ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年戦力展望☆広島~今季は守り勝つ野球か打ち勝つ野球か?新井新監督の目指すチーム戦略に注目

 3連覇が潰えた19年から4年連続でBクラスが続き、ファンとしては思い出したくもないだろうが、98年から12年までの15年連続Bクラスの暗黒期再来が頭が過ってしまう。

 昨シーズンは序盤戦は好調で、投打が噛み合い開幕6連勝の好スタートを切ったが、昨年も鬼門は交流戦で、5勝13敗と3年連続の交流戦最下位でまたしても失速してしまった。ただ、リーグ戦再開後はチームも持ち直し、レッズから秋山翔吾(八戸大~10年西③)が電撃加入するなど明るい話題もあり、前半戦はリーグ2位で終えた。

 しかし、地力が試される夏場から大型連敗が続き、新型コロナ感染による主力の離脱も重なり5位でシーズンを終え、佐々岡監督が退任。今季から新監督の新井を迎え、チームの再建を託されることになった。

 【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

    22年 5位 66勝74敗  3分 .257   91本   26個  552点   3.54  544点

    21年 4位 63勝68敗12分 .264  123本   68個  557点  3.81  589点

 20年 5位 52勝56敗12分 .262  110本   64個  523点  4.06  529点

 19年 4位 70勝70敗  3分 .254  140本   81個  591点  3.46     601点

 18年 1位 82勝59敗  2分 .262  175本   95個  721点  4.12  651点   

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~松本竜也(投手~ホンダ鈴鹿⑤) 

    20年~栗林良史(投手~トヨタ自動車①)森浦大輔(投手~天理大②)

 19年~森下暢仁(投手~明大①)

 18年~小園海斗(内野手報徳学園高①)島内颯太郎(投手~九共大②)

 17年~なし

 セ・リーグを連覇していた16~18年は、支配下指名19名中13名が高校生の育成主体のドラフトで、小園や坂倉将吾(日大三高~16年④)などの主力も誕生したが、既に6名(うち高校生は5名)が退団し、残念ながら成果が挙がったとは言えない。

 一転して19~21年は、支配下19名中、高校生は6名まで減少し、即戦力中心にシフトしている。そのなかでWBC代表の森下や栗林を単独指名し、2年連続50試合登板の森浦など着実に結果が出ている。22年は1~2位こそ高校生を指名したが、下位で大学生・社会人を獲得したバランスの良いドラフトになった。

 ただこの間、結果が出ているのは投手が多く、特に野手は鈴木誠也二松学舎大高~12年②)移籍後、スラッガーと呼べるのは坂倉しかいない。この辺りを意識して、一昨年は中村健人トヨタ自動車~21年③)に末包昇大(大阪ガス~21年⑥)を獲得した課題の解消には到らず、林晃汰(智弁和歌山高~18年③)も出てくる気配がなく、そんななか昨年ファームでチーム最多本塁打の正髄優弥(亜大~18年⑥)を放出したのも、今一つ理解できない。

 

●投手陣~先発4本柱に次ぐ選手の確立とリリーフ陣強化が課題

  昨シーズンも大瀬良大地(九共大~13年①)に九里亜蓮(亜大~13年②)、森下、左腕の床田寛樹(中部学院大~16年③)の4本柱が健在で、特に前半戦は全員が抜群の安定感を誇りチームを支えた。

 しかし、シーズンが進むにつれ徐々に崩れ始め、大瀬良と九里はともに貯金を作ることができず、床田は骨折で離脱…。森下がただ一人1年間ローテーションを守ったが、援護に恵まれずギリギリ2桁勝利に届くことができた。そんななか遠藤淳志(霞ヶ浦高~17年⑤)が100イニングを投げ4勝を挙げ、今シーズンに繋がる活躍を見せたのは収穫だった。

 一方、一昨年に100イニングを投げ4勝を挙げた玉村昇悟(丹生高~19年⑥)は、イニング数も勝ち星も半減し、期待に応えることができなかった。新戦力ルーキーの森翔平(三菱重工ウェスト~21年②)は1勝、新外国人のアンダーソンも3勝で終わったのは誤算で、4本柱に次ぐ先発陣が不足した。

 リリーフは栗林が、昨季も守護神として31セーブを上げ、防御率1点台と抜群の安定感を誇ったが、その栗林まで繋ぐ形ができなかった。後半になると、ようやく森浦~矢崎拓也(慶大~16年①)から栗林に繋ぐ形ができ、特にキャリアハイの47試合に登板し、17ホールド、防御率1点台の矢崎の覚醒はプラスになった。

 ルーキーの松本やケムナ誠(日本文理大~17年③)も勝ちパターンを担う活躍を見せたものの、やはりリリーフ陣の層の薄さは否めず、経験のある中崎翔太日南学園高~10年⑥)や一岡竜司沖データコンピュータ教育学院~11年巨③)にかつてのような安定感がなくなり、ルーキー左腕の黒原拓未(関学大~21年①)も左肩痛で出遅れ、僅か12試合登板と新戦力の台頭も乏しかった。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆森下暢仁(178回2/3)九里亜蓮(140回1/3)大瀬良大地(135回1/3)

       床田寛樹(114回)遠藤淳志(105回1/3)アンダーソン(70回)

 ・救援…森浦大輔(51試合)松本竜也(50試合)栗林良史(48試合)

       矢崎拓也(47試合)ターリー(45試合)ケムナ誠(43試合)

【今年度の予想】

 ・先発…九里亜蓮 大瀬良大地 森 翔平 森下暢仁 床田寛樹 遠藤淳志 

      (野村祐輔 ※益田武尚 高橋昂也 ※河野 佳 アンダーソン 玉村昇悟) 

 ・中継…森浦大輔 中崎翔太 ケムナ誠 矢崎拓也 松本竜也 ターリー

      (薮田和樹 黒原拓未 塹江敦哉 ※長谷部銀次 島内颯太郎 ※戸根千明)  

 ・抑え…栗林良史

 今季もエースの大瀬良が開幕投手に指名され、九里と森下、床田の4本柱は決まりで、先発は残り2枠の争いになる。最有力は遠藤で、今季は独り立ちし規定投球回数をクリアし、貯金を残す投球をしたい。

 このほか、ともに2年目を迎える森やアンダーソンへの期待値は高く、玉村やベテランの野村祐輔(明大~11年①)、昨年ファームで好投した中村祐太(関東一高~13年⑤)もローテーションに返り咲きたい。ルーキーの益田武尚(東京ガス~22年③)に河野佳(大阪ガス~22年⑤)は、ともに先発もリリーフもでき、キャンプで適性を見極めることになるが、先ずは先発で試してみたい。

 リリーフは、いかに栗林に繋ぐかがポイントになる。すべてリリーフ陣の責任ではないが、逆転負けはリーグ最多の34試合を数え、リリーフ陣強化は投手陣の優先課題になる。矢崎がセットアッパーを務め、森浦にケムナ、ターリーが勝ちパターンを担うと思うが、中崎や塹江敦哉(高松北高~14年③)など、かつて勝ちパターンを担った選手の復活や、新加入の戸根千明(日大~14年巨②)やルーキーの長谷部銀次(トヨタ自動車~22年⑥)に、2年目の黒原を加えた左腕トリオの活躍にも期待したい。

 

●野手陣~リーグナンバーワンのチーム打率も、長打力・機動力不足を解消できるか

 不動の4番・鈴木が抜け心配された打線は、終わってみればチーム打率はリーグナンバーワンの.257で、得点数もリーグ2位と十分機能したと言える。特に坂倉は期待に十に応え、チームでただ一人全試合に出場し、打率.288で本塁打は日本人最多の16本を放ち、鈴木の穴を埋める活躍を見せた。

 このほか、新外国人のマクブルームがチーム最多の17本塁打で期待に応え、内外野守れる上本崇司(明大~12年③)は、主に8番を打ちチャンスメークで上位打線に繋ぎ、勝負強い打撃でポイントゲッターにもなり、キャリアハイの成績を上げた。また、秋山の加入で、本来クリーンアップも打てる西川龍馬(王子~15年⑤)が1番を任せることができ、後半は野間峻祥(中部学院大~14年①)が右翼に定着し、盤石の外野陣を形成することができた。

 課題は長打力と機動力不足で、本塁打数は12年以来、10年振りに100本を割った。ただ、本塁打数はリーグ4位とまだ許容範囲だが、酷かったのは盗塁数で、何と僅かに26盗塁と半分以下まで落ちてしまった。MLBでも確立の悪さから、盗塁が減少しており、元々以前からメジャーの野球を積極的に取り入れてきた歴史があり、まさかそれを標榜したわけだとは思わないが、かつて機動力を活かした野球がお家芸のチームが見る影もなくなってしまった。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…☆坂倉将吾(143/599)曾澤 翼(98/325)磯村嘉孝(43/126)

 内野手…☆菊池涼介(123/522)☆小園海斗(127/511)☆マクブルーム(128/508)

     上本崇司(94/300)堂林翔太(101/274)羽月隆太郎(44/99)

 外野手…西川龍馬(97/424)野間峻祥(85/338)松山竜平(88/166)

       秋山翔吾(44/174)中村健人(63/137)長野久義(58/134)        

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)西川龍馬⑦      1)野間峻祥    

  2)菊池涼介④      2菊池涼介④       

  3)小園海斗⑥      3)西川龍馬⑦    

  4)松山竜平③      4)マクブルーム③      

  5)坂倉将吾⑤      5)坂倉将吾⑤      

  6)曾澤 翼②      6)曾澤 翼②      

  7)末包昇大⑨      7)小園海斗⑥      

  8)上本崇司⑧      8)上本崇司⑧

  9)大瀬良大地①     9)森下暢仁①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…曾澤 翼 坂倉将吾 磯村嘉孝(石原貴規)

 内野手…上本崇司 堂林翔太 マクブルーム 菊池涼介  小園海斗 羽月隆太郎

     ※デビッドソン(田中広輔 林 晃汰 韮澤雄也 矢野雅哉)

 外野手…西川龍馬 秋山翔吾 野間峻祥 宇草孔基 中村健人 松山竜平  

      (末包昇大 ※久保 修 大盛 穂)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川龍馬⑦      捕 手)坂倉将吾(曾澤 翼) 

  2)菊池涼介④      一塁手)マクブルーム(松山竜平

  3)秋山翔吾⑧      二塁手菊池涼介(羽月隆太郎)

  4)マクブルーム③    三塁手)上本崇司(デビッドソン)

  5)坂倉将吾②         遊撃手)小園海斗

  6)野間峻祥⑨      左翼手)西川龍馬(堂林翔太

  7)小園海斗⑥      中堅手秋山翔吾

  8)上本崇司⑤      右翼手野間峻祥中村健人

  9)大瀬良大地①     

 今シーズン最大の注目は、坂倉の捕手専任で、昨シーズンは曾澤翼(水戸短大高~06年③)と磯村嘉孝中京大中京高~10年⑤)が主にマスクを被ったが、盗塁阻止率はリーグワーストの.204の結果から、坂倉が本職に戻ることになる。このほか坂倉の同い年の石原貴規(天理大~19年⑤)も力を付けてきており、間違いなく競争が激化する。

 このほかのレギュラーポジションは、一塁にマクブルームがおり、菊地と小園の二遊間はリーグ髄一と言える。鉄壁の二遊間に挑むのは、打撃の良い韮澤雄也(花咲徳栄高~19年④)に守備の巧い矢野雅哉(亜大~20年⑥)、ユーティリティプレーヤーの羽月隆太郎(神村学園高~18年⑦)も二塁一本での勝負を明言しており競争が楽しみだ。

 外野も昨年後半から左翼・西川、中堅・秋山、右翼・野間が定着しているが、若手から中堅に差し掛かる中村健や宇草孔基(法大~19年②)が控え、2年目の田村俊介(愛工大名電高~21年④)も一軍キャンプを完走した。

 最大の注目は三塁で、昨年は坂倉が119試合に先発したが、捕手専任でレギュラーは白紙状態。本来は内野手の上本や復活を期す田中広輔JR東日本~13年③)、新外国人のデビッドソン、林に二俣翔一(磐田東高~20年育①)と言った長距離砲も控え最大の激戦区になる。

 一方で打線は強力だが、昨年からの課題の長打力と機動力不足が解消されたとは言えない。さすがに秋山が昨年のような成績で終わることはないと思うが、秋山に長打や盗塁を期待するのは酷で、ここは新戦力の台頭が待たれる。長打力ならデビッドソンや末包、機動力なら曽根海成(京都国際高~13年ソ育③)、ルーキーの久保修(大阪観光大~22年⑦)に期待がかかる。

 

●若手の台頭も待ち遠しいが、連覇を知っているベテランの奮起に期待

 注目選手の投手は、巨人から移籍した戸根千明で、巨人では打撃の良さから二刀流挑戦など、今ひとつ中途半端な起用だったが、今季9年目31歳を迎え実績は十分。昨年もファームで最多登板し、長いイニングを投げきる体力に加え、左打者を打ち取る技術もある。左のリリーバーとしてセットアッパーの役割も期待でき、リリーフ陣の層の薄いチームにおいて期待がかかる。

 野手は秋山で、もう一度西武時代のシュアなバッティングを見たい。昨年は3年振りのNPB復帰も44試合出場に終わり、打率.265、本塁打5本と不本意な成績に終わった。今季はオフからしっかり体調を整え大暴れして欲しい。昨シーズンは三番のみの出番だったが、個人的には一番・秋山がしっくりくると思う。どちらにしろ秋山が復調すれば、長打力はないがこの上なく嫌な打線になると思う。

 4年連続Bクラスのチームを、新監督が立て直すのは大変だが、土台は出来つつある。ただ、昨年前半戦は決してマグレではないが、主力と控えの差が大きく、長打力や機動力などの課題が解消されたとは言えず、体的な底上げがないとペナントレースを勝ち抜くのは厳しい。

23年戦力展望☆日本ハム~新球場元年!「優勝しか目指さない」今季は、チームがどう変わるか?

 新庄剛志を新監督に迎え、就任からシーズン中に至るまで話題にはこと欠かなかったが、「優勝は目指しません」発言から、打順を選手間で決めたり、本人もシーズン開幕直前にも係わらず、TVやイベントに出演するなど眉を顰めるファンも多かった。

 事実、新庄監督のパフォーマンスやきつねダンスで盛り上がりは見せたが、肝心のチームは開幕5連敗から始まり、以降一度も順位を上げることなく最下位を独走し、札幌ドームのラストイヤーにも係わらず観客動員数は伸び悩んだ。8月末に両リーグ最速の70敗到達、9月初めに早々とCS出場が消え、北海道移転後最低の成績で、9年振りの最下位でシーズンを終えた。実はホームゲームに限れば、34勝35敗3分で五分の戦いが出来ていたが、最下位独走のチームに球場へ足を運ぶファンは少なかった。

 シーズン前から「今年1年はトライアウト」を明言し、高卒ルーキーを含む日本人支配下選手全員が一軍出場を果たした。負けが込んでもその方針がブレることはなく、良く言えば、1年間勝敗度外視で有言実行したと言えるが、結果がすべての世界で、勝つための策を講じたのかと言えば疑問が残る。

 オフはチーム再編を進め、FAでオリックスから伏見寅威(東海大~12年オ③)を獲得し、3件のトレードを成立させた。一方で主力の近藤健介(横浜高~11年④)はFAでチームを去り、人気者の杉谷拳士(帝京高~08年⑥)も引退を決めた。結果、16年の優勝メンバーで野手で残っているのは中島卓也(福岡工高~08年⑤)のみで、チームは世代交代が進んでいる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 6位 59勝81敗  3分 .234  100本   95個  483点  3.48  534点

 21年 5位 55勝68敗20分    .231    78本   77個  454点  3.32  515点

 20年 5位 53勝62敗  5分 .249    89本   80個  493点  4.02  528点

 19年 5位 65勝73敗  5分 .251    93本   48個  560点  3.76  590点

 18年 3位 74勝66敗  3分 .251  140本   98個  589点  3.77  586点  

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~上川畑大悟(内野手~NTT東日本⑧)

    20年~伊藤大海(投手~苫小牧駒大①)

 19年~なし

 18年~野村佑希(内野手花咲徳栄高②)

 17年~清宮幸太郎内野手早実高①)

 常に優勝争いに絡み、3年に一度は優勝するチーム方針のもと、ドラフトでチームを強化する戦略で、「育成の日本ハム」と言われ、ダルビッシュ有(東北高~04年①)や大谷翔平花巻東高~12年①)など文字通り数多くのスター選手を輩出した。

 過去5年のドラフトを見ても、伊藤が既にエース格に成長し、清宮と野村の左右の大砲候補も主力に成長し悪くはないと思うが、4年連続Bクラスの結果が物語るように、思うように進んでいないのも事実だ。ドラフト戦略の大方針は変わっておらず、育成中心のチームの平均年齢は、12球団で一番若い26.4歳(最も高いのは楽天の27.6歳)で、現状は投打に戦力が乏しく、発展途上なのは否めない。

 そんななか昨年は、新庄監督の意向が強く働いたドラフトと報道で見聞きしたが、即戦力にシフトした形になった。要は1年間のトライアウトで、現状の育成主体の戦力では上位進出が臨めないとの監督の判断であり、単年での戦略としては問題ないと言え、新庄監督の本気度も伝わるが、個人的にはあまり評価できなかった。

 高卒で入団し、原石からスター選手に駆け上がった新庄監督自身のように、スケールの大きい選手を育てて欲しく、何よりも昨年豊作だった地元出身の選手を全員スルーしたのは本当に残念だった。

 

●投手陣~中継ぎ陣が崩壊…一昨年改善した防御率は、昨年はリーグ5位まで後退

  とにかく厳しかったのはリリーフ陣で、防御率はリーグワーストの3.83。逆転負けもリーグ最多の35試合と競り合いに弱かった。クローザーは一昨年28セーブの杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)の穴を埋めることができず、ルーキー北山亘基(京産大~21年⑧)の9セーブが最多で、勝ちパターンを最後まで形成することができなかった。

 経験豊富な玉井大翔(新日鉄住金かずさマジック~16年⑧)の孤軍奮闘が光ったが、一昨年最多ホールドの堀瑞樹(広島新庄高~16年①)が11ホールドと精彩を欠き、鉄腕の宮西尚生関学大~07年③)も新人から続いてきた50試合登板が途切れた。

 一方で先発は、伊藤が2年連続の2桁勝利を上げ、上沢直之専大松戸高~11年⑥)と加藤貴之(新日鉄住金かずさマジック~15年②)も、規定投球回数をクリアしともに8勝を上げた。上沢はケガでの離脱が痛かったが、加藤貴は防御率3位、72年振りに最小与四球(11)の記録を塗り替えたが、打線の援護がなかった。

 このほか、ノーヒットノーランを達成したポンセ、2年目19歳の根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)がローテーションを守り、先発転向の鈴木健矢(JX-ENEOS~19年④)にも覚醒の予感が出てきた。 

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆伊藤大海(155回2/3)☆上沢直之(152回)☆加藤貴之(147回2/3)

     ポンセ(83回1/3)上原健太(73回1/3)根本悠楓(60回2/3)

 ・救援…北山亘基(55試合)吉田輝星(51試合)玉井大翔(50試合)

     堀 瑞樹(41試合)石川直也(36試合)古川侑利(34試合)

【今年度の予想】

 ・先発…加藤貴之 上沢直之 伊藤大海 上原健太 ポンセ 根本悠楓

    (吉田輝星 杉浦稔大 ※金村尚真 ※田中正義 ガント  鈴木健矢)

 ・中継…※矢澤宏太 玉井大翔 河野竜生 西村天裕 堀 瑞樹

    (宮西尚生 井口和朋 ロドリゲス ※斎藤友貴哉 ※斎藤鋼記 メネズ)

 ・抑え…石川直也 北山亘基 

 シーズン開幕前の最大の関心事はリリーフ陣強化で、伊藤を先発、リリーフどちらで起用するかの判断のなる。事実、伊藤はWBC代表ではリリーフを任せられることになっており、先発陣が揃えば伊藤をクローザーに回すことができる。

 そのためには新戦力の台頭が必要で、昨年ただ一人一軍未登板で終わったMLB通算24勝のガントや即戦力ルーキー金村尚真(富士大~22年①)の活躍や、移籍の田中正義(創価大~16年ソ①)の覚醒など条件は多い。ただ、今オフMLB移籍を希望している上沢や、同じくFA権取得の加藤貴も単年契約を結んでおり、根本を含めた若手の台頭を早める必要がある。

 リリーフ陣の再編は急務で、伊藤が抑えを任せられれば問題ないが、先発に回るようだと厳しくなる。昨年の成績だけ見れば北山や石川直也(山形中央高~14年④)、経験値なら玉井やロドリゲスにも可能性がある。また、河野竜生(JFE西日本~19年①)や移籍の斎藤鋼記(北照高~14年オ⑤)、メネズなど左のリリーフが豊富なだけに、調子さえ戻れば堀の抑えもあると思う。

 投手は両リーグ最多の38名が支配下登録され、頭数は十分にいる。反面、数的競争から質的な競争へ転化していかないと今シーズンも厳しい戦いになる。

 

●野手陣~今季は守備優先?打撃優先?今季も日替わり打線で臨むかに注目!

 143試合で143通りの打順で、石井一成(早大~16年②))に淺間大基(横浜高~14年③)、万波中正(横浜高~18年④)、ルーキーの上川畑に新加入のアルカンタラはすべての打順で先発出場し、まさしく日替わり打線で臨んだが、残念なから結果が出たとは言えない。

 11年目の松本剛(帝京高~11年②)が首位打者を獲得したが骨折で離脱し、近藤も3割を打ったが規定打席に届かず、期待の4番・野村は昨季もケガに悩まされ、年間通して主力選手が揃うことがなかった。

 ただ、本塁打は一気に増え18年以来100本を超えた。清宮が17本、万波が14本、今川優馬(JFE東日本~20年⑥)も10本塁打を放ったが、いずれも打率は2割前半で、確実性に乏しく、主力が揃っていれば、ここまでのチャンスを貰えていたが疑問だ。

 かつて少ない点差を守り抜いた鉄壁の守備陣も見る影がなく、失策数86と守備率はリーグワースト…、盗塁阻止率もリーグワーストで、頭の痛い数字が並んでいる。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…宇佐見真吾(81/237)古川裕大(36/106)

 内野手…☆清宮幸太郎(129/461)野村佑希(93/369) 石井一成(102/328)

     上川畑大悟(80/301)アルカンタラ(97/285)ヌニエス(63/180)

     谷内亮太(78/167)中島卓也(68/150)杉谷拳士(61/109)

     佐藤龍世(37/106)

 外野手…☆松本 剛(117/445)近藤健介(99/396)万波中正(100/314)

     今川優馬(94/309)淺間大基(75/240)木村文紀(38/101) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)今川優馬⑦      1)松本 剛⑧      

  2)浅間大基⑧           2)上川畑大悟⑥       

  3)石井一成⑥           3)近藤健介⑦    

  4)松本 剛⑨      4)野村佑希⑤      

  5)ヌニエス③      5)万波中正⑨      

  6)近藤健介DH       6)ヌニエスDH     

  7)佐藤龍世④      7)清宮幸太郎③   

  8)宇佐見真吾②     8)宇佐見真吾② 

  9)水野達稀⑤      9)アルカンタラ④  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…マルティネス 宇佐見真吾 ※伏見寅威(清水優心 古川裕大)

 内野手…※加藤豪将 上川畑大悟 野村佑希 アルカンタラ 中島卓也 清宮幸太郎

     谷内亮太 石井一成(水野達稀 細川凌平 ※山田遥楓 ※奈良間大己)

 外野手…松本 剛 ※江越大賀 五十幡亮汰 今川優馬 万波中正

    (浅間大基 木村文紀)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)松本 剛⑧      捕 手)伏見寅威(宇佐美真吾) 

  2)上川畑大悟⑥     一塁手清宮幸太郎

  3)清宮幸太郎③     二塁手)石井一成(加藤豪将

  4)野村佑希⑤         三塁手)野村佑希

  5)万波中正⑨         遊撃手)上川畑大悟(中島卓也

  6)アルカンタラDH     左翼手)今川優馬(江越大賀)

  7)今川優馬⑦         中堅手)松本 剛(五十幡亮汰)

  8)伏見寅威②      右翼手)万波中正

  9)石井一成④       D H)アルカンタラ(マルティネス) 

 今季は「優勝しか目指さない」言っている新庄監督。重視している守備優先か、はたまた打撃優先で行くのか、昨年敢行したトライアウトの結果がどう出るか注目したい。明確にレギュラーと呼べるのは松本だけで、他は捕手の伏見、一塁の清宮、三塁の野村に遊撃の上川畑がレギュラーを確立するシーズンになる。

 捕手は高い守備率(.990)を誇る伏見が加入し、正捕手不在の課題が解消された。昨年、最も多くマスクを被った宇佐見真吾(城西大~15年巨④)や、若手の古川裕大(上武大~20年③)等の競争に期待したい。

 課題は内野になり、清宮と野村はともに守備に不安があり、指名打者に有力な選手がいないことから、清宮と野村を一塁と指名打者で併用して、三塁は守備に定評のある谷内亮太(国学院大~12年ヤ⑥)や西武から移籍の山田遥楓(佐賀工高~14年西⑤)、外野の淺間と五十幡亮汰(中大~20年②)も三塁を守れ、起用法に注目が集まる。

 注目は二遊間で、堅守で巧打の上川畑は二塁と遊撃を守れ、石井とアルカンタラ、山田も内野のユーティリティプレーヤーだ。二塁は昨年開幕スタメンの水野達稀(JR四国~21年③)は守備は一級品で、MLBからの逆輸入ルーキーの加藤豪将(メッツ~22年③)もいる。遊撃も細川凌平(智弁和歌山高~20年④)やルーキーの奈良間大己(立正大~22年⑤)にもチャンスはある。

 一方、外野は守備も良く打撃がカギになる。飛躍が期待される今川に万波、3年目を迎える五十幡もそろそろ結果を出したい。ただ、期待の選手で新庄監督から名前が出るのが、3年連続無安打で阪神から移籍した江越大賀(駒大~14年神③)はやや寂しい。

 

期待の吉田も今季ではや5年目、先発かリリーフか判断が迫るシーズン

 注目の選手は、投手では吉田輝星(金足農高~18年①)で、昨年は51試合に登板し中継ぎでの適性を見せたが、防御率4.26では役割を果たしたとは言えない。本人はあくまで先発にこだわると言うが、今季ではや5年目を迎え決断する時期が近づいているのも事実。個人的には先発で見たい希望はあるが、現状はリリーフ向きと言え、ファンも悩ましく新庄監督の起用法に注目したい。

 野手は移籍の中日から移籍のマルティネスで、捕手登録だが起用は一塁か左翼、または指名打者になる。育成から始まり、NPB通算6年目を迎え27歳と年齢も若い。中日では十分に力を発揮したとは言えず、新天地で守備負担のない指名打者で一気に覚醒する気配も漂う。

 最後に、正直今季も厳しい戦いになると思う。新庄監督は序盤の50試合が大事と語っているが、前半戦をどういうメンバーを起用し、どういった野球で5球団と対峙していくのか注目したい。新球場元年を迎え、やはり観客動員数を上げるには、面白い+勝つ野球でないとファンも満足しない。優勝に目標を据えたたチームが、どういう風に変化していくのか楽しみは尽きない。

23年戦力展望☆中日~盤石な投手陣と深刻な貧打戦…不可解なトレードは活性化に繋がるか?

 ファンが待ち望んだ立浪新監督を迎え、逆襲を狙ったシーズン。ただ、大きな補強もなく期待より不安が大きいなか、終わってみれば16年以来の最下位に沈み、新監督には厳しい船出となった。

 最大の要因は誰が見ても分かるように、深刻な貧打に尽きる。得点数と本塁打数は12球団ワーストで、得点数トップのヤクルトとは200点以上の差があり、本塁打数はヤクルトの村上1人と6本差しかない…。1試合当たりの平均得点数は2.9と3点に満たないのは中日のみで、シーズン26度の完封負けは球団記録を更新するなど、打線に関しては頭を抱えてしまう数字が並ぶ。

 現有戦力の底上げで戦えると判断したと思うが、期待の石川昂弥(東邦高~19年①)は序盤にケガで早々と戦線離脱し、悩める根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)は本当に投手に転向してしまった。また、ドラフトで右のロングヒッターの大学生を一気に3名獲得するなど、大胆な指名も不発に終わった。

 弱り目に祟り目ではないが、根尾の投手転向の迷走劇を始め、シーズン前は茶髪とヒゲ禁止(今シーズンは解禁)が賛否を呼び、正遊撃手の京田陽太(日大~16年②)の試合途中の強制送還から、DeNAにトレードされるなど、ネガティブなニュースが悪目立ちしてしまった感は否めない。

 一方で、若手が成長したのは少ない好材料で、投手では高橋宏斗(中京大中京高~20年①)に覚醒の気配が漂い、チームでただ一人WBCに選出された。清水達也(花咲徳栄高~17年④)もリリーバーとしての素質を開花させ、野手では岡林が最多安打でレギュラーを獲得した。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗     打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 6位 66勝75敗 2分 .247    62本   66個  414点  3.28  495点

 21年 5位 55勝71敗17分   .237    69本   60個  405点  3.22  478点 

 20年 3位 60勝55敗 5分 .252    70本   33個  489点  3.84  489点

 19年 5位 68勝73敗 2分 .263    90本   63個  563点  3.72  544点

 18年 5位 63勝78敗 2分 .265    97本   61個  598点  4.36  654点

【過去5年のドラフトの主戦力】

    21年~なし

    20年~なし 

 19年~岡林勇希(外野手~菰野高⑤)

 18年~なし

 17年~なし

 13年から昨年までの10シーズンで、Aクラスは20年の一回だけと低迷しているが、その要因の一つはドラフトの不振で、過去5年の主力選手は、昨年ブレイクした岡林しかいない。

 それならばと10年スパンでも見ても、投手は柳裕也(明大~16年①)と藤嶋健人(東邦高~16年⑤)、小笠原慎之介東海大相模高~15年①)と福敬登(JR九州~15年④)、祖父江大輔トヨタ自動車~13年⑤)と主力が並ぶが、野手は京田と木下拓哉トヨタ自動車~15年③)、阿部寿樹(ホンダ~15年⑤)のみで、その阿部と京田はトレードで移籍してしまった。

 木下も阿部も良い選手だが、どちらかと言うと中距離打者でホームランバッターではない。中日がバンテリンドームに本拠地を変更したのは97年で、最近の話ではない。それにも係わらず、長距離砲と呼べる選手は福留孝介日本生命~98年①)しか見当たらなく、ドラフトで課題が解消されていない。

 また育成選手の獲得も、昨年こそ3名獲得したが、そもそも17年~21年の5年間で僅か6名、しかも全員が投手でとても課題を正しく認識してるとは思えず、本当にチームを強くしようとしているのかする姿勢を疑ってしまう。

 

●投手陣~盤石なリリーフ陣で、投手王国は健在!涌井の加入でさらに厚みを増した

  安定感のある投手陣は昨年も健在で、大野雄大(佛教大~10年①)と柳、小笠原が規定投球回数をクリアし、小笠原はキャリアハイの10勝を上げた。2年目の高橋宏は27回連続無失点の記録を打ち立て6勝、ベテラン左腕の松葉貴大(大体大~12年オ①)も同じく6勝を上げ、松葉はFA移籍も囁かれていたが残留を決めた。

 たが、先発陣で貯金できたのは小笠原だけで、打線の援護がないとは言え、物足りない結果に終わってしまった。また、6人目を確立することができず、主力の5名以外に先発マウンドには12名が登板したが、チャンスを活かす選手は現れなかった。そのなかでも上田洸太朗(享栄高~20年育②)と勝野昌慶(18年③)が、それぞれ8試合ずつに先発したのは期待の高さが窺える。

 一方で救援陣は万全で、先発の防御率3.46に対し、リリーフ陣の防御率は2.93と奮闘が光った。クローザーのRマルティネスは28試合連続無失点、防御率は驚異の0.97で最多セーブ数を獲得した。先発からリリーフに転向したロドリゲスも最優秀中継ぎに輝き、清水も54試合で32ホールドと勝ちパターンを担う活躍を見せた。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆大野雄大(157回)☆柳 裕也(153回1/3)☆小笠原慎之介(146回2/3)

     高橋宏斗(116回2/3)松葉貴大(100回)

 ・救援…Rマルティネス(56試合)ロドリゲス(56試合)清水達也(54試合)

       藤嶋健人(50試合)祖父江大輔(46試合)福 敬登(36試合)

       谷元圭介(34試合)森 博人(30試合)山本拓実(30試合)

【23年の予想】※は新加入

 ・先発…小笠原慎之介 柳 裕也 高橋宏斗 ※涌井秀章 大野雄大 松葉貴大 

      (福谷浩司 ※仲地礼亜 岡野祐一郎 勝野昌慶 鈴木博志 上田洸太朗)

 ・中継…森 博人 ロドリゲス 祖父江大輔 ※砂田毅樹 清水達也 藤嶋健人

      (根尾 昂 田島慎二 橋本侑樹 谷元圭介 福 敬登 山本拓実)       

 ・抑え…Rマルティネス

 今季は先発で、楽天からトレード加入した涌井秀章(横浜高~04年西①)を含めた5人(大野雄、柳、小笠原、高橋宏)は確定と言え、残りの1枠の争いに注目だ。

 順当ならば松葉で決まりだが、楽しみなのがルーキーの仲地礼亜(沖縄大~22年①)で、最速151キロに多彩な変化球を持ち合わせており、開幕ローテーションの可能性も高い。また、昨年育成から支配下登録され初勝利を挙げた左腕の上田に、勝野と先発転向の鈴木博志(ヤマハ~17年①)もまだ26歳と現在が全盛期、一昨年の開幕投手福谷浩司(慶大~12年①)も復活を期すシーズンになる。

 リリーフ陣は、Rマルティネスも残留を決め、今季もロドリゲスとのキューバコンビの活躍が期待される。ここに清水に藤嶋、山本拓実(市西宮高~17年⑥)、森博人(日体大~20年②)といった若手に加え、経験豊富なの祖父江と福、谷元圭介バイタルネット~08年日⑦)のベテランに、DeNAから通算75ホールドの左腕・砂田毅樹(明桜高~14年D育①)が加入したリリーフ陣は万全と言える。

 このほかの若手では、根尾や左腕の福島章太(倉敷工高~20年④)、昨年は故障で一軍登板のなかった石森大誠(火の国サラマンダーズ~21年③)や、支配下を目指す松田宣哲(名大~19年育①)なども控えており、プラスアルファも期待できる。また、育成契約になったがベテランの岩嵜翔市船橋高~05年ソ①)の復帰にも期待したい。

 

●野手陣~深刻な貧打戦は今年は解消できるか…新戦力の台頭ないと今季も厳しい

 打線については冒頭でも述べたが、昨年も得点力不足は深刻だった。ただ、一番の大島洋平日本生命~09年⑤)は、ヤクルトの村上と首位打者を争い、岡林は最多安打を放っている。この1~2番を擁しても、点数が獲れないのだから、いかに中軸が機能していないかが分かる。

 それならばと、犠打(リーグ1位)を絡め、機動力(リーグ3位)も活用しているが、こちらも点数に結びついていない。四球数はリーグ最少、出塁率阪神と並んでワーストで、相手投手が楽に投げられている裏返しだと思う。守備率はDeNAと並んでリーグトップなだけに、守り勝つ野球はできると思う。

 ただ、長打力不足はここ数年の最大の課題で、外国人選手の補強もなく、ルーキーに頼ること自体が無理な話で、繰り返しになるがその補強も育成も巧くいっているとは言えない。それにも係わらず、チーム打率が2年連続、得点数は3年連続最下位のなか、試合数、打席数ともにチーム最多の阿部を放出するなど、本当に不可解な補強が多い。

 また、ドラフト後、捕手は6名いたが、石橋康太(関東一高~18年④)はオフに手術し、2人は高卒ルーキーと高卒2年目で、木下が離脱すればどうなるだろうと心配していたが、ロッテから加藤匠馬(青学大~14年⑤)をトレードで譲渡してもらい課題が埋まった。中日のチーム編成の不可解さは、こういうところにも垣間見える。 

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…☆木下拓哉(120/466)Aマルティネス(82/266)郡司裕也(33/48)

 内野手…☆阿部寿樹(133/548)☆ビシエド(129/532)高橋周平(78/290)

     土田龍空(62/229)溝脇隼人(87/157)三ツ俣大樹(58/154)

     京田陽太(43/143)石川昂弥(37/141)

 外野手…☆岡林勇(142/608)大島洋平(109/482)鵜飼航丞(59/195)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)大島洋平⑧      1)大島洋平     

  2)岡林勇希⑨         2)岡林勇希⑨        

  3)福留孝介⑦              3)阿部寿樹④

  4)ビシエド③      4)ビシエド③      

  5)木下拓哉②      5)Aマルティネス⑦    

  6)阿部寿樹④      6)木下拓哉②       

  7)石川昂弥⑤      7)高橋周平⑤    

  8)京田陽太⑥      8)土田龍空⑥

  9)大野雄大①      9)大野雄大  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…木下拓哉 加藤匠馬 郡司裕也(石橋康太)

 内野手…※田中幹也 高橋周平 ※村松開人 石川昂弥 土田龍空 溝脇隼人

       ビシエド ※カリステ(石垣雅海 高松 渡  福田永将 ※福永裕基) 

 外野手…鵜飼航丞 大島洋平 ※アキーノ 加藤翔平 岡林勇

    (※細川成也 福元悠真 三好大倫 後藤駿太 ※アルモンテ)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)岡林勇希⑨      捕 手)木下拓哉(石橋康太)

  2)大島洋平⑧      一塁手ビシエド

  3)ビシエド③      二塁手)溝脇隼人(村松開人)

  4)アキーノ⑨      三塁手)高橋周平(カリステ)

  5)木下拓哉②      遊撃手)土田龍空(田中幹也)

  6)高橋周平⑤      左翼手大島洋平(細川成也)

  7)土田龍空⑥      中堅手)岡林勇

  8)溝脇隼人④      右翼手)アキーノ(鵜飼航丞)

  9)大野雄大①               

 繰り返しになるが、なぜ阿部と京田を放出したのか…。阿部は長打力こそないが、チャンスメーカーにもポイントゲッターにもなれる選手で、二塁と三塁、外野も守れる。京田も打つほうの課題は多いが、遊撃の守備は12球団髄一で、立浪監督が基本にしていたセンターライン強化で、肝とも言える二遊間を解体する意図が分からない。

 昨年のドラフトで二塁の村松開人(明大~22年②)と遊撃の田中幹也(亜大~22年⑥)を獲得し、即戦力の福永裕基(日本新薬~22年⑦)も二塁を守れる。遊撃の土田龍空(近江高~20年③)の成長も著しく、若手台頭の自信からの英断かもしれないが、正直、冒険と言わざるを得ない。

 オフ最大の補強は、MLB通算41本塁打のアキーノの加入で、期待されるのはもちろん長打力。日本野球にアジャストできれば、元々は中距離ヒッターのビシエドの負担も軽減され、本来の巧打が活かせる相乗効果も期待できる。また、内外野どこでも守れるカリステも新加入し、NPB3年で通算打率.316のアルモンテも復帰し、外国人選手の競争環境も整った。

 このほか、やはり期待がかかるのは長距離砲で、内野なら石川に石垣雅海(酒田南高~16年③)、外野は鵜飼航丞(駒大~21年②)やDeNAから加入した細川成也(明秀日立高~16年D⑤)がレギュラーを争い、福元悠真(大商大~21年⑥)は一塁でも出場している。また、捕手の郡司裕也(慶大~19年④)も打力を活かして外野にもチャレンジしており、一軍で結果を出すには良い機会になると思う。

 守備で最大の注目は二遊間で、三塁に石川が入れば、二塁に高橋周平(東海大甲府高~11年①)、遊撃には土田が現時点のベストな布陣で、石垣や溝脇隼人(九州学院高~12年⑤)、ルーキーを加えたし烈な争いに期待したい。また、アキーノの加入で、岡林が中堅に回り、大島は左翼になることで守備負担も軽減されるだろう。大島も今年38歳のシーズンを迎え、後継争いにも注目したい。

 

●期待の選手~投手は5度目の最多勝を狙うタフネス右腕、野手はオールドルーキー

 期待の選手は投手では、楽天から移籍の涌井に注目している。西武から始まり、ロッテ、楽天でエースとして活躍し、今年19年目、シーズン中に38歳を迎えるベテランが、中日のエースナンバー#20を背負い、初めてセ・リーグでプレーする。年齢を感じさせないタフネスな粘りの投球が身上で、5度目の最多勝も夢ではない。

 野手では、社会人4年を経た27歳のオールドルーキー福永に期待したい。過去2回の指名漏れを味わい、昨年のドラフトでも支配下選手で全体最後に呼ばれた苦労人だ。ちなみに同級生は西武の高橋光や巨人の岡本がおり、プロ入りまでのその苦労が分かると思う。本職は三塁で、二塁も守れることができるが、魅力は何といっても逆方向にも打てる長打力で、即戦力としてレギュラーを狙って良い。

 

 正直、今季も厳しい戦いになり、上位進出は簡単ではないと思うが、投打で若手ぼ主力が育ちつつあり、立浪監督の荒療治ともいえるトレードでチームが活性化することに期待したい。最下位から2連覇したオリックスのように、高い投手力をベースに、若手を積極的に起用して、今季は将来の土台を作り、来季には本気で優勝できるメンバーを育てていきたい。そうすれば、結果Aクラスも見えてると思う。

春のキャンプ~期待の若手(セ・リーグ編)

 既にプロ野球キャンプも10日過ぎましたが、先回に続き一軍キャンプスタートの各チームの若手有望(24歳以下に限定 ※ルーキー除く)選手を紹介します。

 

●投手のブレイク候補はWBC最年少投手、打者は巨人に逸材揃う

 最初にセ・リーグの投打のブレイク候補ですが、投手の一番手はWBC代表に最年少で選出の高橋宏斗(中京大中京高~20年①)で、2年目の昨年19試合で6勝、116回を投げ防御率2.47は、若きエース誕生に期待がかかる。ちなみに100イニング以上を投げ、奪三振率が10を超えているのは、高橋とロッテの佐々木朗しかおらず(オリックスの山本由伸でも9.56)、WBCの大舞台を経てシーズンを席捲してくれることを期待したい。

 次は阪神西純矢(創志学園高~19年①)岡留英貴(亜大~21年⑤)の2人を挙げたい。3年目の西純は昨年13試合に先発し6勝(3敗)をマーク、77回で防御率2.68の好成績を上げた。層の厚い阪神投手陣の状況もあり登板機会が限られたが、今シーズンは1年ローテーションを守りたい。また、西純の楽しみは打撃の良さで、ここまで打席も期待できる選手はツインズの前田健太以来ではないかと思う。

 岡留は昨年ファームで、リリーフでチーム2番目の36試合に登板し、防御率1点台の好成績にも係わらず一軍での登板がなかった。最速150キロを超えるアンダースローは、チームにもいないタイプで早く一軍で見てみたい。

 野手は忖度なしに、巨人の秋広優人(二松学舎大高~20年⑤)増田陸(明秀日立高~18年②)、育成の鈴木大和(北海学園大~21年育①)を挙げたい。秋広は身長2メートルを超える大型選手で、昨年から松井秀喜の背番号55を受け継いでいる。その期待通り、規格外の長打力が魅力の選手で、打撃も器用なため率も稼げるが、やはりフルスイングで長打を狙って欲しい。現状、守備がネックだが、下位打線で三振を恐れず長打力を磨けば、ヤクルトの村上と本塁打を争えるくらいのポテンシャルを秘めている。

 増田陸も守備に課題があるが、丸の右翼コンバートで空いた中堅手候補で、天性とも言える打撃力は申し分なく、足も武器で使えるので(ただ、昨年2盗塁は物足りないが…)、守備と走塁を磨いてレギュラー獲りのチャンスを活かしたい。

 鈴木は野手の育成選手ではただ一人一軍キャンプスタートで、支配下に一番近い選手と言える。武器は超が俊足と脚力を活かした広い守備範囲で、打撃には課題があるが、ソフトバンクの周東やロッテの和田のように一芸で十分に食べていける。キャンプ終了後に3桁の背番号が卒業できるか注目したい。

 

◇ヤクルト

 期待値ナンバーワンは山下輝(法大~21年①)で、昨年はケガの影響もありスタートで出遅れたが、2試合に先発しプロ初勝利を挙げた。チームは先発ローテーションが定まらないなか、高橋や石川に続く先発左腕として今季は期待がかかる。

 市川悠太(明徳義塾高~18年③)も昨年、先発のマウンドを踏み、一昨年ローテーション投手で活躍したが、足踏み状態の金久保優斗(東海大望洋高~17年⑤)とともに、先発候補に名乗りを挙げたい。2年目で抜擢されたのが竹山日向(享栄高~21年⑤)で、昨年は体力づくりがメインのなか、一軍スタートは期待値の高さが窺える。

 打者では、昨年の日本シリーズ第2戦で劇的な同点3ランを放った内山壮真(星綾高~20年③)は、昨年36試合で先発マスクを被っており、壁は高いが中村と正捕手を争う。ルーキーで優勝を決めるサヨナラ安打を放った丸山和郁(明大~21年②)は、昨年71試合出場もスタメンは僅かに7試合と、今季は左翼のレギュラーを青木や山崎と争う形になる。同じ外野手で並木秀尊(独協大~20年⑤)にも注目で、昨年ファームで盗塁王(24盗塁)に輝いており、今季は得意の脚で一軍に定着したい。

 昨年は長岡秀樹(八千代松陰高~19年⑤)が遊撃に定着したが、人一倍悔しいのが同期入団の武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)だろう。大きく水を開けられたが、同期の活躍は間違いなく励みになると思う。昨年、支配下登録された赤羽由紘(BC信濃~20年育②)は、内外野守れるユーティリティプレーヤーとして存在感を強めたい。

 

◇DeNA

 DeNAには投打でそろそろという選手が多く、投手では阪口晧亮(北海高~17年③)、野手では森敬斗(桐蔭学園高~19年①)が代表格だ。阪口は期待されてはや5年が経過し、ファームではエース的な存在だが、一軍ではわずかに1試合のみ。既にファームではやることはなく、決して先発陣が揃っている訳ではないので、今季こそブレイクに期待したい。

 森は今季4年目で、まだ焦ることはないとは思うが、大和からレギュラーを奪えずもたもたしているうちに中日から名手・京田が加入した。守備と強肩、走塁は問題ないだけに打撃でアピールしていきたい。

 このほか、昨年即戦力として期待された三浦銀二(法大~21年④)も、一軍はわずかに6試合で防御率も10点台と洗礼を浴びた。ファームではまずまずの成績を残しているだけに、とにかく与えられた役割で結果を残したい。宮城滝太(滋賀学園高~18年育①)石川達也(法大~20年育①)もファームでは20試合以上に登板。特に左腕の石川は、中日に移籍した砂田の後の左のリリーバーの座を狙う。また、将来のエース候補の小園健太(市和歌山高~21年①)も一軍スタートになっており、焦ることはないが2年目の飛躍に期待したい。

 野手では走攻守揃った知野直人(BC新潟~18年⑥)や、昨年野手に転向した育成の勝又温史(日大鶴ケ丘高~18年④)が一軍に抜擢されており、ともにファームで6本塁打の長打力も見せており、知野は一軍帯同、勝又は支配下再登録を勝ち取りたい。

 

阪神

 先述した西純や岡留とともに桐敷拓馬(新潟医療福祉大~21年③)も一軍スタートになっている。現状、阪神の先発左腕は伊藤将のみで、同じ左腕の桐敷にかかる期待は大きく、昨年も一軍の出場7試合で3試合は先発登板で期待値の高さが窺える。ファームでは74回(13試合)を投げて防御率は0点台と結果は残せており、今季プロ初勝利を挙げたい。

 野手では、5年目の小幡竜平(延岡学園高~18年②)と4年目の井上広大(履正社高~19年②)への期待値が高いが、そろそろ出てこないと、チャンスも貰えなくなる時期に差し掛かっている。小幡は守備はチーム随一だが、やはり打撃が課題。昨年は本職の遊撃ではなく二塁での出場がほとんどで、今季は中野の二塁コンバートもあり、再度レギュラーに挑戦したい。

 長距離砲と期待された井上も、今年のドラフトでは同学年選手が入団してくる。外野は佐藤輝が三塁に専念すれば、ポジションは2つ空くことになる。昨年のファームではリーグ最多の110試合に出場し、打席数も安打数も最多だが、打率は2割そこそこで本塁打は11本と確実性が課題で、このまま未完の大器で終わりたくない。

 このほかキャンプでの一軍スタートにはならなかったが、3年目の高寺望夢(上田西高~20年⑦)は昨季リーグ2位の打率に加え、出塁率長打率も井上を上回っており、先にブレイクする可能性も高い。

 

◇巨人

 今季は目立った補強もなく、正直、戦力の底上げが進んだとは言えないが、言い換えれば若手にチャンスが十分にある。特に投手陣は、昨季はチーム史上最多の8選手が初勝利を上げた反面、12球団ワーストの防御率のなか若手の台頭に期待したい。

 先発では赤星優志(日大~21年③)が、昨季13試合で先発しており、今季は1年間先発ローテーションを維持できれば、昨季の5勝を上回ることもできる。残念ながら一軍キャンプからは外れたが、堀田賢慎(青森山田高~19年①)も、手術明けの昨年2勝(8試合)を上げており、22歳と焦る歳でもなく、じっくり調整して欲しい。

 菊地大稀(桐蔭横浜大~21年育⑥)は、ルーキーイヤーの昨年の防御率は5点台は及第点とは言えないが、一軍での16試合登板は大きな経験になったはずだ。リリーフ陣の不足は明らかな課題であり、今季は勝ちパターンを担えるような成長に期待したい。左腕では昨年4試合に先発した井上温大(前橋商高~19年④)、一軍未登板の山田龍聖(JR東日本~21年②)のデビューにも期待したい。

 野手では、湯浅大(健大高崎高~17年⑧)も期待の一人。昨年63試合と出番は増えているが、守備固めや代走がほとんどで、打力アップが課題になる。

 正直、この時期の一軍は意味がないと言ってしまえばそれまでだが、このほか育成の京本真(明豊高~21年育⑦)保科広一(遊学館高~20年育①)など、ここまで若手の名前が挙がる巨人キャンプは近年記憶がない。

 

◇広島

 巨人とは逆に、少し若手が少ない印象を受けるのが広島。そのなかで藤井黎来(大曲工高~17年育②)は期待の投手の一人。昨年の登板は14イニングと少ないが、奪三振はイニング数を上回る15個を奪っており、奪三振率の高さが強みだ。決して層が厚いとは言えないリリーフ陣に割って入る力は十分にある。

 また、復活という表現は適当ではないかもしれないが、一昨年2試合未勝利から17試合に先発した遠藤淳志(霞ヶ浦高~17年⑤)も、先発の座を確保するキャンプになる。少なくとも昨年の4勝7敗の勝ち負けが逆転させるシーズンにしたい。

 一方、野手では今季支配下登録された二俣翔一(磐田東高~21年育①)や2年目の田村俊介(愛工大名電高~21年④)が抜擢されている。捕手の二俣は内野手に転向し、捕手に専念する坂倉が抜けた三塁のポジションを狙う。入団前は二刀流で話題の田村も野手一本に専念。秋山や西川、野間と外野のレギュラー陣は田村と同じ左打者が主力だが、持ち前の長打力でアピールをしたい。

 同じ左打ちの外野手で育成の木下元秀(敦賀気比高~19年育②)も期待の一人で、ファームで結果を残し、いつ支配下になると思っていたが二俣に先を越されてしまった。同じタイプの多いチーム状況のなか支配下が見送られている感じがあり、田村とは逆に打撃の確実性を上げてまずは支配下を勝ち取りたい。

 

◇中日

 昨年は高橋宏のほかに、昨年まで通算17試合登板の清水達也(花咲徳栄高~17年④)がチーム3番目の54試合に登板し、リリーバーとしての素質が開花した。同じく山本拓実(市西宮高~17年⑥)も、30試合(こちらも通算28試合)で5ホールドと、勝ちパターンを任せられるなど信頼度を高めた。

 先発では左腕の福島章太(倉敷工高~20年④)が、ファームで規定投球回をクリアし6勝を挙げ、先発候補として期待がかかる。同学年には高橋や一足先に初勝利を上げた同じ左腕の上田洸太朗(享栄高~20年育②)がおり、福島も負けていられない。

 今季の中日は野手に注目で、阿部と京田が抜けた二遊間と外野にチャンスがあるが、蓋を開けてみれば林勇希(菰野高~19年⑤)を除いた一軍スタートの若手は、土田龍空(近江高~20年③)鵜飼航丞(駒大~21年②)福元悠真(大商大~21年⑥)とやや物足りない。

 ただ土田は、昨年は京田を上回る59試合に先発し、打率は2割半ばだが、得点圏打率はチームトップの.333と勝負強さも兼ね備えている。チャンスメークのほかにポイントゲッターとしての役割も期待でき、今季は遊撃のレギュラーを確立したい。

 一昨年、大学生の外野手、右の長距離砲と同じタイプの選手が3人入団したなか、頭一つ抜けているのが鵜飼で、48試合に先発し4本塁打でさすがの長打力は見せた。確実性か課題だが、ファームで2割9分の高打率を残している。福元も1試合ながら一軍出場を果たし、初安打を放っており同期のライバル競争にも注目したい。

春のキャンプ~期待の若手(パ・リーグ編)

 今週よりプロ野球キャンプも始まり、いよいよ球春到来です。そこで、今回は一軍キャンプスタートの各チームの若手有望選手(24歳以下に限定 ※ルーキー除く)を紹介したいと思います。

 

パ・リーグ投打の今季のブレイク1番手はロッテのエース&4番候補

 先ず、投打のブレイク候補を3名ずつ挙げてみた。投手の一番手は、やはりロッテの佐々木朗希(大船渡高~19年①)になる。史上最年少で完全試合を達成し、侍ジャパンでも主戦を担うが、まだシーズン通しての活躍がない。昨シーズンも9勝のうち6勝は前半戦に挙げたもので、吉井監督のコメントにあるように、シーズン完走できれば自ずと2桁勝利はクリアできるだろう。エース不在のチームにあって、真のエース誕生に期待したい。

 2人目は西武の隅田知一郎(西日本工大~21年①)で、昨シーズンは好投しても援護に恵まれず1勝10敗で終わったが、打線との噛み合わせが良ければ逆になっていてもおかしくなく期待の2年目になる。同じ左腕で、日本ハム根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)もブレイク候補の1人だ。2年目の昨年は一軍デビューを果たし、13試合(60回)で3勝を挙げ、防御率2.52は見事な成績で、投手陣が課題のチームのなか、開幕からの先発ローテーションの可能性も高い。

 打者のブレイク候補の一番手は、ロッテの山口航輝(明桜高~18④)で、昨年はチーム最多の16本塁打を放っている。逆方向にも本塁打を打てるのが強みで、多少差し込まれても遠くに飛ばすパワーは圧巻で、オフには西武の山川との自主トレで下半身を徹底的に鍛えており、今季は冗談ではなく30本以上は期待できる。

 同じスラッガー日本ハム野村佑希(花咲徳栄高~18年②)も4番候補になる。広い札幌ドームから新球場に代わることで、本塁打も20本前後、勝負強く高い打率も残せることもでき、3割打てれば打点もついてくるだろう。課題は守備とケガで、毎年のようにケガで離脱しており、今季こそはフルシーズン出場したい。

 最後は西武の渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)で、昨年は一軍出場なしの悔しいシーズンになった。ファームで打率1割台はいただけないが、10本塁打を放ち持ち前の長打力を発揮している。中村も40歳を超え、三塁のレギュラーポジションは空いており、3年目を迎える今季ブレイクしたい。

 

オリックス

 目玉は吉田正が抜けた左翼手争いになり、俊足の渡部遼人(慶大~21年④)に長打力が魅力の元謙大(中京高~20年②)来田涼斗(明石商高~20年③)池田陵真(大阪桐蔭高~21年⑤)は昨季ファームで規定打席をクリアしている。現時点での本命は中川圭だと思うがが、中川圭を内野に追いやるくらいの若手の競争に注目したい。

 また、ベテラン安達の後継で、野口智哉(関大~21年②)太田椋(天理高~18年①)二塁手争いも注目で、セールスポイントの打撃がアピールのカギになる。ともに遊撃も守ることもでき、紅林弘太郎(駿河総合高~19年②)も決して安泰とは言えず、若手の競争が確実にチームの底上げに繋がるだろう。

 育成選手で、内野手園部佳太(BC福島~21年育②)大里昂生(東北福祉大~21年育③)、外野手の山中堯之(BC茨城~21年育①)の同期3人も一軍キャンプに抜擢されている。園部は長打力、大里は機動力が武器で、現時点で支配下選手が60名と少なく、支配下登録の可能性が高い。

 投手では、昨年42試合に登板した本田仁海(星槎湘南高~17年④)は、今季のリリーフ陣が平野佳以外は白紙の状況なかで、昨年のように勝ちパターンを任いたい。プロ初勝利を上げた東晃平(神戸弘陵高~17年育②)も一軍定着を狙う。キャンプは二軍スタートだが、昨年のプレーオフで初先発の噂もあった山下舜平太(福岡大大濠高~20年①)の初登板も楽しみの一つになる。

 

ソフトバンク

 今オフに大補強を行ったチームだけに、一軍キャンプメンバーを見ても若手の有望株と呼べるのは渡邊陸(神村学園高~18年育①)正木智也(慶大~21年②)しかいない。渡邊はFAで嶺井が加入したこもあり、海野との3番手争いになり、得意の打撃でアピールしたい。正木もFAで近藤が加入し、外野のポジションは現段階では埋まっている。柳田や近藤の休養時の少ないチャンスを争うことになり、チームに不足している右の大砲候補だけに限られたチャンスをモノにしていきたい。

 投手はいずれも育成選手になるが、二軍スタートながら昨年ファームでチーム最多の7勝を挙げた重田倫明(国士館大~18年育③)、4勝の三浦瑞樹(東北福祉大~21年育④)、昨シーズン途中に支配下登録され、再昇格を目指す中村亮太(東農大オホーツク~20年育⑧)に注目したい。

 野手でも内野手緒方理貢(駒大~21年育⑤)勝蓮大稀(興南高~19年育④)伊藤大将(八戸学院光星高~21年育③)、外野手では川村友斗(仙台大~21年育②)仲田慶介(福岡大~21年育⑭)が、昨年ファームで30試合以上に出場し経験を積んでおり、残り3枠の少ない支配下枠を争う形になる。

 

◇西武

 冒頭のブレイク候補の一人で、最後まで迷ったのが渡邊勇太朗(浦和学院高~18年②)で、一昨年は後半から先発ローテーションに定着し4勝を挙げたが、昨年は僅か3試合登板で0勝1敗は意外だった。平良の先発転向で競争が激しくなったが、隅田とともに先発の一角に喰いこむ再起に期待したい。

 さらに西武には、佐藤隼輔(筑波大~21年②)浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ~19年②)の両左腕も控える。佐藤も先発ローテーション候補で、浜屋は昨年、まさかの一軍未登板で、平良の先発転向、武隈や佐野の中継ぎ左腕の引退で、リリーフ陣が手薄になったこのチャンスを活かしたい。

 野手でポジションが決まっているのは、一塁の山川に二塁の外崎、遊撃の源田だけであとはすべて白紙で若手には十分すぎるほどのチャンスがある。森のFA移籍で正捕手を柘植と争う古賀悠斗(中大~21年③)、両打ちの川野涼多(九州学院高~19年④)も昨年2試合に先発出場しプロ初安打を放っており、渡部とともに三塁を争うが、いずれは本職の遊撃でポスト源田を目指していきたい。

 外野手の高木渉(真颯館高~17年育①)西川愛也(花咲徳栄高~17年②)も、そろそろブレイクして欲しい選手で、その期待の顕われで一軍キャンプスタートになる。高木は昨季、ファームで渡部を上回る15本塁打本塁打王、一軍で30打数0安打の西川もファームでは高打率を残しており、ファームでやることはもうないはずだ。

 

楽天

 ベテランが主力のチーム状況は相変わらずで、正直なところ若手の迫力不足は否めない…。昨年のドラフトで指名した大学・社会人ルーキー6名中5名が一軍スタートのなか、投手では昨年支配下登録された小峯新陸(鹿児島城西高~19年育②)と、ファームで防御率1点台の松井友飛(金沢学院大~21年⑤)に期待がかかる。松井友は先発が基本線だと思うが、ロングリリーフも面白いと思う。小峯は昨年の6試合登板を自信にして、一昨年のような鉄壁のリリーフ陣の一角を担いたい。

 野手では、昨年開幕マスクの安田悠馬(愛知大~21年②)に注目で、開幕早々コロナ感染で離脱したのち、そのまま一軍復帰できずにシーズンを終えた。炭谷に太田とライバルは多いが、持ち前の長打力を武器に正捕手を狙いたい。

 もう一人期待なのが黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)で、その実力と期待値の高さは誰もが認めるところだが、二塁には浅村がおり、さらに今季は中日から阿部も加入した。また、内野は茂木に鈴木大、山崎等々…同じタイプの左打者が多く、率直に言って気の毒な気さえする。

 最後にともに一軍経験はないが、3年目の投手・内星龍(履正社高~20年⑥)内野手入江大樹(仙台育英高~20年⑤)が一軍スタートしており、どこまで一軍に食らいついていけるか注目したい。

 

◇ロッテ

 冒頭で山口をイチ推しで挙げたが、このほかにもスケールの大きい打者が控える。ルーキーながら70試合に先発出場した松川虎生(市和歌山高~21年①)は、昨年は守備が評価されたが、元々は野手指名も検討されたスラッガーで、今季は打撃のほうも期待したい。また、山本大斗(開星高~20年育③)は、昨年ファーム2番目の12本塁打を放ち、西川僚祐(東海大相模高~20年⑤)イースタンでナンバーワンの長打率を残しており、スケール感のあるスラッガーが着実に育ちつつある。

 さらに、安田尚憲(履正社高~17年①)が、昨年ようやく2桁本塁打の足掛かりを掴み、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)は5年目を迎え、今季結果を残さないとズルズルいってしまいそうで、吉井監督が言うように長打を狙うよりも得意の足を活かしたモデルチェンジができるかに注目したい。即戦力として期待されながら、不本意な成績に終わった池田来翔(国士館大~21年②)もポスト中村奨の一番手として、攻守にアピールしたいところだ。

 今季のロッテは、一軍と二軍が分けられていないが、投手で注目なには中森俊介(明石商高~20年②)で、昨季ファームで初登板を果たし、先発、リリーフと起用法はこれからだが、3年目の今シーズン一気にブレイクする予感も漂う。また、キャンプ初戦の先発に抜擢された秋山正雲(二松学舎大高~21年④)に、同じく候補の一人だった森遼大朗(都城商高~17年育②)にも期待がかかる。

 

日本ハム

 昨年一年間、全員がトライアウトの言葉通り、一軍キャンプでも期待の若手選手が並ぶ。最初の紅白戦で先発したのは、昨年1試合登板の2年目の畔柳亨丞(中京大中京高~21年⑤)で、ルーキーながら昨年開幕投手も務めた北山亘基(京産大~21年⑧)のように期待がかかる。その北山も昨年はルーキーながらハードな役割を経験して、疲労もあっただろうが、今季は決められた役割のなかでしっかりと結果を残したい。

 このほか、先発候補では根本のほかに北浦竜次(白鷗大足利高~17年⑤)がおり、吉田輝星(金足農高~18年①)は先発かリリーフか、今季は判断しても良いタイミングと言える。また、西武から移籍の松岡洸希(BC武蔵~19年西③)は、昨年はファームで好投したものの一軍は未登板で終えたが、今年は出番が増えそうな気配だ。長谷川威展(金沢学院大~21年④)は左のリリーフとしての期待がかかる。

 野手は野村とやはり清宮幸太郎早実高~17年①)だろう。昨年は初めて規定打席に達し、18本塁打でようやく大器の片りんを見せ、今季真価が問われるシーズンと言っても過言ではない。また、万波中正(横浜高~18年④)も昨年はキャリアハイの成績を残しており、ポテンシャルの高さを活かして今季はレギュラーを確立したい。

 また、ともに指名順位が4位のアベレージヒッターの細川凌平(智弁和歌山高~20年④)と、長打力が魅力の阪口楽(岐阜一高~21年④)とタイプの違う内野手も一軍キャンプに抜擢されており、まさかの開幕スタメンもあるかも知れない。

22年新入団選手~パ・リーグ編

オリックスバファローズ(60名)

  相変わらず山本由伸と吉田正尚がチームの中心だが、昨年とは違いリリーフ陣は固定せずに相手打線や試合の流れで起用し、打順も先発オーダーが141通りとまさしく全員で勝ち取った連覇であり日本一だった。

 自慢の投手陣は、先発候補として山下舜平太やルーキーの曽谷など楽しみな若手が名を連ね、リリーフはワゲスパックが残留、中継ぎでコットンも加入した。今年ブレイクした阿部翔太に山崎颯一郎、宇田川優希が来季も活躍できれば隙のない投手陣になる。

 打線は不安が多く、吉田正と66試合で先発マスクの伏見寅威が移籍し、森が加入したものの、一人で穴を埋めるのは厳しい。中川圭太のポジション次第だが、一塁と二塁、左翼にDHとレギュラー不在のポジションは多く、若手がチャンスを掴みたい。

 外国人選手はまだ3名で、リリーフ左腕や長距離砲が候補になる。支配下枠も余裕があるが、自由契約の選手でハマる選手が見当たらず、育成には実績のある富山凌雅や阪神から移籍の小野、ルーキーで才木も控え、現有戦力の底上げが現実的になる。

【新入団選手】

 投 手…曽谷龍平(22年①/#17)斎藤響介(22年③/#26)

       日高暖己(22年⑤/#47)小野泰己(16年神②/#130)

       西濱勇星(22年育①/#030)才木海翔(22年育②/#031)

       入山海斗(22年育③/#032)

 捕 手…森 友哉(13年西①/#4)石川 亮(13年日⑧/#37)

       村上喬一朗(22年育⑤/#034)

 内野手…シュウィンデル(カブス/未定)内藤 鵬(22年②/#25)

      上野響平(19年日③/#124)セデーニョ(3Aダイヤモンドバックス/#121)

 外野手…渡邊大樹(15年ヤ⑥/#49)杉澤 龍(22年④/#33)

       茶野篤政(22年育④/#033)

 

福岡ソフトバンクホークス(67名)

 昨年、開幕8連勝と最高のスタートを切ったものの、マジック1から2連敗して優勝を逃した。その悔しさからか、今オフは積極的な補強を見せている。投手では先発で阪神からガンケル、クローザーでロッテからオスナを獲得した。野手もFAの嶺井の加入が早々に決まり、近藤もパ・リーグ5球団の大争奪戦を制した。

 来季の優勝に向け、着々と準備が進んでいるが不安要素も多い。投手陣はエース千賀がメッツに移籍し、東浜巨に石川柊太、和田毅に続く先発陣の再編が課題になるが、エース不在の状況は否めない。野手は近藤の加入と栗林陵矢の三塁コンバートで、DHを除くすべてのレギュラーポジションが埋まり、柳町達や野村勇、海野隆司等の中堅どころが控えに周ることにより、この間言われ続けていた世代交代の課題が進まない。

 来季から4軍制を敷くが支配下は既に67名。また、人数以上にFAや他球団で活躍した外国人選手で補強することで、育成から支配下、そしてレギュラーに上がるには相当狭き門になり、チームが活性化するのかは個人的には疑問を感じる。

【新入団選手】

 投 手…ガンケル(阪神/#27)オスナ(ロッテ/#54)

       古川侑利(13年楽④/#63)大津亮介(22年②/#26)

       大野稼頭央(22年④/#60)松本 晴(22年⑤/#49)

       渡辺佑樹(17年楽④/#172)赤羽 蓮(22年育①/#158)

       木村 光(22年育③/#160)内野海斗(22年育④/#161)

       岡植純平(22年育⑤/#162)佐々木明都(22年育⑥/#163)

       水口創太(22年育⑦/#164)宮崎 颯(22年育⑧/#165)

       前田 純(22年育⑩/#167)

 捕 手…嶺井博希(13年D③/#12)吉田賢吾(22年⑥/#64)

       盛島綾大(22年⑭/#171)

 内野手…アストゥディーヨ(マーリンズ/#4)イヒネ・イツア(22年①/#36)

       山下恭吾(22年育②/#159)佐藤航太(22年育⑪/#168)

       飛田悠成(22年育⑫/#169)西尾歩真(22年育⑬/#170)

 外野手…近藤健介(11年日④/#3)ホーキンス(米独立L#10)

       甲斐生海(22年③/#37)重松凱人(22年育⑨/#166)

       オスーナ(育成未定)

 

埼玉西武ライオンズ(66名)

 今季はチームが激変し、4年連続リーグ最下位のチーム防御率が、一気にリーグ1位に改善した。反面、山賊打線と呼ばれた強力打線は鳴りを潜め、山川穂高が打撃2冠とひとり気を吐いたが、チーム打率は最下位と投高打低のチームに変わってしまった。

 投手陣は平良海馬が本人の強い意思もあり先発転向が決まり、リリーフ陣の再編が課題のなか、森の人的補償で移籍した張奕、新外国人のティノコも加入した。ただ、状況によっては、増井浩俊や三上朋也など経験豊富なベテランの獲得があるかも知れない。

 不安なのは野手陣で、森が抜けた正捕手は、今季スタメンマスク31試合の柘植世那と20試合の古賀悠斗が候補になる。また、秋山翔吾(広島)移籍以降不在の一番打者、レギュラー不在の外野手、主軸の中村剛也栗山巧も40歳を迎えるなど課題は多く、若手がこのチャンスを掴まないと厳しい。そんななか的確な補強が光り、ペイトンとルーキー蛭間は外野のレギュラーと一番打者候補、レギュラー不在の三塁手はマキノンと外野も守れる陽川が加わり、競争がチームの底上げになることを期待したい。 

【新入団選手】

 投 手…張 奕(16年オ①/#47)ティノコ(レンジャース/#54)

       青山美夏人(22年④/#29)山田陽翔(22年⑤/#36)       

       三浦大輝(22年育③/#121)

 捕 手…野田海人(22年③/#38)是澤涼輔(22年育④/#122)

 内野手…佐藤龍世(18年西⑦/#58)陽川尚将(13年神③/#52)

       マキノン(アスレチックス/#30)児玉亮涼(22年⑥/#0)

       野村和輝(22年育①/#118)

 外野手…ぺイトン(3Aホワイトソックス/#10) 蛭間拓哉(22年①/#9)

       古川雄大(22年②/#33)日隈モンテル(22年②/#119)

 

東北楽天ゴールデンイーグルス(67名)

 石井監督が述べたように、現役ドラフトで今オフの補強は終えたと言える。今シーズンは最大18の貯金を吐き出し、終わってみれば借金2の歴史的な大失速でBクラスに沈んだ。その最大の要因は投手陣で、チーム防御率はリーグ最下位と先発、リリーフともに課題は多い。そういった状況から、今年のドラフトでは本指名6名中5名を投手が占め、しかも全員が大学生・社会人の即戦力で固めたところに危機感が顕われている。

 経験豊富な小孫や制球力が武器の渡辺は、デビューが早そうで、技巧派左腕のバニュエロスと合わせて先発候補になる。リリーフは20歳中盤の安楽智大や西口直人、宮森智志が安定感を増し、松井裕樹に繋ぐ形を確立したい。

 野手は課題の右打者で、内外野守れる阿部にメジャー通算130本のフランコが加入し、平良も小柄ながら長打力と機動力を備えている。スタメンに右打者が浅村栄斗、捕手の炭谷銀仁朗または太田光しかいない打線も変わるだろう。12球団トップの守備も含め、優勝を狙える戦力が揃っており、投手陣中心に守り切る試合を増やしたい。

【新入団選手】

 投 手…バニュエロス(パイレーツ/#13)荘司康誠(22年①/#19)

       小孫竜二(22年②/#22)渡辺翔太(22年③/#31)

       伊藤茉央(22年④/#41)林 優樹(22年⑥/#64)

       古賀康誠(22年育②/#130)竹下瑛広(22年育③/155)

 捕 手…なし

 内野手…阿部寿樹(15年中⑤/#4)フランコ(ナショナルズ/#23)

       平良竜哉(22年⑤/#30)ウレーニャ(巨人/#138)

       辰見鴻之介(22年育①/#146)永田颯太郎(22年育④/#131)

 外野手…正髄優弥(18年広⑥/#67)

 

千葉ロッテマリーンズ(65名)

 今季は主力が軒並み不振で、投打に世代交代が進むシーズンになった。結果は5位に終わったが期待の持てる若手が台頭してきた。

 投手陣は佐々木朗希が、来季1年間ローテーションを守れれば待望のエース誕生へ期待が持てる。実績のあるメルセデスが加入し、岩下大輝や種市篤暉が完全復活を果たせば層は厚くなる。課題はオスナが移籍したクローザーだが、吉井監督は抑えから投手陣の編成を進めるプランを練っており、どういった形になるか起用に注目したい。個人的には、前レッドソックス澤村拓一の復帰などは感涙ものなのだが…。

 課題の打線は安田尚憲と山口航輝、佐藤都志也も目途が立ち、今季の高部瑛斗のようにそろそろ期待の若手を卒業したい。レギュラー不在の遊撃は、今年のドラフトで友杉が加入し、藤岡裕大や茶谷健太と消去法ではなくレベルの高い争いに期待したい。長打を打てる外国人選手の補強も必須で、あと1~2名は外国人選手の補強が見込まれ、ポランコのほかヤクルトのギブレハンや阪神のマルテ獲得もアリだと思う。

【新入団選手】

 投 手…メルセデス(巨人/未定)カスティーヨ(タイガース/未定)

     菊地吏玖(22年①/#28)田中晴也(22年③/#35)

       高野脩汰(22年④/#34) 吉川悠斗(22年育①/#127)

       白濱快起(22年育②/#128)

 捕 手…なし

 内野手…大下誠一郎(19年オ育⑥/#39)友杉篤輝(22年②/#10)

       金田優太(22年⑤/#68)勝又琉偉(22年育③/#129)

       黒川凱星(22年育④/#130)

 外野手…ポランコ(巨人/未定)

 

北海道日本ハムファイターズ(66名)

 今季は全選手トライアウトの方針のなか、投手の高卒ルーキーと怪我のガント以外、全選手が一軍を経験した。ただ、層の薄さは否めず、一度も最下位から抜け出せないままシーズンを終えたこともあり。今オフは積極的な補強を進めている。

 投手陣の課題は防御率リーグ最下位のリリーフ陣で、来季は伊藤大海のクローザー転向の報道もあるが、トレードで獲得した斎藤友と斎藤綱、現役ドラフトの松岡、ルーキーの宮内といずれもリリーバーで補強ポイントが明確になっている。

 一方で打線は、お世辞にも主力に取って代わる若手が育たないまま世代交代が進んでいる。松本剛首位打者を獲得し、清宮幸太郎も自己最多の本塁打を記録するなど明るい話題もあるが、近藤の穴を埋めるには十分ではなく厳しい戦いが予想される。

 現状66名で、近藤の人的補償で1名移籍することを想定すれば、オフの補強は終了した。ただ、トレードの可能性はまだあり、捕手が8名と数的にも余裕があり、捕手不足のヤクルトやDeNA,巨人とリリーバーまたは外野手を補強しても良いと思う。

【新入団選手】

 投 手…斎藤友貴哉(18年神④/#48)斎藤綱記(14年オ⑤/#67)

       松岡洸希(19年西③/#68)矢澤宏太(22年①/#12)

          金村尚真(22年②/#24)安西叶翔(22年④/#54)

     宮内春輝(22年⑥/#62)中山晶量(22年育②/#126)

        山本晃大(22年育④/#128)

 捕 手…伏見寅威(12年オ③/#23)マルティネス(中日/未定)

 内野手…山田遥楓(14年西⑤/#49)加藤豪将(22年③/#3)

       奈良間大己(22年⑤/#58)      

 外野手…江越大賀(14年神③/#37)藤田大清(22年育①/#125) 

       山口アタル(22年育③/#127)

22年新入団選手~セ・リーグ編

東京ヤクルトスワローズ(66名)

 2年連続2桁勝利ゼロの先発陣に、即戦力ルーキーの吉村とエスピナル、左腕ピーターズの加入で先発陣は厚みを増した。痛かったのは、クローザーのマクガフの退団で、清水昇や石山泰稚、新外国人のケラを候補に、リリーフ陣の再編は喫緊の課題になる。実績は乏しいが、新加入の尾仲(阪神)や左腕の成田(ロッテ)にも期待したい。

 2年連続12球団トップの得点数をたたき出した強力打線は健在で、懸念されていたサンタナも残留を決めた。オフの補強も的確で、右打者が不足している内野手でルーキーの北村と中日から三ツ俣を獲得し、19歳~22歳がゼロの外野手に澤井と大西が加わり課題を解消した。唯一、心配なのは支配下が5名しかいない捕手で、育成からの支配下登録、捕手が豊富なソフトバンクやロッテ、広島とのトレードはアリだと思う。

 投手の補強はほぼ終了と言え、支配下から育成契約になった近藤弘樹や、巨人から移籍の沼田も控え補強の必要はない。一方で野手はあと3名程度が予想され捕手を補強したい。外国人選手は6名(投手4/野手2)だが、野手はあと1名は欲しいところだ。 

【新入団選手】

  投 手…尾西祐哉(17年D⑥/#52)成田 翔(15年ロ③/#49)

        エスピナル(レッズ/#99)ピーターズ(パイレーツ/#63)

        ケラ(3Aドジャース#11)吉村貢司郎(22年①#21)

        坂本拓己(22年④#56)沼田翔平(18年巨育③/#015)

  捕 手…橋本星哉(22年育①/#023)

  内野手…三ツ俣大樹(10年オ②/#66)北村恵吾(22年⑤#50)

  外野手…西村瑠伊斗(22年②#36)澤井 廉(22年③#42)

 

★横浜D℮NAベイスターズ(63名)

 今季は投手陣が改善を見せ、さらに失策数はリーグ最少と、一発頼みの大味な野球から接戦をモノにできるチームに生まれ変わり、オフの補強も明確な意思を感じる。

 投手陣は復活した山崎康晃の残留が大きく、昨年フル回転したリリーフ陣強化で、新外国人のウェンデルケンにドラフトで橋本を獲得。また、不足気味の先発右腕で即戦力の吉野、中日から移籍の笠原は先発は勿論のこと、左の中継ぎとしても期待できる。

 野手ではレギュラー不在の遊撃に、守備の名手・京田が加入した。強力打線のなかで京田に求められるのは“繋ぎ”の役割で良いチームに加入したと思うし、森敬斗への刺激にもなる。唯一、不安なのは捕手で、毎年レギュラーが流動的ななか、嶺井博希がFAでソフトバンクに移籍した。松尾は時間は必要で、育成の上甲にもチャンスがある。

 現状、支配下は63名で、投手は外国人選手や育成からの支配下登録になるだろう。野手も補強を急ぐ必要はないが、全体的に年齢バランスが悪く、捕手ならロッテ、内野手なら阪神とのトレード、楽天から戦力外の内田靖人はピースにハマる選手だ。

【新入団選手】

 投 手…笠原祥太郎(16年中④/#47) ウェンデルケン(3Aリノ/未定)

       吉野光樹(22年②/#24)森下瑠大(21年④/#36)

       橋本達弥(22年⑤/#35)今野瑠斗(22年育③/108)

       渡辺明貴(22年④/106)草野陽斗(22年育⑤/101)

 捕 手…松尾汐恩(22年①/#5)上甲凌大(22年育①/127)

 内野手京田陽太(16年中②/#98) 林 琢真(22年③/#00)

       西巻賢二(17年楽⑥/#129)鈴木 蓮(22年育②/100)

 外野手…なし

 

阪神タイガース(69名)

 12球団ナンバーワンの防御率、チーム打率と得点はリーグ5位、そして7年連続のリーグワーストの失策数と課題は明白だ。ドラフトは高校生中心に育成を重点に置き、現有戦力の底上げと今季機能しなかった外国人選手での補強を行った。

 鉄壁の投手陣はFAの西勇輝に岩崎優、最後まで悩んだ岩貞祐太も残留を決めた。今季固定できできなかったクローザーは湯浅京己に目途が立ちそうななか、リリーフでビーズリー、先発候補でB・ケラーと左腕の大竹が加わり投手陣はさらに厚みを増した。

 課題の野手は、獲得した選手がすべて右打者と徹底した補強になった。日本ハムから加入した渡邊はストレートにめっぽう強く、ノイジーは広角に打てる三塁手で二塁や外野も守れ、外野はともにスラッガーの森下とミエセスが加入した。ただ、ミエセスは三振が多く、渡邊とノイジーは守備が巧いとは言えず、課題の解消には疑問が残る。

 支配下は既に69名で補強は終了と言え、あとは交換トレードになるが、野手の最年長が31歳の原口文仁になり、若いチームを鼓舞するベテランの存在が必要だと思う。

【新入団選手】

 投 手…大竹耕太郎(17年ソ育④/#49) ビーズリー(3Aパイレーツ/#99 )

       ブライアン・ケラー(3Aレッドソックス/#24))門別啓人(22年②/#30)

     茨木秀俊(22年④/#48)富田 蓮(22年⑥/#50)     

 捕 手…なし

 内野手…渡邊 諒(13年日①/#25)高濱祐仁(14年日⑦/#43)

       ノイジー(3Aアススレチックス/#7)戸井零士(22年⑤/#44)       

 外野手…ミエセス(3Aレッドソックス/#55)森下翔太(22年①/#1)

     井坪陽生(22年③/#40)野口恭佑(22年育①/#121)

 

読売ジャイアンツ(55名)

 現在、支配下は12球団最小の55名…。例年通り支配下から多くの選手を育成契約にしたが、一軍クラスは、投手なら高橋優貴に中川晧太、平内龍太と高木京介。野手は梶谷隆幸と立岡宗一郎しかおらず、全員が支配下になっても61名。現状、外国人選手は4名で、例年ならば、あと3~4名が加わると思うが編成の遅さは否めない。

 リーグワーストの防御率本塁打頼みの大味な打線、昨季リーグ最少の失策数もリーグ5位に後退し、課題山積のなか補強らしい補強がない。ともに大ベテランの松田と長野が加入したが、戦力というよりはチームの引き締めの役割が強いように感じる。

 丸佳浩の右翼コンバートに備え、オコエのような難しい選手を含む中堅候補を多く獲得したが、既に白紙に戻す報道もあり、補強にチグハグさを感じる。育成選手を見ても今季のドラフトで9名中8名が高校生で時間はかかり、今オフのFAに参戦することすらできず、補強が既知として進まないなかファン以外でも大丈夫かと思ってしまう。

【新入団選手】

 投 手…ビーディー(3Aインディアナポリス/#33)メンデス(MEXモンテレイ/#65)

       ロペス(メッツ/#99)田中千晴(22年③#48)

       船迫大雅(22年⑥/#58)松井 颯(22年育①/#021)

       田村朋輝(22年育②/#023)吉村優聖歩(21年育③/#026)

       北村流音(22年育⑦/#027)森本哲星(22年育⑧/#034)

 捕 手…なし

 内野手松田宣浩(05年ソ希望/#23)門脇 誠(22年④/35)

       中田歩夢(22年育③/#002)相沢白虎(22年育④/#008)

 外野手…長野久義(09年巨①/#7)オコエ瑠偉(15年楽①/#50)

       浅野翔吾(22年①/#51)萩尾匡也(22年②/#12)      

       三塚琉生(22年育⑤/#031)大城 元(22年育⑥/#044)

 

広島東洋カープ(67名)

 夏場に投手陣が息切れすると、長打力と機動力不足のちぐはぐな戦いのまま終戦。特に、盗塁数わずかに26個と機動力がお家芸だったチームとは思えない結果になった。

 課題の一つは投手陣で、先発は大瀬良大地に九里亜蓮、森下暢仁、床田寛樹に次ぐ選手が必要で、リリーフは栗林良史に繋ぐセットアッパーが必要になる。そんななか巨人から戸根を獲得できたのはプラスだが、即戦力ルーキーの益田と河野、左腕の長谷部のうち、1~2名が期待通り戦力にならないと、大きな上積みがない分厳しい。

 打線の課題の長打力は、新外国人のデビッドソンはメジャー通算54本塁打スラッガーで、今季捕手に専念する坂倉将吾が抜けた三塁の候補になる。また、機動力は俊足の久保を獲得したが、チーム全体で走塁に対する意識を高めないと改善にはならない。

 現状、67名で計算できる先発投手が欲しいところだが、ここ数年トレードに積極的ではなく、あっても外国人選手の補強になりそう。野手では育成の木下元秀の評価が高く、二俣に続いて支配下契約の可能性があり、シーズン中の補強になりそうだ。

【新入団選手】

 投 手…戸根千明(14年巨②/#49)斎藤優汰(22年①/#47)

       益田武尚(22年③/#26)河野 佳(22年⑤/#46)

       長谷部銀次(22年⑥/#39)辻 大雅(22年育③/#125)

 捕 手…清水叶人(22年④/#62)

 内野手…デビッドソン(3Aラスベガス/#95)内田湘大(22年②/#63)

       二俣翔一(20年育①/#99)※支配下登録

 外野手…久保 修(22年⑦/#56)名原典彦(22年育①/#121)

       中村貴浩(22年育②/#123)

 

中日ドラゴンズ(64名)

 大した補強もないまま迎えた今シーズンは、大方の予想通りと言えばそれまでだが最下位に沈んだ。強力投手陣は先発陣に陰りが見え、課題の打線は1試合平均2.9得点は12球団最低で、本塁打も12球団ワーストだった。

 やはり課題は打線で、特にクリーンアップの編成がポイントになる。昨年、首位打者争いをした大島洋平と、最多安打の岡林勇希の1・2番コンビを擁しても点数に繋がらないのは、3~5番が機能しなかったからで、ビシエドを中心に再編成する必要がある。4番候補の石川昂弥をはじめ、昨年のドラフトや現役ドラフトでは細川を獲得し、右の大砲候補だけは数多くおり、1人でも2人でもこのチャンスを掴んで欲しい。

 今オフは賛否両論のあるトレードで話題には事欠かない。そのなかで、先発陣の整備が課題のなか涌井の加入は大きい。37歳の年齢がネックだが、単年で見れば間違いなく戦力になる。不安なのは捕手で、木下拓哉に続く2番手捕手が見当たらない。阪神の長坂拳弥やロッテの柿沼友哉、日本ハムの清水優心はトレードで狙い目だと思う。

【新入団選手】

 投 手… 涌井秀章(04年西①/#20)砂田毅樹(13年D育①/#39)

     仲地礼亜(22年①/#31)森山暁生(22年③/#40)

          福島章太(20年④/#64)※支配下登録

     松山晋也(22年育①/211)野中天翔(22年育②/212)                

 捕 手…山浅龍之介(22年④/#57)

 内野手…カリステ(MEXモンテレイ/未定)村松開人(22年②/#5)

       濱将乃介(22年⑤/#37)田中幹也(22年⑥/#2)

       福永裕基(22年⑦/#68)樋口正修(22年育③/#213)

 外野手…細川成也(16年D⑤/#0)アルモンテ(モンテレイ/未定)

       アキーノ(レッズ/未定)