いよいよプロ野球の開幕が決まった。もう春先のオープン戦からはかなり経過したが、改めてオープン戦の結果から、19年度ルーキーたちの活躍を予想したいと思う。
◇ヤクルト
黄金ルーキーの1位~奥川恭伸(星稜高)は、体のケアを重点にキャンプより調整し、ようやくブルペンで投球練習を開始し、受けたベテラン捕手の嶋が絶賛していた。シート打撃などの実践登板はまだ先になるが、焦る必要は全くない。
即戦力の大学生投手だが、2位の吉田大喜(日体大)と3位の杉山晃基(創価大)は、ともにオープン戦では課題を残した。特に杉山は4イニング5四球では厳しい。良かったのは4位の大西広樹(大商大)で、ルーキーでは最多の4試合で6イニング、防御率4.50だが8奪三振は評価でき、実戦向きの評判通り貴重な戦力になりそうだ。
ここ数年、育成に大きく舵を取った感のあるオリックス。3名の高校生はオープン戦での出場はなかったが、1位の宮城大弥(興南高)は、先日の紅白戦で登板するなど、着実に経験を積んでいる。
そのなかで大学生2人が結果を出している。3位の村西良太(近大)は、3試合9イニングを投げ、開幕一軍をほぼ手中にした。5位の勝俣翔貴(国際武道大・内野手)も打率は.222と高くないが、本塁打を放つなど持ち前のパンチ力を発揮しており、昨年、頓宮を開幕スタメンで起用したように、西村監督の大抜擢があるかもしれない。
◇中日
3球団が競合した1位の石川昂弥(東邦高・内野手)は、オープン戦での出場はなかったが、順調な成長を見せており、シート打撃で本塁打を放つなど目標の開幕一軍も視界に入っている。
他のルーキーも好調で、2位の橋本侑樹(大商大)は4イニング、3位の岡野祐一郎(東芝)は6イニングを投げ防御率はともに0.00で、橋本は先発、岡野は中継ぎでの開幕一軍が濃厚だ。4位の郡司裕也(慶大・捕手)も10試合でマスクを被り、19打数5安打、打率.357は立派な数字で、正捕手不在のなか開幕スタメンの可能性も十分だ。
◆日本ハム
従来の育成路線から、昨年は即戦力指名に舵を取り、オープン戦ではまずまずの手応えだった。1位の河野竜生(JFE西日本)はさすがの実力で、3試合で1勝1敗、9イニングを投げ防御率4.00は合格点で、不足している先発に貴重な左腕が加わった。
河野以上のインパクトを見せたのが、4位の鈴木健矢(JX-ENEOS)と育成の長谷川凌汰(BC新潟)で、ともにチーム最多の5試合に登板し防御率0.00は、中継ぎで十分な戦力になり、長谷川はチーム初の育成→支配下選手1号を期待できる。5位の望月大希(創価大)も少ない登板機会で結果を残した。
◇広島
まずは1位の森下暢仁(明大)が、評判通りの結果を残した。ルーキーで唯一、規定投球回数をクリアし、4試合15イニングを投げ防御率4.20。奪三振16は投球回数を上回っており、開幕ローテはもちろんのこと、現時点では新人王の最右翼と言える。
2位の宇草孔基(法大・外野手)も悪くない。8打数3安打、打率.429はプロでの適応能力の高さを見せ、開幕一軍は間違いなく上位指名の2名がしっかり結果を残した。5位の石原貴規(天理大・捕手)は、正捕手の曾澤の他に、ベテランの石原慶や若手の坂倉などライバルが多いなか、オープン戦で1試合のみだが出場を果たした。
奥川と並ぶ黄金ルーキーの佐々木朗希(大船渡高)の評価が、日に日に高まっている。開幕が遅れたことで一軍デビューも近づき、早い段階で観られるかもしれない。日本ハムの中田や西武の中村が早くも対戦を熱望しており、期待は膨らむばかりだ。
オープン戦でインパクト大だったのが、5位の福田光輝(法大・内野手)で、4本のヒットのうち本塁打が3本と、スケールの大きさを感じる選手で開幕スタメンも夢ではない。2位の佐藤都志也(東洋大・捕手)は、ややプロの壁にぶつかっているが、骨折が癒えた3位の高部瑛斗(国士館大・外野手)とともに開幕一軍も夢ではない。
◇阪神
まだチームとしての方向性は見えないが、昨年に限ると育成ドラフトで高校生主体の指名になった。1位の西純矢(創志学園高)は2軍で経験を積み、2位の井上広大(履正社高・外野手)に4位の遠藤成(東海大相模高・内野手)は、キャンプでの評価も高く、オープン戦にも出場したが、ここは戦力としてではなく経験の意味合いだった。
順位は6位ながら、唯一の即戦力・小川一平(東海大九州・投手)は、キャンプこそ出遅れたが、オープン戦で2試合に登板し無失点に抑えた。結果以上に投球内容が評価され中継ぎ陣の貴重な戦力になりそうだ。
◆楽天
ある意味1位サプライズ指名だった小深田大翔(大阪ガス・内野手)は、文字通り即戦力の活躍を見せ、ルーキーでは唯一オープン戦の規定打席に達した。打率こそ.227だったが、遊撃で何度も好守備を見せ、セールスポイントの俊足を活かし3盗塁を記録するなど、盗塁数が少ないチーム状況から開幕スタメンも現実味を帯びてきた。
2位の黒川史陽(智弁和歌山高・内野手)も、高校生ルーキー最多の14試合に出場し打率.222と、開幕一軍の大抜擢も期待できる。投手では6位の瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿)が4試合5イニング無失点、3位の津留崎大成(慶大)も中継ぎで適性を見せた。
◇DeNA
将来の正遊撃手候補の森敬斗(桐蔭学園高・内野手)は、2軍でじっくり育成中だが、練習試合で早くも結果を残すなど、プロの水にも慣れ着実に成長を重ねている。
注目はむしろ即戦力投手の2人で、先発候補の2位・坂本裕哉(立命大)は2試合に登板し防御率3.86、7イニングで四球がわずかに1つというのが素晴らしい。安定感のある投球が期待でき、左腕王国のDeNAにまた一人貴重な戦力が加わった。3位の伊勢大夢(明大)は中継ぎで、2試合2イニングを無失点で抑えており、坂本とともに開幕一軍は当確と言える。
意外と言ったら失礼だが、1位の佐藤直樹(JR西日本・外野手)がバットでも結果を残した。11試合に出場し打率.368の好成績で、ルーキーで10打席以上打席に立った選手の最高打率。元々守備走塁には定評があったので、外国人選手の状況次第では開幕スタメンもあるかもしれない。5位の柳町達(慶大・内野手)も9試合で打率.231と適応力を見せ、内外野を守れ、足もありベンチに置いておきたい選手の一人だ。
評価を上げたのが3位の津森宥紀(東北福祉大・投手)で、6試合で6イニング無失点。変則右腕は初見で攻略するのは困難で、鉄壁の投手陣に楽しみな選手が加わった。
◇巨人
原監督がキャンプ前に、昨秋のドラフト結果に不満を漏らしたという記事を目にしたが、その気持ちが十分に分かる。メジャー志望の1位の堀田賢慎(青森山田高・投手)は、新人の合同自主トレ中に右肘の違和感で別調整のうえ、トミージョン手術を受けることになり、これから長いリハビリ生活が待っており、出番はかなり先になりそうだ。
唯一の即戦力の2位・太田龍(JR東日本・投手)も、調整が間に合わずキャンプは2軍スタート。結果、オープン戦に出場したルーキーは12球団で唯一ゼロ…。紅白戦での太田の好投がせめてもの救いになりそうだ。
◆西武
2年連続チーム防御率が最下位で、1~2位で即戦力投手を獲得したが、オープン戦では明暗が分かれた。1位の宮川哲(東芝)は、キャンプ中に負傷し2軍に降格し、オープン戦で登板の機会はなかった。3月下旬の2軍戦で実戦登板を果たしており、開幕には間に合いそうだ。評価を上げたのは2位の浜屋将太(三菱日立PS)で、3試合に登板し、6イニング防御率3.00で先発ローテを手繰り寄せた。
野手では4位の柘植世那(ホンダ鈴鹿・捕手)が5試合に出場し少ないチャンスのなか2安打を放ち、森や岡田に続く第3の捕手の座に近づいた。8位の岸潤一郎(四国IL徳島・外野手)も1試合だけだが出場し、まずは自慢の走力で一軍に喰い込みたい。
育成選手からの支配下登録を見てみよう。投手ではソフトバンクの尾形崇斗(学法石川高~17年育①)の評価が高まり、5試合11イニングを無失点に抑えた。昨年、ウエスタンでセーブ王を獲得したオリックスの漆原大晟(新潟健康福祉大~18年育①)もオープン戦で結果を残し、ともに支配下登録を勝ち取った。
日本ハムの長谷川凌汰(BC新潟~19年育②)は5試合を投げ無失点、巨人の沼田翔平(旭川大高・18年育③)も6回1/3を投げ、イニングを上回る7奪三振で防御率1.42は高卒2年目では立派な成績で、支配下登録の可能性が十分にある。
野手ではソフトバンクの砂川リチャード(沖縄尚学高~17年育③)が大暴れし、22打数6安打、うち本塁打が2本と抜群の長打力を見せ支配下登録された。この間の課題だったポスト松田の有力な候補が現れた。
早くから素質が注目されていたロッテの和田康士朗(BC富山~17年育①)は、チーム1、2の俊足で、オープン戦終盤まで一軍に帯同し、支配下登録にもっとも近い選手の一人だ。また、阪神の小野寺暖(大商大~19年育①)もキャンプから好調を維持し、僅か1試合の出場ながら安打を放ち、少ないチャンスで結果を残した。