ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年パ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 11/5で、第一次の戦力外通告の期間が終了した。そこで、退団する選手と補強ポイント選手を挙げたいと思います。

 なお、選手の現況は11/13時点のもので、選手名の横の年数は指名年度、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。 

 

オリックスバファローズ(59名+7名)

 25年振りにリーグ優勝を果たし、日本シリーズ進出も決めた。ここ数年の育成型ドラフトが功を奏し、黄金時代到来を予感される布陣になった。

 戦力外通告支配下登録10名と育成契約8名の18名で、リーグ優勝に沸くなか、リリーフ陣を支えた吉田一や金田がチームを去る。投手では榊原やファームで2番目の88イニングを投げた東、野手では2年目の勝俣など、見切りが早い印象を受けたが、故障からの復帰を期す近藤に廣澤を合わせた5選手は育成契約を打診されている。

 一方で24歳の鈴木優や3年目の荒西は退団になり、ファームではレギュラー並みの成績を残している育成の田代は、昨年に続き戦力外通告になってしまった。岡崎と育成の古長以外は、現役続行を表明しているが、今年一軍経験があったのは金田と鈴木優のみで、ともに成績は芳しくない。吉田一もファームで防御率7点台と、経験がモノを言うリリーバーとは言え成績だけを見ると厳しい。唯一、西浦が引退を決め、「特発性大腿骨頭壊死症」という難病からの復帰を目指したが叶わなかった。 

 育成だが勿体なのは佐藤優で、打率は低いが長打率が4割を超え、フェニックスリーグでも結果を残しているだけに、将来性を見越した獲得があるかも知れない。また、コロナ禍で退団したロメロも、条件さえクリア出来れば再契約しても良いと思う。

 支配下選手は59名で、今ドラフトの7名(投手③/捕手①/内野手①/外野手②)を加えても66名と、戦力外通告もほぼ終わったと言える。6名いる外国人選手はヒギンス以外は成績的に残留が微妙なラインだが、同数の新外国人で穴埋めすることになる。

 チーム防御率リーグ2位、打率もリーグ1位と、急いで補強するポイントは少ない。ただ、少ない盗塁数を補う機動力のある選手や左のリリーフ投手が欲しいところで、釜元(ソフトバンク)は俊足の外野手、左のリリーフでは川原(ソフトバンク)や小川(西武)などはフィットすると思う。また、ファームでのチーム成績が芳しくなく、選手層の底上げで育成で有望な選手を獲得しても面白い。

 投 手…金田和之(12年/神⑤)吉田一将(12年/①)荒西祐大(18年/③)

       飯田優也(12年/ソ育③)榊原 翼(15年/育②)鈴木 優(13年/⑨)

       神戸文也(15年/育③)※近藤大亮(15年/②)※東 晃平(17年/育②)

 捕 手…※稲富宏樹(17年/育①)※フェリペ(17年/育④)

 内野手…勝俣翔貴(19年/⑤)廣澤伸哉(17年/⑦)岡崎大輔(16年/③)

      ※古長 拓(20年/育⑥)

 外野手…※佐藤優悟(19年/育⑦)※田代飛翔(16年/ソ育③)※西浦颯大(17年/⑥)

 外国人…ディクソン(投手)ロメロ(外野手)

【予想背番号】

 ①椋木/15 ②野口/0 ③福永/32 ④渡部 /39 ⑤池田/64 ⑥横山/56 

    ⑦小木田/58

 

千葉ロッテマリーンズ(60名+5名)

 51年振りにマジックを点灯しながら、最後の最後で優勝を逃し、CSの善戦空しく敗れ2年連続の2位で終了した。投手は絶対的なエースが不在、打者は外国人選手頼みで、チームの総合力は高いだけに「個」の力のレベルアップが課題になる。

 献身的プレーで若手の手本となった鳥谷、腰痛から再起した高濱、今年途中加入した小窪のベテラン勢に、投手では難病と闘った南が引退を決め、ハーマンとフローレスもチームを去る。全体的に若手への世代交代を印象付けた。

 戦力外通告を見ても驚きはなく、広場恐怖症のなか奮闘した永野のほかに、石崎と宗接が現役続行を表明し、松田と昨年から育成契約の原は去就が未定だ。このなかで、石崎は今季一軍出場こそなかったが、ファームで26試合に登板して防御率1点台と結果を出しており、リリーフ陣の層を厚くしたいチームの需要は高いと思う。

 支配下選手は60名で、今年指名した5名(投手③/捕手/①内野手①)を加えて65名になった。シーズン途中の補強が上手なだけに、昨年同様3~4名ほど空けておきたいのと、ファームで最多勝を獲得した森や、フェニックスリーグで5本塁打の山本大など有望な育成選手がファームに多く、あと2~3名は戦力外通告があるかもしれない。

 FAでは、かねてよりMLB挑戦を希望していた石川歩(13年/①)は残留が濃厚だが、最大の課題は今年が契約最終年のレアードの残留交渉で、本塁打・打点ともにリーグ2位の大砲の流失は避けたい。また、守備は超一級品のエチェバリア、4試合の登板ながら防御率1点台のロメロの去就にも注目したい。

 今年の状況から課題は打線の強化とリリーフ左腕の獲得になる。シーズン途中に小窪を獲得したように、右の代打に苦労している状況のなか、勝負強く左投手キラーの川島(ソフトバンク)は適任だと思う。また、左のリリーフでは,奪三振率の高いバード(広島)、ファームで防御率1点台の渡邊(ソフトバンク)、右投手だが牧田(楽天)はともに変則投手で、千葉マリンの風を活かした投球は個人的にはハマると思う。

 投 手…石崎 剛(14年/神②)永野将司(17年/⑥)南 昌輝(10年/②)

       ※原  嵩(15年/⑤)

 捕 手…宗接唯人(16年/⑦)

 内野手…鳥谷 敬(06年/神自)高濱卓也(07年/神①)松田 進(18年/⑦)

       小窪哲也(07年/広③)

 外野手…清田育宏(09年/④)

 外国人…ハーマン(投手)フローレス(投手)※アコスタ(投手)

【予想背番号】

 ①松川/10 ②池田/33 ③廣畑/30 ④秋山/45 ⑤八木/36

 

東北楽天ゴールデンイーグルス(59名+7名)

 今シーズンは田中将大(06年/①)の電撃復帰や、ドラフトで早川隆久(20年/①)を獲得し優勝候補にも挙げられていたが、攻守に決め手を欠き順位を1つ上げて3位で終了した。投打にベテラン頼みで若手の底上げが急務になる。

 一昨年は17名、昨年14名と2年連続でリーグ最多の戦力外通告をし、チームの刷新が進んでいる。今年は2年目の福森、ともに高卒3年目の引地と佐藤が育成選手契約になるが、支配下10名、育成選手1名がチームを去る。池田と足立、下妻が引退を決め、足立と下妻は球団スタッフになる。一方で、コーチ就任を打診された藤田は現役続行を目指し、退団が濃厚になっている。

 驚いたのは牧田の戦力外で、今季は一軍登板には恵まれなかったが、ファームでは26試合で防御率は0点台と力は衰えていない。貴重な下手投げに加え、先発・中継ぎどちらでも出来る選手なだけに、獲得を検討するチームは多いと思う。また、藤田も堅守は相変わらずで、ファームで打率.292は、本人ではないがまだできると思う。

 支配下選手は57名で、今ドラフトで7名(投手④/捕手①/外野手②)を加え、支配下は63名になった。外国人選手はブセニッツ以外の3選手が退団し、外国人選手を4~5名で仮定すると、戦力外通告はほぼ終了したと言える。FA選手の獲得は今年は消極的で、トレード等で現有戦力の底上げを図る。

 補強ポイントは、右打者の補強と若手投手の獲得で、右打者の一番の候補は阪神退団が濃厚なサンズで、広い甲子園で20本塁打は魅力的だ。また、長打力はないが俊足の釜元(ソフトバンク)は、機動力不足のチームにフィットすると思う。

 若手投手の底上げは必須の課題で、ルーキーを除けば、19~22歳の投手は内星龍(20年/⑥)しかいないなか、堀田(巨人)は狙い目だと思う。故障も回復しフェニックスリーグでも好投を見せた。現状、育成契約を前提にした自由契約選手なので、支配下で獲得を検討しても良いと思う。

 投 手…牧田和久(10年/西②)菅原 秀(16年/④)福森耀真(19年/⑤)

       引地秀一郎(18年/③)佐藤智輝(18年/⑤)池田 駿(16年/巨④)

     ※則本佳樹(18年/育②)

 捕 手…足立祐一(15年/⑥)下妻貴寛(12年/④)

 内野手…藤田一也(04年/横④)

 外野手…下水流昂(12年/広④)

 外国人…コンリー(投手)ディクソン(外野手)カスティーヨ(外野手)

【予想背番号】

 ①吉野/9 ②安田/22 ③前田/44 ④泰/46 ⑤松井/39 ⑥西垣/49 ⑦吉川/59

 

福岡ソフトバンクホークス(62名+5名)

 今年も断トツの優勝候補だったが、まさかのBクラスに沈んだシーズン。多くのケガ人が出て、ベストメンバーで臨めた時期が少ないこともあったが、かねてより懸念されていた世代交代の遅れが顕在化したことも事実だと言える。

 こういった状況のなか、長谷川と高谷、川島と長年チームを支えたベテランが戦力外になり、長谷川と高谷は引退しコーチに就任する。このほかの戦力外通告は驚きの連続で、左腕で150キロを投げる川原に、ファームで防御率1点台の変則左腕の渡邊への通告は、改めてソフトバンクの選手層の厚さを思い知らされた。野手でも、終盤に代走から守備固めに入っていた釜元も新天地でのプレーが十分に期待できる。

 支配下選手は62名、ルーキー5名(投手③/内野手①/外野手①)を加え67名と、もう少し余裕が欲しいところだが、外国人選手が7名と多めで、ここを5~6名にすれば余裕が生まれ、戦力外通告はほぼ終了したと言える。

 ただ、その外国人選手の去就が最大の課題で、投手ではMLBが強い関心を示しているマルティネスとモイネロは退団が濃厚、打者ではデスパイネとグラシアルの残留が未定で、特にグラシアルには何としてでも残留して欲しいところだろう。 

 補強ポイントは抜けた左右の代打の切り札を含めた野手が優先になる。FAでの獲得が噂されていたDeNAの宮崎は残留を決め、今後の所属球団との交渉次第になるが、阪神のマルテやサンズ、ロッテのレアードも候補になる。ただ、残念ながら外国人選手以外の候補者が見当たらず、唯一、ベテランの高谷が抜けたあとの控え捕手で、鶴岡(日本ハム)の再入団はチームのプラスになると思う。

 層の厚い投手陣は現有戦力の底上げで乗り切ることができるので、補強するなら豊富な投手陣を軸に野手とのトレードが中心になると思うが、シーズン中に家族の事情で帰国したレイとの再契約は、何とかして成立させたいところだ。また、個人的に地元九州出身の多和田(西武)を育成で獲得し、是非再起させて欲しい。

 投 手…渡邊雄大(17年/育⑥)川原弘之(09年/②)※吉住晴斗(17年/①)     

 捕 手…高谷裕亮(06年/③)

 内野手川島慶三(05年/日③)

 外野手…長谷川勇也(06年/⑤)釜元 豪(11年/育①)

 外国人…レイ(投手)アルバレス(外野手)バレンティン(外野手)

【予想背番号】

 ①風間/1 ②正木/31 ③木村/48 ④野村勇/4 ⑤大竹風/63

 

北海道日本ハムファイターズ(59名+9名)

 3年連続5位と不振が続くなか、大方の予想に反して新庄監督を新たに迎え、オフの話題を独占している日本ハム。今からどんな選手を活用し、どのような野球をするのか興味というか、楽しみが尽きない。

 チームを去るのは、ともに人気選手だったハンカチ王子こと斎藤とヒザの故障から復活を期した谷口、育成の海老原が引退する。鶴岡はコーチ専任を断り現役続行を希望し、昨年交渉で揉めた村田含め4名が退団する。

 一方で、投手では田中と長谷川、野手では樋口と難波が育成契約になる。ただ、樋口は昨年途中、長谷川は今年開幕前に支配下になったが、直ぐに育成契約に逆戻りになった。樋口と長谷川より結果が出ていない選手が多数いるなかで、この辺りに何となく育成選手への厳しい扱いを感じるのは私だけだろうか?

 支配下選手は59名で、今ドラフトで最多の9名(投手⑤/内野手④)を指名しており、既に68名いる。外国人選手ではBロドリゲスと王伯融が残留を決め、既に新外国人選手も1名も獲得した。外国人選手を今季同様5名で考えると、支配下枠は一杯で、新たな戦力外通告や複数トレードなどが考えられ、新庄監督の動向から目を離せない。

 戦力的には全体不足しているが、結果は出ていないものの打者は若手に良い選手が揃っており、投手陣の底上げが優先課題になる。ただ先発候補が少なく、若い鈴木優(オリックス)や飯塚(DeNA)、実績のある多和田(西武)などは育成などで獲得しても面白いと思う。リリーフでは経験豊富な金田(オリックス)や今村(広島)、ファームで結果を残している石崎(ロッテ)や渡邊(ソフトバンク)、先発もできる牧田(楽天)、まだ29歳と若いギャレット(西武)など補強候補は多い。

 野手は候補は少ないが、若手の多いチームのなかベテランの藤田(楽天)は心強い存在になるし、高校時代に新庄2世とも言われた武田(中日)は、それこそ新庄監督が好むプレーヤーかも知れない。

 投 手…村田 透(07年/巨①)長谷川凌汰(19年/育③)田中瑛斗(17年/③)

       斎藤佑樹(10年/①)※鈴木遼太郎(17年/⑥)

 捕 手…鶴岡慎也(02年/⑧)

 内野手…樋口龍之介(19年/育②)難波侑平(17年/④)今井順之助(16年/⑨)

 外野手…谷口雄也(10年/⑤)※海老原一佳(18年/育①)

【予想背番号】
 ①達/22 ②有薗/55 ③水野/4 ④阪口/31 ⑤畔柳/43 ⑥長谷川/46

 ⑦松浦/69 ⑧北山/58 ⑨上川畑/53

 

埼玉西武ライオンズ(53名+6名)

 所沢移転以来、42年振りの最下位に沈んだ西武。課題だった投手陣を補った強力打線が陰りを見せ、渡辺GMの「山賊打線はもう既に終わっている…」の言葉通り、この後2~3年はチーム刷新のシーズンになる。

 現役引退は3名で、昨年古巣に復帰した松坂は一軍登板のないまま引退し、駒月は球団スタッフ、4年目の21歳に綱島も引退を決め第二の人生に進む。戦力外通通告は投手に集中し、12年最多勝&MVPの吉川、故障からの復帰を目指した榎田、病気療養のため育成契約になった18年最多勝の多和田のドラ1トリオが退団する。今年それぞれ肘の手術をした伊藤と斎藤大、粟津は育成契約で復活を目指す。

 今回の戦力外に大きな驚きはなく、私の同僚で西武の大ファンがおり、戦力外を予想したがほぼ合っていた。外国人選手5名もすべて退団し、支配下選手は53名で、今回満点ドラフトだった新入団選手(投手④/捕手①/内野手①)と、今年の同じ数の外国人選手を合わせても64名と戦力外通告は終了したと言える。

 FAの岡田雅利(13年/⑥)は残留が基本路線で、今年もFA選手の流失は無さそうだ。補強ポイントはやはり投手になるが、来年ともに40歳を迎える中村剛也(01年/②)と栗山巧(01年/④)の後釜も必要になる。

 他球団の戦力外を見ても投手では先発タイプは少なく、ここはトレードや外国人投手の補強が現実的だ。リリーフでは経験豊富な金田や吉田一(ともにオリックス)、今村(広島)、左のリリーバーの川原と渡邊(ともにソフトバンク)は投手陣の底上げになると思う。

 野手ではルーキーの古賀を入れても6名しかいない捕手で宗接(ロッテ)、戦力外通告の多かった外野手では、釜元(ソフトバンク)や武田(中日)、乙坂(DeNA)など機動力が使える選手がおり、獲得しても面白いと思う。最後に松坂が復帰したように、牧田(楽天)の獲得を期待しているのは私だけだろうか。

 投 手…伊藤 翔(17年/③)吉川光夫(06年/日①)中塚駿太(16年/②)

       斎藤大将(17年/①)粟津凱士(18年/④)榎田大樹(10年/神①)

       小川龍也(09年/中②)松坂大輔(97年/①)※多和田真三郎(15年/①)

     ※大窪士夢(18年/育②)

 捕 手…駒月仁人(11年/③)※中熊大智(18年/育③)

 内野手綱島龍生(17年/⑥)

 外野手…なし

 外国人…ギャレット(投手)ニール(投手)ダーモディ(投手)メヒア(内野手

     スパンジェンバーグ(内野手

【予想背番号】

 ①隅田/18  ②佐藤/16 ③古賀/22 ④羽田/43 ⑤黒田/57 ⑥中山/50