ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年戦力展望☆巨人~ドラフトの低迷もあり不安が残る投手陣…若手の台頭が待ち遠しい

 屈辱的な日本シリーズ2年連続0勝で、昨季は日本一奪回に向け、オフは得意の積極的な補強を行った。DeNAから井納翔一(NTT東日本~12年D③)と梶谷隆幸(開星高~06年横③)をFAで両獲りすると、メジャー通算196本塁打のスモークと、韓国プロ野球で40本塁打40盗塁のテームズを獲得。賛否はあったが、シーズン途中に日本ハムから中田翔大阪桐蔭高~07年日①)をも獲得した。

 しかし結果は借金1の3位で終了し、Bクラス転落の危機すらあった。何とかCSファイナルステージまでこぎつけたが、ヤクルトに一矢も報いることができず敗退した。

 シーズンを振り返るとスタートは良く、前半戦も主力の離脱はあったが、貯金10で後半戦に入ると8月末には首位に立っている。しかし、9月に入ると歯車が狂いだし、阪神との首位攻防戦で2敗1分で首位から落ちると、その後は5連敗、10連敗と大きな連敗があり優勝争いから脱落した。

 冒頭に述べた新戦力は、井納は僅か5試合(5回)の登板で0勝、DeNA時代からしょっちゅうケガをしていた梶谷も不安が的中し、7月以降は出番なしに終わった。スモークは途中退団、テームズはデビュー戦でアキレス腱を断裂して1試合で退団した。毒にも薬にもなると言われた中田の獲得も起爆剤にはならず、CSの最終打席で力のない代打三振を喫した姿にかつての面影はなかった。

 終盤戦は連敗続きで、補強の失敗や、矢継ぎ早に投手を変えるマシンガン継投など、全権監督として原監督へファンから批判が集中。若手の台頭など、明るいニュースも少なく、成績以上に何とも後味の悪いシーズンになってしまった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗       打率 本塁打  盗塁   得点 防御率 失点 

 21年 3位 61勝62敗20分 .242  169本   65個  552点  3.63  541点

 20年 1位 67勝45敗  8分 .255  135本   80個  532点  3.34  421点 

 19年 1位 77勝64敗  2分 .257  183本   83個  663点  3.77  573点

 18年 3位 67勝71敗  5分 .257  152本   61個  625点  3.79  575点

 17年 4位 72勝68敗  3分 .249  113本   56個  536点  3.31  504点  

【過去5年のドラフトの主戦力】 

 20年~なし

 19年~なし

 18年~高橋優貴(投手~八戸学院大①)戸郷翔征(投手~聖心ウルスラ高⑥)

 17年~大城卓三(捕手~NTT西日本③)

 16年~なし 

 ドラフトはとにかく酷い…。多少、ひいき目に見ても戦力になっているのは吉川尚輝(中京学院大~16年①)と松原聖弥(明星大~16年育⑤)しかいない。19~20年で13名指名しているが、一軍に出場したのは平内龍太(亜大~20年①)の3試合(0勝)と秋広優人(二松学舎大高~20年⑤)の1打席(無安打)だけで、あとは全員一度も一軍の出場すらなく、ここ2年間のドラフトは、戦力として全く機能していない。まさに背筋が凍る思いだが、その危機感が巨人には圧倒的に不足している。

 育成選手も16年~20年で34名指名しているが、戦力になっているのは松原だけで、投手で支配下になったのは4名で0勝、野手も松原のほか4名いるが、退団した山下航汰(健大高崎高~18年育①)の2安打のみで、とても成功しているとはお世辞にも言えない。

 ドラフトの1位入札で、クジが12連敗と気の毒な部分はあるが、巨人の1位指名を見てみると、高橋こそ主力になっているが、未完の大学生が多く、チームの編成やスカウトのエゴみたいのを感じる。昨年も扇田大勢(関西国際大~21年①)を1位指名したが、悪いが2位以下でも獲れた選手。1位で隅田知一郎(西武)を指名したのなら、同じ左腕で山下輝(ヤクルト)や佐藤隼輔(西武)も残っていたし、即戦力重視なら廣畑敦也(ロッテ)、将来性で森木大智(阪神)なら納得もできたが…。

 その大勢も、チームは先発起用を明言しているが、本人は指名後の会見で「中継ぎや抑えを任される投手になりたい」と述べるなど、チグハグな面が目立ち、ドラフト戦略を根本的に見直す必要があると思う。

●投手陣~エースは誰に?脆弱な先発陣と疲労が心配なリリーフ陣で不安要素が多い

 昨季は9月より先発陣を中4~5日のローテーションに切り替えたものの、思うような成果は出なかった。11勝を上げた高橋も9月以降は1勝のみで、チーム最多投球回数の戸郷も9勝のうち8勝は前半戦の勝ち星、不振で2軍落ちも経験している。

 エースの菅野智之東海大~12年①)も故障頻発で、ここ数年はシーズンを完走できず昨年も6勝で終えた。MLBで結果を残せずチームに復帰した山口俊(柳ケ浦高~05年横①)も2勝と、ここぞという大事なゲームを任せられる柱が不足した。

 先発陣が脆弱なうえに、中4~5日のローテーションでは完投そもそもが頭になく、しわ寄せは当然リリーフ陣に寄る。鍵谷陽平(中大~12年日③)を筆頭に、中川晧太(東海大~15年⑦)に高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、畠世周(近大~16年②)とクローザーのビエイラの5選手が50試合以上に登板している。左のワンポイントの大江竜聖(二松学舎大高~16年⑥)、デラロサも40試合以上に登板し、さすがに勤続疲労が心配だ。

 こういった状況のなかでも、若手の底上げはほぼなく、戸根千秋(日大~14年②)や桜井俊貴(立命大~15年①)など、いつもの名前が並ぶ。また、田中豊樹(日本文理大~15年日⑤)などは昨年39試合に登板したが、オフには育成契約である。投手陣の層が決して厚くないにも係わらず、正直、何を考えているのか理解できない。

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆戸郷翔征(151回2/3)☆高橋優貴(140回2/3)菅野智之(115回2/3)

     メルセデス(86回)山口 俊(78回1/3)サンチェス(73回)

     今村信貴(63回)

 ・救援…鍵谷陽平(59試合)中川晧太(58試合)ビエイラ(56試合)

       高梨雄平(55試合)畠 世周(52試合)大江竜聖(47試合)

     デラロサ(46試合) 田中豊樹(39試合)

【今年度の予想】

 ・先発…山口 俊 菅野智之 戸郷翔征 メルセデス 高橋優貴

       平内龍太 ※大勢 山﨑伊織 今村信貴 ※山田龍聖 ※アンドリース 

     ※赤星優志 戸田懐生   

 ・中継…デラロサ 鍵谷陽平 中川晧太 畠 世周 高梨雄平 大江竜聖     

       桜井俊貴 戸根千秋 高木京介 

 ・抑え…ビエイラ

 一言でいえば、今季は絶対的なエースがいない。菅野が投手陣の柱なのは間違いないが、ここ数年はケガで満足のいくシーズンがなく、フル稼働を期待するのは酷だ。

 数字だけ見れば高橋と戸郷が先発ローテーション当確で、2人ともエース候補なのだが、ともにキャンプでの評価が芳しくない。高橋は課題の制球難は克服されておらず、戸郷も相変わらずアバウトな投球でローテーション入りは明言されていない。今村信貴(太成学院高~11年②)も昨季は防御率2点台と、数字を見れば悪くないのだが、ベンチからの信頼は今一つで、今年もローテーション争いから始まる。

 既に菅野が開幕投手に内定しており、山口とメルセデスまでは決まりになる。残り2枠を若手と新戦力が争う。新外国人のアンドリースはMLB28勝、制球力の良い技巧派右腕で、まだ来日できていないが日本の野球にフィットしそうな気がする。

 平内や山﨑伊織(東海大~20年②)、戸田懐生(四国IL徳島~20年育⑦)の若手に期待する声が多いが、申し訳ないが実績はゼロに近く、山﨑はルーキーイヤーをリハビリに費やしており今年が実質デビューになる。あとはルーキーの大勢と赤星優志(日大~21年③)等が候補で、ここから一気に何人もブレイクすることは考えにくく、先発陣の薄さは危機的状況と言える。今季も中4~5日ローテーションになるようだが、裏を返せば6人揃わないからだと思ってしまう。

 リリーフ陣も枚数は少ない。鍵谷や中川、高梨など主力は明らかに登板過多で、昨年は東京オリンピックの変則日程でオフの期間が短く、疲労がどこまで回復できているか微妙だ。ましてや今季は延長12回制で、昨年のようなマシンガン継投は出来ない。先発ローテーションから外れた若手を育成しながら起用する形になる。

 そのなかでクローザーのビエイラは注目だ。NPB最速の166キロに、変化球の精度も増して昨年7~8月は月間MVPにも輝いている。まだ29歳と若く、今季はクローザーとして素質が完全開花するかも知れず、どのようにビエイラまで繋ぐかがポイントになる。

 最後に育成契約選手の支配下も急ぐ必要があると思う。故障が癒え先発テストされている堀田賢慎(青森山田高~19年①)をはじめ、横川凱(大阪桐蔭高~18年④)も期待の若手左腕、実績のある田中やオリックスから加入した鈴木優(雪谷高~15年オ⑨)など支配下枠には余裕があり、投手陣が課題なだけに早めの対応が必要だと思うが…。 

 野手陣~今季は一発頼みではなく繋がりのある打線へ、守備は捕手がカギを握る

 昨年は本塁打こそリーグ1位の169本だが、打率.242はリーグ5位と奮わず、盗塁数もリーグ4位で、一発頼みの大味な打線になり得点数もリーグ4位に沈んだ。

 新戦力がことごとく機能しないなか、やはり頼りになったのは主力で、岡本和真(智弁学園高~14年①)が2年連続で本塁打王打点王に輝き、4番として全試合出場を果たした。坂本勇人光星学院高~06年高①)は骨折で、丸佳浩(千葉経大高~07年高③)も不振で離脱期間もあったが、終わってみれば最低限の数字は残した。ウィーラーも安定した数字を残し、毎年当てつけのように新外国人が入団するなか、やはり頼りになったのはウィーラーだった。

 また松原は、巨人として育成選手初の規定打席をクリアし、27試合連続安打を記録するなどでブレイク。12本塁打とパンチ力も見せ、走ってはチーム最多の15盗塁でリードオフマンの役割を十分に果たした。

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…大城卓三(125/386)炭谷銀仁朗(51/124)田中貴也(43/38)

 内野手…☆岡本和真(143/592)☆坂本勇人(177/487)吉川尚輝(108/329)

       若林基弘(96/242)中島宏之(81/195)廣岡大志(78/117)

     中田 翔(34/106)北村拓己(53/103)

 外野手…☆松原聖弥(135/477)☆丸 佳浩(118/457)☆ウィーラー(121/427)    

     梶谷隆幸(61/246)亀井善行(92/206)スモーク(34/125)   

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)梶谷隆幸⑨      1)松原聖弥⑨      

  2)若林基弘④         2坂本勇人⑥       

  3)坂本勇人⑥           3)丸 佳浩⑧    

  4)岡本和真⑤      4)岡本和真⑤     

  5)丸 佳浩⑧      5)スモーク③     

  6)ウィーラー③     6)ウィーラー⑦      

  7)大城卓三②      7)大城卓三②      

  8)松原聖弥⑦      8)吉川尚輝④

  9)菅野智之①      9)戸郷翔征①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…小林誠司 大城卓三 岸田行倫(山瀬慎之助) 

 内野手…増田大輝 吉川尚輝 中島宏之 坂本勇人 中田 翔 岡本和真 廣岡大志

       若林基弘 ウィーラー(湯浅 大 中山礼都 北村拓己 秋広優人) 

 外野手…丸 佳浩 松原聖弥 梶谷隆幸 ※ポランコ 

    (石川慎吾 ※岡田悠希 重信慎之介 ※ウォーカー 八百板卓丸)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)松原聖弥⑨      捕 手)大城卓三(岸田行倫) 

  2)坂本勇人⑥      一塁手)中田 翔(北村拓己)

  3)丸 佳浩⑧      二塁手)吉川尚輝(若林基弘)

  4)岡本和真⑤      三塁手)岡本和真

  5)中田 翔③      遊撃手)坂本勇人

  6)ウィーラー⑦     左翼手)ウィーラー(ポランコ)

  7)大城卓三②         中堅手)丸 佳浩

  8)吉川尚輝④      右翼手)松原聖弥(梶谷隆幸

  9)菅野智之①  

 今季は捕手がカギを握る。大城は打撃は良いが守備とリードに課題があり、小林誠司日本生命~13年①)は逆に守備力は高いが打撃がサッパリだ。3割までとは言わないが、せめて2割5分くらい打ってくれれば、大城を一塁や外野で起用できるのだが…。強肩の山瀬慎之助(星稜高~19年⑤)の評価が上がっているが、打撃は発展途上でレギュラーはまだ厳しい。こうなると何故、炭谷(楽天)を放出したのか不思議だ。

 内野は三塁の岡本と、遊撃の坂本が決まりで、一塁は実績のある中田と中島宏之(伊丹北高~00年西⑤)にウィーラーも控えており、調子を見ての起用になる。二塁は吉川がいるが、今季も「ケガがなければ」が条件になり、スイッチヒッターの若林基弘(JX-ENEOS~17年⑥)や打撃に定評のある北村拓己(亜大~17年④))にもチャンスはある。

 本来であれば坂本は年齢的にも負担の少ない三塁で起用し、岡本が一塁に回る布陣が理想で、廣岡大志(智弁学園高~15年ヤ②)や中山礼都(中京大中京高~20年③)は坂本を脅かす活躍に期待したい。

 外野は中堅の丸は決まりで、右翼は松原と梶谷の争いになるが、個人的には余程のことがない限り松原で行って欲しい。左翼はウィーラーと新外国人のポランコ、ウォーカーの助っ人枠になる。

 ポランコはMLB96本塁打の大砲で、昨季も107試合に出場し、足も早くメジャーでは98盗塁も記録している。ウォーカーはメジャー経験はないものの、米独立リーグで2年連続MVPを獲得し、長打力と走力を兼ね備えており、未知数ながら日本野球にフィットして大化けする可能性もある。

 打順でカギを握るのは1番と5番で、松原と梶谷はともに出塁率を上げたい。坂本~丸~岡本と続く2~4番は不動のオーダーと言え、5番が機能すれば気の抜けない打線になり、実績のある中田やポランコが候補になる。今季は投手陣に不安があるだけに、求めれるのは打ち勝つ野球で、超攻撃型オーダーで良いと思う。一方で長打力頼みの一発打線ではなく、湯浅大(健大高崎高~17年⑧)や増田大輝(四国IK徳島~15年育①)は代走のスペシャリスト、小技が使える重信慎之介(早大~15年②)など適材適所の起用法もポイントになると思う。

優勝を狙うには先発投手陣の整備が必要。今季は打ち勝つ野球で優勝を狙う

 今年注目の選手では、投手は山﨑伊織に注目している。大学4年時に肘の手術を受けたなか、ドラフト指名され昨年1年間はリハビリに充てた。肘の故障さえなければ1位競合もあった逸材で、キャンプでも問題なく投げており、今季いきなりローテーションに入ることも夢ではない。

 野手は中山礼都で、これまで坂本の牙城だった遊撃に、坂本にとって代わりそうな若手有望株が出てきた。ファームでは規定打席未達ながら3割を打っており、あとは守備で信頼を勝ち取りたい。まずは与えられた場面でしっかり結果を残していくシーズンになる。

 今季の順位予想は、正直優勝は厳しいかなと思う。打線は良いが、打線は水物で計算できない。やはり投手力が不安でで、特に先発陣は見劣りしてしまう。今季のセ・リーグは本命なしの混戦模様で、優勝もBクラスの可能性もある。

22年戦力展望☆楽天~新戦力加入で打線は強化!主力の離脱が無ければ優勝を狙える

 昨年は開幕前にチームのレジェンド田中将大駒大苫小牧高~06年①)の復帰が決まり、スーパールーキー早川の加入もあって、優勝候補に挙げられていた。スタートは良く、4月を首位で終えると、その後は勝率5割を維持しながら前半戦は2位でターンした。

 ただ、後半戦に入ると勢いに乗れないゲームが続き、大きな連敗もないが連勝もなく、借金生活は無かったものの、結局は昨年より1つ順位を上げての3位でシーズンを終えた。結局は20年のシーズン同様、4~6月の前半戦はまずまずも、7月以降に失速し、2年続けて同じような流れになり、CSでもロッテに良いところもなく、1敗1分で早々と敗退した。

 一昨年は打線がリーグナンバーワンの得点数を上げた一方で投手陣が悪く、特にリリーフ陣が打ち込まれ、逆転負けを喫する展開が多かった。しかし昨年はこれが一転し、チーム防御率こそリーグ4位だが、リリーフ陣は12球団トップの防御率2.75まで改善した。

 しかし投手陣に反比例するように昨季は打線が奮わず、チーム打率こそリーグ3位だが、得点数は試合数の少ない一昨年よりも低かった。元々機動力は乏しく、打ち勝つ野球だったが、昨年はチャンスに1本が出ずに残塁が多く、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)や新外国人のディクソン、カスティーヨの不振もあり長打力も不足した。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 16年 3位 66勝62敗15分 .243  108本   45個  532点  3.40  507点

 20年 4位 55勝57敗  8分 .258  112本   67個  557点  4.19  522点

 19年 3位 71勝68敗  4分 .251  141本   48個  614点  3.74  578点

 18年 6位 58勝82敗  3分 .241  132本   69個  520点  3.78  583点

 17年 3位 77勝63敗  3分 .254  135本   42個  585点  3.33  528点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~早川隆久(投手~早大①)

 19年~小深田大翔(内野手大阪ガス①)瀧中瞭太(投手~ホンダ鈴鹿⑥)

 18年~辰巳涼介(外野手~立命大①)太田 光(捕手~大商大②)

 17年~なし

 16年~田中和基(外野手~立大③)森原康平(投手~新日鉄住金広畑⑤)

    高梨雄平(投手~JX-ENEOS⑨) 

  過去5年のドラフトは悪くない。高梨は巨人に移籍したが、田中和は18年に新人王を獲得し、早川と小深田も新人王を獲っても遜色のない結果を残している。瀧中も昨年10勝を上げ先発ローテーションの一角を任せられ、森原はここ2年は調子を落としているが、一時期はクローザーを務めリリーフエースを張る力はある。

 野手も、辰巳は12球団随一の守備範囲と強肩で、守備だけでも飯を食える選手になった。太田も強肩と守備力には定評がある正捕手候補で、上位で指名した選手が主力に成長している。

 課題は高卒選手の育成が乏しいことで、投手なら松井裕樹桐光学園高~13年①)、野手なら銀次(盛岡中央高~05年③)まで遡らなくてはならず、巧打者は多いが、今ひとつスケール感が物足りないのはこの辺りが要因かも知れない。平均年齢27.6歳は12球団でも一番高く、高校生を育てきれない状況を理解しているのか、即戦力中心のドラフトも要因の一つと言えそうだ。

●投手陣~実績のある先発陣と強固なリリーフ陣!主力の離脱が無ければ盤石の布陣

  田中将の加入もあり、岸孝之東北学院大~06年西希)と則本昂大三重中京大~12年②)、涌井秀章(横浜高~04年西①)の通算538勝カルテットは実績十分で、名前だけでも勝負できる布陣だ。

 しかしフタを開けてみると、則本こそ2桁勝利を挙げたが、田中将は打線の援護にも恵まれず4勝止まり、岸は9勝を挙げるも負け数のほうが多く、涌井に至っては防御率5点台で6勝、後半戦はリリーフに配置転換になった。黄金ルーキー早川も6月までは7勝を上げたが、最終的には9勝で2桁勝利に届かず、瀧中も10勝は上げたものの、不調で揃ってファームで調整するなど、シーズンを完走することが出来なかった。

 一方でリリーフ陣は盤石で、松井裕が故障でシーズン途中に離脱するものの、43試合で防御率0点台の圧巻の投球を見せた。宋家豪と酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)が安定感のある投球を見せ、安楽智大済美高~14年①)はリリーフで才能を開花させ、西口直人(甲賀医療健康専門学校~16年⑩)もロングリリーフでチームのピンチを救った。結果、形や順番に捉われることなく、登板間隔や状況によって組み替えられる盤石なリリーフ陣を形成できた。 

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆岸 孝之(149回)☆田中将大(155回2/3)☆則本昂大(144回2/3)

     早川和久(137回2/3)瀧中瞭太(103回2/3)涌井秀章(96回1/3)

 ・救援…宋家豪(63試合)安楽智大(58試合)酒居知史(54試合)

       松井裕樹(43試合)森原康平(34試合)西口直人(33試合)

       ブセニッツ(31試合)

【今年度の予想】

 ・先発…岸 孝之 則本昂大 田中将大 早川和久 瀧中瞭太

       高田孝一 涌井秀章 弓削隼人 高田萌生 辛島 航 石橋良太  

 ・中継…安楽智大 酒居知史 ブセニッツ 宋家豪 西口直人 福山博之  

       森原康平 福井優也 内間拓馬 ※松井友飛 ※西垣雅矢 寺岡寛治 

 ・抑え…松井裕樹

 先発は田中将に岸、則本、早川、瀧中の5人は決まりで、残り1枠の争いになる。順当にいけば涌井になるが、弓削隼人(スバル~18年④)に故障からの復活を期す辛島航(飯塚高~08年⑥)の両左腕、石橋良太(ホンダ~15年⑤)も控えている。若手では2年目の高田孝一(法大~20年②)、昨年開幕2戦目に先発した高田萌生(創志学園高~16年巨⑤)等が、残り1枠に挑むシーズンになる。

 リリーフ陣は、昨季12球団一だった安定感は抜群で、クローザーの松井裕は昨年のようなケガさえなければ問題なく、実績十分の酒居と宗家豪、安楽はリリーバーとして開花させた素質をさらに伸ばすシーズンになる。

 心配なのは選手層の薄さで、主戦級の選手が離脱すると一気にチーム力が落ちる可能性がある。辛島や森原、や福山博之(大商大~10年横⑥)以外は経験という面でも見劣りしてしまう。実際に岸が投手最年長の38歳、涌井は36歳、田中将が34歳で、則本も32歳と自慢の先発カルテットはいずれも30歳を超えている。

 故障癖のある岸は昨季のようにシーズン完走できるか?また涌井の不振も心配で、さすがにこれまでのような大車輪の活躍を期待するのは酷だ。世代交代が迫っているなか、2~3年後を考えれば不安要素が大きいか、今季だけを考えればベテラン頼みのシーズンになりそうだ。

 リリーフも今季は延長12回制になりことで、ロングリリーフが必要になる。救援陣の枚数は多ければ多いほど良いが、残念ながらここの枚数も決して多いとは言えない。ただ、経験も実績もある牧田和久日本通運~10年西②)を放出したのは、ある意味自身の表れと捉えたい。津留崎大成(慶大~19年③)や内間拓馬(亜大~20年④)、ルーキーでは松井友飛(金沢学院大~21年⑤)や西垣雅矢(早大~21年⑥)等、ここは若手の活躍に期待したい。

●野手陣~オフの的確な補強で課題を解消!一昨年の強力打線復活なるか

 一昨年のリーグ屈指の重量打線は影を潜め、昨年は塁上は賑わすが得点に届かないシーンを何度見ただろう。一昨年、本塁打王の浅村が本来の調子とは言えず、移籍したロメロの代わりに期待された両外国人はまるで戦力にならなかった。

 ここ数年固定できていない1番打者も、開幕時は辰巳が務めたが、課題の打撃が今ひとつで下位打線が定位置になり、結局は小深田に落ち着いた。その小深田も2年目のジンクスではないが、打率.248の物足りない数字に終わり、守備でも安定感を欠く場面が目立ち、後半は山﨑剛(国学院大~17年③)に定位置を奪われた。

 ただ、収穫も大きく島内宏明(明大~11年⑥)が打点王で初のタイトルを獲得し、岡島豪郎(白鷗大~11年④)も一時期は打率3割をキープしレギュラーに返り咲いた。鈴木大地東洋大~11年ロ③)も全試合に出場し、献身的なプレーでチームをけん引した。山﨑は9月以降に1番・遊撃に定着し、広い守備範囲と気迫を前面に打ち出す打撃スタイルでチームを盛り立てた。

 一方で若手の成長が今ひとつで、正捕手を期待された太田は精彩を欠き、シーズン途中に炭谷銀仁朗(平安高~05年西①)を補強するなど悔しいシーズンになった。同じ開幕スタメンに名を連ねた小郷裕哉(立正大~18年⑦)は打率.182、チームでは貴重な機動力も使える選手だったが盗塁も1つとチャンスを活かせなかった。ファームで打率3割の黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)も一軍の壁は厚く、村林一輝(大塚高~15年⑦)や武藤敦貴(都城東高~19年④)も代走・守備要員で終わってしまった。

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…太田 光(107/281)炭谷銀仁朗(51/124)田中貴也(43/38)

 内野手…☆鈴木大地(143/628)☆浅村栄斗(143/595)☆茂木栄五郎(122/466)

       ☆小深田大翔(121/455)山崎 剛(56/194)渡邊佳明(45/113)

       銀次(35/105)

 外野手…☆島内宏明(141/599)☆岡島豪郎(126/507)☆辰巳涼介(130/443)

       ディクソン(38/123)オコエ瑠偉(42/110)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)辰巳涼介⑧      1)小深田大翔⑥      

  2)小深田大地⑥        2鈴木大地③       

  3)島内宏明⑦           3)浅村栄斗④    

  4)浅村栄斗④      4)島内宏明DH     

  5)茂木栄五郎⑤     5)岡島豪郎⑨     

  6)鈴木大地③      6)茂木栄五郎⑤      

  7)田中和基⑨      7)渡邊佳明⑦      

  8)小郷裕哉DH     8)辰巳涼介⑧

  9)太田 光②      9)太田 光②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…太田 光 炭谷銀仁朗 ※安田悠馬(田中貴也)

 内野手…小深田大翔 浅村栄斗 茂木栄五郎 鈴木大地 川島慶三 山崎 剛 

       ※ギッテンス 渡邊佳明(黒川史陽 銀次 村林一輝)

 外野手…※西川遥輝 辰巳涼介 ※マルモレホス 岡島豪郎 島内宏明

    (田中和基 武藤敦貴 小郷裕哉 和田 恋)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川遥輝⑦      捕 手)太田 光(炭谷銀仁朗) 

  2)鈴木大地⑤      一塁手)ギッテンス

  3)浅村栄斗④         二塁手)浅村栄斗

  4)ギッテンス③        三塁手鈴木大地

  5)島内宏明DH        遊撃手)茂木栄五郎(山﨑 剛)

  6)マルモレホス⑨    左翼手西川遥輝(渡邊佳明)

  7)茂木栄五郎⑥     中堅手)辰巳涼介(田中和基)

  8)辰巳涼介⑧      右翼手)マルモレホス(岡島豪郎

  9)太田 光②         D H)島内宏明       

 今季の打線のカギを握るのは、新加入した3選手だ。課題だった①リードオフマンの不在、②機動力不足、③長距離砲の補強、④右打者の主力打者不足をすべて埋めた。日本ハムから移籍した西川遥輝智弁和歌山高~10年②)は、昨季こそ打率.233と不振だったが、それでも出塁率は.384、24盗塁で自身4度目の盗塁王になり、①②の課題を解消する良い補強になった。

 新外国人のギッテンスは、③④の課題を埋める右打ちのスラッガー。メジャーでもトッププロスペクト(有望株)に挙げられている逸材で、日本でその才能を開花させる4番候補。左打ちのマルモレホスも3Aで結果を残した実力者で、昨季は打率.338、出塁率は4割を超え、26本塁打を放っている。

 また、ソフトバンク自由契約になった川島慶三九州国際大~05年日③)の加入も地味だが的確で、左キラーとも言われる勝負強い打撃は、課題の④を埋め、代打の切り札で川島が控えているのは、相手ベンチからすれば嫌だろう。

 予想した打順を見ても、西川が1番、2番で小技も使え、パンチ力もある鈴木大と続き、浅村、ギッテンス、島内が並ぶ中軸は脅威だ。特に、勝負強い島内が5番に座っている打線は怖い。下位でもマルモレホスの茂木と長打力のある選手が控え、打撃が課題とは言え辰巳と太田もパンチ力はある。

 新戦力の加入で、現時点でレギュラーを確約されているのは、浅村と島内、西川とギッテンスくらいで、守備位置が被る鈴木大や茂木、岡島など実績のある選手も競争下に置かれ選手層は厚くなった。

 捕手は若手の太田とベテランの炭谷の争いに、規格外の長打力で注目を集めるルーキーの安田悠馬(愛知大~21年②)が加わってきた。ただ、打線が機能すれば捕手は守備力重視で良く、やはり太田と炭谷のどちらかがマスクを被ると思う。

 内野は浅村は決まりで、鈴木大は一塁をギッテンスと安田、三塁は勝負強い渡邊佳明(明大~18年⑥)と状況次第では茂木と争うことになる。その茂木も、遊撃は山﨑と小深田がしのぎを削っており、元々本職は三塁でレギュラーは確約されていない。

 外野も同様で、左翼は島内と西川を指名打者と併用する形になり、右翼はマルモレホスと岡島が定位置を争い、ギッテンスが外野に回ることも想定される。ゴールデングラブ賞を獲得した辰巳も、打てなければ田中和や小郷、チームで貴重な右打ちの和田恋(高知高~13年巨②)が控え、うかうかしてはいられない。

 心配の種は守備力で、打力優先の打順だとリスクは小さくない。茂木は遊撃よりも三塁のほうが良く、守備重視なら山﨑を起用したほうが良い。肩の弱い西川は左翼しか守れず、右翼も本来であれば強肩の岡島がベストで、石井監督がどうタクトを揮うか注目したい。

オフの本気補強で今年も優勝候補の一角!戦力は整った石井監督の采配に注目

 注目の選手は、2年続けてだが瀧中を挙げたい。昨季は先発ローテーションの最後の一枠に滑り込んだが、終わってみれば2桁勝利を上げ、後半戦は結構大事な試合を任されていた。1年目は8試合で2勝、45回を投げて防御率3.40が、昨季は103回を投げ防御率3.21で10勝と安定感が抜群だった。今季、規定投球回数をクリアするようなことがあれば最多勝も狙えると思う。

 野手は山﨑で、昨季に後半戦の活躍が頭から離れない。とにかく攻守にアグレッシブで、何がなんでも塁に出ようとする打撃スタイルはリードオフマン向きで、私はロッテファンだが、こういう選手は相手ながら応援してしまう。今季は西川が加入したが、個人的には山﨑は1番を打って、西川が2番に回り、下位に鈴木大がいる打線のほうが面白いと思うので、是非レギュラーを獲得して欲しい。

 最後に、今季のパ・リーグはロッテと楽天ソフトバンクのいずれかを優勝と予想している。2~3年後を考えると、かなり不安な面が多いが、今季に限って言えば打線が復活し、先発陣で故障離脱がなければ十分に優勝を狙える戦力になっている。

 若手を起用しながら、主力を適度に休ませ、得意の前半戦でスタートダッシュを図り、後半戦で主力がフル稼働してラストスパートをかけるような展開が理想で、2年目を迎える石井監督の采配がポイントになる。 

22年戦力展望☆広島~期待の若手とベテランをどう融合させるか、混戦のセ・リーグで優勝も夢ではない

 昨夏の東京オリンピックでは、森下が先発を務め、ルーキー栗林はクローザーに抜擢された。野手でも菊地涼介(中京学院大~11年②)は不動の正二塁手鈴木誠也二松学舎大高~12年②)は日本代表の4番、ケガで代表は辞退したが、捕手の曾澤翼(水戸短大高~06年③)を含めた最多5名が選出されタレントは揃っている。

 ただ、これだけのタレントがいながら、昨年も優勝争いに絡むことなくチームの成績は4位。開幕から1ケ月は5割をキープしてまずまずだったが、主力選手にコロナ感染が判明し、一・二軍選手の入れ替えもあり失速した。主力の調子が上がらないまま迎えた苦手の交流戦では、3勝12敗3分の最下位に沈むと夏場の借金が影響し、後半戦追い上げるもAクラスには届かなかった。

 一方で若手の成長があった実りのあるシーズンだった。投手では2年目の玉村昇悟(丹生高~19年⑥)が先発ローテーションに喰い込み、栗林の陰に隠れがちだが、同じルーキーの森浦はチーム最多の54試合に登板した。野手でも小園が初の規定打席に到達し、坂倉は鈴木誠と終盤まで首位打者を争い、ペナントレースでは今一つだったが、ファンを最後まで楽しませた。 

 【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 21年 4位 63勝68敗12分 .264  123本   68個  557点  3.81  589点

 20年 5位 52勝56敗12分 .262  110本   64個  523点  4.06  529点

 19年 4位 70勝70敗  3分 .254  140本   81個  591点  3.46     601点

 18年 1位 82勝59敗  2分 .262  175本   95個  721点  4.12  651点

 17年 1位    88勝51敗  4分 .273  152本 112個  736点  3.39  540点  

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~栗林良史(投手~トヨタ自動車①)森浦大輔(投手~天理大②)

 19年~森下暢仁(投手~明大①)

 18年~小園海斗(内野手報徳学園高①)島内颯太郎(投手~九共大②)

 17年~なし

 16年~坂倉将吾(捕手~日大三高④) 

 25歳以下の主力選手が最も多いチームで、過去5年のドラフトを見ても投打の主力が並んでいる。先発の柱になりつつある森下に、チーム状況でクローザーに回っているが栗林も本体は先発投手で、即戦力がそのまま主力に成長している。

 野手でも、小園が遊撃の定位置を獲得し、同じ18年1位指名の藤原(ロッテ)や根尾(中日)が伸び悩んでいるなか、順調に成長曲線を描いている。かねてより打撃が評価されていた坂倉も昨季ブレイクし、選手層の厚い広島捕手陣のなかで打てる捕手としてレギュラーを掴みつつある。

 このほか先発で床田寛樹(中部学院大~16年③)と玉村、リリーフで大道温貴(八戸学院大~20年③)にケムナ誠(日本文理大~17年③)がおり、先発・リリーフともに充実している。野手でも林晃汰(智弁和歌山高~18年③)が4番候補に成長し、リードオフマン候補の宇草孔基(法大~19年②)、守備力が評価されている捕手の石原貴規(天理大~19年⑤)など、タイプの違う選手が着実に成長している。

●投手陣~数字以上に期待の若手が揃っている。今季は打高投低を覆したい

  昨シーズン、チーム防御率は前年より改善を見せたものの、2年連続でリーグ5位と打高投低の状況が続いている。ただ、数字だけ見れば物足りない部分は確かにあるが、それ以上に期待を抱かせる活躍を若手が見せた。

 先発は九里亜蓮(亜大~13年②)がチーム最多の13勝を挙げ、エースの大瀬良大地(九共大~13年①)も10勝、森下は8勝止まりだったが、それぞれ規定投球回数をクリアし、先発3本柱が形成されている。このほか玉村は17試合に先発し、床田と故障明けの高橋昂也(花咲徳栄高~16②)もそれぞれ15試合に先発し、年間でローテーションを固定することが出来た。

 開幕前はクローザーを誰にするか決まっていなかったが栗林が大役を務め、その栗林は23試合連続無失点、防御率は驚異の0.86で37セーブを挙げ新人王に輝く大活躍を見せた。同じルーキーの森浦もチーム最多の54試合登板で17ホールド、大道もリリーフが中心ながら7試合に先発し、即戦力ルーキーの上位指名が大当たりだった。

 このほか塹江敦哉(高松北高~14年③)は2年連続で50試合登板、同じくケムナも2年連続で40試合に登板し、中継ぎの柱も確立されてきた。膝の手術でフランスアの離脱は痛かったが、育成出身のコルニエルと退団したがバードが穴を埋めた。

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆九里亜蓮(149回)☆森下暢仁(163回1/3)☆大瀬良大地(146回2/3)

       玉村昇悟(101回)床田寛樹(87回1/3)野村祐輔(35回2/3)

 ・救援…森浦大輔(54試合)栗林良史(53試合)塹江敦哉(51試合)

       コルニエル(50試合)ケムナ誠(40試合)菊地保則(33試合)

     バード(33試合)

【今年度の予想】

 ・先発…大瀬良大地 九里亜蓮 森下暢仁 床田寛樹 玉村昇悟 

       ※森 翔平 野村祐輔 高橋昂也 ※アンダーソン 小林樹斗 中村祐太 

 ・中継…森浦大輔 ※黒原拓未 ケムナ誠 塹江敦哉 菊池保則 コルニエル

       大道温貴 中崎翔太 中田 簾 ※松本竜也 高橋樹也 ※ターリー 

 ・抑え…栗林良史 フランスア

 エースの大瀬良が開幕投手に指名され、もはやWエースと言ってもよい九里に、森下と床田までは決まっている。残り2枠も玉村と高橋昂の両左腕が有力で、先発の枚数は揃っている。

 本来であれば実績のある野村祐輔(明大~11年①)や新外国人のアンダーソンが間に合えば、さらに先発争いのレベルが一段上がるのだが、野村は右鎖骨の手術明け、アンダーソンもコロナで来日の目途が立たず、ここが計算できないのは厳しい。

 ただ、変化球を駆使してゲームメークに長けたルーキーの森翔平(三菱重工エスト~21年②)や、2年目の19歳、小林樹斗(智弁和歌山高~20年④)は昨年終盤に先発を経験した成長株で、ここでも若手が先発争いを盛り上げている。このほか大道や遠藤淳志(霞ヶ浦高~17年⑤)、中堅の中村祐太(関東一高~13年⑤)など候補者は多く、誰がチャンスを掴むのか注目したい。

 リリーフは今年も森下がクローザーを務める。出来ることなら栗林を先発で起用できたら、さらに先発陣が厚くなるのだが、昨年の実績と現状では栗林を外すことはできない。セットアッパー候補では、最速165キロのコルニエルと実績のあるフランスア奪三振率の高い左腕ターリーも期待でき、この2年間で実績を積んだ塹江とケムナが控え、どういった勝ちパターンの布陣になるか、ここの争いも楽しみだ。

 さらにリリーフ陣は、ベテランの菊地保則(常磐大高~07年楽④)に森浦も控え質量ともに見劣りはしない。ルーキーも期待がかかり、ドラフト1位の黒原拓未(関学大~21年①)は先発・中継ぎどちらでもOKで、松本竜也(ホンダ鈴鹿~21年⑤)は力強いストレートとカットボールを武器に、度胸のあるピッチングが評価されリリーフ向きと言える。また、森や大道が先発枠から外れても、リリーフに回ることもでき層は厚くなっている。

 心配なのは若手が多い分、経験値の少なさは否めず中崎翔太日南学園高~10年⑥)や中田廉広陵高~08年②)等ベテランが本調子を取り戻すことができたのなら、課題もカバーできるのだが…。 

●野手陣~鈴木誠の穴は大きい…誰が新たな4番に座るか+坂倉の起用法に注目

 打線はチーム打率はリーグ1位も、本塁打はリーグ4位、お家芸の機動力もリーグ3位と得点力が今ひとつで、若手への転換期を迎えている投手陣をカバーするまでには至らなかった。

 打線の中心は不動の4番・鈴木誠で、打率.317で首位打者、38本塁打に88打点、9盗塁はいずれもチーム最多で、4割を超える出塁率でまさしくチームの大黒柱と言え、今季はメジャーに挑戦する。また、レギュラーの菊地涼は得点圏打率で、西川は安打数でチーム1位で、主力がしっかりと結果を残した。

 ここに小園が一気に田中広輔JR東日本~13年③)から遊撃のレギュラーを奪い、坂倉は最後まで首位打者争いをし、捕手以外に一塁も守った。林は新型コロナでの一・二軍入れ替えのワンチャンスをモノにし、規定打席には到達しなかったものの、10本塁打を放ちスラッガーの片りんを見せた。

 ただ本塁打数では、鈴木誠の次に多いのは菊地涼の16本で、期待されていたクロンの不振もあり、和製大砲の育成は喫緊の課題と言える。盗塁も2桁盗塁した選手はいなく、鈴木誠と曽根海成(京都国際高~13年ソ育③)の9盗塁が最高で、この辺りの課題がクリアできればもっと得点力は増すだろう。

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…☆坂倉将吾(132/484)曾澤 翼(70/204)石原貴規(60/125)

 内野手… ☆菊池涼介(132/542)☆小園海斗(113/481)林 晃汰(102/376)

     安部友裕(85/170)田中広輔(81/160) 堂林翔太(70/143)

      クロン(42/137)羽月隆太郎(39/117)

 外野手…☆西川龍馬(137/551)☆鈴木誠也(132/533)野間峻祥(74/270)

     松山竜平(85/194)宇草孔基(43/158)長野久義(71/140)         

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)田中広輔⑥      1)菊池涼介    

  2)菊池涼介④           2)小園海斗⑥       

  3)西川龍馬⑧           3)西川龍馬⑦    

  4)鈴木誠也⑨      4)鈴木誠也⑨      

  5)松山竜平⑦      5)坂倉将吾③      

  6)クロン③       6)曾澤 翼②      

  7)堂林翔太⑤      7)野間峻祥⑧      

  8)曾澤 翼②      8)林 晃汰⑤

  9)大瀬良大地①     9)九里亜蓮  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…曾澤 翼 坂倉将吾 石原貴規(中村奨成)

 内野手田中広輔 安部友裕 堂林翔太 ※マクブルーム 菊池涼介  林 晃汰

       小園海斗(曽根海成 上本崇司 羽月隆太郎)

 外野手…野間峻祥 宇草孔基 ※中村健人 ※末包昇大 松山竜平 西川龍馬 

      (長野久義 正髄優弥)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)宇草孔基⑧      捕 手)曾澤 翼(石原貴規) 

  2)小園海斗⑥      一塁手)坂倉将吾

  3)西川龍馬⑦      二塁手菊池涼介

  4)マクブルーム⑨       三塁手)林 晃汰(堂林翔太

  5)坂倉将吾③         遊撃手)小園海斗(田中広輔

  6)菊池涼介④      左翼手)西川龍馬

  7)林 晃汰⑤      中堅手)宇草孔基(野間峻祥

  8)曾澤 翼②      右翼手)マクブルーム(末包昇大)

  9)大瀬良大地①     

 今シーズン注目しているのは2点で、一つは「鈴木誠に代わる4番を誰に任せるか」と「坂倉の起用法」だ。

 まず一点目だが、鈴木誠に代わる選手はいない。昨年、鈴木誠の次に4番を打ったのは西川で12本塁打と長打力もあり「つなぎの4番」なら十分に機能する。坂倉も同じ12本塁打を放ち、打率の高さもさることながら、得点圏打率が3割を超えチャンスにも強い4番を任せても良い。長打力に期待するなら林で、今季一気にブレイクする可能性は十分にある。

 新戦力にもチャンスはあり、ルーキーの末包昇大(大阪ガス~21年⑥)はキャンプで評価を上げ、オープン戦での結果いかんではルーキーの4番もあるかもしれない。新外国人のマクブルームは打率や出塁率は低いが、3Aで32本を放った長距離砲でここも期待できる。

 次に坂倉の起用法だが、打撃を活かすために本職の捕手のほかに一塁と今季は三塁にも挑戦している。鈴木誠がいたなら捕手で良いと思うが、捕手はベテランの曾澤に守備力の高い石原がおり、今季の布陣であれば栗原(ソフトバンク)のように打撃に専念したほうがプラスになると思う。個人的には5番に坂倉が座る打線は怖く、新たな4番が機能し、下位打線で得点圏打率の高い菊地涼が控えりようになれば、気の抜けない打線になる。

 このほかのポジションでは、内野は二塁が菊地涼、遊撃は小園で決まりで、一塁を坂倉とマクブルーム、三塁は林と堂林に坂倉起用の可能性もある。24歳の坂倉と22歳の小園と林がレギュラーになりつつある布陣はファンならずとも楽しみだ。ただ、ベテランも負けておれず、田中広や安部友裕福岡工大城東高~07年①)はまだ老け込む年ではなく、若手の壁になってチームを底上げして欲しい。

 外野は混戦で中堅と右翼のレギュラー争い注目だ。特に鈴木誠のいた右翼は、ポジションが一つ完全に空いている。中堅は野間と宇草が候補で、実績なら野間だが、昨季終盤に活躍を見せた宇草への期待の声が多い。右翼は末包と中村健人トヨタ自動車~21年③)のルーキー同士の争になり、ともに長打力が売りなだけに、オープン戦でアピールしたい。

 また、状況によってはマクブルームも外野(左翼と右翼)を守れ、捕手の中村奨成(広陵高~17年①)も今季は本格的に外野にチャレンジしており、出番を増やしたいならポジションに拘らず得意の打撃でアピールするのが近道だと思う。 

 今季の打線を予想すると、上位から下位まで切れ目のない打線になっている。残念ながら機動力の上積みは期待できないが、マクブルームや林、末包などの大砲候補が結果を残せば昨年より得点力は上がる。

●期待の若手とベテランをどう融合させるか、混戦のセ・リーグで優勝も夢ではない

 注目の選手で、投手では高橋樹也(花巻東高~15年③)に密かに注目している。昨年は大量リード後やビハインドゲームの登板がほとんどだったが、27試合で防御率1点台と結果を残している。150キロを投げることに驚かなくなった球速全盛のなか、変化球中心に球の精度で勝負するスタイルは面白い存在だ。勝ちパターンに喰い込めば、おのずと登板数も増えるてくるだろう。

 野手はリードオフマン候補の宇草で、今年はブレイクすると思う。昨季は後半戦から調子を上げ、一番打者で18試合に先発出場し、打率.291で素質の高さを見せた。本来であれば4割を超える長打率をほこり、3割20本塁打を期待できる中距離打者で、中軸で起用したいが、機動力も使えパンチ力もある。チームに勢いを与える一番打者として今季の活躍を期待している。

 このほか野手では育成の3選手も楽しみだ。二俣翔一(磐田東高~20年育①)は元々捕手だったが、打撃力を評価され内野手へコンバートされた右のスラッガー。捕手の持丸泰輝(旭川大高~19年育①)は、昨季のファームで最も多くマスクを被り、今春は一軍キャンプに帯同し実績を積んでいる有望株。外野手の木下元秀(敦賀気比高~19年育②)も、昨季ファームでただ一人チームで規定打席をクリアしている。支配下は66名と人数的には決して門は広くないが、レベルの高い支配下争いにも期待したい。

 最後に今年の順位予想だが、とにかくチームが若く、主力選手の世代交代も進んでいるが、若さと勢いだけでペナントレースを勝ち抜けるほど甘くはない。やはり優勝を狙うにはベテランとの融合や外国人の活躍が必須で、鈴木誠の穴をどう埋めるかがポイントになる。混戦模様のセ・リーグのなかで十分にAクラスを狙える力はあるが、若手が多いだけに佐々岡監督の采配により注目が集まるシーズンになる。

22年戦力展望☆ソフトバンク~主力の離脱がなければ優勝候補!若手の台頭が臨まれる転機のシーズン

 リーグ連覇と5年連続日本一を目指したシーズンは、まさかの8年振りBクラスに加え、13年振りの負け越しでシーズンを終え、7年指揮を執った工藤監督が退任した。

 ここ数年は毎年のようにケガ人に悩まされていたが、その都度厚い選手層で乗り切ってきた。しかし昨年はエースの千賀滉一(蒲郡高~10年育④)、クローザーの森唯人(三菱自動車倉敷~13年②)、開幕4番のグラシアルが早々と離脱した。モイネロとデスパイネ東京五輪で長期間チームを去り、前半3勝を挙げた新外国人投手レイも家庭の事情で退団するなど、投打に主力を欠いた厳しいシーズンになった。

 こういった危機を何度もカバーしてきた松田宣浩(亜大~05年希)や中村晃(帝京高~07年③)、今宮健太(明豊高~09年①)の主力も本調子には程遠く、かねてより懸念されていた世代交代の遅れが明白になった。

 投手も同様で、規定投球回数をクリアしたのは石川柊太(創価大~13年育①)のみで、リーグナンバーワンの防御率を誇りながら、リリーフ陣もパ・リーグで唯一20ホールドを挙げた投手がいなかった。森とモイネロの代わりを務めた岩嵜翔市立船橋高~07年①)と嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)も、ともに防御率4点台で安定感に欠いた。

 ただ実は投打の成績は悪くない。先述したがチーム防御率は1位で、失点も最も少ない。チーム打率もリーグ1位で、本塁打と盗塁、得点数も2位。失策数はリーグ最少で、「打てて、走れて、守れる」チームなのだが成績は4位…。その要因は1点差ゲームで8勝19敗の成績が示すように「1点を奪えない、1点を守れない」際の勝負弱さで、投打の主力の離脱を大事な場面で痛感したシーズンになった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 21年 4位 60勝62敗21分 .247  132本   92個  564点  3.25  493点

 20年 1位 73勝42敗  5分 .249  126本   99個  531点  2.92  389点

 19年 2位 76勝62敗  5分 .251  183本 113個  582点  3.63     564点

 18年 2位 82勝60敗  1分 .266  202本   80個  685点  3.90  579点

 17年 1位    94勝49敗  0分 .259  164本   73個  638点  3.22  483点  

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~なし

 19年~津森宥紀(投手~東北福祉大③)

    18年~甲斐野央(投手~東洋大①)泉 圭輔(投手~金沢星稜大⑥)

 17年~周東佑京(内野手~東農大オホーツク育②)

 16年~なし 

 選手層が厚く、育成システムで主力の排出に定評のあるイメージがあるが、過去5年のドラフトは投手で主力はリリーフのみ、野手は足のスペシャリストの周東だけで、スケール感という面では不足している。一つ上のチームを目指し、16年~20年は本指名中26名のうち半数以上の14名が高校生指名だが、主力と呼ばれるのは昨年ブレイクした三森大貴(青森山田高~16年④)くらいしかいない。ただ、三森も周東と同じリードオフマンタイプで、スケール感と言う意味ではやはり物足りない。

 ただ野手には有望株が多い。今春の一軍キャンプでも注目を集めている井上朋也(花咲徳栄高~20年①)やリチャード(沖縄尚学高~17年育③)の大砲候補。残念ながらケガでキャンプを途中離脱したが川原田純平(青森山田高~20年④)や水谷瞬(石見智翠館高~18年⑤)は、キャンプ前半は開幕一軍の期待もあり、今シーズンでの一軍デビューが楽しみだ。

 一方で投手はいずれもリリーフタイプばかりで、先発タイプでは昨年ドラフトの風間球打(明桜高~21年①)と木村大成(北海高~21年③)、高校生以外でも杉山一樹(三菱重工広島~18年②)と田中正義(創価大~16年①)くらいで、課題の世代交代にはまだ時間を要するかもしれない。

●投手陣~リーグナンバーワンの防御率も、先発・リリーフともにやり繰りに苦心

 リーグナンバーワンを誇る投手陣は、昨年はリリーフ陣に助けられた一年だった。先発では石川とマルティネスが多少の調整期間はあったものの、年間通してローテーションを守った。故障で前半戦を棒に振ったエース千賀も、終わってみれば2桁勝利を挙げ貫禄を見せた。

 ただ、レイの帰国に始まり、故障を抱えた東浜巨(亜大~12年①)と武田翔太宮崎日大高~11年①)は揃って4勝止まり、笠谷俊介(大分商高~14年④)や40歳の和田毅早大~02年自)も石川とマルティネスのに次ぐ18試合に先発したが、ともに防御率4点台と奮わなかった。

 森とモイネロが離脱したリリーフ陣は、やり繰りが大変ななか、松本裕樹(盛岡大高~14年①)やスチュワートJrがロングリリーフを務め、津森と板東湧梧(JR東日本~18年④)は40試合以上に登板し、泉や故障から復帰した甲斐野も好投を見せた。

 このほか田浦文丸(秀岳館高~17年⑤)や育成から支配下になった大関友久(仙台大~19年育②)、残念ながら不祥事で退団してしまったが古谷優人(江陵高~16年②)の若手が主力の離脱を埋めた。

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆石川柊太(156回1/3)マルティネス(140回2/3)和田 毅(94回1/3)

     東浜 巨(75回1/3)千賀滉大(84回2/3)武田翔太(77回1/3)

     笠谷俊介(59回)

 ・救援…嘉弥真新也(58試合)岩嵜 翔(48試合)津森宥紀(45試合)

       板東湧悟(44試合)モイネロ(33試合)松本裕樹(33試合)

     泉 圭輔(31試合)森 唯斗(30試合)

【今年度の予想】

 ・先発…和田 毅 レイ 石川柊太 杉山一樹 千賀滉大

       スチュワート 東浜 巨 武田翔太 田中正義 松本裕樹 笠谷俊介 

 ・中継…津森宥紀 ※又吉克樹 甲斐野央 板東湧悟 泉 圭輔 嘉弥真新也

       ※チャットウッド 高橋 礼 大関友久 高橋純平 田浦文丸  

 ・抑え…モイネロ 森 唯斗

 リーグ屈指の投手陣だが、今年も「主力の離脱がなければ…」という言葉がついてしまう。そういった意味では、昨年防御率1点台で抜群の安定感を見せたマルティネスの退団は痛かった。

 先発は開幕投手に指名されている千賀、石川と東浜、ベテラン和田までは決まりでレイが来日すれば残る枠は1つになる。ただ、武田は開幕に間に合わず、千賀と東浜は故障のリスクが付きまとい、和田もさすがに体力の衰えは否めず、フルシーズンの活躍を期待するのは酷な面もある。

 そうなると若手の台頭が必要になるが、現時点で期待を持てるのは杉山ただ一人。本格的なブレイクをして欲しい笠谷や松本、プロ入り5年で未だ未勝利の田中やスチュワートJrの覚醒にも期待したいが、現時点では年間通して主力になり得るかと言えば荷が重い。

 新外国人のチャットウッドは、先発もリリーフともにできるが制球力に難があり、今年は先発のやり繰りに苦労するシーズンになりそうだ。育成契約ながらキャンプで評価を上げている元広島の藤井晧哉(おかやま山陽高~14年④)の大抜擢などもあるかも知れない。

 リリーフ陣は、森が復調すれば鬼に金棒で大きな心配はない。モイネロと中日からFA加入した又吉克樹(四国IL香川~13年②)を中心に、昨年実績を残した若手もいるので、様々な展開でも対応できるメンバーが揃っている。

 それこそ一時期流行ったオープナーで高橋礼(専大~17年②)や大竹耕太郎(早大~17年育④)など先発経験のある投手を3~4回くらいまで起用し、松本や高橋純平(県岐阜商高~15年①)がロングリリーフで、又吉→モイネロ→森の勝ちパターンに繋げる戦略もありだと思う。

 どちらにしろ今年のホークスのカギを握るのは先発投手陣で、昨年のように主力が早々と離脱すると、シーズン前半でも置いてかれる可能性もあり若手の台頭が臨まれる。個人的には比較的戦力の充実している外野陣をベースに、投手力のある中日とのトレードは狙い目だと思うが…。 

●野手陣~主力が軒並み30歳を超えたが、若手の台頭に乏しく顔ぶれは変わらない?

 チーム打率1位の打線も、得点数はロッテに次いで2位。大事なところで1点を獲れない打線は、打点が2位、犠打(犠飛含む)は3位、四球は4位、出塁率は3位と数字を見てもちくはぐさが伝わる。

 昨年は甲斐と栗原が初の全試合出場を果たし、栗原は全試合でスタメン出場し、甲斐もハードなポジションで全試合出場は特筆できる。柳田も打率3割、リーグ4位の成績で、主力選手は結果を残した。また、退団が報じられていたグラシアルとデスパイネが残留したのも大きかった。

 規定打席未達ながらも、周東がケガで離脱後は三森が後半1番・二塁を務め、大砲候補のリチャードは116打席で7本塁打と長打力を見せつけた。ルーキーの柳町達(慶大~20年⑤)、捕手ながら外野守備や代走も務めた谷川原健太(豊橋中央高~15年③)が一軍で経験を積んだ。

 一方で長年チームを支えた高谷裕亮(白鷗大~06年③)、代打の切り札の長谷川勇也専大~06年⑤)が揃って引退し、左キラー川島慶三九州国際大~05年日③)も戦力外になり楽天へ移籍し、今季こそは世代交代の足場固めを進めたいところだ。 

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…☆甲斐拓也(143/479)谷川原健太(59/57)高谷裕亮(20/17)

 内野手…☆中村 晃(139/552)☆今宮健太(125/413)☆松田宣浩(115/390)

     三森大貴(86/345)牧原大成(98/292)グラシアル(37/150)

     川島慶三(56/123)周東佑京(71/120)リチャード(34/116)

 外野手…☆栗原陵矢(143/596)☆柳田悠岐(141/593)デスパイネ(80/308)

     真砂勇介(70/124)長谷川勇也(71/120) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)周東佑京④      1)三森大貴④     

  2)今宮健太         2)牧原大成⑧        

  3)柳田悠岐⑧      3)柳田悠岐   

  4)グラシアル⑦     4)栗原陵矢⑦      

  5)中村 晃③      5)デスパイネDH      

  6)デスパイネDH    6)中村 晃③      

  7)栗原陵矢⑨      7)甲斐拓也②     

  8)松田宣浩⑤      8)松田宣浩

  9)甲斐拓也②      9)今宮健太  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…甲斐拓也 谷川原健太 海野隆司(九鬼隆平 渡邊 陸)

 内野手高田知季 ガルビス 松田宣浩 今宮健太 グラシアル 牧原大成

       井上朋也 三森大貴 ※野村 勇

    (川瀬 晃 明石健志 周東佑京 リチャード) 

 外野手…中村 晃 柳田悠岐 栗原陵矢 デスパイネ

    (佐藤直樹 ※正木智也 柳町 達 上林誠知 真砂勇介)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)三森大貴④      捕 手)甲斐拓也

  2)牧原大成⑧      一塁手)中村 晃

  3)柳田悠岐⑧      二塁手)三森大貴(野村 勇)

  4)グラシアルDH    三塁手松田宣浩(リチャード)

  5)栗原陵矢⑨      遊撃手)ガルビス(今宮健太

  6)中村 晃③      左翼手)栗原陵矢

  7)ガルビス⑥      中堅手)牧原大成(上林誠知)

  8)松田宣浩⑤      右翼手柳田悠岐

  9)甲斐拓也②      D H)グラシアル(デスパイネ)          

 藤本監督はレギュラーは柳田と栗原、甲斐を明言しているが、中村とグラシアルも決まりだろう。このほかは横一線で、松田や今宮も若手と定位置を争うシーズンになる。ただ、今春のキャンプの声を聴くと、この世代交代のチャンスを掴む若手選手の台頭が乏しく、嘆き節ばかり目立つのは心配だ。

 捕手は甲斐が不動だが、二番手捕手がチームのアキレス腱になり兼ねない。万が一、甲斐が長期間離脱するようなことになると、大幅な戦力ダウンになってしまう。谷川原はどちらかというと打撃や走塁面の控えが有力で、海野隆司(東海大~19年②)と九鬼隆平(秀岳館高~16年③)が候補だが、キャンプではともにアピール不足。打撃に定評のある渡邊陸(神村学園高~18年育①)が一気に浮上する可能性もある。

 内野は一塁を除く全ポジションが混戦だ。二塁は周東の復帰が夏くらいになりそうで、三森と牧原大、ルーキーの野村勇(NTT西日本~21年④)が候補になる。ともに守備は問題なく、粘り強い打撃の三森、パンチ力も秘めた牧原大、野村勇は周東も凌ぐスピードが評価されており打撃が決め手になる。

 三塁は松田への挑戦権をリチャードと2年目19歳井上が得ている。松田は出場機会を増やそうと一塁の練習もしているが、期待値の高いリチャードは打撃以外での課題が多さが指摘されている。どちらにしろ打順では下位が予想されるので、若手が結果を恐れずに経験を積めると思うが、現時点では今季も松田になりそうだ。

 遊撃は今宮に対し、パンチ力もあるスイッチヒッターの新外国人のガルビスと野村勇の新戦力に、川瀬晃(大分商高~15年⑥)の争いになる。ガルビスの来日時季が微妙だが、故障が多く打撃に精彩を欠いている今宮に対し、野村勇や川瀬は打撃でアピールしたい。また川原田も、ケガから回復したのちはレギュラー争いに食い込んでくる可能性がある。

 このほかベテランの明石健志(山梨学院高~03年④)は一・二塁、高田知季(亜大~12年③)は内野はどこでも守れ、混沌とした内野手争いのダークホースになるかも知れない。

 外野は柳田が守備の負担を減らすために中堅から右翼へ回ることで、中堅のレギュラー争いがし烈だ。昨季の試合数から言えば牧原大に真砂勇介(西城陽高~12年④)、上林誠知(仙台育英高~13年④)が実績ではリードしており、若手の佐藤直樹JR西日本~19年①)と柳町を交えた争いになる。

 順当にいけば牧原大になるが、長打力もある上林の復調は間違いなく打線に厚みを持たせることになる。人数的にも「レギュラー争いから脱落=ファーム」で、守備力はいずれも遜色なく、オープン戦で誰がバットでアピールするか注目だ。

 指名打者はグラシアルとでデスパイネの併用になりそうだが、状況次第では栗原を三塁に回し、左翼グラシアル、指名打者デスパイネの起用もあり得る。いずれにせよ松田は39歳、グラシアル37歳、デスパイネ36歳と急に衰えが来てもおかしくない年齢になる。まだ衰える歳ではないが、柳田と中村、今宮の主力がいずれも30歳を超え、今季こそ世代交代が目に見える形で表れないと一気にチーム力が落ちる可能性もある。

主力の離脱がなければ優勝候補だが…投打に世代交代を進めたいシーズン

 注目の選手で、投手は津森に期待している。変則フォーム投手にありがちな変化球主体の投球ではなく、力強いストレートが武器のパワーピッチャー。奪三振率はモイネロとスチュワートに続くチーム3位、45試合に投げて防御率も2.18の好成績を挙げておりセットアッパーの役割に今季は期待したい。

 野手は三森で、あの粘り強い打撃は相手から見ても嫌だと思う。まだ打率も出塁率も今一つだが、苦手な右打者を克服すると怖いリードオフマンになる。また、広い守備範囲を誇る守備力も脅威で、年始のバラエティ番組で見せた西武・源田とのギネス新記録をかけたキャッチボールギネス挑戦は見応えがあった。

 今年のソフトバンクは当然、優勝候補で優勝争いに絡んでくるとは思うが、心配なのはやはり故障による主力の離脱で、今季も簡単にはいかないシーズンになると思う。

22年戦力展望☆中日~投高打低は今年も変わらず…本気の補強姿勢が見えない…

 一昨年8年振りにAクラスに返り咲き、優勝候補にも挙がっていたが、与田監督の最終年は残念ながら自己ワーストの成績で終えた。

 その要因は貧打線の一言に尽きる。チーム打率、本塁打、得点がすべてリーグ最下位で、大島洋平日本生命~09年⑤)に任せっきりだった盗塁は、倍にはなったもののリーグ5位で「打てない、一発もない、走れない」では、いくら12球団ナンバーワンのチーム防御率でも勝ちに繋げることはできなかった。

 昨年は開幕7戦目を最後に、一度も5割に復帰することなく、最近の定位置5位に落ち着いた。主力が相次ぎ不振に陥り、平田良介大阪桐蔭高~05年①)や阿部寿樹(ホンダ~15年⑤)はシーズン途中に離脱した。何とか打開しようと、ロッテから加藤翔平(上武大~12年ロ④)をトレードで獲得したり、若手も起用するにはしたが、継続性に欠けた起用で新戦力の台頭はなかった。

「広いバンテリンドームだから長打力が出難い」という声を聞くが、全試合バンテリンドームで戦うわけではない。東京ドームや神宮球場横浜スタジアム本塁打の出やすい球場だが、ビジターは22勝44敗6分と散々な成績で「広い球場が本拠地だから」はただの言い訳にすぎない。

 そんななかファン待望の立浪和義監督が就任した。同じ新監督の新庄監督が「陽や動」なら、立浪監督は「陰と静」のようで対象的だ。茶髪やひげ、無用な私語禁止など、一見「昭和か?」と古臭い感じを受けるが、立浪監督が緩んだチームを引き締めるためのことで、外から見て相当歯痒く映ったのだろう。星野仙一落合博満といった稀代の名監督の下で主力として活躍し、誰よりも勝つことの大切さを知っているだけに、1年目からその手腕に期待が集まる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗     打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 21年 5位 55勝71敗17分   .237    69本   60個  405点  3.22  478点 

 20年 3位 60勝55敗 5分 .252    70本   33個  489点  3.84  489点

 19年 5位 68勝73敗 2分 .263    90本   63個  563点  3.72  544点

 18年 5位 63勝78敗 2分 .265    97本   61個  598点  4.36  654点

 17年 5位 59勝79敗 5分 .247  111本   77個  487点  4.05  623点   

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~なし 

 19年~なし

 18年~なし

 17年~なし

 16年~柳 裕也(投手~明大①)京田陽太内野手~日大②)

 近年ドラフトは不振で、この間の低迷も頷ける。16年の藤嶋健人(東邦高~16年⑤)、17年の鈴木博志(ヤマハ~17年①)、18年の梅津晃大(東洋大~18年②)に勝野昌慶(三菱重工名古屋~18年③)など、投手は及第点の選手は多いが、野手は見当たらない。

 昨年はDeNAの牧や阪神の中野、西武の若林にブランドン、高校生でもオリックスの来田が活躍しており、牧を除けば十分に獲れた選手。今季の外国人補強でも、立浪監督が「Aマルティネスより長打力がありそうな選手がリストに余りいなかった」と発言していたが、そのAマルティネスは通算2年で本塁打4本の選手で、一体どんなリストを立浪監督に見せたのか、フロントの眼力を疑ってしまう。

 また昨年は唯一育成指名がなかった。そもそも16年~20年の5年間で僅か7名しか指名していない。ドラフトが上手くいっていればそれでも良いか、ここ数年空振り続きのなかで、チームを強化しようとする姿勢を疑う。

 昨年でいえば高校生投手の指名は育成で不可欠だったし、長打力の一芸で指名されている選手もおり、この間成績が低迷しているなか、多くの育成指名で厚い選手層を誇るソフトバンクや、16年から育成指名を増やし昨年優勝したオリックスから学ぶことはないのだろうか?

●投手陣~12球団ナンバーワンの投手陣は今年も隙なし!又吉移籍も影響はない

  12球団でナンバーワンの防御率の投手陣は充実している。柳は最優秀防御率最多奪三振の二冠に輝き11勝を挙げた。大野雄と小笠原の両左腕も規定投球回数をクリアし、大野雄は防御率2点台で7勝、小笠原も8勝を挙げ、打線がまともなら2桁勝利は間違いなかっただろう。

 このほか開幕投手を務めた福谷浩司(慶大~12年①)に2年目の勝野、松葉貴大(大体大~12年オ①)、ロドリゲスが先発ローテーションを守った。

 リリーフ陣も盤石で、クローザーのRマルティネスは防御率2.06で23セーブと抜群の安定感を見せた。セットアッパーの又吉克樹(四国IL香川~13年②)は、66試合に登板し、防御率は驚異の1.28の33ホールドろ圧巻の成績を残した。さらに福敬斗(JR九州~15年④)と祖父江大輔トヨタ自動車~13年⑤)がともに50試合以上に登板し、先発同様リリーフ陣は充実している。

 さらに藤嶋も一年間一軍を完走し、キャリアハイの48試合で防御率も1点台と盤石のリリーフ陣に割って入る結果を残した。このほかの若手では橋本侑樹(大商大~19年②)にルーキー森博人(日体大~20年②)が経験を重ね、ベテランの谷元圭介バイタルネット~08年日⑦)や田島慎二東海学園大~11年③)、岡田俊哉智弁和歌山高~09年①)等がそれぞれ役割を果たした。 

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆柳 裕也(172回)☆小笠原慎之介(143回1/3)☆大野雄大(143回1/3)

     福谷浩司(103回1/3)勝野昌慶(91回1/3)松葉貴大(76回)

 ・救援…又吉克樹(66試合)福 敬登(57試合)祖父江大輔(55試合)

       Rマルティネス(49試合)藤嶋健人(48試合)谷元圭介(32試合)

【今年度の予想】

 ・先発…小笠原慎之介 柳 裕也 大野雄大 福谷浩司 松葉貴大 勝野昌慶

       梅津晃大 高橋宏斗 岡田俊哉 ロドリゲス 岡野祐一郎 笠原祥太郎 

 ・中継…橋本侑樹 谷元圭介 ※岩嵜 翔 祖父江大輔 福 敬登 藤嶋健人

       田島慎二 ※石森大誠 森 博人 鈴木博志 清水達也 山本拓実  

 ・抑え…Rマルティネス

 投手陣は今年も万全で大崩れすることはないだろう。先発は大野雄と柳、小笠原までは当確で、残り3枠の争いになる。実績で言えば福谷や松葉、昨年の活躍から見れば勝野とロドリゲスが順当だが、期待の若手が虎視眈々と先発の座を狙っている。

 誰もが潜在能力を認める梅津は、制球力や故障が多いなど課題は多いが大化けが期待できるブレイク候補の一番手。故障明けの清水達也(花咲徳栄高~17年④)も本格的に先発に転向し、評価上昇中の高橋宏斗(中京大中京高~20年①)も昨年ファームで体力づくりに励み、直球は155キロを超え2年目の活躍が期待できる。

 高橋と清水がローテーションの谷間で先発し、経験を積み重ねていけば、益々先発陣が強硬になる。また、開幕投手の経験もある笠原祥太郎(新潟医療福祉大~15年④)や先発に転向する岡田の両左腕も控え、裏ローテでも枚数に不安はない。

 リリーフ陣は又吉のFA移籍は痛いが、人的保障で岩嵜翔市立船橋高~07年ソ①)を獲得できたのは大きく、ほぼトレードで戦力ダウンにはならない。Rマルティネスがクローザーを務め、祖父江と福、岩嵜を加えたセットアッパー陣は、7回までリードできれば逃げ切れる陣容になっており、藤嶋の成長もプラスで勝ちパターンは既に形成できている。

 このほか谷元や田島のベテランはロングリリーフで試合を作れるし、再起を期す鈴木やルーキー石森大誠(火の国サラマンダー~21年③)はともにストレートで押す投球で盤石のリリーフ陣に喰い込みたい。2年目の森はチームでも貴重なスリークオーター、昨年は登板すべてがリリーフだった山本拓実(市西宮高~17年⑥)は、与えられた役割で結果を残し先発候補に浮上したい。

 万全な投手陣のなか育成にも期待の選手がいる。投手転向2年目で育成指名された松木平優大(精華高~20年育③)は、順調に成長曲線を描き一気にブレイクが期待できる。技巧派左腕の松田亘哲(名古屋大~19年育①)も支配下間近、2度目の育成契約から復活を期す大嶺祐太八重山商工高~06年ロ①)にも期待したい。

●野手陣~待ち望むのはノーチャンスからでも1点取れる長距離打者の覚醒

 チームで規定打席に達したのは大島とビシエド、高橋周と京田の4選手で木下も規定打席未満ながら正捕手の座を掴んだ。ただ、高橋周は不振、京田も課題の打撃で奮わず初の2軍落ちも経験した。痛かったのは一昨年、チーム2番目の本塁打と打点を稼いだ阿部の長期離脱で、ポイントゲッター的な枠割を果たしていただけに、打線がさらに迫力を欠いた。終わってみれば、結果を残したのは大島とビシエド、木下のみで、去就が微妙だったビシエドが残留したのは大きかった。

 新戦力の台頭も乏しく、新外国人のガーバーは、僅か12試合で打率.156、1打点の成績で早々と帰国。期待の根尾も今季も打率が2割に満たず、解説者に「話にならない」と酷評される始末。

 そのなかで4年目の高松渡(滝川二高~17年③)が自慢の俊足で出番を増やし、二塁で32試合にスタメン出場し、移籍の加藤も途中加入にも係わらずチーム3位の8盗塁で機動力不足を補う活躍を見せた。

 17年から本塁打や盗塁が年々低下傾向にあったが、チーム打率は悪くなく得点能力が乏しかった。ただ、昨シーズンはチーム打率もリーグ最下位に沈み、得点数405点は2年連続で12球団最低で、これまで数字で貧打が顕わになっているのに、補強らしい補強をしないフロントは本当に何を考えているか理解できない。 

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…木下拓哉(123/393)Aマルティネス(48/94)郡司裕也(30/76)

 内野手…☆ビシエド(130/526)☆高橋周平(137/520)☆京田陽太(113/448)

     福田永将(110/305)阿部寿樹(66/240)堂上直倫(75/234)

     根尾 昂(72/188)三ツ俣大樹(58/138)高松 渡(78/123)

 外野手…☆大島洋平(141/596)福留孝介(91/216)渡辺 勝(48/134)

     加藤翔平(55/128)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)大島洋平⑧      1)大島洋平     

  2)阿部寿樹④         2京田陽太        

  3)高橋周平⑤              3)福田永将   

  4)ビシエド③      4)ビシエド③      

  5)平田良介⑨      5)高橋周平⑤      

  6)京田陽太⑥      6)阿部寿樹④      

  7)木下拓哉②      7)木下拓哉     

  8)根尾 昂⑦      8)根尾 昂⑨

  9)福谷浩司①      9)柳 裕也①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…木下拓哉 Aマルティネス 桂依央利(山下斐紹)

 内野手…高松 渡 京田陽太 石川昂弥 高橋周平 阿部寿樹 三ツ俣大樹 

       福田永将   堂上直倫 ビシエド(石垣雅海 土田龍空) 

 外野手…根尾 昂 大島洋平 福留孝介 加藤翔平

   (※鵜飼航丞 平田良介 渡辺 勝 ※ブライト健太 伊藤康祐 岡林勇希)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)京田陽太⑥      捕 手)木下拓哉(Aマルティネス)

  2)加藤翔平⑨      一塁手ビシエド

  3)大島洋平⑧      二塁手)阿部寿樹(高松 渡)

  4)ビシエド③      三塁手)高橋周平(石川昂弥)

  5)高橋周平⑤      遊撃手)京田陽太

  6)阿部寿樹④      左翼手)鵜飼航丞(根尾 昂)

  7)木下拓哉②      中堅手大島洋平

  8)鵜飼航丞⑦      右翼手加藤翔平(岡林勇希)

  9)柳 裕也①               

 レギュラーは木下とビシエド、京田と大島は決まりだろう。とにかく現時点でビシエドと大島抜きの打線は考えられず、京田も入団後初の年俸ダウンを糧に打撃改造に取り組み今季もフル出場が望まれる。阿部と高橋周も順当に考えればレギュラー争いをする選手ではなく、今一度存在感を示したい。

 混戦は二塁手で、高松は足のスペシャリストとして存在感を増したが、打撃や守備、盗塁成功率の向上含め全体的にレベルアップが必要で、小技や粘り強い打撃で出塁率を上げれば1~2番での起用も増えてくる。ファームでチームトップの本塁打を放った石垣雅海(酒田南高~16年③)は、三塁も守れ自慢の長打力でアピールしたい。ベテランに差し掛かった三ツ俣大樹(修徳高~10年オ②)はバントと右打ちが巧く、昨年掴みかけたレギュラーの座を狙っている。

 三塁は石川昂弥(東邦高~19年①)に期待がかかる。昨季は一軍出場はなく、ファームでも壁に当たっているが、潜在能力は高くチーム待望の長距離砲だが、高橋周を脅かすまでには至っていない。中軸を打てれば、それに越したことはないが、まずは当たれば本塁打のように下位打線でも我慢して起用するくらいの長打力が求められる。

 昨年のドラフトで、大学生3人の外野手を獲得した異例のドラフトが示すように、外野手は大島以外レギュラー不在だ。なぜ、ダメもとでも日本ハムの西川と大田を獲りに行かなかったのか…本当に理解できないフロントだ。

 左翼では根尾やベテランの福田永将(横浜高~06年③)、右翼は加藤と岡林勇希(菰野高~19年⑤)が候補で、45歳の福留孝介日本生命~98年①)も健在だ。ここにルーキーのブライト健太(上武大~21年①)と鵜飼航丞(駒大~21年②)、昨年キャリアハイの成績を残した渡辺勝(東海大~15年育⑥)などが加わる。

 現時点では鵜飼の評価が高く、自慢の長打力でノーチャンスで1点を奪える打者で、それこそ下位打線辺りにいると怖い。ブライトは粗さはあるものの守備とスピードは一軍クラス打席で経験を積むことにより一気に開花するような気がする。誰が開幕一軍、そしてスタメンに名を連ねるか注目したい。

●今ひとつ煮え切らない現メンバーで優勝を狙えるか?育成含め立浪監督の手腕に注目

 期待の選手は投手では、ホークスから移籍した岩嵜を挙げたい。右肘の手術から復活した昨季は大事なところで痛打され、まさかプロテクトから外れたが、投手層の厚いホークスで最優秀中継ぎのタイトルを獲得した実績があり、同じく投手層の厚い中日でも勝ちパターンに入ってくる。是非、完全復活した岩嵜を今年は見てみたい。

 野手は根尾で、残念ながら今年もキャンプで苦労している。正直プロでどんな打者を目指しているか伝わらない。身体能力の高さは誰もが認めるが、オリックス吉田正のようにパワーを磨くのか、立浪監督のような中距離打者を目指すのか、スピードを活かして大島のようなリードオフマンを目指すのか、このままいけば中途半端な選手に終わってしまいそうな気がしてならない。

 今季は立浪監督の戦い方に注目している。高い投手力を活かし、技術に裏打ちされた実績も兼ね備えた選手を起用し優勝を狙うのか、それとも中途半端にAクラスを狙うより、若手を積極起用して将来の土台を作り、2~3年後に優勝できるメンバーを育てるのか、チームの方向性が開幕スタメンメンバーで伝わると思う。

22年戦力展望☆日本ハム~新監督が目指すのはかつての守り勝つ野球も、苦戦必至の厳しいシーズン

 新庄剛志監督の就任で、昨年オフの話題を独占。暗く沈滞ムード漂うチームに明るさと活気を取り戻した。

 昨年を振り返ってみると、開幕3試合目から引き分けを挟んで7連敗と波に乗れず、開幕戦から本塁打が9試合も出ないなど打線に勢いを欠いた。一昨年の打点王中田翔大阪桐蔭高~07年①)が大不振でスタメンを外れ、西川遥輝智弁和歌山高~10年②)と大田泰示東海大相模高~08年巨①)も精彩を欠き、近藤健介(横浜高~11年④))が孤軍奮闘するも本調子には程遠かった。

 一方で投手陣は奮闘を見せ、安定感抜群のエースの上沢直之専大松戸高~11年⑥)が自己最多の12勝、ルーキー伊藤も最終戦で10勝に到達した。リリーフでは堀が最多ホールド、杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)もリーグ3位の28セーブを挙げた。

 ただ、成績以上に影を落としたのがトラブルで、主将も務めた中田は同僚への暴力事件で謹慎したのち、巨人に電撃トレードされ賛否を呼んだ。加えて同僚への差別発言、シーズンオフには主力の西川と大田等を、ノンテンダーと言う新たな戦力外通告を行った。球団最長の10年目の指揮を執った栗山英樹監督のラストシーズンは、3年連続の5位という結果以上に後味の悪いシーズンで幕を閉じた。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 21年 5位 55勝68敗20分    .231    78本   77個  454点  3.32  515点

 20年 5位 53勝62敗  5分 .249    89本   80個  493点  4.02  528点

 19年 5位 65勝73敗  5分 .251    93本   48個  560点  3.76  590点

 18年 3位 74勝66敗  3分 .251  140本   98個  589点  3.77  586点

 17年 5位 60勝83敗  0分 .242  108本   86個  509点  3.82  596点  

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~伊藤大海(投手~苫小牧駒大①)

 19年~なし

 18年~なし

 17年~なし

 16年~堀 瑞樹(投手~広島新庄高①)石井一成(内野手早大②)

    玉井大翔(投手~新日鉄住金⑧)

 直近5年のドラフトは苦戦している。平均年齢25.9歳は12球団でも断トツの若いチームで、有望な若手も育ってきてはいるが、主力と呼べる選手が少なく物足りなさを感じる。

 高卒なら吉田輝星(金足農高~18年①)と清宮幸太郎早実高~17年①)と投打のスター選手候補がいるが、ともに伸び悩んでいる。それならと久しぶりに即戦力中心にシフトした19年ドラフトも期待通りには行かなかった。高卒選手は伸び悩み、即戦力も不発で、かつて呼ばれた育成の日本ハムの響きも空しく聞こえる。

●投手陣~先発・リリーフ陣ともに整備が進み、ガントとポンセの期待の新戦力も加入

  一昨年4点台だったチーム防御率は、昨年リーグ3位まで改善し、課題だった投手陣の整備が進み、最下位を免れたのも投手陣の働きが大きかった。

 先発では上沢が初の防御率2点台(2.81)で名実ともにエースになり、加藤貴之(新日鉄かずさマジック~15年②)も、以前はオープナー的な起用で、先発しても短いイニングで変えられることが多かったが、上沢を上回る25試合に先発し150回を投げ6勝を挙げた。

 嬉しい誤算だったのはルーキーの伊藤で、1年間先発ローテーションを守り、2桁勝利に防御率2.90の好成績を挙げた。また、オリンピック日本代表にも選出され、大舞台も経験できたのは大きな財産になった。

 このほか、シーズン途中から先発に回った河野竜生(JFE西日本~19年①)、後半戦から先発ローテを守った立野和明(東海理化~19年②)は、勝ち星こそ上がらなかったものの、防御率はともに2点台と結果を残した。バーヘイゲンにしろ、トレードで加入した池田隆英(創価大~16年楽②)にしろ、打線がマシならもっと勝ち星は上がり、先発陣の駒は揃ってきた。

 リリーフ陣も、5年目23歳の堀が60試合の登板し、リーグ1位の39ホールド、杉浦もクローザーとしての目途が立った。さらに昨年も50試合登板の宮西尚生関学大~07年③)に経験豊富な玉井とロドリゲス、43試合登板で防御率1点台の井口和朋(東農大オホーツク~15年③)も加わり、勝ちパターンが確立できた。

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆加藤貴之(150回)☆上沢直之(160回1/3)☆伊藤大海(146回)

     バーヘイゲン(96回)池田隆英(82回1/3)河野竜生(90回1/3)

 ・救援…堀 瑞樹(60試合)杉浦稔大(56試合)宮西尚生(50試合)

       玉井大翔(50試合)ロドリゲス(47試合)井口和朋(43試合)

【今年度の予想】

 ・先発…上沢直之 加藤貴之 伊藤大海 河野竜生 立野和明 ※ガント

       池田隆英 金子千尋 吉田輝星 生田目翼 根本悠楓 ※ポンセ   

 ・中継…堀 瑞樹 宮西尚生 玉井大翔 井口和朋 西村天裕

       鈴木健矢 上原健太 石川直也 ※北山亘基

 ・抑え…杉浦稔大 ロドリゲス

 先発ローテは上沢に加藤、伊藤は当確で、順当にいけば河野と立野が入り、残り1枠の争いになる。期待の新外国人のガントは、メジャーで173試合登板、通算24勝の右腕。多彩な変化球を操るグラウンドボーラーで、残り1枠どころか先発ローテ入りしてもらわないと困る投手だ。長身右腕のポンセも、ガントと同じゴロを打たせて取るタイプで、ともに先発向きと言える。ガントは与四球の多さ、ポンセは長打の被打率が高く、それぞれ課題を克服できればバーヘイゲンが抜けても問題はないだろう。

 ここまでで先発の枠は埋まっているが、池田やベテランの金子千尋トヨタ自動車~04年オ自)、昨季ファーム最高防御率の生田目翼(日本通運~18年③)も先発の座を狙っている。若手で面白いのは2年目の根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)で今春のキャンプでも好投を続けているブレイク候補の一人だ。期待のエース候補の吉田は、昨年ファームでみっちり得意の直球に磨きをかけた。結果を残せないうちに、投手陣の層が厚くなり、期待値ではなく実力で先発ローテの座を勝ち取って欲しい。

 リリーフ陣も大きな問題はなく杉浦がクローザー、堀と宮西の両左腕、ロドリゲスがセットアッパーを務め勝利の方程式が確立できている。安定感が増した井口、故障からの本格復帰を目指す石川直也(山形中央高~14年④)も控えている。

 玉井と西村天裕(NTT東日本~17年②)はロングリリーフもでき、先発ローテの状況によっては池田や金子、ポンセを回すこともできる。変則右腕の鈴木健矢(JX-ENEOS~19年④)は課題の左打者を克服できれば貴重なワンポイントになり、ルーキーの北山亘基(京産大~21年⑧)も最速153キロの直球で奪三振率が高く、多彩なリリーフ陣候補が揃っている。 

●野手陣~今季も貧打に悩みそう…横一線のレギュラー争いから誰が抜け出るか

 昨年の目を覆うような貧打の印象が強いが、中田が打点王を獲得した20年シーズンは、チーム打率はリーグ2位、得点数も3位と、広い札幌ドームで本塁打数の少なさは変わらないが、そこまで悪くなかった。

 ここ数年の日本ハムを支えていた西川と大田、中田と近藤、渡邊諒(東海大甲府高~13年①)で、昨年は近藤を除いて全員が不振に陥った。期待の外国人選手も3年目を迎えた王伯融は昨年も実力を発揮できず、ロドリゲスも好不調の波が大きく1年でチームを去った。

 そのなか若手では、野村佑希(花咲徳栄高~18年②)が中軸を担い、育成契約も経験した高濱祐仁(横浜高~14⑦)も自己最多の107試合に出場し経験を積んだ。また、細川凌平(智弁和歌山高~20年④も高卒ルーキーながら遊撃で6試合に先発出場し、非凡な打撃センスを見せた。

 もう一つの課題の守備だが、昨年もリーグ最多の失策数は解消できず、先述した野村と高濱も守備が課題で、特に野村の16失策(三塁)はさすがに多すぎる。また、捕手陣はリーグ最多の10捕逸(最少はオリックスの3)で、清水優心(九州国際大高~14年②)と宇佐見真吾(城西大~15年巨④)はそれぞれ4捕逸に加え、リーグ最少の盗塁阻止率と課題が解消されていない。

【20年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…清水優心(100/256)石川 亮(60/123)

 内野手高濱祐仁(107/404)野村佑希(99/394)渡邊 諒(83/325)

       石井一成(111/321)中田 翔(39/150)佐藤龍世(51/129)

       ロドリゲス(50/125)中島卓也(67/117)谷内亮太(106/44)

 外野手…☆西川遥輝(130/547)☆近藤健介(133/545)☆浅間大基(128/458)

     王 伯融(95/283)大田泰示(76/206)万波中正(49/133)

     松本 剛(47/104)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)西川遥輝⑧      1)浅間大基⑧      

  2)松本 剛⑦           2西川遥輝⑦       

  3)近藤健介DH          3)野村佑希⑤    

  4)中田 翔③      4)近藤健介DH      

  5)渡邊 諒④      5高濱祐仁③      

  6)大田泰示⑨      6)渡邊 諒④      

  7)野村佑希⑤      7)大田泰示⑨     

  8)清水優心②      8)石井一成⑥ 

  9)中島卓也⑥      9)清水優心②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…清水優心 石川 亮(宇佐見真吾 郡 拓也)

 内野手…※ヌニエス ※アルカンタラ 中島卓也 渡邊 諒  野村佑希

     高濱祐仁 石井一成 谷内亮太

    (杉谷拳士 ※上川畑大悟 清宮幸太郎 佐藤龍世 ※水野達稀 細川凌平)

 外野手…王 伯融 近藤健介 松本 剛 浅間大基 五十幡亮汰 万波中正

    (木村文紀 今川優馬)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)浅間大基⑦      捕 手)清水優心(石川 亮) 

  2)アルカンタラ⑥    一塁手高濱祐仁(清宮幸太郎

  3)近藤健介⑨      二塁手)渡邊 諒(杉谷拳士

  4)ヌニエスDH          三塁手)野村佑希(佐藤龍世)

  5)野村佑希⑤         遊撃手)アルカンタラ(石井一成)

  6)渡邊 諒④      左翼手)浅間大基(松本 剛)

  7)高濱祐仁③         中堅手)万波中正(五十幡亮汰)

  8)万波中正⑧      右翼手)近藤健介(今川優馬

  9)清水優心②       D H)ヌニエス(王 伯融) 

 打線は残念ながら昨年以上に厳しい。何せ昨年の開幕スタメンから3選手がチームにおらず、レギュラーと呼べるのは近藤だけ。特に西川の放出は理解し難く、色々と理由はあると思うが、悪いなりにも出塁率は打率を1割上回る.362、盗塁数はチームの1/3を稼ぐリードオフマンがいなくなるのは厳しい。

 新庄監督はレギュラーは横一線、若手にもチャンスがあると言うが、どう見ても打ち勝てる打線ではない。浅間大基(横浜高~14年③)や五十幡亮汰(中大~20年②)、新外国人のアルカンタラが出塁し、近藤と新4番候補のヌニエス、実績のある王伯融や渡邊、昨年活躍した野村と高濱が機能してようやく形になり、いずれも“たられば”が付いてしまう。

 新庄監督が目指す守り勝つ野球でも、守備力に不安があり、キャンプで色々と試しながら、打撃と守備のどちらを優先したオーダーを組むか頭を悩ますところだと思う。そこで守備別で候補を見てみた。

 捕手は実績なら清水と石川亮(帝京高~13年⑧)の争いになる。打てる捕手が欲しいところだが、まずはディフェンス面を重視して良いと思う。そうなると技術面では一日の長のある宇佐見や、若手では強肩の梅林優貴(広島文化学園大~19年⑥)の抜擢もあるかもしれない。(打撃優先~石川、守備優先~宇佐見)

 一塁は高濱とヌニエスの争いになり、ここに清宮が加わる。ただヌニエスはDHが有力で、守備力よりも打力が求めれるポジションだけに、高濱と清宮は打力をアピールしたい。

 二塁は万全なら渡邊が近藤に次いでレギュラー当確と言える。対抗はパンチ力が持ち味の佐藤龍世(富士大~18年西⑦)とムードメーカーの杉谷拳士(帝京高~08年⑥)、二遊間も守れるアルカンタラも候補になる。(打撃優先~渡邊、守備優先~杉谷)

 三塁は今年は野村で良いと思う。攻守に課題はあるが、将来の日本ハムを背負う選手であり、中田に代わる4番候補になる。キャンプでは左翼も守っているが、守備に難があるだけに実戦で守備機会を増やしたほうが良い思う。このほか佐藤やヌニエスは元々は三塁が本職で、打力は申し分なく、守備に定評のある谷内亮太(国学院大~12年ヤ⑥)も控えている。(打撃優先~野村、守備優先~谷内)

 最もし烈な争いなのが遊撃手で、一番手はアルカンタラになる。守備力と走力のあるスイッチヒッターで、打撃の粗さが課題だが長打力もある。対抗は石井と中島卓也(福岡工高~08年⑤)だが、成長著しい細川とルーキー水野達稀(JR四国~21年③)は打撃がセールスポイント。ケガで出遅れているが同じルーキーの上川畑大悟(NTT東日本~21年⑨)は堅守に定評がある。(打撃優先~石井、守備優先~アルカンタラ)

 外野も大混戦で近藤を除く2つのポジションを狙う。経験で言えば走攻守揃った浅間と松本剛(帝京高~11年②)になり、浅間は広い守備範囲と強肩を誇り、昨季規定打席をクリアした実績がある。松本はパンチ力に加え、小技も使えどの打順でもフィットする。また、ベテランの木村文紀(埼玉栄高~06年西①)は本来の実力を発揮できればレギュラー候補で、年齢を感じさせない右翼守備は脅威になる。

 レギュラーを狙う若手では、万波中正(横浜高~18年④)は走攻守で高いポテンシャルを秘めており、あとは好不調の波を克服できればレギュラーが近づく。俊足の五十幡は、新庄監督は4番起用も示唆しているが、ポスト西川の一番手で今季のブレイクが期待できる。今川優馬(JFE東日本~20年⑥)はチーム待望の長距離打者で、努力でプロまで辿り着き、何かやってくれそうな期待感を持たせる。また、明るく元気なムードメーカーでベンチに置いておきたい選手だ。

 打力、守備力ともに左翼・近藤と中堅・浅間が有力で、右翼は打力なら万波と今川、守備力重視なら松本や木村の争いになる。指名打者は近藤とヌニエスを休ませながらの起用になり、ヌニエスの状況次第では王伯融の起用になる。

札幌ドーム最終年…新監督には厳しい戦力で、Bクラス予想が現実的

 注目の選手というより、起用法で注目しているのが上原健太(明大~15年①)と郡拓也(帝京高~16年⑦)の2人だ。上原は秋季キャンプから二刀流に挑戦しており、投手としては今一つ結果を残せていなかったが、元々高い身体能力は評価されており、今年は打者上原を見てみたい。

 郡は捕手登録ながら、昨年スタメン15試合中三塁の出場が最も多く、捕手では一度もなかった。打順も一番が多く、隠れポスト西川として近藤や栗原(ソフトバンク)のように、捕手ではなく打撃中心に出番が増えるかも知れない。

 今季の日本ハムは新庄監督の効果で、話題だけでは一番だが、プレーするのはあくまで選手。投手陣は良いが、攻撃力のダウンは否めず、新監督には厳しいシーズンになると思う。良くてAクラスと言いたいが、Bクラスが現実的と言え、来年の新球場開業に向け今後に続く実りのあるシーズンにしていきたい。

 最後に、投手陣は守り勝つ野球を実践できる陣容になっており、仮に1~2人欠けても戦力ダウンにはならない。個人的には野手とのトレードに踏み切っても良いと思うのだが…。

22年戦力展望☆DeNA~リーグ屈指の打線で、投手陣が整備できれば優勝も夢ではない

 昨年はコロナ禍で頼みの外国人選手の来日が遅れ、開幕は2つの引き分けを挟み6連敗。三浦新監督の初勝利は開幕9戦目だった。その後も状態は上がらず、4月には引き分けを挟んで10連敗…4月終了時点で6勝21敗4分の借金15で早々とペナントレースから脱落してしまった。

 今永昇太(駒大~15年①)が開幕に間に合わず、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)は右肘の手術で僅か2試合で離脱。先発陣のやり繰りに苦労するなか、山崎康晃(亜大~14年①)もクローザーに復帰することが叶わず、三嶋一輝(法大~12年②)も安定感を欠いたピッチングが続いた。

 6月になると打線が活発になり、桑原将志福知山成美高~11年④)が復活を果たし、ルーキー牧の活躍もありチームも盛り返した。ただ良かったのもここまで、7月以降は貯金することが出来ず、10月に大きく負け越して6年振りの最下位に沈んだ。最終の借金は19で、開幕の躓きが無ければ、もう少し違う戦いかたもできた。

 ただ、厳しい戦いのなか、今シーズンに繋がる好材料も多かった。投手では、新外国人選手のロメロが、徐々に日本野球にフィットし5勝を挙げ、山崎も9月には久々のセーブを挙げ、守護神復活の道筋が見えてきた。

 打撃陣では若手が躍動し、牧が打率.314に本塁打22本の大活躍。19歳の森敬斗(桐蔭学園高~19年①)も一軍で経験を積み、後半戦になると23歳の山本祐大(BCL滋賀~17年⑨)も33試合で先発マスクを被った。 

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 21年 6位 54勝73敗16分 .258  136本   31個  559点  4.15  624点

 20年 4位 56勝58敗  6分 .266  135本   31個  516点  3.76  474点

 19年 2位 71勝69敗  3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 18年 4位 67勝74敗  2分 .250  181本   71個  572点  4.18  642点

 17年 3位 73勝65敗  5分 .252  134本   39個  597点  3.81  598点  

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~牧 秀悟(内野手~中大②)

    19年~伊勢大夢(投手~明大③)

 18年~大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③)

 17年~東 克樹(投手~立命大①)神里和毅(外野手~日本生命②)

 16年~濵口遥大(投手~神奈川大①)佐野恵太(内野手~明大⑨)

 過去5年のドラフトは悪くない。投手では大貫と濱口の両先発がおり、東は新人王を獲得している。野手でも佐野はタイトルホルダー、そして牧の活躍で打線がさらに強力になった。

 ただ、この間の悪い流れで投手は1年目の活躍がめざましいが、そのあとが続かない。東は1年目11勝も以降はケガもあり3年で5勝、濵口も1年目10勝が唯一の2桁勝利、上茶谷大河(東洋大~18年①)も1年目の7勝以降は2シーズンで3勝と低迷気味だ。

 もう一つは高校生の主力が久しく生まれていない。投手は育成出身の砂田毅樹(明桜高~13年育①)、野手も11年の桑原まで遡らなくてはならない。投手なら小園健太(市和歌山高~21年①)に桜井周斗(日大三高~17年③)、野手では森の奮起に期待したい。

●投手陣~12球団最低の防御率からのカギは先発投手陣の整備

  昨シーズンの敗因は、投手陣の不振に尽きる。チーム防御率は12球団で唯一の4点台で、一昨年に続き先発ローテーションのやり繰りに苦労した。

 先発陣でシーズンを完走できたのは大貫ただ一人だが、その大貫も防御率4点台で6勝、さらにQS率が47%と低く安定感に欠いた。今永と濱口も5勝止まり、上茶谷も期待を裏切った。坂本裕哉(立命大~19年②)や京山将弥(近江高~16年④)も防御率が5点前後では、先発の役割を十分に果たすことができなかった。

 実に16選手が先発を務めたことに苦労が見え、期待の阪口皓亮(北海高~17年③)や中川虎大(箕島高~17年育①)、ルーキーの入江大生(明大~20年①)にもチャンスは与えられたが、阪口の2勝では寂しい。

 そのしわ寄せはリリーフ陣に掛かり、エスコバーをはじめ5選手が40試合以上に登板し勤続疲労が心配だが、反面リリーフ陣は着実に層が厚くなってきている。伊勢は防御率2点台と安定感を増し、23歳の桜井も30試合に登板し防御率3点台前半と若手が成長を見せた。砂田と三上朋也(JX-ENEOS~13年④)が完全復活を果たし、平田真吾(ホンダ熊本~13年②)に石田健大(法大~14年②)もフル回転、三嶋もなんだかんだリーグ4位の23セーブを挙げた。

【21年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…大貫晋一(112回)今永昇太(120回)濵口遥大(91回1/3)

       坂本裕哉(70回1/3)京山将弥(76回)ロメロ(80回2/3)

 ・救援…エスコバー(61試合)山﨑康晃(60試合)三嶋一輝(59試合)

       砂田毅樹(58試合)三上朋也(40試合)伊勢大夢(39試合)

       平田真吾(38試合)石田健大(33試合)シャッケルフォード(32試合)

【今年度の予想】

 ・先発…今永昇太 大貫晋一 濵口遥大 ロメロ 京山将弥 東 克樹

       坂本裕哉 上茶谷大河 阪口皓亮 入江大生 小園健太※ 徳山壮磨※ 

 ・中継…エスコバー 砂田毅樹 三上朋也 伊勢大夢 平田真吾 石田健大

     桜井周斗 田中健二朗 三浦銀二※ クリスキー※  

 ・抑え…三嶋一輝 山﨑康晃

 しつこいようだが、課題は先発投手で、ここが揃えば打線が良いだけに十分に上位を狙える。課題の先発陣は、今永以外は横一線と言える。濵口は好不調の波をなくし、大貫はイニングを稼ぐ投球が求められる。ロメロは昨季の後半のような投球が出来ればローテーション当確で、東や上茶谷が回復すれば計算できる布陣になる。

 若手では、今季6年目の京山はそろそろ結果を残しても良いころで、阪口もファームのエースから脱却したい。ルーキーにもチャンスはあり、徳山は最速152キロのストレートに制球力が武器で、ドラフト1位の小園は焦る必要は全くないが、高校生離れした完成度の高い投手なので、登板間隔を空けたゆとりローテなら結果を残せると思う。

 リリーフ陣は枚数は揃っているが、安定感という部分ではまだまだ。伊勢以外は軒並み防御率3点台で三嶋と平田は4点台、石田は5点台を超えている。

 ただ、リリーフ陣の左右のバランスが良い。右が山崎と三嶋、三上、伊勢、平田。左がエスコバーと砂田、桜井、石田に復活を期す田中健二朗常葉菊川高~07年①)とそれぞれ5枚ずつおり、場面場面での起用に迷うことなく、リリーフでもローテーションが組める。先発が改善できればこれまでのような登板過多を抑制でき、個々の防御率も改善すると思う。

 新加入ではルーキーの三浦銀二(法大~21年④)は最速150キロの速球を武器に、高校時代よりタフな投球が身上だけに、ロングリリーフなどで出番は早いかもしれない。新外国人のクリスキーは、最速157キロで奪三振率の高い投手だが、1イニング4暴投の記録が示すように制球力に難ありで、ここは大化けに期待したい。

 リリーフ陣のカギを握るのはやはり山崎の復調で、18~19年のセーブ王が、まさかの直近2年で7セーブと不調に陥り、チーム低迷の要因の一つと言える。昨年後半からは復調気配になってきており、今年は完全復活を目指したい。

●野手陣~宮崎とオースティンも残留し、リーグ屈指の強力打線にさらに磨きかけたい

 チーム打率と得点数はともにリーグ2位の数字が示すように、とにかく打線は破壊力十分だ。牧の打率.314を筆頭に桑原と佐野、オースティン、宮崎が打率3割を超え、全員が2桁本塁打を放っている。唯一、ソトが元気なかったが、それでも本塁打は20本を超えている。

 20年首位打者の佐野は2年連続の3割で、一昨年の成績がフロックでないことを証明した。ケガで離脱が多かったオースティンも昨年はコンスタントに出場し、桑原も復活。攻守の要でもある宮崎の6年契約はチームにとって大きな朗報になった。

 また、期待の森が強肩と俊足で存在感を示し、今年のブレイクが期待される。捕手もしばらく伊藤光明徳義塾高~07年オ③)と戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)等の牙城だったが、4年目の山本が出場機会を増やした。17年のドラフト(本指名)で一番最後に名前が呼ばれた男が、レギュラー獲りに名前を挙げ、同じ9位のから主力に成長した佐野に続きたい。

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…伊藤 光(53/192)戸柱恭孝(56/135)山本祐大(51/111)

 内野手…☆宮崎敏郎(141/569)☆牧 秀悟(137/523)☆ソト(123/451)

       大和(106/294)柴田竜拓(85/266)森 敬斗(44/113)

 外野手…☆佐野恵太(143/615)☆桑原将志(135/571)☆オースティン(107/439)

       関根大気(103/139)楠本泰史(75/127)神里和毅(88/118)    

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)桑原将志⑧      1)桑原将志⑧      

  2)関根大気⑨           2)柴田竜拓⑥       

  3)牧 秀悟③           3)佐野恵太⑦    

  4)佐野恵太⑦      4)オースティン⑨      

  5)宮崎敏郎⑤         5)宮崎敏郎⑤      

  6)柴田竜拓      6)ソト③      

  7)田中俊太④      7)牧 秀悟④      

  8)嶺井博希②      8)戸柱恭孝②

  9)濵口遥大①      9)大貫晋一①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…戸柱恭孝 伊藤 光 山本祐大(嶺井博希)

 内野手…牧 秀悟 藤田一也 森 敬斗 大和 柴田竜拓 宮崎敏郎 ソト

    (倉本寿彦 田中俊太 知野直人)     

 外野手…※大田泰示 桑原将志 佐野恵太 神里和毅 オースティン 楠本泰史

    (宮本秀明 細川成也 蝦名達夫 関根大気)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)桑原将志⑧      捕 手)戸柱恭孝(伊藤 光) 

  2)森 敬斗⑥      一塁手)ソト

  3)佐野恵太⑦      二塁手)牧 秀悟(柴田竜拓)

  4)オースティン⑨       三塁手)宮崎敏郎

  5)宮崎敏郎⑤         遊撃手)森 敬斗(大和)

  6)ソト③        左翼手)佐野恵太

  7)牧 秀悟④         中堅手桑原将志(神里和毅)

  8)戸柱恭孝②      右翼手)オースティン(大田泰示

  9)今永昇太①        

 打線は今年もリーグ随一の布陣になる。ただ、要件として桑原がリードオフマンとして打線を引っ張り、牧が2年目にどこまで成績を残せるかがカギを握ってくる。主力は心配なくコンスタントに3割を打てる佐野と宮崎、長打力のあるオースティンとソトが中軸を形成し、レギュラーが揃えばどこからでも得点できる打線になり、どういう並びになるか楽しみだ。

 さらに打線に厚みを増すには、控え選手の底上げと代走要員などスペシャリストの存在が必要になる。そのなかで経験豊富な藤田一也(近大~04年横④)と大田泰示東海大相模高~08年巨①)の加入は、守備・攻撃面の両面で大きく課題を解消できた。40歳のベテラン藤田は若手の見本で将来の幹部候補、大田はレギュラー争いの起爆剤になり控えの層を厚くした。

 課題の機動力では、レギュラーメンバーは無理に走らなくても十分に繋がる打線だが、ここぞというときの代走は脅威で、攻撃のバリエーションを増やしたい。候補としては神里や宮本秀明(パナソニック~17年⑦)がおり、育成だが村川凪(四国IL徳島~21年育①)は俊足で盗塁技術が高く一芸で支配下を目指す。

 このほかにも、守備固めで内野は名手の柴田竜拓(国学院大~15年③)、外野には関根大気(東邦高~13年⑤)がおり、代打の切り札では得点圏打率の高い大和(樟南高~05年神④)が控える。

 守備位置で見てみると、捕手は絶対的なレギュラー不在のなか、昨年は山本が成長を見せた。打率は全員似たり寄ったりで2割前後だが、出塁率では伊藤、長打率では戸柱、守備率では山本が一歩リードしている。今年こそはシーズン通してレギュラーを確立させたいところだ。

 内野は一塁のソトと三塁の宮崎は決まりで、二遊間のセンターラインの争いなる。二塁は牧が有力で、遊撃は森のブレイクに一番期待するが、大和や藤田、柴田に倉本寿彦(日本新薬~14年③)など実績十分の選手が控える。このほか、複数ポジションを守れる田中俊太(日立製作所~17年巨⑤)は走攻守にバランスが良く、知野直人(BCL新潟~18年⑥)は自慢の長打力でレギュラー争いに参戦したい。

 外野は桑原と佐野、オースティンとレギュラーが確立されているが、新加入の大田や神里は実力と十分すぎる実績があり、レギュラー陣もうかうかしていられない。ただ一方で、今ひとつ若手の成長が物足りなく、関根は守備と走塁、楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)はシュアな打撃、ファームでは中心選手の蝦名達夫(青森大~19年⑥)や細川成也(明秀日立高~15年⑤)は自慢の長打力で一軍ブレイクを果たしたい。

 また、ドラフト下位ながら梶原昂希(神奈川大~21年⑥)は走攻守揃った選手で、柳田(ソフトバンク)を彷彿させるようなポテンシャルを秘めており、プロで素質を開花させたいところだ。

●小園指名に将来に向けチーム強化の本気度を感じる!OB石井コーチ加入もプラス

 注目の選手では、投打の次世代スター選手候補の小園と森のドラフト1位コンビを挙げたい。小園は最速152キロのストレートに多彩な変化球を操り、制球力も高く高校生離れした完成度を誇る。先発強化が課題のチームだけに、出番は早いかもしれない。

 高校生投手の1位入札は松井裕樹楽天)以来で、これまで投手なら即戦力中心の単独指名が十八番だった。昨シーズンも12球団最低のチーム防御率のなか小園を指名したのは、良い選手は競合でも、即戦力でなくても獲りに行く姿勢は評価できる。

 野手は森で、今年は遊撃のレギュラーを掴むシーズンになる。打撃面ではまだまだ課題があるが、リーグ随一の強肩にチームに不足している機動力を使える選手で、一つひとつのプレーに華がある。ここまで順調に一軍で経験を積んでおり、今年は一気に定位置獲りを決めたい。

 最後に、今年は野手総合コーチで石井琢朗が加入した。石井コーチは広島3連覇の礎を作った立役者の一人で、今シーズン巨人から移籍してきた。走塁面を絡めた細かい野球の指導は間違いなく打線のプラスになり、一番大きな補強だったかもしれない。

 本来、三浦監督が目指す野球とは異なるかもしれないが、18~19年の西武のように打ち勝つメンバーが揃っている。強力打線を前面に出した野球で、十分に上位を狙えるが、昨年のようにスタートに躓くことなく、投手陣が整備できれば昨シーズンのヤクルトのように最下位からの優勝も夢ではない。