ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆楽天~投打にタレントは揃っているが、成績はもう一歩…今年は将来のエースを獲得したい

●リーグ随一の先発陣に野手はレギュラー確立するも、優勝は黄色信号

 昨年オフにチームのレジェンドともいえる田中将大駒大苫小牧高~06年①)が復帰し、ドラフトでは4球団競合の末、即戦力左腕の早川隆久(早大~20年①)を獲得した。下馬評ではソフトバンクに次いで優勝候補に挙げられていたが、首位から5ゲーム差と優勝に黄色信号が灯っている。

 今年の楽天を簡単に言えば、投手陣は改善されたが、強力打線が影を潜め、今年は守りのチームになっている。18年期中の梨田昌孝監督の休養を皮切りに、直近5年間で監督は4人目。毎年、FA選手獲得など、他チームが羨むような補強をしながら、今ひとつチームカラーが定まらないのは、こういったことが要因かも知れない。

 改善した投手陣の先発陣は、ビッグネームが名を連ねる。田中将をはじめ、則本昂大三重中京大~12年②)に岸孝之東北学院大~06年西希)、涌井秀章(横浜高~04年①)に早川が加わった先発陣はリーグ随一だ。

 リリーフ陣では、24セーブのクローザー松井裕樹桐光学園高~13年①)の故障離脱は大きいが、酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)に安楽智大済美高~14年①)、宋家豪が勝ちパターンを担い、高いホールドポイントを上げている。

 影を潜めた強力打線の最大の要因は、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)の不振だろう。打率は.280と変わらないが、昨年、32本塁打、104打点の選手が、今年は13本塁打、52打点とポイントゲッターになれていない。岡島豪郎(白鷗大~11年④)が3割を打ち、4番の島内宏明(明大~11年⑥)が打点王で勝負強さを見せているが、外国人選手が揃って不振のなか、浅村の不振の影響は大きい。

 鈴木大地東洋大~11年ロ③)に茂木栄五郎(早大~15年③)、小深田大翔(大阪ガス~19年①)に辰巳涼介(立命大~18年①)と、リーグ最多の7選手が規定打席に達しているが、小深田と辰巳はともに2割台前半で、セールスポイントの機動力も2人合わせても11盗塁と、期待される働きは出来ていない。

【9/18現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 114試合 52勝49敗13分③

 防御率…3.54③(4.19⑤)打率….246④(.258①)

 本塁打…89⑤(112②)盗塁41⑥(67⑥)

 得点…435④(557①)失点…420③(522④)

 

●毎年、主戦になる選手を獲得しているが、反面、見切りも早い…

 昨年は早川を獲得でき、これだけでドラフトは大成功と言える。その早川は18試合で8勝を上げ、現時点で新人王には届かないものの、十分な活躍を見せている。上位4名を大学生・社会人投手、下位で高校生の投手と野手を獲得したのは、昨年の成績から投手力を強化する戦略は理解できる。

 ここ5年のドラフトは、16年は投手で森原康平(新日鉄住金広畑~20年④)に高梨雄平(JX-ENEOS~20年⑨)、西口直人(甲賀健康医療専門学校~20年⑩)、野手では田中和基(立大~20年③)を獲得したの当たり年だった。ただ、今年は森原と田中和が不振、高梨は既に巨人に移籍しており、やや輝きも鈍ってしまっている。

 以降は17年の山崎剛(国学院大~17年③)、18年は辰巳に太田光(大商大~18年②)、渡邊佳明(明大~18年⑥)、19年は小深田と瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿~19年⑥)と、毎年コンスタントに主力選手を獲得しており、ドラフトの慧眼には目を見張るものがある。

 一方で、見切りも早い。近藤弘樹(岡山商大~17年①)は3年で戦力外でヤクルトへ移籍、西巻賢二(仙台育英高~17年⑥)は2年で育成契約を断りロッテへ移籍し、直近5年で7名の選手がチームを去り、4名の選手が育成契約(2人は再支配下)になっており、育成に辛抱に足りない気もする。 

 また、高校生の育成は正直上手くない。投手の主力となると14年の安楽まで遡るが、安楽も期待されていたのは先発で、先発となると田中将以来出てきていない。野手も同様で、オコエ瑠偉関東一高~15年①)や黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)が出番を増やしているが、レギュラーとなると銀次(盛岡中央高~05年高③)まで遡り、打線に今ひとつ迫力が欠けているのは、こういったことが要因だと思う。 

 今年は高校生投手が豊富で、将来のエース候補を獲得したい。また、レギュラーに左打者が多く、即戦力の右打ちと将来の主軸候補も抑えておきたい。

楽天の補強ポイント】 

 投 手…将来のあるエース候補、即戦力リリーフ

 捕 手…必要なし

 内野手…右打ちの大学生

 外野手…将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト 

 

☆投手~将来のあるエース候補、即戦力リリーフ

 現在のローテーションの顔ぶれを見て心配なのは高齢化だ。岸は37歳、涌井は35歳、田中将も33歳と軒並み30代の選手でローテーションが形成されている。プロ入りが遅かった瀧中は2年目で既に27歳と、20代前半は早川しかいない。

 現在は経験も含め万全な先発陣だが、ここ2~3年で世代交代が進まないと厳しい。ファームでは釜田佳直(金沢高~11年②)と高田孝一(法大~20年②)が好投しているが、釜田も28歳で、早川に続く若手投手の奮起が求められる。

 リリーフ陣は、松井が故障で今シーズン中の復帰が難しいのは大きな痛手になった。ソフトバンクもそうだったが、「クローザー離脱→セットアッパーを転換」と簡単ではないことが見ていても理解できた。28歳の酒居、ともに25歳の安楽と西口が経験を積んでおり、リリーフ陣は若い選手が多く、今後に期待が持てる。

 ただ現在、19歳~22歳の投手は3名しかおらず、31歳以上(外国人投手を除く)は9名と最も多く、世代交代が喫緊の課題として迫ってきている。

 今年は、将来のエース候補を是が非でも獲得したい。一番の候補は地元の風間球打(明桜高)で、球速、変化球、試合での対応能力含め一級品の逸材。このほか、森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)佐藤隼輔(筑波大)を1位候補としている。いずれも重複指名が予想されるだけに、他球団との駆け引きは注目だ。このほか、畔柳享丞(中京大中京高)廣畑敦也(三菱自動車倉敷)も上位でリストアップしている。

 将来のエース候補の高校生では、伸びしろ十分の達孝太(天理高)に快足左腕の羽田慎之介(八王子高)は。ともに190センチを超える大型選手。山本大揮(九州国際大高)は、変化球を織り交ぜた安定感が評価される最速145キロの右の本格派。田中怜利ハモンド帝京五高)は高校生から投手を始めた素材型で、大化けする可能性を秘めている。高校生ではないが、17歳の最速148キロ左腕の渡辺一成(BBCスカイ)は、高校を中退しクラブチームで腕を磨き、甲子園よりプロを目標にした異色の選手で、念願の指名を待っている。

 即戦力では、隅田知一郎(西日本工大山田龍聖(JR東日本の両左腕は先発の層を厚くし、鈴木勇斗(創価大)は先発とリリーフへの適性も高く、松井以外不足している左のリリーフとしてもプラスになる。このほか徳山壮磨(早大松井友飛(金沢学院大は、ともに右の先発候補。権田琉成(明星大)は、今年になってから急成長した投手で、今年先発に転向してドラフト候補まで上り詰めた。社会人では、独特のフォームで最速154キロの鈴木大貴(TDK)にも注目している。

☆捕手~必要なし

 シーズン途中に、大ベテランの炭谷銀仁朗(平安高~05年西①)を巨人から獲得し、太田との併用になっている。打撃の良い田中貴也(山梨学院大~14年巨育③)やベテランの足立祐一(パナソニック~15年⑥)が控え、質量ともに年齢バランスも良く補強の必要はない。

 ただ、そのなかでも高校通算39本塁打松川虎生(市和歌山高)や、同じく強肩の村山亮介(幕張総合高)の高校生捕手をリストアップしている。

内野手~右打ちの大学生

 一塁に鈴木大、二塁に浅村、三塁は茂木、遊撃に小深田と4選手とも規定打席をクリアしており、レギュラーが確立している。昨年、小深田を獲得し、茂木を本来の三塁にコンバートできたのは大きい。控えでも打撃の良い山崎や渡邊、守備の上手い村林一輝(大塚高~15年⑦)、期待の若手の黒川もおり、急いで補強する必要はない。

 ただ、年齢バランスで21歳~23歳が不在で、大学生野手を獲得したい。また、左打ちの選手が多く、年齢に関係なく右打ちのスラッガーが欲しいところだ。

 大学生野手では正木智也(慶大)は右打ちのスラッガーで、一塁のほかに外野も守れる。同じく右打ちの池田来翔(国士館大)は、アベレージ型の中距離ヒッターの二塁手で、チームの補強ポイントとも合う。左打ちだが中山誠吾(白鷗大)は、長打力がウリの遊撃手で、本塁打不足の解消に繋がる。

 高校生野手の一番のお薦めは、有薗直輝(千葉学芸高)で、高校通算70本塁打の右打ちの三塁手で、ポジションは違うがポスト浅村を担える逸材。このほかに阪口楽(岐阜一高)川口翔大(聖カタリナ高)の左打ちのスラッガーをリストアップしている。

☆外野手~将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト

 外野も左翼の島内、中堅の辰巳、そして今年は岡島が右翼で規定打席をクリアしている。岡島と島内はベテランの域だが、辰巳やオコエ、田中和に小郷裕哉(立正大~18年⑦)と期待の若手が揃っており、内野手同様に急いで補強の必要はない。

 ただ、課題は全員が俊足巧打型でスラッガータイプがいない。また、19歳~23歳に外野手は、武藤敦貴(都城東高~19年④)しかおらず、今年は高校生、大学生ともに補強する必要がある。

 内野で先述したが、正木と阪口は外野も守れ、ブライト健太(上武大に鵜飼航丞(駒大)は右打ちの長距離砲で、福元悠真(大商大)は中距離打者だがパンチ力がある。梶原昂希(神奈川大)は、柳田二世の呼び声高いパワーヒッターで、それぞれチームの補強ポイントにはピッタリだ。

 高校生では、今夏の甲子園で逆風のなかバックスクリーンに本塁打を打ち込んだ田村俊介(愛工大名電高)や、甲子園で2本塁打前川右京(智弁学園高)は将来の主軸候補。吉野創士(昌平高)は、まだ体の線は細いが柔らかいリストワークで広角に長打が打て、体が出来てくれば広島の鈴木誠のような選手になれる可能性がある。このほか徳丸天晴(智弁和歌山高)前田銀治(三島南)など、スラッガータイプを確実に獲得したい。 

 

●高齢化している先発の世代交代で、将来のエース候補を獲得したい

 今年は打撃陣が不振だが、レギュラーは確立しており、1位指名は将来のエース候補を獲得してくるだろう。一番の候補は地元の風間球打(明桜高)だが、最後まで森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)、即戦力左腕の佐藤隼輔(筑波大)の指名で駆け引きが行われるだろう。

【指名シミュレーション】 

1位~畔柳 亨丞(中京大中京高・投手)

 …躍動感あふれるフォームから、最速150キロもまだまだ伸びしろ十分

2位~田村 俊介(愛工大名電高・外野手)

 …投げては最速145キロ左腕も、プロからは野手の評価が高い将来の中軸候補

3位~徳山 壮磨(早大・投手)

 …大阪桐蔭で全国制覇し、名門に進んだ投手で、経験値なら誰にも負けない

4位~松井 友飛金沢学院大・投手)

 …190センチの長身からのストレートには力があり、変化球の精度も高い

5位~山本 大揮(九州国際大・投手)

 …キレのある変化球を駆使し、完成度の高い右腕。ストレートも145キロ

6位~福元 悠真(大商大・外野手)

 …高校時代はスラッガーも、大学でアベレージタイプに変えたがパンチ力は健在

7位~渡辺 一成(BBCスカイホークス・投手

 …プロを目指し高校を中退した異色左腕。最速148キロの直球が武器