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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年セ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 選手の現況は11/14時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

東京ヤクルトスワローズ(61名+5名)

 2年連続最下位から、誰もが予想だにしなかった快進撃を見せ、遂にリーグ制覇を果たした。奥川恭伸(19年/①)や清水昇(18年/①)、村上宗隆(17年/①)の投打の若い柱に、青木宣親(03年/④)や川端慎吾(05年/③)のベテランが加わり、そこにサンタナやオスナの外国人選手の力が融合した理想的な優勝になった。

 リーグ優勝の栄冠のなか、長年チームを支えた雄平と、阪神戦力外から独立リーグを経てNPBに復帰した歳内が引退を決め、雄平は楽天のコーチに就任した。また、18年に54試合登板した中尾が戦力外になり、蔵本は4年間の在籍で話題になったのは、高津監督に背番号を譲っただけと、何とも寂しいプロ生活になった。

 支配下選手61名に、今ドラフト指名の5名(投手③/内野手①/外野手①)を加えても66名で、バンデンハークとケリンが退団しても外国人選手は5名おり、新たな戦力外通告はあったとしてもあと1~2名程度で、ほぼ終了したと言える。

 現在、日本シリーズに向け準備の真っ最中だが、連覇を狙うには投手陣の底上げと、ベテラン頼みの外野陣の強化を図りたい。リリーフ投手は幾らいても良く、同一リーグでは今村(広島)は実績十分、金田(オリックス)や石崎(ロッテ)はともにセ・リーグでの経験がある。枚数が少なく強化が必要な左投手では、榎田(西武)は先発としてもう一花咲かせそうだし、リリーフでは小川(西武)や川原(ソフトバンク)等を獲得しても良いと思う。

 また、楽天を戦力外になった今野龍太(13年/楽⑨)や近藤弘樹(17年/楽①)を復活させた実績から、鈴木優(オリックス)や多和田(西武)などは育成で契約しても面白いと思う。

 外野手では左打者が少ない状況から乙坂(DeNA)や釜元(ソフトバンク)は狙い目だと思う。今年は俊足の左打ちの丸山を獲得しているが、釜元は守備固めや代走要員以外にも戦力的にプラスになる。

 投 手…中尾 輝(16年/④)歳内宏明(11年/神②)蔵本治孝(18年/③)

 捕 手…大村 孟(16年/育①)

 内野手…なし

 外野手…雄平(02年/①)

 外国人…バンデンハーク(投手)ケリン(投手)

【予想背番号】

 ①山下/15 ②丸山/36 ③柴田/41 ④小森/52 ⑤竹山/59

 

阪神タイガース(62名+7名)

 前半戦はルーキー佐藤輝明(20年/①)の活躍がチームをけん引し、首位を独走したが、佐藤が調子を落とすと同時にチームも失速し、最後はヤクルトに競り負け優勝を逃した。再度、ヤクルトへの挑戦権を賭けて臨んだCSも、課題の守備からあっけなく敗れてしまった。成績こそ2年連続2位をキープしたが、守備強化やFA対応、外国人選手の再編成など課題の多いオフになる。

 平均年齢が高いチームにあって、引き続き世代交代が進んでいる。投手では岩田と桑原、中田、野手では俊介が引退を決め、中田は古巣ソフトバンクでコーチに就任した。一昨年の鳥谷に始まり、昨年の能見と後味の良くないベテランの退団劇が続いたが、さすがに今年は上手く根回しできたのか、すんなりと引退が決まった。

 このほか、ともに育成選手だが、鈴木は2年連続で戦力外になり、静岡大から初のプロ野球選手になった奥山も支配下を勝ち取ることができず、2年でチームを去ることになった。

 支配下選手は62名で、ドラフト指名の7名(投手④/捕手①/外野手②)を加えると余裕は1名しかいない。ただ、8名いる外国人選手のなかエドワーズとサンズの退団が決定的で、クローザーのスアレスもMLB移籍の可能性がある。また、正捕手の梅野隆太郎(13年/④)のFA行使が未定で、動向を見据えたうえで、あと2~3名程度の新たな戦力外通告の可能性は高いと思う。

 補強ポイントは野手の底上げで、特に守備の巧い内野手。また、梅野流出に備え捕手の補強も必要だ。特に、後半戦の梅野の起用法は、退団を前提にしたような扱いで残念な印象を受けた。内野手では名手の藤田(楽天)がおり、間違いなく若手の手本になるだろう。また、所属球団との交渉次第だが、超人的な守備のエチェバリア(ロッテ)などはいまの阪神に欲しい選手だと思う。捕手ではベテランの鶴岡(日本ハム)がおり、鶴岡の経験は何事にも代え難く、控え捕手として居るだけで頼りになる。 

 投 手…伊藤和雄(11年/④)石井将希(17年/育①)岩田 稔(05年/希)

       中田賢一(04年/中②)桑原謙太郎(07年/横③) ※鈴木翔太(13年/中①)

     ※藤谷洸介(16年/⑧)

 捕 手…なし

 内野手…荒木郁也(10年/⑤)

 外野手…俊介(09年/⑤)※奥山晧太(19年/育2)

【予想背番号】

 ①森木/22 ②鈴木/21 ③桐敷/35 ④前川/58 ⑤岡留/52 ⑥豊田/60

 ⑦中川/68

 

読売ジャイアンツ(66名+7名)

 獲得したFA選手が不発に終わり、新外国人の野手はすべて途中退団するなか、前半戦は優勝争いを繰り広げていた。ただ、中田翔(07年/日①)を獲得したあたりから何となく雲行きが怪しくなり、中4日ローテやマシンガン継投など投手を酷使した結果、終盤はバテ気味になり、まさかの借金1でシーズンを終えた。チームの不協和音が聞こえる中、得意の大補強に動くか、オフのチーム編成に注目が集まる。

 現在、12球団で唯一この時点で支配下選手枠をオーバーしている。ともにFA移籍組の大竹と野上、野手最年長の亀井が引退を決めたが、戦力外通告は松井のみ。8名いる外国人選手を仮に6名としても超過しており、昨年スタート時の63名を基準とすると、あと8名は新たな戦力外通告が予想され、選手は戦々恐々だろう。

 今ドラフトでは7名(投手⑥/外野手①)指名したが、投手に偏った指名になり、谷岡、与那原、堀田、黒田、山下は引き続き育成契約になる。

 今年も例年通り、FA選手の獲得に動く可能性が高い。投手では九里(広島)や又吉(中日)、野手では梅野(阪神)の獲得が取りざたされている。外国人選手では実績のある選手を基本に、レアード(ロッテ)やグラシアル(ソフトバンク)あたりにも興味を示しているようだ。

 ただ、レアードを例にとると、レアードは一塁と三塁が本職で、一塁には来年大城卓三(17年/③)のコンバートが予定され、三塁には岡本和真(14年/①)がいる。坂本勇人(06年/①)も年齢的にはそろそろ三塁コンバートがベストで、レアードの名前が出た瞬間にどうやって起用するのか分からなかった。外野のグラシアルやオースティン(DeNA)の獲得を狙うなら理解もするが…。

 投手陣の補強、貧打の解消、若手の伸び悩み(自滅型だが…)など、補強ポイントは多々あるが、FAが基本路線なので戦力外選手の獲得は積極的ではないだろう。一方では今年、FAには参戦しない記事もあったが、果たしてどうなることか…。

 投 手…大竹 寛(01年/広①)野上亮磨(08年/西②)※山川和大(16年/育③)

       ※田中優大(17年/育④)※平井快青(18年/育②)※谷岡竜平(16年/③)

       ※与那原大剛(15年/③)※堀田賢慎(19年/①)

 捕 手…なし

 内野手…松井義弥(18年/⑤)※黒田響生(18年/育④)

 外野手…亀井善行(04年/④)※加藤壮太(19年/育②)※山下航汰(18年/育①)

 外国人…テームズ(外野手)スモーク(外野手)

【予想背番号】

 ①翁田/12 ②山田/28 ③赤星/23 ④石田/46 ⑤岡田/57 ⑥代木/61

 ⑦花田/65

 

広島東洋カープ(59名+7名)

 終盤になってようやく投打が噛み合い、一時はAクラスに迫ったが、一歩及ばず3連覇のあとは、よもやよもやの3年連続のBクラスになった。主力が結果を残し、若手の台頭も目立ったがチームの成績アップには繋がらず、チームの総合力をどう上げていくかが来シーズンの課題になる。

 今年は12球団で唯一、引退選手がいなかった。そのなかで驚きだったのは、投手では1年目で20歳の行木、2年目20歳の鈴木寛、野手でも4年目の21歳永井を戦力外にした。行木は育成契約でチームに残るが、鈴木寛と永井は退団になる。鈴木寛と永井は、広島のスカウト陣が高く評価していた選手で、名前を聞いたときは驚いた。

 現在、支配下選手は59名だが、新外国人選手で既にターリーとアンダーソンの両投手、野手でマクブルームを獲得しており、今ドラフトの7名(投手④/捕手①/外野手②)を加えると69名と枠に余裕はない。

 ただ、大瀬良大地(13年/①)と九里亜蓮(13年/②)が揃ってFAを取得し、主砲の鈴木誠也(12年/②)のMLB移籍はほぼ決定的で、残る4人の外国人選手の去就もある。多くてもあと1~2名程度の新たな戦力外通告はあるかも知れない。最悪、10勝の大瀬良、13勝の九里、首位打者で38本塁打、88打点の鈴木誠が抜けると、厳しいなんてものじゃなく、他球団の戦力外選手やトレードを活用していくことになる。

 課題の投手陣は、先発なら実績のある榎田や吉川(ともに西武)、先発・リリーフともにできる牧田(楽天)や村田(日本ハム)、リリーフでは吉田一(オリックス)や小川(西武)など経験のある選手が必要だと思う。特に吉川は地元の広陵高出身で、まだ33歳。老け込む年齢ではないので、復活する姿を見てみたい。

 野手は鈴木誠の代わりになるような選手は当然のことながらいない。鈴木誠の移籍見越して今年、社会人外野手(いずれも右打ち)を2名獲得しており、敢えて補強する必要はないだろう。

 投 手…今村 猛(09年/①)鈴木寛人(19年/③)中村恭平(10年/②)

       行木 俊(20年/⑤)※畝 章真(19年/育③)※佐々木健(17年/育③)

 捕 手…なし

 内野手…桒原 樹(14年/⑤)

 外野手…高橋大樹(12年/①)永井敦士(17年/④)

 外国人…スコット(投手)ネバラスカス(投手)クロン(内野手

【予想背番号】
 ①黒原/24 ②森/16 ③中村健/25 ④田村/45 ⑤松本/52 ⑥末包/50

 ⑦高木/64

 

中日ドラゴンズ(61名+6名)

 昨年、7年振りのAクラスになり、今年は優勝候補にも挙げる声もあったが、目を覆うような貧打で再びBクラスへ転落した。新たに立浪監督を迎え、コーチ陣も刷新されたなか、新たなチーム作りが期待される。

 今年は中日の黄金期を支えた山井と藤井が引退を決めたが、驚いたのは武田の戦力外で、打率こそ1割台と低いが、守備固めや代走で93試合に出場しており、武田本人が「頭が真っ白になった」とコメントしていたが、まさしくその通りと言える。

 また、遠藤と井領も戦力外になり、落合GMのもと賛否両論があった、オール大卒・社会人で9名を指名した14年組が全員チームを去る。唯一の現役はロッテの加藤匠馬(14年/⑤)だけで、結果的には失敗だったと言える。

 支配下選手は61名で、今ドラフト指名選手6名(投手①/捕手①/内野手①/外野手③)を加え67名になる。懸念材料の一つだったビシエドが残留を決め、ロドリゲスとRマルティネスの両外国人投手も残留する。ただ、外国人選手を今年同様に6名とすると、69名となり支配下ギリギリで、あと2~3名の戦力外通告の追加が予想される。

 残る懸念材料は又吉のFA移籍で、リリーフで66試合に登板し、防御率は驚異の1.66。33ホールドを上げたリリーフエースながら、年俸はCランクで人的保障が必要ない投手で、中日にはメリットが無いだけに流失は避けたい。一方で又吉が移籍込みのFA宣言をすれば争奪戦になるだろう。

 又吉が移籍すればリリーフ投手の補強が必要で、その場合は似たタイプの吉田一(オリックス)や石崎(ロッテ)が候補になる。最大の補強ポイントは長打力のある野手だが、残念ながら候補はおらず、ここは外国人選手の補強やトレードが有効だろう。

 ロッテのレアードや井上、日本ハムの大田、ソフトバンクの上林やデスパイネオリックスのモヤの復帰や思い切って巨人の中田の獲得など、アッと言わせるような大型トレードがあるかも知れない。

 投 手…三ツ間卓也(15年/育③)山井大介(01年/⑥)※丸山泰資(16年/⑥)

 捕 手…なし

 内野手…なし

 外野手…遠藤一星(14年/⑦)井領雅貴(14年/⑥)武田健吾(12年/オ④)

       藤井淳志(05年/③)

 外国人…ロサリオ(投手)ガーバー(外野手)

【予想背番号】

 ①ブライト/4 ②鵜飼/23 ③石森/26 ④味谷/43 ⑤星野/56 ⑥福元/39

 

★横浜D℮NAベイスターズ(59名+6名)

 投打の主力選手のFA移籍、投手陣は先発中心にケガ人が続出、外国人選手の来日遅れなど、シーズン前から課題が山積で、結果として序盤の不振が尾を引いて最下位と、三浦新監督には厳しいシーズンになった。ただ、今年のヤクルトの例もあるように、考えかたを変えれば、あとは上がっていくだけで、FA取得の宮崎敏郎(12年/⑥)も残留を決め、来シーズンに向け戦力を整備していきたい。

 投手では斎藤と武藤、野手では中井が引退を決め、風張は昨年に続き無情の戦力外になった。唯一、勝又のみが育成契約になり、高校時代より評価されていた打撃を活かし野手に転向する。

 感心したのは乙坂の戦力外で、チームの規則を破り、コロナ禍の外出した件を重く見ての判断で、主力でもルールを破れば厳しい処分を課す、信賞必罰の姿勢はチーム(=組織)を運営するうえで大事だと思う。

 オースティン以外の外国人選手の残留が濃厚で、今ドラフトの新入団選手6名(投手④/内野手①/外野手①)を加えても65名と、戦力外通告は終わったと言える。ただ、山崎康晃(14年/①)が、MLB移籍も視野にしたFA移籍の可能性があり、チームの看板選手だけに今後の動向に注目したい。

 課題は投打の底上げになるが、優先事項は投手力の強化だろう。特に山崎が移籍すればリリーフ投手を優先的にを強化したい。球に力のある今村(広島)や金田(オリックス)、川原(ソフトバンク)、変則投手では牧田(楽天)や渡邊(ソフトバンク)がおり、三浦監督がどういったピースをはめるか注目していきたい。

 野手ではリーグ最少の盗塁を補うために機動力重視でいきたい。スピードのある釜元(ソフトバンク)や武田(中日)は補強ポイントに合致する。また、若いチームだけにベテランの力も必要で、藤田(楽天)の古巣への復帰や、勝負強い打撃で内野ならどこでも守れる川島(ソフトバンク)は心強い存在になると思う。

 投 手…斎藤俊介(17年/④)飯塚悟史(14年/⑦)勝又温史(18年/④)

       進藤拓也(16年/⑧)武藤祐太(10年/中③)風張 蓮(14年/ヤ②)

       笠井崇正(16年/育①)

 捕 手…なし

 内野手中井大介(07年/巨③)

 外野手…乙坂 智(11年/⑤)

 外国人…※コルデロ(投手)※デラロサ内野手

【予想背番号】※入江・牧は決定
 ① 小園 /18 ②徳山/24 ③粟飯原/33 ④三浦/28 ⑤深沢/43 ⑥梶原/58