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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト予想☆ヤクルト~課題は投手力!即戦力投手を獲得したい

 コロナ禍で開幕が遅れたペナントレースも半分を過ぎ、10/26(月)に開催されるドラフト会議まであと1ケ月半になりました。そこで、セ・パ12球団の指名ポイントと指名予想をしてみたいと思います。是非、お付き合いください。

 

●チーム防御率に改善の兆しはなく、先発投手不足が顕著

 昨年同様、今年もスタートは良かった。多くの解説者がBクラス予想するなか、5月には一時期首位に立ち、暫くは2位をキープ。番狂わせを期待したファンもいたが、いつの間にか予想通りのBクラスに落ち着いてしまった。

 昨年まで二軍監督を務め、チーム状況を熟知している高津臣吾を新監督に迎えたが、さすがに現有戦力で優勝争いを期待するのは酷で、高津監督には恩師・野村克也監督のように3年目あたりで結果を求めるくらいのスタンスで臨んで欲しい。

 ただ、伸び悩んでいた清水昇(国学院大~18年①)や寺島成輝(履正社高~16年①)を中継ぎで起用したり、俊足巧打の山崎晃大朗(日大~15年⑤)をレギュラーに抜擢し、中軸の5番で起用するなど、随所で若手の起用が光る。

 また、既に12球団最多の51名の選手が一軍の試合に出場し経験を積んでいる。チャンスがあれば一軍に上がることを実践することにより、チーム内の競争を促し良い効果を与えると思う。

【9/8現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 67試合 26勝36敗5分⑥

 防御率…4.60⑥(4.78⑥)打率….252④(.244⑥)

 本塁打…59⑤(167②)盗塁39②(62⑤)

 得点281④(656②)失点340⑥(739⑥)得失点差▲59(▲83)

 

 課題は誰が見ても明らかで投手陣だ。昨年12球団最下位だったチーム防御率4.78に改善の兆しはなく、今年も防御率は12球団最低の4.60で、失点で300点を超えているのはヤクルトと広島だけだ。

 決して否定はしないが、今年の開幕投手は40歳の大ベテラン石川雅規青学大~01年自)で、今年も思うように投手が育っていなんだな…と思った不安が的中してしまった。期待の高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)の出遅れなどもあったが、既に開幕ローテーションから、石川、山田大樹(つくば秀英高~06年ソ育①)、イノーア、スアレスが外れ、特に先発を期待された新外国人のイノーアとクックのどちらも戦力にならなかったのは誤算だった。

 そのなかで小川泰弘(創価大~12年②)がノーヒットノーランも含む8勝(2敗)で健闘しているものの、高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)が2勝、期待の高橋は1勝とまさに小川の孤軍奮闘状態。何とかルーキーの吉田大喜(日体大~19年②)が登板数を増やし、初勝利も上げているが、次に出てくる気配がない。

 一方で、脆弱な先発陣を支えた中継ぎ陣は勝ちパターンが出来つつあり、清水がリーグトップの17ホールド、マクガフも11ホールドを上げ、梅野雄吾(九産大九州高~16年③)と長谷川宙輝(聖徳学園高~16年ソ育②)がともに勝ちパターンを担い、クローザーの石山泰稚ヤマハ~12年①)もリーグ2位の9セーブを上げている。

 攻撃陣は若き主砲の村上宗隆(九州学院高~17年①)が、昨年リーグ最下位だった打率が、今年は一転して首位打者争いをするなど、大打者に向けて大きく成長している。ベテランの青木宣親早大~03年④)と守備の人と思われていた新加入のエスコバーが3割を超えている。チームの中心の山田哲人履正社高~10年①)の不振が痛いが、山崎がレギュラーに定着し、昨年はケガに泣いたベテラン坂口智隆(神戸国際大高~02年近①)の復活も心強い。

 昨年、33本塁打バレンティンの移籍で長打力は落ちたが、反面、盗塁企画数がリーグ1位と機動力を駆使した攻撃のスタイルが出来つつある。

 ただ、高い平均年齢に加え、戦力が全体的に不足するなかで、補強ポイントが多く、正直1~2年でどうなるレベルではない。

【ヤクルトの補強ポイント】

 投 手…即戦力の先発投手と高校生左腕

 捕 手…ポスト中村の即戦力捕手と高校生捕手

 内野手リードオフマンを務められる即戦力野手(二塁または遊撃)右打ちの高校生

 外野手…左打の即戦力スラッガー 

 

●ドラフトよりも最優先課題は小川と山田哲の残留

☆投手~即戦力の先発投手(左右)と高校生左腕の獲得

 まず絶対に避けたいのは小川のFA移籍で、勝ち頭の小川が抜けるとチーム戦略が根底から狂ってしまう。来年41歳を迎える石川にこれ以上期待するのも酷で、小川の残留に全力を尽くすことが最優先課題になる。

 小川に次ぐ先発投手の確立が課題だが、現時点で期待できるのは高梨と高橋しかおらず、次いでルーキーの吉田喜と大西広樹(大商大~19年④)が候補になる。ファームでも先発の軸は山田大やクックで、台頭する若手が見当たらない。

 一方でリリーフ陣は清水が24歳、寺島と長谷川の両左腕が22歳、梅野は21歳で、このままリリーフで終わる選手ではないと思うが、石山もまだ32歳でリリーフ陣は何とかなりそうだ。

 今年のドラフトでは何が何でも即戦力の先発投手に行くべきで、左右に関係なく2枚は必要だ。また、左の若手投手が不足しているので高校生左腕も1人抑えておきたいところだ。

 上位では早川隆久(早大を筆頭に、森博人(日体大木澤尚文(慶大)村上頌樹(東洋大小郷賢人(東海大、社会人の伊藤優輔(三菱日立パワーシステムズを上位でリストアップしており、このなかの一人は確実に獲得したいところだ。特に早川は貴重な先発左腕、村上も先発に適性がある。

 また、藤井聖(JX-ENEOS)伊藤将司(JR東日本、評価急上昇中の岡田和馬(JR西日本山本一輝(中京大等の左腕も中位で抑えておきたい。

 当然、将来性のある中森俊介(明石商高高橋宏斗(中京大中京高)小林樹斗(智弁和歌山高)などもマークしているが、昨年、未来のエース奥川恭伸(星稜高~19年①)を獲得できているので、現状を鑑みると育成路線よりは即戦力を獲得することがベストだと思う。

 高校生指名は3位以降で良く、不足気味の左腕では高田琢登(静岡商高)がいるが、さすがに下位指名では難しく、ともに180センチを超える長身左腕の下慎之介(健大高崎高)上田洸太朗(享栄高)が候補になる。

 このほかに豆田泰志(浦和実高)嘉手納浩太(日本航空石川高)常田唯斗(飯山高)小辻鷹仁(瀬田工高)、合同練習会で評価を上げたシャピロ一郎(国学院栃木高)等も高く評価している。

☆捕手~ポスト中村の即戦力捕手と高校生捕手

 レギュラーの中村悠平福井商高~08年③)以降の2番手捕手は、ベテランの井野卓東北福祉大~05年楽大社⑦)と西田明央(北照高~10年③)が務めているが、ともに控え捕手の域を脱していない。

 22歳の古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)も抜擢されたが、打率.081で全く打てず、楽天自由契約された嶋基宏東洋大~06年楽大社③)を獲得するなど、捕手不足も深刻だ。

 年齢的には24~25歳の社会人捕手が欲しいところだが、今年は残念ながら候補者が見当たらず、即戦力では阪神が指名濃厚な榮枝裕貴(立命館大が候補になる。ただ、榮枝もどちらかというと守備型の捕手で、補強ポイントとは合わない。

 年齢的にはむしろ高校生捕手のほうが必要で、上位で確実に消えることが予想される、強肩の二俣翔一(磐田東高)、走攻守揃った古谷将也(成田高)のどちらかは確実に獲得したい。

内野手リードオフマンを務められる即戦力野手(二塁または遊撃)右打ちの高校生

 小川同様、山田哲のFA移籍を頭に入れての対応になる。村上が一人立ちし、廣岡大志(智弁学園高~15年②)と宮本丈(奈良学園大~16年⑤)がレギュラー候補が控え、西村直亨(法大~13年②)や荒木貴裕(近大~09年③)のベテランも健在だ。

 年齢的なバランスは悪くないので、山田哲移籍に備えた即戦力二塁手と、左打の多い布陣なので右打ちの高校生あたりを補強したいところだ。

 一番の候補は牧秀悟(中大)だが、投手を上位で指名した場合2位で残っていることいは考え難く、高校生指名が現実的か。そうなると一番の候補は井上朋也(花咲徳栄高)が一番手で、村上と左右強力なクリーンアップを形成することが期待できる。

 中位では小深田大地(履正社高)度会隆輝(横浜高)蔵田亮太郎(聖望学園高)と素質豊かな選手が揃っており、ヤクルトファンは是非親子二代のヤクルト・度会に期待したいだろう。ただ、井上以外は全員左打ちで、右打ちでは井上のほかに、奥村真大(龍谷大平安高)は下位でも獲得できる可能性があり、兄・奥村展征日大山形高~13年④)と兄弟でのプレーにも期待がかかり、今年のドラフトに浪漫を感じる。

☆外野手~左打の即戦力スラッガー

 青木や雄平(東北高~02年①)のベテラン頼みの布陣から、ようやく山崎がレギュラーの座を掴んでいるが、毎年期待を裏切っている塩見泰隆(JX-ENEOS~17年④)や2年目の中山翔太(法大~18年②)も出てくる気配がなく、世代交代を急ぐ必要がある。

 欲しいのはやはりスラッガーで、大学ナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)は三塁と外野を守れ補強ポイントと一致するが、間違いなく1位で消え、投手を優先するなら獲得は無理で、今年は佐藤以外のスラッガーは外野手ではいない。

 そこで候補になるのが五十幡亮太(中大)で、打力に課題はあるものの、陸上競技の経験もある超韋駄天の脚力は既に一軍クラスで、機動力を活かすチーム戦略にフィットする。五十幡も上位で消えそうだが、同じ俊足の並木秀尊(独協大は、下位でも十分に獲得のチャンスがある。

 高校生では、渡辺翔大(昌平高)が補強ポイントに合致している。レベルの高い埼玉で高校通算46本塁打の左打ちスラッガーで、しかも俊足で将来の主軸になる可能性が十分にある。

 

●1位予想は早大の左腕エース・早川!今年は育成よりも即戦力を上位で獲りたい

 今年は早川隆久(早大・投手)の入札で良いと思う。間違いなく競合するが、補強ポイントの一番合致する。外れ1位でも今年は即戦力に行くべきで、伊藤大海(苫小牧駒大・投手)やポスト山田哲で牧秀悟(中大・内野手を獲得したい。

 1位~早川隆久(早大・投手)…早川が獲得できれば、9割成功と言える。早大のエースで、最速151キロのストレートに、変化球で緩急をつける総合力の高い投手で、ゲームメークに長けている。先発投手が不足しているなか、開幕ローテを期待できる。

 2位~五十幡亮太(中大・外野手)…このままチームの順位が上がらなければ、2巡目の指名が早いので獲得のチャンスがある。代走だけでも十分食っていける選手だが、着実にパワーもつけており、手薄な外野のレギュラーとリードオフマンを期待できる。

 3位~村上頌樹(東洋大・投手)…抜群の制球力に加え、強気に内角を攻める投球で、戦国東都で勝てる投手に成長した。ゲームメークに長けた先発型。

 4位~嘉手納浩太(日本航空石川高・投手)…身長190センチで100キロを超える大型投手で、最速147キロの本格派右腕。スケールの大きい将来のエース候補。

 5位~山本一輝(中京大・投手)…最速147キロのキレのあるストレートが武器の左腕で、今夏より一気に評価を上げた投手。まだ伸びしろもある素質型の大学生。

 6位~古谷将也(成田高・捕手)…1年秋からレギュラーで、遠投120メートル、二塁送球2秒を切る強肩。高校通算25本のパワーも魅力だが、50メートル6秒の俊足。

 7位~奥村真大龍谷大平安高・内野手…走攻守に堅実なプレーがウリだが、最大の魅力は思い切りの良い勝負強い打撃で、兄・展征を超える活躍も期待できる。

 昨年は育成選手を獲得しなかったが、今年は戦力を厚くするためにも、是非とも育成ドラフトを活用したい。投手では、評価が上がっている大曲錬(福岡大)やリストアップしている高瀬翔悟(中京学院大、野手では先述した渡邊翔大(昌平高・外野手)が候補になる。