ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

直近10年の各チームのドラフト成功率は?

 直近10年(09年~18年)の12球団のドラフトを振り返る前に、各チームのドラフトの成功率を見てみたいと思います。

 何をもって「成功」とするかが難しいですが、ここはドラフト評論家の第一人者の小関順二氏の指標を用いさせていただきました。
 投手は10年で50勝100セーブに、ホールドポイントもあることから300試合登板を加えた。あとは年数ごとに割っていけばよく、5年目であれば25勝50セーブ、150試合登板を成功の条件とした。
 野手は10年で500安打に、守備固めや代打、代走などを考慮して700試合出場を加えた。ここもあとは割るだけで、5年目だと250安打、350試合を条件にし、10年在籍せずに途中で引退しても、通算年数で成績を満たしていれば成功とした。
 この条件のなか、10年間で最も成功(率)しているのは西武で、D℮NAとオリックスが成功率20%を超えた。反面、ワーストはヤクルトで唯一成功率が10%に届かず、次に巨人と楽天が続いた。

 

1位…西武~21.5%(14名/65名)

 とにかく上位指名の成功率が高く、主力選手が並ぶ。高橋光成や今井達也も及第点で、1位指名が確実に戦力になっている。課題は主力選手のFAでの流失防止。

 投手…菊池雄星(09年①)牧田和久(10年②)十亀 剣(11年①)

    増田達至(12年①)多和田真三郎(15年①)野田昇吾(15年③)

    平井克典(16年⑤)松本 航(18年①)

 野手…秋山翔吾(10年③)金子侑司(12年③)森 友哉(13年①)

    山川穂高(13年②)外崎修汰(14年③)源田壮亮(16年③)

2位…DeNA~20.3%(15名/74名)※福山は除く

 大学生投手の1位指名が5年連続成功で投手王国も夢ではない。反面、野手は下位指名が迫力不足だが、2年連続の高卒野手1位指名で変化の兆し。

 投手…福山博之(08年⑥)三嶋一輝(12年②)井納翔一(12年③)

    三上朋也(13年④)山崎康晃(14年①)今永昇太(15年①)

    浜口遥大(16年①)東 克樹(17年①)上茶谷大河(18年①)

 野手…筒香嘉智(09年①)桑原将志(11年④)宮崎敏郎(12年⑤)

    倉本寿彦(14年③)柴田竜拓(15年③)戸柱恭孝(15年④)

    神里和毅(17年②) 

3位…オリックス~20.0%(15名/75名)※佐藤は18年に引退

 ドラフトの成功率とは裏腹に成績は低迷…ただ、山本由伸や榊原翼の活躍で、高校生選手の育成も結果が出てきており、上位を狙える戦力が揃いつつある。

 投手…比嘉幹貴(09年②)佐藤達也(11年③)海田智行(11年④)

    吉田一将(13年①)近藤大亮(15年②)山岡泰輔(16年①)

    黒木優太(16年②)

 野手…後藤駿太(10年①)安達了一(11年①)若月健矢(13年③)

    西野真弘(14年⑦)吉田正尚(15年①)大城滉二(15年③)

    福田周平(17年③)中川圭太(18年⑦)

4位…ロッテ~18.3%(11名/60名)

 即戦力から育成へ方向転換し、驚異のクジ運でドラフト巧者へ変貌。二木康太や酒居知史も及第点で、高校生1位指名野手(平沢・安田・藤原)の覚醒に期待。

 投手…大谷智久(09年②)益田直也(11年④)松永昴大(12年①)

    石川 歩(13年①)

 野手…荻野貴司(09年①)清田育宏(09年④)鈴木大地(11年③)

    田村龍弘(12年③)井上晴哉(13年⑤)中村奨吾(14年①)

    藤岡裕大(17年②)

5位…ソフトバンク~17.3%(9名/52名)

 本指名は少数精鋭も、13年~17年までの1位指名選手が低迷…一芸に秀でた育成指名で、主力の千賀滉大に甲斐拓也、新たなスター周東佑京がカバーするが…。

 投手…武田翔太(11年①)嘉弥真新也(11年⑤)東浜 巨(11年①)

    森 唯斗(13年②)高橋 礼(17年②)甲斐野央(18年①)

 野手…今宮健太(09年①)柳田悠岐(10年②)上林誠知(13年④)

6位…広島~16.7%(10名/60名)

 大学生1位指名の成功率が高く、九里亜蓮も及第点で大学・社会人の即戦力選手の育成に実績あり。一方で高校生の育成は、鈴木以降は低迷気味で小園やアドゥワに期待。

 投手…今村 猛(09年①)中崎翔太(10年⑥)野村祐輔(11年①)

    大瀬良大地(13年①)岡田明丈(15年①)

 野手…菊池涼介(11年②)鈴木誠也(12年②)田中広輔(13年③)

    野間峻祥(14年①)西川龍馬(15年⑤)

7位…阪神~15.3%(9名/59名)

 期待の若手はいるが、10年間で成功した投手2名は最小…野手は即戦力のみで、高校生野手の成功は96年の関本健太郎が最後…今年のドラフトが転機になる

 投手…藤浪晋太郎(12年①)岩崎 優(13年⑥)

 野手…藤川俊介(09年⑤)梅野隆太郎(13年④)高山 俊(15年①)

    大山悠輔(16年①)糸原健斗(16年⑤)近本光司(18年①)

    木浪聖也(18年③)

8位…日本ハム~14.9%(11名/74名)

 近年のドラフト巧者も最近は低迷…比例するようにチームの成績も下降気味だが、高校生1位でスター候補の吉田輝と清宮に、渡邊と堀も覚醒の気配があり期待は高まる。

 投手…増井浩俊(09年⑤)大谷翔平(12年①)鍵谷陽平(12年③)

    有原航平(14年①)石川直也(14年④)加藤貴之(15年②)

    玉井大翔(16年⑧)西村天裕(17年②)

 野手…西川遥輝(10年②)近藤健介(11年④)石井一成(16年②)

9位…中日~14.3%(9名/63名)

 エース柳裕也も及第点だが、チグハグなドラフトで成績も低迷…根尾と石川のスター候補獲得でチームの変革に期待。

 投手…岡田俊哉(09年①)大野雄大(10年①)田島慎二(11年③)

    又吉克樹(13年②)祖父江大輔(13年⑤)鈴木博志(17年①)

 野手…大島洋平(09年⑤)高橋周平(11年①)京田陽太(16年②)

10位…楽天~13.9%(10名/72名)

 上位指名選手の成功率が低く、ここ近年は独自路線のドラフトを展開。近年は育成よりFAに注力気味か…田中和も及第点だが、野手の成功はなぜか大卒の左打者に集中。

 投手…美馬 学(10年②)則本昴大(12年②)松井裕樹(13年①)

    森原康平(16年⑤)高梨雄平(16年⑨)

 野手…岡島豪郎(11年④)島内宏明(11年⑥)茂木栄五郎(15年③)

    辰巳涼介(18年①)渡邊佳明(18年⑥)

11位…巨人~13.3%(8名/60名)※一岡は除く

 ほぼ逆指名の澤村と菅野、長野を除けば、成功率は8.3%まで下がりワースト。十八番のFAの影響か下位指名の成功はゼロで、中川皓太や戸郷翔太へ期待がかかる。

 投手…澤村拓一(10年①)一岡竜司(11年③)菅野智之(12年①)

    田口麗斗(13年③)高橋優貴(18年①)

 野手…長野久義(09年①)小林誠司(13年①)岡本和真(14年①)

    大城卓三(17年③)

12位…ヤクルト~9.1%(6名/66名)

 成功率、成功人数すべてワースト…1位指名選手も既に3名退団で、下位指名の成功もゼロではチームの成績低迷も納得。村上と奥川が救世主になれるか

 投手…石山泰稚(12年①)小川泰弘(12年②)秋吉 亮(13年③)

    梅野雄吾(16年③)

 野手…山田哲人(10年①)村上宗隆(17年①)

 

 最後に指名選手の成功率を構成別に見ると、指名人数は少ないが社会人が22.0%(50名/227名)で最も高く、大学生も21.4%(53名/248名)と、ほぼ成功率は変わらない。一方で高校生は僅かに8.5%(26名/305名)と育成のリスクの高さを改めて感じた。

 順位別では見事に変化はなく、成功人数129名中1位指名の成功率は39.5%で断トツだ。2位指名は18.6%、3位指名は17.8%でほぼ変わらず、上位指名(1~3位)で75.9%を占めており、やはり指名順位が成功の確率の高さに比例している。

 下位指名では4位指名が8.5%、5位指名が7.8%でさほど順位で変化はないが、6位指名は4.7%、7位指名で1.5%、8~9位指名は各1名の0.8%で6位以降の成功率は合わせても7.8%しかない。