今年のドラフトの目玉の一人が、明大のエース・森下暢仁(投手)で、重複も予想されたが、単独で広島から1位指名され入団を決めた。森下は大分商(大分)の時から注目された好投手で、当時でも上位指名が十分に見込めた。
実際に高校卒業時にはプロ入りか進学かで相当悩んだようだが、大学への進学を決め、4年後に見事ドラフト1位までの選手に成長した。ただ、実はこれは一握りよりも、どちらかというと珍しいパターンで、大半は高校卒業時にプロに指名されないから、私は大学へ進学するものだと思っている。
実際に、ロッテ2位の佐藤都志也(東洋大・捕手)は、聖光学院(福島)からプロ志望届を提出し、指名が有力視されたものの見送られ悔し涙を流し、大学に進学し4年後を目指した。
そこで今回は、4年前の高校生指名と、今年の大学生ドラフトに絞って見てみようと思う。
ちなみに2015年の甲子園大会の優勝校は、春の選抜は平沼翔太(日本ハム)を中心にした敦賀気比高(福井)が、夏の選手権大会は、タレント揃いの東海大相模(神奈川)が、仙台育英(宮城)を退け2度目の全国制覇を達成した。
この年の高卒選手の目玉は、投手では高橋純平(県岐阜商高)で、3球団競合の末ソフトバンクが、ナンバーワン野手の平沢大河(仙台育英高・内野手)は、2球団競合しロッテが獲得した。このほか、小笠原慎之介(東海大相模高・投手)が中日に、オコエ瑠偉(関東一高・外野手)が楽天にそれぞれドラフト1位指名された。
【各チームの高校生指名】※下線は甲子園出場
・ソフトバンク…①高橋純平(県岐阜商・投手)②小澤怜史(日大三島・投手)
③谷川原健太(豊橋中央高・捕手)④茶谷健太(帝京三・内野手)
・日本ハム… ④平沼翔太(敦賀気比・内野手)⑧姫野優也(大阪偕星・外野手)
・ロッテ… ①平沢大河(仙台育英・内野手)③成田 翔(秋田商・投手)
⑤原 嵩(専大松戸・投手)
・西 武… ③大瀧愛斗(花咲徳栄・外野手)⑨藤田航生(弘前工・投手)
・オリックス … ⑤吉田 凌(東海大相模・投手)⑥佐藤世那(仙台育英・投手)
・楽 天… ①オコエ瑠偉(関東一・外野手)④堀内謙伍(静岡・捕手)
⑥村林一輝(大塚・外野手)
・ヤクルト … ②廣岡大志(智弁学園・内野手)③高橋奎二(龍谷大平安・投手)
④日隈ジュリアス(高知中央・投手)⑥渡邊大樹(専大松戸・外野手)
・巨 人… ②與那原大剛(普天間・投手)⑥巽 大介(岩倉・投手)
・阪 神… ④望月惇史(横浜創学館・投手)
・広 島… ③高橋樹也(花巻東・投手)⑦青木 陸(山形中央・外野手)
・D℮NA… ④綾部 翔(霞ヶ浦・投手)⑤青柳昴樹(大阪桐蔭・外野手)
驚いたのは、前評判では決して不作と言われた年ではないが、現時点で主力やレギュラーが一人もいない。投手では小笠原(中日)が開幕投手を務めるものの、ケガなどもあり十分に力を発揮できていない。高橋純(ソフトバンク)や高橋奎(ヤクルト)、望月(阪神)がようやく頭角を現してきた。
野手では平沢(ロッテ)とオコエ、堀内(ともに楽天)がまずまずの活躍を見せているが、レギュラーにはまだ届かず、平沼(日本ハム)や村林(楽天)が一軍に定着してきた。
一方で既に6名(小澤/茶谷/黒瀬/日隈/與那原/巽)が育成契約になり、4名(佐藤/青木/綾部/青柳)が既に引退または戦力外でNPBを去っている。本指名30名中10名…実に1/3を占めており、高卒からの4年間、厳しい現実を「数」が物語っている。
【4年前に志望届を出し、今年指名された選手】※下線は甲子園出場
吉田 大喜(投 手)大冠高→日体大→ヤクルト2位
勝俣 翔貴(内野手)東海大菅生高→国際武道大→オリックス5位
大関 友久(投 手)土浦湖北高→仙台大→ソフトバンク育成2位
これにも驚いた…柘植が社会人4年目の指名だったので加えたが、柘植と育成の大関を除けばわずかに3名しかいない。では、当時志望届を出さなかった有力選手見てみると、ここもわずかに5名しかいなかった。
【志望届を出さなった、当時の有力選手】※下線は甲子園出場
森下 暢仁(投 手)大分商→明大→広島1位
宇草 孔基(外野手)常総学院→法大→広島2位
郡司 裕也(捕 手)仙台育英→慶大→中日4位
大下誠一郎(外野手)白鷗大足利→白鷗大→オリックス育成6位
こう見ると、高校時代に有望(指名の可能性がある)と言われている選手は、プロ志望があるならダメ元でも出したほうが良いと思う。指名され入団する門は狭く、入団後もレギュラーどころか一軍に定着するのも厳しい世界だ。
今年で言えば、投手なら内沢航大(八戸工大一→法大)、捕手の小藤翼(日大三→早大)、野手では谷川刀麻(星稜→近大)や加藤雅樹(早実→早大)、船曳海(天理→法大)は4年前の有望選手で、今年初めて志望届を出したが指名されなかった。
実は大学生指名選手の多くは、高校時代は無名で大学で一気に開花した選手が多い。4年前の野球雑誌を探してみても、投手では伊勢と津森、野手は海野と柳町を辛うじて見つけることができ、ほとんどは大学で伸びた選手だ。高校時に有望だった選手の上位指名が4名に対し、無名組は9名を数える。
【今年、本指名された大学生選手】※下線は甲子園出場
橋本 侑樹(投 手)大垣日大→大商大→中日2位
津留崎大成(投 手)慶応→慶大→楽天3位
高部 瑛斗(外野手)東海大甲府→国士館大→ロッテ3位
村西 良太(投 手)津名→近大→オリックス3位
伊勢 大夢(投 手)九州学院→明大→D℮NA3位
大西 広樹(投 手)大商大高→大商大→ヤクルト4位
石原 貴規(捕 手)創志学園→天理大→広島5位
当然、プロに入って活躍するパスポートはなく、確実な成功法則がある訳でもない。高卒→プロが王道ではないし、大学進学は決して回り道ではない。ただ、実際にプロ入りするには、高校卒業時、大学卒業時、年齢的に社会人でも25歳がギリギリで、社会人になると指名の割合が高校、大学より一気に少なくなる。
また、その年のチームの状況やトレンド、刻々と進むドラフト会議のなかで、本来なら指名されておかしくない選手が見送られる場合もある。チャンスは多ければ多いほど良く、若ければ若いほど良いと思う。
なぜなら高校時の有望選手の活躍を早く見てみたいし、指名されず悔しさをバネに進学した選手の成長、そして大学で一気に才能を開花した無名だった選手、ファンの我儘だが、たくさんの夢を見せてほしい。指名される可能性があるのに、選手自身が回避するのはやはり寂しいものです。