ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆巨人~若手の台頭が不足するなか、投打の世代交代に向け今年も将来性重視か

●投打に昨年より成績は後退…3連覇に向けチーム状態は上がってくるか

 2年連続で日本シリーズ4連敗の雪辱を果たすためのシーズンだったが、なかなか首位・阪神を掴まえることができない。何といってもチーム成績が、昨年と比較して軒並み後退している。チーム防御率は1位→4位、チーム打率は3位→5位と、本塁打以外はいずれも下回っている。打線は本塁打頼み、投手陣は現有戦力を何とかやり繰りしているのが実情だと思う。

 打撃陣で規定打席をクリアしているのは、坂本勇人光星学院高~06年①)と本塁打・打点トップの岡本和真(智弁学園高~14年①)2名しかおらず、さすがに2名はリーグ最少。今年は三塁と遊撃以外、なかなかレギュラーが固まらない。丸佳浩(千葉経大高~07年広③)と大城卓三(NTT西日本~17年③)、ウィーラーと松原聖弥(明星大~16年育⑤)が10本塁打を放っているが、丸の不振は想定外だったと思う。

 また、期待の新入団選手が機能せず、FA加入の梶谷隆幸(開星高~06年横③)は懸念されていた故障壁が的中し、今年もケガで離脱。新外国人選手もスモークはコロナ禍を理由に、テームズはケガで退団してしまっている。それが理由ではないが、中田翔大阪桐蔭高~07年日①)を電撃トレードで獲得し、打線のテコ入れを図ったが効果は出ていない。

 投手陣はエース菅野智之東海大~12年①)が、不調でローテーションを外れる機会が多く、14試合で5勝と勝ち星も伸びていない。3年目の戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)と高橋優貴(八戸学院大~18年①)が規定投球回数をクリアし、高橋は既に2桁勝利で先発投手陣を救う活躍を見せている。

 救援陣は言葉は悪いが綱渡り状態で、クローザーは序盤はデラロサ、その後ビエイラが務め16セーブを挙げたが、ケガで離脱している。中継ぎの柱である中川晧太(東海大~15年⑦)をはじめ、実に9投手がセーブポイントを上げており、鍵谷陽平(中大~12年日③)に高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、畠世周(近大~16年②)が勝ちゲームを担っているが、勝ちパターンは定まっていない。

【9/20現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 116試合 55勝45敗16分③

 防御率…3.64④(3.34①)打率….247⑤(.255③)

 本塁打…147①(135①)盗塁62③(80①)

 得点…467②(532①)失点…447③(421①)

 

●若手とベテランの年齢バランスは悪くないが、投打に物足りない若手の台頭

 昨年は阪神の佐藤を入札するも、クジ運の悪さは変わらず、遂に入札の抽選は10連敗になってしまった。7名指名したうち大学生4名、社会人1名、高校生2名と見た目は補強型のドラフトと言える。

 ただ、1位の平内龍太(亜大~20年①)は、故障明けで昨秋のリーグ戦で復帰し、山崎伊織(東海大~20年②)も肘の手術でリーグ戦での登板機会はなく、2人とも将来性を見越しての指名で、18年から3年続けて育成型のドラフトを展開している。

 ここ5年のドラフトは、16年は吉川尚輝(中京学院大~16年①)に畠、大江龍聖(二松学舎大高~16年⑥)、17年も大城と若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)が主力に成長している。育成型にシフトした18年も高橋と戸郷が揃って入団しており、ドラフトはまずまず成功と言える。

 ただ、鍬原拓也(中大~17年①)と堀田賢伸(青森山田高~19年①)は、故障で治療に入ると直ぐに育成契約になり、3名がトレード、2名が退団しており、順位や年数に関係なくドライなチーム運営を行っている。

 一方で、巨人で気になるのはFA選手の多さだろう。MLBから復帰した山口俊(柳ケ浦高~05年横①)を含め現在7名。FAは制度なので、活用することに何も異論はないが、12球団で最多の育成選手を抱えるチームにあって、この状況下で育成から這い上がるのは容易ではない。老婆心ながら、若手選手のモチベーションをどう保っているのか心配になってしまう。

 今年は佐藤(阪神)や早川(楽天)のような目玉はいないが、将来のエース候補となる高校生投手が豊富で、今年も重複覚悟でチームの顔となる選手を獲得したい。また、岡本以外に若手のレギュラーが不在で、投手同様に将来の主軸候補も抑えておきたい。

【巨人の補強ポイント】 

 投 手…将来のあるエース候補、即戦力の先発とリリーフ

 捕 手…大学生

 内野手…二遊間を守れる主軸候補(高校生と大学生)

 外野手…将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト 

 

☆投手~将来のあるエース候補、即戦力の先発とリリーフ

 現在のローテーションは、菅野と高橋、戸郷、メルセデスに途中加入した山口で構成され、前半は今村信貴(太成学院高~11年②)が好投した。チーム防御率に課題はあるが、菅野と山口ともにまだ32歳と、先発をやり繰りできない状況ではなく、現状で大きな問題はない。

 リリーフ陣では、鍵谷が30歳を超えたが、中川や高梨は20代後半で、ファームでは平内が抑えを務めている。畠と平内を今後もリリーフで起用するかしないかの判断はあるが、若い選手が多く強固なリリーフ陣になる可能性を秘めている。

 ただ、ファームは寂しい…。先発ローテの中心はFA加入の井納翔一(NTT東日本~12年D③)で、あとは横川凱(大阪桐蔭高~18年④)と戸田懐生(四国IL徳島~20年⑦)の登板回数が多くなっているが、若手で今ひとつ飛びぬけた選手が見当たらず、投手陣全体の底上げは必要だ。

 今年は、巨人十八番の右のエース候補が揃っている。現状、最もバランスの良い小園健太(市和歌山高)は早い段階での一軍デビューも夢ではない。森木大智(高知高)風間球打(明桜高)畔柳享丞(中京大中京高)は素材型で、じっくり育てて3~4年後エースとして活躍が期待できる逸材。大学生では左腕の山下輝(法大)も1位候補で、山下は先発もリリーフも適性があり、現有戦力のプラスになる。

 このほかの上位候補では、ポテンシャルは1位クラスの達孝太(天理高)松浦慶斗(大阪桐蔭高)。大学生ではタフネス右腕の三浦銀二、評価上昇中の隅田知一郎(西日本工大は先発左腕、鈴木勇斗(創価大)は、山下と同じくマルチに役割をこなせる。社会人ではともに先発タイプの廣畑敦也(三菱自動車倉敷)山田龍聖(JR東日本への評価が高い。また隠れた逸材で、最速149キロの大型右腕の篠原颯斗(池田高)の驚きの上位指名があるかもしれない。

 将来の主力候補では、地元の東京に逸材が揃っている。190センチの大型左腕の羽田慎之介(八王子高)、甲子園で活躍した秋山正雲(二松学舎大高)、ともに右の本格派の市川祐(関東一高床枝魁斗(修徳高)など多士済々だ。このほか、甲子園でもゲームメーク能力の高さを証明した花田侑樹(広島新庄高)、ともに長身右腕の高須大雅(静岡高)井崎燦志郎(福岡高)サイドスロー左腕の井上透摩(金沢龍谷高)をリストアップしている。

 大学生・社会人では、いずれも最速150キロを超える右の本格派で、翁田大勢(関西国際大)権田琉成(明星大)山崎凪(中央学院大古田島成龍中央学院大はともに先発候補、北山亘基(京産大古屋敷匠真(法大)は先発・リリーフともに適性があり、岡留英貴(亜大)は変則右腕でリリーフ向きだ。横山楓(セガサミー奪三振能力が高く、吉村貢司郎(東芝は変化球のレベルが高く、ともに上位指名の可能性もある。

☆捕手~大学生 ※支配下人数少ない

 捕手は大城がレギュラー務め、岸田行倫(大阪ガス~17年②)と小林誠司日本生命~13年①)が控えだが、現状人数は6名しかいない。小林もベテランの域に差し掛かっているなかで、よく炭谷(楽天)をシーズン途中に放出したものだと思う。

 大城の打撃は素晴らしく、打てる捕手として大成してくれるのが一番だが、現状を見ると野手に専念させても良いと思う。ただ、小林は打撃に課題があり、岸田も一軍での経験が不足しており、年齢バランスは詰まっているが即戦力で大学生を獲得したい。

 一番の候補は古賀悠斗(中大)で、二塁送球1秒8の強肩で打撃も良い。久保田拓真(関大)も打撃面で成長が著しい。岩本久重(早大福永奨(国学院大)は守備型の捕手だが、やはり今年は打てる捕手を獲得したい。

 将来を見据えて高校生指名も当然アリだ。ともに高校通算30本塁打以上のの松川虎生(市和歌山高)高木翔斗(県岐阜商高)は、強肩強打をリストアップしており、松川は出番が早いかもしれない。

内野手~二遊間を守れる主軸候補(高校生と大学生)

 坂本と岡本が不動のレギュラーだが、一塁は代わる代わるの起用で、長年課題だった二塁にはようやく吉川がハマりかけたが、課題の故障癖を改善できず未だに固定できていない。

 私は将来的には、一塁で岡本を起用し、坂本を三塁にコンバートしたほうが良いと思っている。坂本も33歳になり、負担の大きい遊撃から三塁に回したほうが選手寿命も延びる。そうなるとやはり二遊間の補強が必要になり、二塁は吉川と若林がいるが、遊撃は坂本の後継者候補が現段階では廣岡大志(智弁学園高~15年ヤ②)しかおらず、遊撃を優先して獲得したい。

 内野手で一番の高評価は阪口楽(岐阜一高)で、広角に長打を放つ将来のクリーンアップ候補で1位指名もある。補強ポイントの遊撃でピックアップすると、粟飯原龍之介(東京学館高)は、走攻守三拍子揃った一番打者でパンチ力もある大型遊撃手。川口翔大(聖カタリナ高)は、4番を打つチームの中心選手だ。

 大学生では、野口智哉(関大)は広角に打ち分けるヒットメーカーで、俊足で守備力も高い。社会人では、大内信之介(JPアセット証券)は野口と同じ俊足巧打タイプで二遊間を守れる。中川智裕(セガサミーは右打ちのスラッガーで、守備走塁のレベルも高い。

☆外野手~将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト

 外野は丸が復調し、梶谷も故障が無ければレギュラーはひとまず安泰と言え、松原と合わせて陣容は揃っている。ただ、内野と異なるのが高齢化の心配で、梶谷33歳、丸は32歳、亀井善行(中大~04年④)は来年40歳を迎える。亀井が若手の台頭が無いことを嘆いていたように、世代交代を進めていかなくてはならない。

 また、右打者が外国人のウィーラーとハイネマンと合わせても4名しかおらず、出来れば右打ちの選手を獲得したい。加えてチームの顔になり得る中軸候補は左右関係なく獲得したい。

 中軸候補では、正木智也(慶大)は右の長距離砲で、今年のドラフトの目玉の一人でスター性も兼ね備え、補強ポイントに合致する。甲子園で活躍した徳丸天晴(智弁和歌山高)前川右京(智弁学園高)は、知名度も抜群で将来の中軸を期待できる。吉野創士(昌平高)と内野でも紹介した阪口は外野も守れ、ともに広角に長打を打てるスラッガー福本綺良(明石商高藤井健平(NTT西日本)リードオフマン候補で、福本はパンチ力があり、藤井はバットコントロールが巧みで、ミート力が高く強肩で俊足の即戦力だ。

 

●伝統球団の看板を背負う将来のエース候補を獲得か?思い切って野手指名も

 今年の1位指名は、将来のエース候補で高校生投手を指名してくる可能性が高く、小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)のどちらかが有力候補になる。また、1位入札を避け、単独で獲得できる可能性の高い畔柳亨丞(中京大中京高)山下輝(法大)、将来の中心打者の獲得で阪口楽(岐阜一高)正木智也(慶大)へシフトしても面白い。阪口獲得となると、14年の岡本以来の高校生野手の1位指名になる。

【指名シミュレーション】 

1位~小園 健太(市和歌山高)

 …最速152キロの直球に、多彩な変化球を駆使し完成度の高い投球が魅力

2位~徳丸 天晴(智弁和歌山高・外野手)

 …名門校で1年生から4番を務めた。遠くに飛ばす力は抜群で三塁も守れる

3位~中川 智裕セガサミー内野手

 …長身ながら軽快な守備と強肩の大型遊撃手で、逆方向にも長打が打てる

4位~篠原 颯斗(池田高・投手)

 …最速148キロの右の本格派で、球速はまだまだ伸び、変化球の精度も高い

5位~田 大勢(関西国際大・投手)

 …スリークオーターから150キロを投げ、馬力だけではなく柔軟性もある

6位~藤井 健平(NTT西日本・外野手)

 …バットコントロールに長け、ミート力のあるヒットメーカーで足も速い

7位~久保田拓真(関大・捕手

 …捕手歴は高2からと短いが着実に成長。チャンスに強い打撃で長打力もある