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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆巨人~先発、リリーフともに不安が残る投手陣…連覇に早くも暗雲?

 昨年は5年振りのリーグ優勝を果たし、キャンプ当初は優勝候補の筆頭で、私も1位予想で考えていた。ただ、キャンプ終盤からオープン戦の状況(まだ途中だが…)を見て、現状では連覇は厳しく「3位」予想とした。

 順位予想を下げた最大の要因は先発投手陣の駒不足だ。青天の霹靂ではないが、昨年最多勝最多奪三振、最高勝率の投手3冠の山口俊(柳ケ浦高~05年横高①)がメジャー移籍を決めた。いくら大エースの菅野智之東海大~12年①)がいるといっても、菅野一人ではどうすることもできなく、次に先発で計算できる選手がキャンプ通じても見当たらない。

 昨年はリリーフのやり繰りに苦労したが、ここの底上げも期待通りに進んでいない。実際に防御率が年々後退しており、先発が早々と崩れ、リリーフ陣も駒不足でオープナーすら出来ない状況になると、一気に投手陣が機能不全に陥る可能性もある。

 打線はリーグナンバーワンの得点力を誇り、西武のように打ち勝つ野球が出来ない訳ではない。ただ、西武と違うのは機動力が不足しているのと、レギュラー選手の数が少なく、特にここ数年は二塁手のレギュラーが確立できていない。

 巨人の十八番であるFAでも、昨年は両獲りを狙った美馬学はロッテに、内野をどこでも守れる鈴木大地楽天への移籍を決めた。美馬が入れば山口の穴を埋めれられ、鈴木が入れば二塁または三塁のレギュラーが決まったのだが、逃した魚は結果として大きかった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 1位 77勝64敗2分 .257  183本   83個  663点  3.77  573点

 18年 3位 67勝71敗5分 .257  152本   61個  625点  3.79  575点

 17年 4位 72勝68敗3分 .249  113本   56個  536点  3.31  504点  

 16年 2位 71勝69敗3分 .251  128本   62個  519点  3.45  543点

 15年 2位 75勝67敗1分 .243    98本   99個  489点  2.78  443点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 主力にベテランやネームバリューがある選手が多いため、若いというイメージはないが、実は平均年齢26.6歳の若いチームで、特に投手陣が若い。ドラフトは、14~17年は即戦力指名が多く、18~19年は高校生主体の育成路線になるなどふり幅が大きい。

 18年~高橋優貴(投手~八戸学院大①)

 17年~大城卓三(捕手~NTT西日本③)

 16年~なし

 15年~なし

 14年~岡本和真(内野手智弁学園高①)

 このほかには、投手の中川皓太(東海大~15年⑦)と、内野手の山本泰寛(慶大~15年⑤)が及第点の成績を上げている。ただ、即戦力選手を多く獲得したにも関わらず、レギュラーがゼロというのは、物足りないなんてものではない。

 

●投手陣~山口のメジャー移籍で、先発陣で頼りは菅野のみ…先発不足が課題

 昨年は菅野が腰痛に悩まされ、3度の登録抹消がありながら防御率3.86、11勝を上げエースの意地を見せた。その菅野に代わりエース級の活躍を見せたのが山口で、防御率2.94、最多勝の15勝を上げ優勝に大きく貢献したが、ポスティングでわずか3年の在籍でチームを去ってしまった。

 この他にはメルセデスが8勝、ルーキーの高橋が5勝を上げ、防御率3点台で先発の役割を果たした。プロ未勝利だった桜井俊貴(立命大~15年①)も8勝を上げた。

 リリーフ陣はやり繰りに苦労し、クローザー候補のクックは懸念されていた故障が癒えず、13試合6セーブで早々と離脱した。前半戦は中川がクローザーを務め16セーブ、後半戦は途中入団のデラロサが8セーブを上げて乗り切った。

 中継ぎは、謹慎から復帰した高木京介国学院大~11年④)が55試合に登板して見事に復活。中継ぎの層が薄いと見るや、日本ハムから鍵谷陽平(中大~12年日③)をトレードで獲得、先発の田口麗斗(広島新庄高~13年③)と大竹寛浦和学院高~01年広①)を中継ぎで起用し乗り切った手腕はさすがだった。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…菅野智之 ヤングマン 畠 世周 山口 俊 メルセデス 高橋優貴

 ・後半戦…桜井俊貴 山口 俊 メルセデス 菅野智之 今村信貴 古川侑利

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆山口 俊(170回)菅野智之(136回1/3)メルセデス(120回1/3)

       桜井俊貴(108回1/3)高橋優貴(93回)今村信貴(81回2/3)

 ・救援…中川皓太(67試合)田口麗斗(55試合)高木京介 (55試合)

       澤村拓一(43試合)大竹 寛(32試合)宮國椋丞(28試合)

 とにかく先発投手が不足しており、現状では菅野しかいない。その菅野も決して万全とは言えず、先発の復帰する田口までは何とか計算できるが、今年は先発のやり繰りにも苦労しそうだ。メルセデスが故障で開幕に間に合わず、新外国人のサンチェスもオープン戦で打ち込まれ不安要素のほうが大きい。高橋はスタミナが課題で、イニング後半には球威が落ち、桜井もローテーション当確までの信頼感はまだない。

 山口の穴を埋める期待の選手で、昨年初勝利を上げた戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)の名前が挙がるが、昨年2試合登板で1勝の20歳の若手に頼らざるを得ない状況が、先発陣の厳しさを表している。

 リリーフ陣も底上げが進んだとは言えない。クローザーのデラロサは健在だが、セットアッパーの中川が出遅れており、7~8回を誰に任せるかが課題になる。新外国人のビエイラは球は早いが制球力に難があるため、実績のある大竹や鍵谷、澤村拓一(中大~10年①)、左腕の高木が候補になる。

 若手では、昨年楽天からトレードで加入した古川侑利(有田工高~13年④)は、中継ぎ起用だが、状況によっては先発もこなせる。昨年もファームで結果を出した高田萌生(創志学園高~16年⑤)は、もうそろそろブレイクしても良い頃だ。

 育成選手でも、オープン戦で好投を続けている沼田翔平(旭川大高~18年育③)や、支配下登録復活を狙う與那原大剛(普天間高~15年③)などが結果を出し、支配下登録の可能性を残している。 

【今年度の予想】

 ・先発…菅野智之 高橋優貴 田口麗斗 戸郷翔征 サンチェス  

       メルセデス 桜井俊貴 今村信貴 古川侑利 畠 世周

 ・中継…高木京介 澤村拓一 ビエイラ 鍵谷陽平 戸根千明  

       大竹 寛 宮國椋丞 田原誠次 鍬原拓也 太田 龍

 ・抑え…デラロサ  中川皓太

 

●野手陣~坂本ー丸ー岡本の怖い上位打線!ベテランと若手の融合進み強力打線へ

 昨年はFAで広島から移籍した丸佳浩(千葉経大高~07年高③)の加入が大きなプラスになった。丸は打率こそ3割に届かなかったものの、27本塁打、89打点で3番打者にピッタリと嵌まった。

 丸が3番に入ることで、坂本勇人光星学院高~06年高①)を2番に据えることができた。現在、メジャーでは2番に最も良い打者を置く戦法が主流だが、そういったなかで坂本は適任だと思う。ベテランの亀井善行(中大~04年④)が後半戦1番に定着、若き4番の岡本も全試合に出場し、強固な上位打線を形成できた。

 若手の成長も著しく、故障でわずか11試合出場に留まったが、開幕スタメンの吉川尚輝(中京学院大~16年①)が.390の高打率を残し、打撃が評価されていた大城も出場機会を増やした。育成出身の増田大輝(四国IL徳島~15年育①)は、チームナンバーワンの15盗塁を上げた。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…大城卓三(109/329)小林誠司(92/236)阿部慎之介(95/192)

       炭谷銀仁朗(58/138)

 内野手…☆坂本勇人(143/639)☆岡本和真(143/628)若林晃弘(77/273)

      ビヤヌエバ(73/235)山本泰寛(92/212)田中俊太(62/176)

 外野手…☆丸 佳浩(143/631)☆亀井善行(131/503)ゲレーロ(101/333) 

     陽 岱鋼(110/231)重信慎之介(106/174)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)吉川尚輝④      1)亀井善行⑦      

  2)坂本勇人⑥      2)坂本勇人⑥       

  3)丸 佳浩⑧           3)丸 佳浩⑧    

  4)岡本和真③      4)岡本和真③      

  5)陽 岱鋼⑨      5)陽 岱鋼⑨      

  6)亀井善行⑦      6)若林晃弘④     

  7)田中俊太⑤         7)ビヤヌエバ⑤      

  8)小林誠司②      8)炭谷銀仁朗

  9)菅野智之①      9)桜井俊貴①  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)吉川尚輝④      捕 手)小林誠司炭谷銀仁朗) 

  2)坂本勇人⑥      一塁手)大城卓三(中島宏之

  3)丸 佳浩⑧      二塁手)吉川尚輝(山本泰寛)

  4)岡本和真⑤      三塁手)岡本和真(田中俊太)

  5)パーラ⑨          遊撃手)坂本勇人

  6)亀井善行⑦         左翼手亀井善行(石川慎吾)

  7)大城卓三③         中堅手)丸 佳浩(増田大輝)

  8)小林誠司②      右翼手)パーラ(陽 岱鋼)

  9)菅野智之①           

   

 今年は一番打者に誰を据えるか、岡本の後を打つ5番打者の確立、そして一塁、二塁のレギュラーを誰にするかが課題になる。

 まずは一番打者だが、候補の一番手は吉川尚だ。毎年期待されながら故障でシーズンを棒に振る年が続いているが、試合に出れば攻守に結果を残しており、今年こそは期待に応えたい。吉川尚が離脱すると、また亀井に落ち着きそうだが、亀井が下位打線または代打の切り札でいる打線は怖い。吉川尚がシーズンを完走できれば、一番打者そして二塁手の課題が一気に埋まり、今年の優勝のカギを握るキーマンになる。

 5番打者は新外国人のパーラが有力だが、パーラはどちらかというと中距離打者で、長打力よりは繋ぎの5番になる。ただ、残念ながら現状で長打力があり、クリーンアップを任せられる選手が見当たらず、同じタイプで亀井や大城、チャンスに強い陽岱鋼(福岡一高~05年日①)との争いになる。

 内野は坂本以外は流動的だ。岡本が一塁に入る布陣も予想されるが、そうなると三塁手は田中俊太(日立製作所~17年⑤)や湯浅大(健大高崎高~17年⑧)になるが、レギュラーとしてはまだ物足りない。やはり岡本を三塁に据えて、一塁で亀井や大城、ベテランの中島宏之(伊丹北高~00年西⑤)、ファームの4番~北村拓己(亜大~17年④)を起用したほうが打線は厚くなる。

 二塁は吉川尚がまた離脱するようなことになれば、今年も山本泰寛(慶大~15年⑤)や若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)との争いになり、いずれもチャンスがあり誰がレギュラーに近づくか注目したい。

 外野は層が厚く、順当にいけば丸とパーラ、亀井または陽がレギュラーだが、外野も守れる大城と若林もいる。俊足の増田大や重信慎之介(早大~15年②)も控え、問題はなさそうだ。 

 昨年のファームでは、北村のほかに俊足巧打の松原聖弥(明星大~16年育⑤)、ルーキーながら昨年ファームで首位打者になった山下航汰(健大高崎高~18年育①)は一軍デビューも果たし、育成が着実に進んでいる感がある。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…小林誠司 炭谷銀仁朗 大城卓三(岸田行倫)

 内野手中島宏之 吉川尚輝 岡本和真 坂本勇人

      若林晃弘 増田大輝 山本泰寛 田中俊太(北村拓己 湯浅 大)

 外野手…亀井善行 丸 佳浩 パーラ 陽 岱鋼

       石川慎吾(重信慎之介 山下航汰) 

 

 今年注目の若手では、投手ではやはり戸郷翔征だろう。戸郷は18年のU-18代表の壮行試合に宮崎選抜で登板し、そのときの好投が目に留まりドラフト指名を手繰り寄せた。順位も6位で入団時は注目を浴びなかった投手が、昨年終盤に先発してプロ初勝利を上げた。チャンスを確実にモノにする強さがあり、今回はローテ入りのチャンスを狙う。

 野手では楽しみな選手が多いが、そのなかでも増田大輝を挙げたい。魅力はチーム随一の俊足で、昨年は途中出場ながら、チーム最多の15盗塁を記録した。まずは代走、守備固めからの出番になりそうだが、内外野どこでも守れ、小技の得意な選手で、与えられた役割をこなすことで、大きなチャンスが回ってくると思う。