀仁朗) 

  2)鈴木大地⑤      一塁手)ギッテンス

  3)浅村栄斗④         二塁手)浅村栄斗

  4)ギッテンス③        三塁手鈴木大地

  5)島内宏明DH        遊撃手)茂木栄五郎(山﨑 剛)

  6)マルモレホス⑨    左翼手西川遥輝(渡邊佳明)

  7)茂木栄五郎⑥     中堅手)辰巳涼介(田中和基)

  8)辰巳涼介⑧      右翼手)マルモレホス(岡島豪郎

  9)太田 光②         D H)島内宏明       

 今季の打線のカギを握るのは、新加入した3選手だ。課題だった①リードオフマンの不在、②機動力不足、③長距離砲の補強、④右打者の主力打者不足をすべて埋めた。日本ハムから移籍した西川遥輝智弁和歌山高~10年②)は、昨季こそ打率.233と不振だったが、それでも出塁率は.384、24盗塁で自身4度目の盗塁王になり、①②の課題を解消する良い補強になった。

 新外国人のギッテンスは、③④の課題を埋める右打ちのスラッガー。メジャーでもトッププロスペクト(有望株)に挙げられている逸材で、日本でその才能を開花させる4番候補。左打ちのマルモレホスも3Aで結果を残した実力者で、昨季は打率.338、出塁率は4割を超え、26本塁打を放っている。

 また、ソフトバンク自由契約になった川島慶三九州国際大~05年日③)の加入も地味だが的確で、左キラーとも言われる勝負強い打撃は、課題の④を埋め、代打の切り札で川島が控えているのは、相手ベンチからすれば嫌だろう。

 予想した打順を見ても、西川が1番、2番で小技も使え、パンチ力もある鈴木大と続き、浅村、ギッテンス、島内が並ぶ中軸は脅威だ。特に、勝負強い島内が5番に座っている打線は怖い。下位でもマルモレホスの茂木と長打力のある選手が控え、打撃が課題とは言え辰巳と太田もパンチ力はある。

 新戦力の加入で、現時点でレギュラーを確約されているのは、浅村と島内、西川とギッテンスくらいで、守備位置が被る鈴木大や茂木、岡島など実績のある選手も競争下に置かれ選手層は厚くなった。

 捕手は若手の太田とベテランの炭谷の争いに、規格外の長打力で注目を集めるルーキーの安田悠馬(愛知大~21年②)が加わってきた。ただ、打線が機能すれば捕手は守備力重視で良く、やはり太田と炭谷のどちらかがマスクを被ると思う。

 内野は浅村は決まりで、鈴木大は一塁をギッテンスと安田、三塁は勝負強い渡邊佳明(明大~18年⑥)と状況次第では茂木と争うことになる。その茂木も、遊撃は山﨑と小深田がしのぎを削っており、元々本職は三塁でレギュラーは確約されていない。

 外野も同様で、左翼は島内と西川を指名打者と併用する形になり、右翼はマルモレホスと岡島が定位置を争い、ギッテンスが外野に回ることも想定される。ゴールデングラブ賞を獲得した辰巳も、打てなければ田中和や小郷、チームで貴重な右打ちの和田恋(高知高~13年巨②)が控え、うかうかしてはいられない。

 心配の種は守備力で、打力優先の打順だとリスクは小さくない。茂木は遊撃よりも三塁のほうが良く、守備重視なら山﨑を起用したほうが良い。肩の弱い西川は左翼しか守れず、右翼も本来であれば強肩の岡島がベストで、石井監督がどうタクトを揮うか注目したい。

オフの本気補強で今年も優勝候補の一角!戦力は整った石井監督の采配に注目

 注目の選手は、2年続けてだが瀧中を挙げたい。昨季は先発ローテーションの最後の一枠に滑り込んだが、終わってみれば2桁勝利を上げ、後半戦は結構大事な試合を任されていた。1年目は8試合で2勝、45回を投げて防御率3.40が、昨季は103回を投げ防御率3.21で10勝と安定感が抜群だった。今季、規定投球回数をクリアするようなことがあれば最多勝も狙えると思う。

 野手は山﨑で、昨季に後半戦の活躍が頭から離れない。とにかく攻守にアグレッシブで、何がなんでも塁に出ようとする打撃スタイルはリードオフマン向きで、私はロッテファンだが、こういう選手は相手ながら応援してしまう。今季は西川が加入したが、個人的には山﨑は1番を打って、西川が2番に回り、下位に鈴木大がいる打線のほうが面白いと思うので、是非レギュラーを獲得して欲しい。

 最後に、今季のパ・リーグはロッテと楽天ソフトバンクのいずれかを優勝と予想している。2~3年後を考えると、かなり不安な面が多いが、今季に限って言えば打線が復活し、先発陣で故障離脱がなければ十分に優勝を狙える戦力になっている。

 若手を起用しながら、主力を適度に休ませ、得意の前半戦でスタートダッシュを図り、後半戦で主力がフル稼働してラストスパートをかけるような展開が理想で、2年目を迎える石井監督の采配がポイントになる。