ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年戦力展望☆西武~投手陣は改善傾向!山賊打線復活でAクラス返り咲きを狙う

 今年も残念ながら、新型コロナウィルス感染拡大のなかのキャンプスタートになったが、待ち遠しかった球春が到来した。今年も各チームの戦力分析をしながら(昨年は途半分しかできませんでしたが…)、順位予想もしていきたいと思います。

 昨年は最終戦日本ハムに負け、42年振りの最下位に沈んだ西武。18~19年と2連覇したチームがであり、80年代の黄金期を知る私からすれば、驚きと同時に寂しさを感じる。

 昨年は開幕ダッシュに成功したものの、山川穂高(富士大~13年②)と外崎修汰(富士大~14年③)がケガで相次ぎ離脱し、外崎は前半戦を棒に振った。ようやく一番に定着したルーキー若林楽人(駒大~20年④)も靭帯損傷の大ケガでシーズン中の復帰が絶望となり、徐々に打線が迫力を欠いた。それに呼応するように課題の投手陣も打たれる場面が目立ち、前半戦は借金ターンになった。

 後半戦になると主力が戻ってきたが、一度投打が噛み合わなくなったチーム状態が好転することはなかった。終わってみればチーム打率.239はリーグ4位で、かつての山賊打線の面影をなくし、課題の投手陣もチーム防御率こそ4点台から抜け出たが、リーグ最下位の定位置に落ち着いてしまった。

 ただ、平良が39試合連続無失点の日本新記録を塗り替え、ライオンズ一筋の栗山巧(育英高~01年④)が2000本安打を達成する明るい話題もあった。また、主力が離脱するなか、ともに6年目の呉念庭第一工大~15年⑦)や愛斗(花咲徳栄高~15年④)、若林に岸潤一郎(四国IL徳島~19年⑧)の中堅と若手が頭角を現すなど収穫もあったシーズンになった。

 また、何といっても昨年のドラフトが会心のドラフトになった。4球団競合のなか隅田知一郎(西日本工大~21年①)を獲得できただけでも成功なのに、1位級の評価を受けていた佐藤隼輔(筑波大~21年②)の大学球界屈指の左腕を獲得できた。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 21年 6位 55勝70敗18分 .239  112本   84個  521点  3.94  589点

 20年 3位 58勝58敗  4分 .238  107本   85個  479点  4.28  543点

 19年 1位 80勝62敗  1分 .265  174本 134個  756点  4.35  695点

 18年 1位 88勝53敗  2分 .273  196本 132個  792点  4.24  653点

 17年 2位 79勝61敗  3分 .264  153本 129個  690点  3.53  560点  

【過去5年のドラフトの主戦力】

 20年~なし

 19年~宮川 哲(投手~東芝①)

 18年~松本 航(投手~日体大①)森脇亮介(投手~セガサミー⑥)

 17年~平良海馬(投手~八重山商工高④)

 16年~今井達也(投手~作新学院高①)源田壮亮内野手トヨタ自動車③)

     平井克典(投手~ホンダ鈴鹿⑤)

 西武のドラフトは基本毎年、投手と野手をバランス良く指名しており、特に投手陣の年齢バランスは卓越している。また、主力選手を着実に獲得しており、単独指名の今井と松本はともに先発陣の柱に成長し、日本を代表するリリーフの平良、堅守でリーグを代表する遊撃の源田はキャプテンも務めている。

 源田以外の野手陣がいないのが気がかりだが、心配することはない。野手中心の指名になった20年は若林にブランドン大河(東農大オホーツク~20年⑥)が一軍で結果を残し、渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)などブレイク間近の若手が揃っており、ニュー山賊打線を期待できる。 

 

●投手陣~高橋、松本、今井の3本柱に続く先発と、平良に繋げるリリーフ陣が課題

  ようやく4年振りにチーム防御率4点台から抜け出し、着実に改善はしているが、相変わらずチーム防御率はリーグ最下位で、課題の投手陣再建に時間を要している。

 昨年の先発陣は、高橋光成前橋育英高~14年①))が2年振りに2桁勝利を挙げ、松本も初の2桁勝利を記録し、今井も自己最多の8勝を挙げた。また、3選手とも防御率3点台でシーズン通してチームを支え、まさに3本柱と言える活躍を見せた。

 たが、この後に続く選手がおらず、ニールは不振で退団、リリーフ陣から平井を先発に回すなど、実に15名の選手(松坂の引退試合を除いて)が先発を務めた。そのなかで後半先発ローテに加わった、渡邊勇太朗(浦和学院高~18年②)が4勝を挙げたのは収穫だった。

 リリーフ陣では平良がチーム最多登板で60イニングを投げ、20セーブ、21ホールドで防御率0点台で大車輪の活躍を見せた。ベテランの武隈祥太(旭川工高~07年④)が46試合で防御率1点台で復活を果たしたが、平良まで回して勝ちに繋げるパターンが確立できなかった。平良に次ぐ61試合に投げたギャレットも退団し、リリーフ陣の再編が今年も大きな課題になる。 

【21年シーズン結果】☆は規定投球回数クリア ※は新加入選手

 ・先発…☆高橋光成(173回2/3)☆今井達也(158回1/3)☆松本 航(149回2/3)

       平井克典(74回2/3)ニール(60回)渡邊勇太朗(55回)

 ・救援…平良海馬(62試合)ギャレット(61試合)武隈祥太 (46試合)

       森脇亮介(45試合)十亀 剣(40試合)増田達至(33試合)

【今年度の予想】

 ・先発…高橋光成 今井達也 松本 航 ※エンス 渡邊勇太朗

       平井克典 與座海人 本田圭佑 ※隅田知一郎 ※佐藤隼輔 ※スミス

 ・中継…武隈祥太 森脇亮介 十亀 剣 増田達至 宮川 哲 水上由伸

       公文克彦 田村伊知郎 浜屋将太 ※ボー・タカハシ

 ・抑え…平良海馬 

 先発は高橋と今井、松本は当確だろう。昨年、自己最多の登板数で2度目の2桁勝利を挙げた高橋は名実ともにエースに近づいた。1年目から先発ローテーションの松本も安定感を増し、2年連続の2桁勝利を狙う。今井も課題の四球を減らせば、3人揃っての2桁勝利が現実味を帯びる。

 残り3枠の争いは新加入の選手に期待したい。最速156キロ左腕の新外国人選手のエンスは、30歳と遅咲きながら昨季3Aで8勝を挙げた。また、メジャーで102試合に登板したスミスの加入も決まった。昨年は新外国人投手が不発だっただけに期待は大きい。

 ルーキーの隅田と佐藤にもチャンスはある。隅田は150キロの速球に加え、変化球も多彩でいずれも完成度が高く制球力も良い。調子の波が少なく2桁勝利も十分に狙える。佐藤は最速152キロの速球を武器に奪三振能力が高く、昨年春の段階では大学ナンバーワン左腕と言われた逸材で、ルーキー2人の先発ローテ入りも夢ではない。

 このほか順当なら渡邊が4~5番手になり、先発への適性を見せた與座海人(岐阜経大~17年⑤)、経験から言えば平井も候補になる。ただ、今シーズンは延長12回制になるので、中継ぎの駒が多いほうがよく、ロングリリーフや勝ちパターンで使える平井は中継ぎに残しておきたい。

 どちらにしろ、不足している全発左腕に隅田と佐藤、エンス。下手投げの與座が加われば、先発ローテーションのバランスという部分で強化になることは間違いない。

 リリーフはクローザーの平良は決まりで、平良までどう繋いでいくかがポイントになる。そのカギを握っているのが増田達至(NTT西日本~12年①)で、増田が復調すれば、以前のように8回平良、9回増田の勝ちパターンも形成できる。まだ34歳で老け込む年齢ではなく、今季の復調に期待したい。

 このほかには、実績では森脇が頭一つリードしているが、宮川や田村伊知郎(立大~16年⑥)の中堅、昨年、支配下になり29試合に登板した水上由伸(四国学院大~20年育⑤)にもチャンスがある。さらにリリーフ左腕では、復活した武隈や日本ハムより途中加入した公文克彦大阪ガス~12年巨④)もおり、それぞれ勝ちパターンの一角に喰い込みたい。

 先述した平井や田村に加え、先発経験のあるベテランの十亀剣JR東日本~11年①)や左腕の浜屋将太(三菱日立PS~19年②)はロングリリーフもでき、十分に一年間戦い抜く投手陣になりつつある。

 

●野手陣~若手の台頭で、山賊打線復活に期待。カギを握るのは2年目の若林

 昨年は振り返れば、ベストメンバーで戦えた時季が少なかった。開幕から相次ぎ主力が離脱し、秋山移籍以降、固定できなかった一番にルーキー若林の目途が立ったと思えば、靭帯損傷で5月を最後にチームを離れた。外国人選手も不振で戦力になれず、山川と外崎は復帰したものの不調のままシーズンを終えた。

 そのなかで森友哉大阪桐蔭高~13年①)は3割を打ち、源田は盗塁王、何だかんだ山川も5年連続で20本塁打は最低限の役割は果たした。呉念庭と愛斗、岸の若手がキャリアハイの成績を残し、ともに20年選手の栗山は球団初の生え抜き初の2000本安打を達成し、中村剛也大阪桐蔭高~01年②)もシーズン後半は4番を務め、ベテランが衰え知らずの活躍を見せた。

 チーム打率と本塁打はリーグ4位、盗塁はリーグ3位で、打ちまくった山賊打線にここ2年で陰りが見えるものの、戦力だけを見れば最下位になる陣容ではなく、投手陣同様に打線の立て直しのほうが急務な課題かも知れない。

【21年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…☆森 友哉(125/520)柘植世那(35/72)岡田雅利(34/55)

 内野手…☆源田壮亮(119/516)☆呉 念庭(130/478)☆中村剛也(123/475)

     山川穂高(110/414)外崎修汰(73/300)スパンジェンバーグ(61/212)

     山田遥楓(96/173)平沼翔太(41/98)

 外野手…☆栗山 巧(117/446)岸潤一郎(100/338)愛斗(97/316)

     金子侑司(101/220)川越誠司(63/174) ※若林楽人(44/161)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)金子侑司⑧      1)若林楽人⑦      

  2)源田壮亮⑥      2)源田壮亮⑥       

  3)森 友哉②      3)森 友哉②    

  4)山川穂高③      4)中村剛也⑤      

  5)栗山 巧DH       5)栗山 巧DH      

  6)外崎修汰④      6)呉 念庭④      

  7)中村剛也⑤      7)山川穂高③      

  8)木村文紀⑨      8)愛斗⑨

  9)西川愛也⑦      9)金子侑司⑧  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…岡田雅利 森 友哉 柘植世那(古賀悠斗)

 内野手山川穂高 外崎修汰 源田壮亮 ジャンセン※ 呉 念庭 山田遥楓 

       中村剛也(山野辺翔 渡部健人 平沼翔太 ブランドン大河)

 外野手…栗山 巧 オグレディ※ 若林楽人 愛斗 岸潤一郎 川越誠司

      (金子侑司 鈴木将平 熊代聖人)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)若林楽人⑧      捕 手)森 友哉(柘植世那) 

  2)源田壮亮⑥      一塁手山川穂高(呉 念庭)

  3)森 友哉⑨      二塁手)外崎修汰(山田遥楓)

  4)山川穂高③      三塁手中村剛也(ジャンセン)

  5)オグレディ⑨     遊撃手)源田壮亮

  6)外崎修汰④      左翼手)岸潤一郎(栗山 巧)

  7)栗山 巧DH       中堅手)若林楽人

  8)中村剛也⑤      右翼手オグレディ(愛斗)

  9)岸潤一郎⑦       D H) 栗山 巧

 捕手は一時期野手転向の噂もあったが、今年も森の正捕手は変わらない。ベテランの岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)はバントが巧く、ベンチに置いておきたい選手で、し烈なのはポスト森を狙う2番手捕手になる。昨年16試合に先発し勝負強い打撃を見せた柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)が有力だが、強肩強打のルーキー古賀悠斗(中大~21年③)もアピール次第では十分にチャンスがある。

 内野は一塁の山川と遊撃の源田は決まりだと思うが、山川が昨年のような不調に陥れ決して安泰ではない。二塁も基本は外崎で決まりだと思うが、レギュラー獲りを狙う呉念庭や新外国人のジャンセンの状況次第では、外崎を三塁や手薄な外野に廻すこともできる。

 その三塁はポスト中村の争いに注目で、昨季ファーム本塁打王の渡部と、一足先に結果を残したブランドンが虎視眈々とレギュラーを狙っている。また、ジャンセンは三塁が本職で、3Aで打率.299、29本塁打スラッガーだ。守備に定評のある元気印の山田遥楓(佐賀工高~14年⑤)は、一塁以外はどこでも守れ、少ないチャンスから出番を増やしたい。

 外野のレギュラーは白紙で注目の争いになる。そのなかで最有力は若林で、昨年44試合で20盗塁を記録し、離脱する前の5月は3割を打っており、今年の西武打線のカギを握る選手になる。新外国人のオグレディは3Aで打率.281、本塁打15本の中距離打者で足も早い。ジャンセンも左翼を守れ、昨年不発だった外国人選手の二の舞にならないよいう、どちらかは結果を残してほしい。

 このほか、昨季結果を残した岸は中堅または左翼、愛斗は右翼の定位置を狙う。川越誠司(北海学園大~15年②)は遠投120メートルの強肩がセールスポイントで、打撃の粗さが解消できればレギュラー獲りも夢ではない。また、一昨年レギュラーを掴みかえた鈴木将平(静岡高~16年④)も控えており、若手が成長すれば、栗山を指名打者に専念することができ、打線の底上げに繋がる。

 打線のポイントは、一番打者の確立と新外国人選手の出来、今年で39歳を迎える中村と栗山を脅かす若手の成長になる。

 一番打者の最有力候補は若林で、今年のチームのカギを握るのは若林と言っても過言ではない。昨年は森に次ぐ出塁率を誇り、シーズン通して出場できれば盗塁王も獲得できる。わずか44試合に出場したルーキーが、今年のキーマンになるほど昨年のインパクトは強かった。若林が間に合わなければ、ベテランの金子侑司(立命大~12年③)や岸が候補になるが、開幕スタメンで誰の名前が一番の呼ばれるか注目したい。

 新外国人選手のオグレディとジャンセンは、どちらか言うとともに中距離打者で、2桁本塁打をコンスタントに狙える選手が揃っているなか、穴の多い一発屋より確実性を狙った補強は頷ける。オグレディは一塁と外野、ジャンセンも三塁を中心に、一塁と二塁、左翼を守れ、どのポジションと打順で起用するのか楽しみだ。

 中村も栗山も元気だが、そろそろかつての山賊打線のイメージを払拭しても良いころだ。ポスト中村で渡部やブランドン、ポスト栗山で岸や鈴木、ポジションは違うが左に強く得点圏打率の高い呉念庭に期待したい。あとはやはり、山川と外崎の復調なしに山賊打線復活は語れない。

  

 最後に期待の選手では、投手ではやはりルーキー隅田を挙げたい。キャンプを視察した松坂にチェンジアップを評価されており、焦ることはないが先発ローテに喰い込み、慢性的な先発左腕不足を解消したい。九州リーグが生んだ隅田の活躍は、地方リーグのレベルの高さの証明にもなる。

 打者では、今季本格的な打者転向4年目のシーズンを迎える川越だ。強肩と長打力に注目が集まるが、50メートル5秒9の俊足で実は出塁率も悪くなく、一番打者や源田に代わり攻撃的二番打者でも面白いと思う。

 重ねて言うが最下位になる戦力ではなく、2年連続でリーグ制覇したメンバーは数多く残っており、若手も着実に成長している。一気に優勝を狙うには、新戦力の台頭などが必要になるが、Aクラス復帰には十分な戦力が揃っている。

期待の若手が揃っているチームは?~25歳以下選手の戦力分析

 昨年の新人王争いは稀に見るハイレベルで、特にセ・リーグは37セーブを東京オリンピックでもクローザーを務めた栗林良史(広島)がタイトルを獲得したが、打率.314でリーグ3位の牧秀悟(DeNA)、盗塁王のタイトルを獲得した中野拓夢(阪神)、チーム最多の24本塁打を放った佐藤輝明(阪神)、チーム最多の9勝を上げリーグ優勝に貢献した奥川恭伸(ヤクルト)、ルーキー最多10勝の伊藤将司(阪神)など、甲乙つけがたく、それぞれ新人特別賞を受賞した。

 パ・リーグでは宮城大弥(オリックス)が断トツだったが、伊藤大海(日本ハム)や早川隆久(楽天)、紅林弘太郎(オリックス)も受賞しても遜色のない成績だった。

 また、MVPは21歳の村上宗隆(ヤクルト)と、24歳の山本由伸(オリックス)が受賞し、若い力がペナントレースを席捲した。そこで、今回は昨シーズンの結果を振り返り、25歳以下の若手に限定した戦力分析を行ってみました。

 Sー広島

 A-西武

 Bーソフトバンクオリックス日本ハム

 Cーヤクルト、ロッテ、DeNA、中日

 D-楽天、巨人

 E-阪神

 独自に点数化し断トツだったのは広島で、Bクラスに沈んだものの若手の成績はずば抜けており、42年振りの最下位だった西武も有望な若手が揃っている。厳しかったのが楽天と巨人、阪神で、特に阪神は今年のルーキーの活躍に反しているが、ここ数年で若手の台頭がないと厳しい。

◇広島(S)

 さすが育成が代名詞の広島だけあって投打にバランスが取れており、MLB移籍濃厚の鈴木誠が抜けても優勝を狙う戦力が整いつつある。

 先発陣は森下を中心に、故障から回復した高橋昂、今年4勝の玉村の両左腕がおり、リリーフの塹江森浦はともに50試合に登板し、先発もこなせる大道も控えている。心配なのは森浦と大道はルーキー、玉村も昨年一軍デビューを果たしており、実績に乏しいことくらいか…。

 野手は、アベレージヒッターの小園坂倉、俊足巧打の宇草羽月、そしてスラッガー中村奨がおり、タイプの違う選手が揃いバランスが良い。中村奨を除いてすべて左打ちなのは気になるが、小園と宇草が一、二番を打ち、坂倉と林、中村奨でクリーンアップを形成できれば理想的で、今シーズンから見られても不思議ではない布陣になっている。

 昨年のドラフトでは、課題の投手陣に厚みを持たせるために黒原拓未関学大~21年①)と森翔平三菱重工エスト~21年②)の即戦力投手を上位で獲得。また、野手では不足している右打者で、それぞれ長打力のある中村健人トヨタ自動車~21年③)と末包昇大大阪ガス~21年⑥)の獲得も的確だった。

 投手…森下暢仁(19年/①)塹江敦哉(14年/③)高橋昴也(16年/②)

      森浦大輔(20年/②)玉村昇悟(19年/⑥)大道温貴(20年/③)

      高橋樹也(15年/③)

 野手…坂倉将吾(16年/④)小園海斗(18年/①)林 晃汰(18年/③)

      石原貴規(19年/⑤)羽月隆太郎(18年/⑦)宇草孔基(19年/②)

      中村奨成(17年/①)

◆西武(A)

 今シーズンは最下位に沈んだが、悲観することはない。オリックスが最下位から優勝したように、今シーズンの西武は楽しみの一言しかなく、昨年のドラフトの大成功と相成って優勝を狙える若手が揃っている。

 投手陣がここ数年の課題だが、かつてのような投手王国の礎は出来つつある。エースに成長した高橋光を中心に、今井渡邊が今後先発の柱になる。ここに、隅田知一郎西日本工大~21年①)と佐藤隼輔(筑波大~21年②)のルーキー左腕が加わり、早くも今シーズンのローテーションの顔ぶれが楽しみだ。クローザーには日本代表の平良が控え、中継ぎで結果を出した水上も今年は勝ちパターンの一角に加わりたい。

 野手では、リードオフマン若林鈴木、中軸で愛斗ブランドン、さらに昨年ファーム二冠(本塁打・打点)の渡部健人(20年①)が控える。若林の復帰がまだ微妙だが、ケガさえ無ければ盗塁王を狙え、秋山翔吾(レッズ)移籍以降、課題だった一番打者に目途が立つ。また、ポスト森友哉の座を狙う、柘植とルーキーの古賀悠斗(中大~21年③)の正捕手争いも楽しみで、ともに成長することで森を打撃に専念させることも出来る。

 投手…高橋光成(14年/①)平良海馬(17年/④)今井達也(16年/①)

      水上由伸(20年/育⑤)渡邊勇太朗(18年/②)浜屋将太(19年/②)

 野手…愛斗(15年/④)若林楽人(20年/④)柘植世那(19年/⑤)

      ブランドン大河(20年/⑥)鈴木将平(16年/④)

ソフトバンク(B+)

 世代交代が進むソフトバンクも期待の選手が多い。さすがにリーグナンバーワンの防御率が示す通り、投手陣の層が厚く、先発では笠谷松本、リリーフで津森甲斐野、左腕の田浦がおり、松本はリリーフもできる。ただ、期待値の高い杉山や復活を期す高橋純など良い投手は多いが、今ひとつ主戦と呼べる選手は少なく、先発やリリーフともにもう一押し欲しいところだ。

 野手では、主戦力と呼べるのは三森しかいない。ただ、リチャードが大器の片りんを見せ、今年のブレイクを予感させる。谷川原とファームで好成績を残した柳町も、ともに昨年スタメン出場の機会を得て、世代交代が急がれるチーム状況のなか、レギュラーを狙える位置に近づいた。また、ルーキーの正木智也(慶大~21年②)や野村勇(NTT西日本~21年④)にもレギュラー獲得のチャンスは十分ある。

 25歳以下の選手は、両リーグ断トツの27名(21年ドラフト指名選手は除く)おり、ベテランの壁は厚いが、投打に世代交代が待ったなしの状況のなか、若手の台頭が待ち遠しい。

 投手…泉 圭輔(18年/⑥)笠谷俊介(14年/④)津森宥紀(19年/③)

      田浦文丸(17年/⑤)高橋純平(15年/①)杉山一樹(18年/①)

      大関友久(19年/育②)

 野手…三森大貴(16年/④)リチャード(17年/育③)柳町 達(19年/⑤)

      谷川原健太(15年/③)川瀬 晃(15年/⑥)

オリックス(B)

 2年連続の最下位から一気に優勝を果たしたオリックス、若手が躍動した昨シーズンの戦いぶりを見ると黄金期到来を予感させる。なんせ投手五冠の山本は24歳、2桁勝利の宮城もまだ21歳で、山本と同期入団の山崎颯にもブレイクの予感が漂う。リリーフでもチーム最多登板の富山日本シリーズでも好投した吉田凌と主力メンバーが並ぶ。

 先発陣に比べるとリリーフ陣に課題があるが、新入団の木蓮東北福祉大~21年①)はリリーフへ適性が高く、経験豊富な横山楓セガサミー~21年⑥)と小木田敦也(TDK~21年⑦)も加わり、投手陣は厚みを増した。

 野手は投手に比べるとやや物足りないが、紅林規定打席に達し2桁本塁打を放ち、太田も大舞台で結果を残し、来田は高卒一年目ながら20試合にスタメン出場した。紅林も遊撃のレギュラーを確約されている訳ではなく、二遊間は太田も交えてベテランの安達了一やルーキーの野口智哉(関大~21年②)との定位置争いは間違いなく若手の底上げになる。

 投手…山本由伸(16年/④)宮城大弥(19年/①)富山凌雅(18年/④)

      村西良太(19年/③)山崎颯一郎(16年/⑥)吉田 凌(15年/⑤)

 野手…紅林弘太郎(19年/②)太田 椋(18年/①)来田涼斗(20年/③)

日本ハム(B-)

 元々、育成が主体のチームだけあって、25歳以下はソフトバンクに次いで多い。中田翔の放出に続き、西川遥輝大田泰示など主力がチームを去り、ドライな球団運営さながら半ば強制的にでも世代交代を進めている。

 課題は野手陣で、昨年のドラフトで水野達稀(JR四国~21年③)と上川畑大悟(NTT東日本~21年⑨)の即戦力を獲得したように、現時点でレギュラーは近藤健介しかおらず、何人がこのチャンスをモノにできるか注目のシーズンになる。

 候補は多く、西川に代わるリードオフマン候補の五十幡、中軸ではなく4番を担いたい野村、身体能力の高い万波、地元出身の佐藤等は昨シーズンの経験を活かし、是が非ともレギュラーを手中にしたい。

 一方で投手陣には主力が揃っている。ルーキーながらエース格の活躍を見せ、今年の開幕投手候補にもなった伊藤に、立野河野も先発ローテーション入りへの目途がついた。リリーフではが最優秀中継賞を獲得している。

 残念なのは、ここに吉田輝星(18年/①)や清宮幸太郎(17年/①)の名前がないこと…。二人とも主力ではなく、チームの看板選手を期待されており、来年の新球場に向け、ファンが待ち望んでいるスター選手候補の活躍を期待したい。

 投手…堀 瑞輝(16年/①)伊藤大海(20年/①)河野竜生(19年/①)

      鈴木健矢(19年/④)立野和明(19年/②)

 野手…野村佑希(18年/②)佐藤龍世(18年/西⑦)万波中正(18年/④)

      五十幡亮汰(20年/②)郡 拓也(16年/⑦)

◇ヤクルト(C+)

 オリックスと歴史的に残る接戦を制して、20年振りの日本一に輝いたヤクルト。25歳以下の選手は、セ・リーグで最も多い24名、投打に主力が揃っており、今年も連覇を期待できる若手が揃っている。

 日本シリーズの初戦を任され、チーム最多9勝の奥川と、日本シリーズで初完封を成し遂げた高橋は、今年は左右のエースとして期待が膨らみ、金久保も先発ローテーションを狙う。リリーフの梅野は5年目にして通算170試合で経験も十分、大西も昨シーズンは33試合に登板し、今年は勝ちパターンを担いたい。

 野手では不動の4番・村上がおり、弱冠21歳にして球界を代表する選手になった。堅守がウリの元山は、遊撃で60試合に先発出場し、古賀中村悠平に続く2番手捕手の地位を確立した。渡邊は守備固めながら出場機会を増やし、太田はファームで首位打者を獲得しており、レギュラー候補が着実に力を着けている。

 昨年のドラフトで、即戦力ながら伸びしろが魅力の山下輝(法大/21年①)や柴田大地日本通運/21年③)など、育成主体のドラフトになったのも、若手がしっかり伸びてきている証だろう。

 投手…奥川恭伸(19年/①)大西広樹(19年/④)高橋奎二(15年/③)

      梅野雄吾(16年/③)金久保優斗(17年/⑤)吉田大喜(19年/②)

 野手…村上宗隆(17年/①)元山飛優(20年/④)太田賢吾(14年/日⑧)

      古賀優大(16年/⑤)渡邊大樹(15年/⑥)

◆ロッテ(C+)

 昨年も終盤に失速し、2年連続の2位になったロッテだが、黄金期間近のチームになりつつある。実績という点ではまだまだで、いわゆる一軍半の選手が多い。ただ、スケール感という点で、リーグを代表するような期待を抱かせる選手が揃っている。

 その代表格が佐々木朗で、終盤戦はエース級の活躍を見せた。今シーズンはタイトル争いを期待する声もあり、お世辞ではなくその可能性は高い。このほか鈴木は12試合、本前は8試合に先発し、河村は後半先発に回り5試合で4勝を上げ、今季は先発ローテーションを争う。

 さらに故障で離脱していた種市篤暉(16年/⑥)が戻り、昨季ファーム最多勝森遼太朗(17年/育②)も支配下登録になり、先発陣の厚みが増した。リリーフの土居横山は層の厚いリリーフ陣への定着を狙う。ここに先発もリリーフもOKの即戦力ルーキーの廣畑敦也三菱自動車倉敷)が加わり投手陣の底上げは進んだ。

 投手が佐々木朗なら、野手は安田藤原だろう。昨季前半4番を務めた安田、藤原は月間MVPも獲得し実力は証明済みで、ともに一年間維持できれば結果もついてくる。このほか右の長距離砲の山口、勝負強さもある佐藤は打てる捕手として2桁本塁打を狙える力がある。盗塁王を獲得した和田は足のスペシャリスト、高部もファームでの結果は十分で、広島と同じくバランスの良い選手が揃っている。

 投手…鈴木昭汰(20年/①)佐々木朗希(19年/①)河村説人(20年/④)

      本前郁也(19年/育①)土居豪人(18年/⑧)横山陸人(19年/④)

 野手…安田尚憲(17年/①)藤原恭大(18年/①)佐藤都志也(19年/②)

      山口航輝(18年/④)和田康士朗(17年/育①)高部瑛斗(19年/③)

◆DeNA(C)

 三浦新監督のもと、残念ながら最下位だったDeNA。そのなかでルーキーの大活躍は、最下位ながらチームを盛り立てた。

 牧の打率.314はリーグ3位でチームトップ、本塁打22本もオースティンに次いで2位、打点はソトを上回る71打点で、ルーキー初のサイクル安打も記録した。大学時代に主将を務め、明るい性格でチームを鼓舞する姿は、チームの看板選手になれるだろう。牧の活躍で益々、右打ちの内野手の需要が高まってきた。

 牧以外でも野手に楽しみな選手が多く、は今年一番のブレイク候補で、俊足とリーグ随一の強肩を活かし、今年は遊撃の定位置を掴むシーズンになる。山本は後半マスクを被る出番が増え、33試合にスタメン出場、知野も内野の控えとして欠かせない存在になりつつある。

 投手は野手に比べると物足りない印象だ。先発の坂本は16試合で4勝、京山は15試合で2勝、毎年期待される阪口は8試合で2勝、中川は5試合で勝ち星なしと、先発の主力にケガ人が多くチャンスはあったが、物足りない成績で終わってしまった。リリーフの伊勢は35試合に登板し、防御率は良いだけに今季は勝ちパターンを担いたい。 

 今季は徳山壮磨早大~21年②)に三浦銀二(法大~21年④)と、大学時代に実績を残した即戦力投手と、18番を受け継いだ小園健太(市和歌山高~21年①)が入団し、若手投手間でライバルが増えたことで、投手陣の底上げに繋げたい。

 投手…坂本裕哉(19年/②)京山将弥(16年/④)伊勢大夢(19年/③)

      阪口晧亮(17年/③)中川虎大(17年/育①)

 野手…牧 秀悟(20年/②)山本祐大(17年/⑨)森 敬斗(19年/①)

      知野直人(18年/⑥)

◆中日(C-)

 ファン待望の立浪監督が誕生したものの、今オフは補強らしい補強がない。チームが長期間低迷するなか、若手を見ても本当にこれで良いのかと心配になってしまう。

 12球団ナンバーワンの防御率をほこる投手陣だけに、投手は主戦が並ぶ。小笠原はチーム2番目の投球回数を投げ8勝を上げ、勝野も勝ち星こそ上がらなかったが先発ローテーションに定着した。藤嶋はFA移籍の又吉克樹ソフトバンク)の後継を、岩崎翔と争うかたちになり、橋本も貴重な左のリリーフとして存在感が高まっている。不本意な成績が続く鈴木は、再度クローザーを目指すシーズンになる。

 投高打低のチームにあって、野手はここでも不足している。ここまで根尾がプロの壁にぶつかったのは意外だったが、根尾と高松岡林ともに俊足巧打のリードオフマンタイプで、なかなかスラッガータイプが出てこない。

 期待値の高い石川昂弥(19年/①)は今年のブレイク候補、石垣雅海(16年/③)はそろそろ結果を出さないと厳しい。昨年はブライト健太(上武大~21年①)に鵜飼航丞(駒大~21年②)、福元悠真(大商大~21年⑥)と右の長距離砲を3名も獲得するカンフル剤を打った。今年は一人でもレギュラーに喰い込むことを期待したい。

 投手…小笠原慎之介(15年/①)勝野昌慶(18年/③)藤嶋健人(16年/⑤)

      橋本侑樹(19年/②)鈴木博志(17年/①)森 博人(20年/②)

 野手…高松 渡(17年/③)根尾 昂(18年/①)岡林勇希(19年/⑤)

楽天(D-)

 25歳以下の選手が15名と、両リーグ通じて一番少ないのが楽天だ。最も多いソフトバンクとの差はなんと12名で、2~3年のドラフトでどうにかなるものではない。いつの間にかベテラン頼みのチームになってしまった。

 投手は早川津留崎がいて何となく安心感があるが、とにかく年齢バランスが悪い。驚くことに22歳以下に限定すると、なんと内星龍(20年/⑥)一人しかいない。どういうチーム編成にするか意図が見えない。

 野手も主力級の選手は渡邊しかおらず、黒川武藤敦貴(19年/④)など期待の選手は当然いるが、全員が1~2番や下位を打つ巧打型の選手で、チームの屋台骨を背負うようなスラッガーが見当たらない。グラウンド外での話題が豊富のオコエも、どういったプレーヤーを目指しているのか分からない。

 昨年のドラフトで、吉野創士(昌平高~21年①)に安田悠馬(愛知大~21年②)、前田銀治(三島南高~21年③)と上位でスラッガーを指名したが、高卒の野手で結果を残したのは銀次(05年/高③)まで遡らなくてはならず、今後の育成手腕が問われる。

 投手…早川隆久(20年/①)内間拓馬(20年/④)津留崎大成(19年/③)

 野手…渡邊佳明(18年/⑥)オコエ瑠偉(15年/①)村林一輝(15年/⑦)

      黒川史陽(19年/②)

◆巨人(D-)

 結局、戦力外は2名(外国人選手を除く)で、陽岱鋼が今思えばフライング気味に退団したが、12名の選手を育成契約に切り替えた。

 投手はとにかく年齢バランスが悪く、昨シーズンの開幕時のデータで30歳までに限定して見てみると、19~20歳、25~26歳、30歳に選手が一人もおらず、空白の年代が5つもあり、この数は巨人が断トツで多い。※ちなみにヤクルトと広島はゼロ

 11勝を上げた高橋に、9勝の戸郷は先発ローテーションを形成し、47試合に登板した貴重な左のリリーバー大江など少数精鋭とも言えるが、さすがに人数の少なさは否めない。支配下登録を勝ち取る競争と言えば聞こえは良いが、こうしてみるとやはり歪な年齢構成が気になってしまう。

 野手は悲惨で、廣岡ひとりしかいなかった…。廣岡は昨シーズンに田口麗斗とのトレードで加入した選手で、結果的に生え抜きはゼロだ。湯浅大(17年/⑧)や、松井秀喜の55番を継承した秋広優人(20年/⑤)など期待の選手はいるが、他チームと比較してもさすがに寂しく、これ以上のコメントが出ない…。

 投手…高橋優貴(18年/①)戸郷翔征(18年/⑥)大江竜聖(16年/⑥)

 野手…廣岡大志(15年/ヤ②)

阪神(E)

 昨シーズンはルーキーが大活躍し、期待の若手が揃っているように思えたが、25歳以下に限定すると主力と呼べる選手がいない。また、人数も少なくセ・リーグ最小の16名しかおらず、全体でも楽天に次いで2番目に少ない。

 ルーキーながらチーム最多の24本塁打を放った佐藤、ファームで首位打者を獲得した小野寺、貴重な左のリリーフとして39試合に登板した及川などの活躍は心強いが、次に続く選手がいない。

 しかしながら昨年は、この状況下でファーム日本一に輝いており、村上頌樹(20年/⑤)は防御率最多勝、最高勝率の投手3冠、西純矢(19年/①)も一軍を経験した。野手ではファームで打点王を獲得した井上広大(19年/②)など、期待値の高い選手は多い。

 ただ、現状は外国人、ベテラン頼みのチームになっており、昨年のドラフトでは高校生と大学生が各3名、社会人1名が入団しているが、若手の層を厚くしようと思えば、あと4~5年はかかる。高校生5名を指名した19年ドラフトような荒療治でもないと、若手選手不足は解消できない。

 投手…及川雅貴(19年/③)

 野手…佐藤輝明(20年/①)小野寺暖(19年/育①)

21年第二次戦力外選手と新入団選手

東京ヤクルトスワローズ(66名)

 日本シリーズ史に残る接戦を制して日本一になったヤクルト。新たな戦力外通告はなかったが、リリーフで好投していたスアレス(投手)は退団し、韓国プロ野球への移籍する。新たにコールの入団が決まった。

 新外国人選手でコールが入団し、既に今年のスタート時の支配下になっており、補強はほぼ終了したと言える。ただ、連覇には投手陣の補強は必要で、在籍していた秋吉亮(日本ハム)の復帰や、同じ変則投手なら荒西祐大(オリックス)、チームに少ない左腕のリリーバーで永野将司(ロッテ)の獲得はプラスになると思う。

【新入団選手】

  投 手…山下 輝(21年①#15)柴田大地(21年③#41)

        竹山日向(21年⑥#62)コール(3Aバッファロー/未定)

  捕 手…なし

  内野手…小森航太郎(21年④#59)

  外野手…丸山和郁(21年②#4)

 

阪神タイガース(65名)

 FA移籍も噂されていた梅野隆太郎は残留したが、クローザーのスアレス(投手)のMLB移籍が決まり、来シーズンはリリーフ陣の再編が優先課題になる。このほか、エドワーズ(投手)サンズ(外野手)が退団し、川原陸(18年/⑤)望月惇志(15年/④)の両投手が育成契約になった。

 来シーズンも外国人選手は、今年と同じ8名を予定しており、ウィルカーソンの入団が決まり、あと2名で枠は埋まる。また、変則左腕の渡邊雄大ソフトバンク)は育成契約で入団が決まった。現状、ドラフト指名選手を入れて65名、予定通りに外国人選手2名を入れると支配下枠はほぼ埋まる。

 補強ポイントはスアレスに代わる抑えで、新外国人選手が軸になるが、ヒギンス(オリックス)はセットアッパーの実績があり、経験のある牧田和久楽天)や秋吉亮(日本ハム)を獲得しても面白いと思う。

【新入団選手】

 投 手…森木大智(21年①/未定)鈴木勇斗(21年②/未定)

       桐敷拓馬(21年③/未定)岡留英貴(21年⑤/未定)

     ウィルカーソン(3Aオクラホマシティ#52)

 捕 手…中川勇斗(21年⑦/未定)

 外野手…前川右京(21年④/未定)豊田 寛(21年⑥/未定)

 

読売ジャイアンツ(57名)

 結局、戦力外は古川侑利(13年/楽④)を含めた2名だけで、新たに12選手を育成契約にして支配下枠を空けた。今シーズン獲得した外国人野手は壊滅状態で、途中加入のハイネマン(外野手)が退団し、サンチェス(投手)もチームを去る。また、契約延長を打診したものの、陽岱鋼(05年/日①)も退団を決めた。

 新たに育成契約になったのは、投手では原拓也(17年/①)、ルーキーの伊藤優輔(20年/④)田中豊樹(15年/日⑤)横川凱(18年/④)井上温大(19年/④)沼田翔平(18年/育③)堀岡隼人(16年/育⑦)の7選手で、鍬原は2度目、沼田と堀岡も再度育成契約になった。野手では増田陸(18年/②)香月一也(14年/ロ⑤)平間隼人(19年/育①)伊藤海斗(19年/⑥)ウレーニャが育成契約になった。

 このなかで故障しているのは伊藤優と香月だけで、田中は39試合に登板し、沼田と横川も一軍をそれぞれ2試合経験している。香月も治療に専念するためとは言え、67打席で3本塁打の成績で育成契約になることに、チームの方向性が見えない。

 育成選手を競い合わせ若手を抜擢し、育てながら勝つならチーム内のサバイバルレースも歓迎するが、毎年FAに参戦し、今シーズンはトレードで中田翔まで獲得する状況では、育成制度の悪用と言われても致し方ないだろう。

 現在、支配下登録は57名で、今年は63名でスタートしており、あと5~6名(うち外国人選手3~4名)の獲得が想定される。ただ今年は動きは少なく、西川遥輝日本ハム)の獲得の検討と、鈴木優(オリックス)を育成契約で獲得したくらいだ。

 賛否両論を呼んでる西川の獲得だが、陽が退団し外野手で右打者が石川しかいない現状では、誰から見ても大田泰示日本ハム)のほうがベストだが、大田が古巣を選択する可能性の低さが行動から見て取れる。個人的には西川は守備に難はあるものの、高い出塁率と走力はこの間の課題だった一番打者にハマり、獲得に動いて良いと思う。

 このほかでは、右打ちの外野手で武田健吾(中日)は狙い目だし、ハズレまくっている外国人選手では、投手ならエドワーズ(阪神)やヒギンス(オリックス)、野手ならサンズ(阪神)は実績もあり、メヒア(広島)は育成契約で獲得しても良いと思う。

【新入団選手】

 投 手…翁田大勢(21年①/#15)山田龍聖(21年②/#28)

       赤星優志(21年③/#31)石田隼都(21年④/#56)

       代木大和(21年⑥/#68)花田侑樹(21年⑦/#63)

 外野手…岡田悠希(21年⑤/#38)

 

広島東洋カープ(66名)

 FA資格を得た大瀬良大地と九里亜蓮の両投手は残留したが、覚悟はしていたものの鈴木誠也(12年/②)はMLBへ移籍する。このほか、バード(投手)メヒア(内野手の退団が決まり、7名いた外国人選手のうち5名がチームを去った。

 早い段階で、ターリーとアンダーソンの両投手、野手でマクブルームの獲得が決まっている。今シーズンは68名でスタートしており、あとは外国人野手に1~2名の補強で終了しそうだ。

 課題の投手陣は栗林良史の起用法をどうするかだろう。今シーズンは抑えを務め大車輪の活躍を見せたが、本来は先発型で起用法で補強ポイントは変わる。今オフの戦力外選手はリリーフに逸材が多く、金田和之や吉田一将(ともにオリックス)、秋吉亮(日本ハム)を獲得し、栗林を先発に転向させても良いと思う。

 野手では大田泰示日本ハム)は、鈴木誠の穴を埋めるには最適な選手で、同じ右打者で長打力もあり守備も巧い。しかも地元・広島の出身で、是が非とも吉井選手だろう。また、一塁のレギュラーが不在のなか、モヤ(オリックス)も補強ポイントに合うと思う。

【新入団選手】

 投 手…黒原拓未(21年①/#24)森 翔平(21年②/#16)

       松本竜也(21年⑤/#45)アンダーソン(レンジャース/未定)

       ターリー(3Aシャーロット/未定)

 捕 手…高木翔斗(21年⑦/#64)

 内野手…マクブルーム(3Aオハマ/未定)

 外野手…中村健人(21年③/#50)田村俊介(21年④/#60)

       末包昇大(21年⑥/#52)

 

中日ドラゴンズ(64名)

 新たな戦力外通告はかったが、中継ぎエースの又吉克樹(13年②)がFA宣言し、ソフトバンクへの移籍が決まった。このほか濱田達郎(12年/②)石川翔(17年/②)福島章太(20年/④)が育成契約になる。濱田は2度目、目立たないがルーキーの福島は僅か1年で育成契約になり、ルーキー1年目の育成契約は、地味に2年連続のことで、何だかんだ理由をつけ早い段階で安易に育成契約にする姿勢は好きになれない。

 現在、補強の動きは少なく、育成契約でアルバレス(投手)とガルシア(外野手)の入団が決まり、大嶺祐太(ロッテ)も育成で入団が決まった。このほかには垣越建伸が育成から支配下登録になった。

 今シーズンのスタートは67名で、課題の攻撃力アップのために外国人を含めた野手を獲得したい。お薦めは西川遥輝大田泰示(ともに日本ハム)で、西川は広い球場でのプレーを熟知しているうえ、出塁率と走力の高さはポスト大島洋平にピッタリだし、大田の長打力も魅力だ。ビシエドとポジションは被るがモヤ(オリックス)の古巣復帰や、将来性重視で山下航汰(巨人)獲得もアリだと思う。

 又吉の移籍でリリーフ陣の強化は優先課題で、吉田一将と荒西祐大(ともにオリックス)、秋吉亮(日本ハム)は同じ右のスリークオーターでリリーフ陣の厚みを維持することが出来る。

【新入団選手】

 投 手…石森大誠(21年③/未定)垣越建伸(18年⑤/#61)※支配下契約

 捕 手…味谷大誠(21年④/未定)

 内野手…星野真生(21年⑤/未定)

 外野手…ブライト健太(21年①/未定)鵜飼航丞(21年②/未定)

       福元悠真(21年⑥/未定)

 

★横浜D℮NAベイスターズ(65名)

 第一次の戦力外通告で人数が支配下が59名になり、余裕があるなかピープルズ(投手)シャッケルフォード(投手)が退団し、平良拳太郎(13年巨⑤)が育成契約になる。平良は故障は多いが、本調子なら防御率リーグトップになる安定感があり、ファンは一日も早い復活を待ち望んでいるだろう。

 新外国人投手でクリスキーを獲得し、大ベテランの藤田一也(楽天)の復帰が決まった。若手の多いチームのなか、将来の指導者候補とも言われている藤田の存在はプレー以外でも大きいだろう。

 既に今シーズンのスタートと同じ人数になっているが、又吉克樹(中日)の獲得に動いたようにリリーフ陣強化は課題で、秋吉亮(日本ハム)や牧田和久楽天)など、所属先が決まっていない実績のあるリリーバーが多く獲得を検討しても良い。

 また、西川遥輝大田泰示(ともに日本ハム)の両獲りの声も聞こえ、優勝への本気度が窺える。個人的には西川のほうが現在のチームに必要で、2年連続でリーグ最下位の盗塁数解消のためにも、4度の盗塁王に輝いた西川の加入はプラスになる。

【新入団選手】

 投 手…小園健太(21年①/#18)徳山壮磨(21年②/#15)

       三浦銀二(21年④/#30)深沢鳳介(21年⑤/#43)

       クリスキー(オリオールズ/未定)

 内野手…粟飯原龍之介8(21年③/#33)藤田一也(04年横④/#3)

 外野手…梶原昴希(21年⑥/#58)

 

オリックスバファローズ(62名)

 歴史に残る日本シリーズの激闘のあと、優勝に貢献したヒギンス(投手)モヤ(内野手、残留を熱望していたジョーンズ(外野手)が退団し、途中加入のスパークマン(投手)は韓国リーグに移籍する。そのなかでも在籍2年で90試合に登板し、今シーズンも28ホールドのヒギンスの戦力外は正直驚いた。また、勝又翔貴は育成契約を断り退団を決めた。

 現状、補強の動きはなく、外国人選手を5~6名(今シーズンは65名で開幕)で考えると、外国人選手以外の補強は終了したとも言える。トライアウトに参加した4投手は好投を見せ、鈴木優は巨人(育成契約)に移籍するなど、投手陣の層は厚く補強の可能性は低い。一方で野手では、右打ちの外野手が不足しており、かつてFA交渉した陽岱鋼(巨人)の獲得はプラスになる。また、若手の底上げで山下航汰(巨人)あたりはチームにフィットすると思う。

【新入団選手】

 投 手…椋木 蓮(21年①/#15)横山 楓(21年⑥/#52)

       小木田敦也(21年⑦/#56)

 捕 手…福永 奨(21年③/#32)

 内野手…野口智哉(21年②/#9)

 外野手…渡部遼人(21年④/#0)池田陵真(21年⑤/#39)

 

千葉ロッテマリーンズ(63名)

 ロメロとレアードが残留を決め、あとはエチェバリア内野手の残留交渉が残っている。このほか松永昂大(12年/①)大嶺祐太(06年/①)のドラ1コンビが自由契約になり、松永は育成で再契約の見込みで、大嶺は中日への移籍が決まった。

 現在、補強の動きはないが、ファームで最多勝を挙げた森遼太郎の支配下登録が決まった。また、井口監督は大田泰示日本ハム)の獲得を熱望しており、個人的には大田はロッテか広島がフィットすると思う。大田は貴重な右のスラッガーで、加入すれば悲願の優勝を狙うのに重要なパーツになる。仮に大田を逃しても、陽岱鋼(巨人)など実績のある右打者の獲得は必要だろう。

 外国人選手では、野手はエチェバリアが残留すれば必要はなく、投手が基本線になり、ハーマンに代わるリリーバーが必要で、ヒギンス(オリックス)や奪三振率の高い左のバード(広島)はピッタリだと思う。

 今シーズンは66名でスタートしており、育成に有望株も多く、外国人選手が決まれば補強は終了で、あとはこの間成果を出しているトレードが中心になるだろう。

【新入団選手】

 投 手…廣畑敦也(21年③/#30)秋山正雲(21年④/#43)

      八木 彬(21年⑤/#33) 森遼太朗(17年育②/#62)※支配下登録

 捕 手…松川虎生(21年①/#2)

 内野手…池田来翔(21年②/#00)

 

東北楽天ゴールデンイーグルス(66名)

 唯一、第二次戦力外通告なく、MLB移籍の可能性もあった田中将大が残留を決め、チームは補強を着実に進めている。

 チーム課題の右打者は、左キラーの異名をとるベテランの川島慶三を、機動力不足を補うために釜元豪(ともにソフトバンク)を獲得し、ウィークポイントを埋めている。また、今シーズン不発だった外国人野手で、3Aで好成績を残したマルモレホスの入団も決まった。

 今シーズンは68名でスタートしており、今年と同じく外国人選手を5名体制で行くならあとは外国人選手の補強で終了しそうだ。新外国人選手が基本になるが、モヤ(オリックス)などは獲得しても面白いと思う。

 それよりもベテランが多く若手の底上げが必要で、山下航汰(巨人)や勝又翔貴(オリックス)など若手選手を育成契約で獲得する必要がある。

【新入団選手】

 投 手…泰 勝利(21年④/#59)松井友飛(21年⑤/#45)

       西垣雅矢(21年⑥/#49)吉川雄大(21年⑦/#71)

 捕 手…安田悠馬(21年②/#55)

 内野手川島慶三(05年日③/#未定)マルモレホス(3Aタコマ)

 外野手…吉野創士(21年①/#9)前田銀治(21年③/#36)

       釜元 豪(11年ソ育①/#未定)

 

福岡ソフトバンクホークス(64名)

 過渡期を迎えるチームのなかで、サファテ(投手)が引退を決め、マルティネス(投手)がMLB移籍を決めた。投手経験の浅い田上奏大(20年/⑤)は、僅か1年で育成契約になった。一方で懸念されていたモイネロとデスパイネの残留が決まり、あとはグラシアルの朗報を待つだけになった。

 ただ、田上の育成契約を見て、ここ数年の何か奇をてらったようなようなドラフトは心配で、個人的には低迷期に入ってしまうのでは…という危機感も持っている。

 そんな不安をよそに吉克樹(中日)のFA加入が決まり、リリーフ陣がさらに強固になった。また、レイとの再契約を目指しており、レイの復帰はマルティネスの穴を埋めることができるだろう。野手ではメジャーリーガーのガルビスが加入する。また、育成契約で、アルメンタとフェリックス(ともに投手)、野手はヘラルディーノ(内野手)シモン(外野手)の10代の若手が加入する。

 補強の優先順位は野手だが、今年は候補が多くない。内野手では正直、候補は見当たらず、外野手では陽岱鋼(巨人)の守備力や勝負強さは戦力になり、かつての相思相愛の間柄だけに獲得の可能性はある。

【新入団選手】

 投 手…風間球打(21年①/#1)木村大成(21年③/#58)

       大竹風雅(21年⑤/#63)又吉克樹(13年中②/未定)

 内野手…野村 勇(21年④/#99)ガルビス(フィリーズ/#3)

 外野手…正木智也(21年②/#31)

 

北海道日本ハムファイターズ(66名)

 新庄監督が就任し、興奮も冷めないところに、ノンテンダーという聞きなれない言葉で、看板選手の西川遥輝(10年/②)大田泰示(08年/巨①)秋吉亮(13年/ヤ③)自由契約になった。また、アーリン(投手)ロドリゲス(内野手の退団が決まり、バーヘイゲン(投手)は残留交渉中、鶴岡慎也は引退を決めた。

 ノンテンダーはMLBではFA取得前に取られる手法だが、FA権を持つ選手に行うことは稀で、要は単なる自由契約で良くも悪くも日本ハムらしい対応だった。中田の事件が象徴するように、この間の「ぬるま湯体質」からの脱却なら理解もするが、今後のフロントと新庄監督の手腕に注目したい。

 現時点で補強は外国人選手のみで、ポンセとガント(ともに投手)とヌニエス、アルカンタラ(ともに内野手)の入団が決まった。バーヘイゲンの残留が決まれば7名体制となる。今シーズンは66名でスタートしており、既に同数となっており、トライアウトに参加した新庄監督が候補者を挙げていたが、支配下登録は多くても1~2名程度で、ほぼ終了したと言える。

 そんななか育成契約で古川侑利(巨人)の獲得が決まり、多和田真三郎(西武)や山下航汰(巨人)、武田健吾(中日)等は次の候補になると思う。

【新入団選手】

 投 手…達 孝太(21年①/#16)畔柳亨丞(21年⑤/#46)

       松浦慶斗(21年⑦/#55)長谷川威展(21年⑥/#53)

       北山晃基(21年⑧/#57) ポンセ(パイレーツ/未定)ガント(ツインズ/未定)

 内野手…有薗直輝(21年②/#39)水野達稀(21年③/#43)

       阪口 楽(21年④/#44)上川畑大悟(21年⑨/未定)

       ヌニエス(3Aナッシュビル/未定)アルカンタラ(3Aピッツバーグ/未定)      

 

埼玉西武ライオンズ(60名)

 新たな戦力外通告はなく、手術をした上間永遠(19年⑦)が治療に専念するために育成契約になった。

 今シーズン在籍していた5名の外国人選手がすべて退団するなか、エンス(投手)とオグレディ(外野手)の入団が決まった。外国人選手を今年同様に5名にしても63名(今年は67名でスタート)でまだ支配下枠に余裕があり、今後の動向に注目したい。

 課題の投手では、今オフの戦力外ではリリーバーが多く、これまでも名前を挙げているが金田和之(オリックス)や秋吉亮(日本ハム)、左の永野将司(ロッテ)、牧田和久楽天)の復帰もありだし、ヒギンス(オリックス)やエドワーズ(阪神)はまだまだ出来ると思う。

 野手は内野手は不足気味だが、外野手は豊富で大田泰示日本ハム)や陽岱鋼(巨人)、武田健吾(中日)はチームでも決して多くない右打ちの外野手。若手の山下航汰(巨人)、外国人選手ではモヤ(オリックス)やサンズ(阪神)も所属先が決まっておらず、まだ動きがありそうだ。

【新入団選手】

 投 手…隅田知一郎(21年①/#16)佐藤隼輔(21年②/#19)

       羽田慎之介(21年④/#43)黒田将矢(21年⑤/#57)

       エンス(3Aダラム/#71)

 捕 手…古賀悠斗(21年③/#22)

 内野手…中山誠吾(21年⑥/#50)

 外野手…オグレディ(3Aエルパソ/#30)

21年セ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 選手の現況は11/14時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

東京ヤクルトスワローズ(61名+5名)

 2年連続最下位から、誰もが予想だにしなかった快進撃を見せ、遂にリーグ制覇を果たした。奥川恭伸(19年/①)や清水昇(18年/①)、村上宗隆(17年/①)の投打の若い柱に、青木宣親(03年/④)や川端慎吾(05年/③)のベテランが加わり、そこにサンタナやオスナの外国人選手の力が融合した理想的な優勝になった。

 リーグ優勝の栄冠のなか、長年チームを支えた雄平と、阪神戦力外から独立リーグを経てNPBに復帰した歳内が引退を決め、雄平は楽天のコーチに就任した。また、18年に54試合登板した中尾が戦力外になり、蔵本は4年間の在籍で話題になったのは、高津監督に背番号を譲っただけと、何とも寂しいプロ生活になった。

 支配下選手61名に、今ドラフト指名の5名(投手③/内野手①/外野手①)を加えても66名で、バンデンハークとケリンが退団しても外国人選手は5名おり、新たな戦力外通告はあったとしてもあと1~2名程度で、ほぼ終了したと言える。

 現在、日本シリーズに向け準備の真っ最中だが、連覇を狙うには投手陣の底上げと、ベテラン頼みの外野陣の強化を図りたい。リリーフ投手は幾らいても良く、同一リーグでは今村(広島)は実績十分、金田(オリックス)や石崎(ロッテ)はともにセ・リーグでの経験がある。枚数が少なく強化が必要な左投手では、榎田(西武)は先発としてもう一花咲かせそうだし、リリーフでは小川(西武)や川原(ソフトバンク)等を獲得しても良いと思う。

 また、楽天を戦力外になった今野龍太(13年/楽⑨)や近藤弘樹(17年/楽①)を復活させた実績から、鈴木優(オリックス)や多和田(西武)などは育成で契約しても面白いと思う。

 外野手では左打者が少ない状況から乙坂(DeNA)や釜元(ソフトバンク)は狙い目だと思う。今年は俊足の左打ちの丸山を獲得しているが、釜元は守備固めや代走要員以外にも戦力的にプラスになる。

 投 手…中尾 輝(16年/④)歳内宏明(11年/神②)蔵本治孝(18年/③)

 捕 手…大村 孟(16年/育①)

 内野手…なし

 外野手…雄平(02年/①)

 外国人…バンデンハーク(投手)ケリン(投手)

【予想背番号】

 ①山下/15 ②丸山/36 ③柴田/41 ④小森/52 ⑤竹山/59

 

阪神タイガース(62名+7名)

 前半戦はルーキー佐藤輝明(20年/①)の活躍がチームをけん引し、首位を独走したが、佐藤が調子を落とすと同時にチームも失速し、最後はヤクルトに競り負け優勝を逃した。再度、ヤクルトへの挑戦権を賭けて臨んだCSも、課題の守備からあっけなく敗れてしまった。成績こそ2年連続2位をキープしたが、守備強化やFA対応、外国人選手の再編成など課題の多いオフになる。

 平均年齢が高いチームにあって、引き続き世代交代が進んでいる。投手では岩田と桑原、中田、野手では俊介が引退を決め、中田は古巣ソフトバンクでコーチに就任した。一昨年の鳥谷に始まり、昨年の能見と後味の良くないベテランの退団劇が続いたが、さすがに今年は上手く根回しできたのか、すんなりと引退が決まった。

 このほか、ともに育成選手だが、鈴木は2年連続で戦力外になり、静岡大から初のプロ野球選手になった奥山も支配下を勝ち取ることができず、2年でチームを去ることになった。

 支配下選手は62名で、ドラフト指名の7名(投手④/捕手①/外野手②)を加えると余裕は1名しかいない。ただ、8名いる外国人選手のなかエドワーズとサンズの退団が決定的で、クローザーのスアレスもMLB移籍の可能性がある。また、正捕手の梅野隆太郎(13年/④)のFA行使が未定で、動向を見据えたうえで、あと2~3名程度の新たな戦力外通告の可能性は高いと思う。

 補強ポイントは野手の底上げで、特に守備の巧い内野手。また、梅野流出に備え捕手の補強も必要だ。特に、後半戦の梅野の起用法は、退団を前提にしたような扱いで残念な印象を受けた。内野手では名手の藤田(楽天)がおり、間違いなく若手の手本になるだろう。また、所属球団との交渉次第だが、超人的な守備のエチェバリア(ロッテ)などはいまの阪神に欲しい選手だと思う。捕手ではベテランの鶴岡(日本ハム)がおり、鶴岡の経験は何事にも代え難く、控え捕手として居るだけで頼りになる。 

 投 手…伊藤和雄(11年/④)石井将希(17年/育①)岩田 稔(05年/希)

       中田賢一(04年/中②)桑原謙太郎(07年/横③) ※鈴木翔太(13年/中①)

     ※藤谷洸介(16年/⑧)

 捕 手…なし

 内野手…荒木郁也(10年/⑤)

 外野手…俊介(09年/⑤)※奥山晧太(19年/育2)

【予想背番号】

 ①森木/22 ②鈴木/21 ③桐敷/35 ④前川/58 ⑤岡留/52 ⑥豊田/60

 ⑦中川/68

 

読売ジャイアンツ(66名+7名)

 獲得したFA選手が不発に終わり、新外国人の野手はすべて途中退団するなか、前半戦は優勝争いを繰り広げていた。ただ、中田翔(07年/日①)を獲得したあたりから何となく雲行きが怪しくなり、中4日ローテやマシンガン継投など投手を酷使した結果、終盤はバテ気味になり、まさかの借金1でシーズンを終えた。チームの不協和音が聞こえる中、得意の大補強に動くか、オフのチーム編成に注目が集まる。

 現在、12球団で唯一この時点で支配下選手枠をオーバーしている。ともにFA移籍組の大竹と野上、野手最年長の亀井が引退を決めたが、戦力外通告は松井のみ。8名いる外国人選手を仮に6名としても超過しており、昨年スタート時の63名を基準とすると、あと8名は新たな戦力外通告が予想され、選手は戦々恐々だろう。

 今ドラフトでは7名(投手⑥/外野手①)指名したが、投手に偏った指名になり、谷岡、与那原、堀田、黒田、山下は引き続き育成契約になる。

 今年も例年通り、FA選手の獲得に動く可能性が高い。投手では九里(広島)や又吉(中日)、野手では梅野(阪神)の獲得が取りざたされている。外国人選手では実績のある選手を基本に、レアード(ロッテ)やグラシアル(ソフトバンク)あたりにも興味を示しているようだ。

 ただ、レアードを例にとると、レアードは一塁と三塁が本職で、一塁には来年大城卓三(17年/③)のコンバートが予定され、三塁には岡本和真(14年/①)がいる。坂本勇人(06年/①)も年齢的にはそろそろ三塁コンバートがベストで、レアードの名前が出た瞬間にどうやって起用するのか分からなかった。外野のグラシアルやオースティン(DeNA)の獲得を狙うなら理解もするが…。

 投手陣の補強、貧打の解消、若手の伸び悩み(自滅型だが…)など、補強ポイントは多々あるが、FAが基本路線なので戦力外選手の獲得は積極的ではないだろう。一方では今年、FAには参戦しない記事もあったが、果たしてどうなることか…。

 投 手…大竹 寛(01年/広①)野上亮磨(08年/西②)※山川和大(16年/育③)

       ※田中優大(17年/育④)※平井快青(18年/育②)※谷岡竜平(16年/③)

       ※与那原大剛(15年/③)※堀田賢慎(19年/①)

 捕 手…なし

 内野手…松井義弥(18年/⑤)※黒田響生(18年/育④)

 外野手…亀井善行(04年/④)※加藤壮太(19年/育②)※山下航汰(18年/育①)

 外国人…テームズ(外野手)スモーク(外野手)

【予想背番号】

 ①翁田/12 ②山田/28 ③赤星/23 ④石田/46 ⑤岡田/57 ⑥代木/61

 ⑦花田/65

 

広島東洋カープ(59名+7名)

 終盤になってようやく投打が噛み合い、一時はAクラスに迫ったが、一歩及ばず3連覇のあとは、よもやよもやの3年連続のBクラスになった。主力が結果を残し、若手の台頭も目立ったがチームの成績アップには繋がらず、チームの総合力をどう上げていくかが来シーズンの課題になる。

 今年は12球団で唯一、引退選手がいなかった。そのなかで驚きだったのは、投手では1年目で20歳の行木、2年目20歳の鈴木寛、野手でも4年目の21歳永井を戦力外にした。行木は育成契約でチームに残るが、鈴木寛と永井は退団になる。鈴木寛と永井は、広島のスカウト陣が高く評価していた選手で、名前を聞いたときは驚いた。

 現在、支配下選手は59名だが、新外国人選手で既にターリーとアンダーソンの両投手、野手でマクブルームを獲得しており、今ドラフトの7名(投手④/捕手①/外野手②)を加えると69名と枠に余裕はない。

 ただ、大瀬良大地(13年/①)と九里亜蓮(13年/②)が揃ってFAを取得し、主砲の鈴木誠也(12年/②)のMLB移籍はほぼ決定的で、残る4人の外国人選手の去就もある。多くてもあと1~2名程度の新たな戦力外通告はあるかも知れない。最悪、10勝の大瀬良、13勝の九里、首位打者で38本塁打、88打点の鈴木誠が抜けると、厳しいなんてものじゃなく、他球団の戦力外選手やトレードを活用していくことになる。

 課題の投手陣は、先発なら実績のある榎田や吉川(ともに西武)、先発・リリーフともにできる牧田(楽天)や村田(日本ハム)、リリーフでは吉田一(オリックス)や小川(西武)など経験のある選手が必要だと思う。特に吉川は地元の広陵高出身で、まだ33歳。老け込む年齢ではないので、復活する姿を見てみたい。

 野手は鈴木誠の代わりになるような選手は当然のことながらいない。鈴木誠の移籍見越して今年、社会人外野手(いずれも右打ち)を2名獲得しており、敢えて補強する必要はないだろう。

 投 手…今村 猛(09年/①)鈴木寛人(19年/③)中村恭平(10年/②)

       行木 俊(20年/⑤)※畝 章真(19年/育③)※佐々木健(17年/育③)

 捕 手…なし

 内野手…桒原 樹(14年/⑤)

 外野手…高橋大樹(12年/①)永井敦士(17年/④)

 外国人…スコット(投手)ネバラスカス(投手)クロン(内野手

【予想背番号】
 ①黒原/24 ②森/16 ③中村健/25 ④田村/45 ⑤松本/52 ⑥末包/50

 ⑦高木/64

 

中日ドラゴンズ(61名+6名)

 昨年、7年振りのAクラスになり、今年は優勝候補にも挙げる声もあったが、目を覆うような貧打で再びBクラスへ転落した。新たに立浪監督を迎え、コーチ陣も刷新されたなか、新たなチーム作りが期待される。

 今年は中日の黄金期を支えた山井と藤井が引退を決めたが、驚いたのは武田の戦力外で、打率こそ1割台と低いが、守備固めや代走で93試合に出場しており、武田本人が「頭が真っ白になった」とコメントしていたが、まさしくその通りと言える。

 また、遠藤と井領も戦力外になり、落合GMのもと賛否両論があった、オール大卒・社会人で9名を指名した14年組が全員チームを去る。唯一の現役はロッテの加藤匠馬(14年/⑤)だけで、結果的には失敗だったと言える。

 支配下選手は61名で、今ドラフト指名選手6名(投手①/捕手①/内野手①/外野手③)を加え67名になる。懸念材料の一つだったビシエドが残留を決め、ロドリゲスとRマルティネスの両外国人投手も残留する。ただ、外国人選手を今年同様に6名とすると、69名となり支配下ギリギリで、あと2~3名の戦力外通告の追加が予想される。

 残る懸念材料は又吉のFA移籍で、リリーフで66試合に登板し、防御率は驚異の1.66。33ホールドを上げたリリーフエースながら、年俸はCランクで人的保障が必要ない投手で、中日にはメリットが無いだけに流失は避けたい。一方で又吉が移籍込みのFA宣言をすれば争奪戦になるだろう。

 又吉が移籍すればリリーフ投手の補強が必要で、その場合は似たタイプの吉田一(オリックス)や石崎(ロッテ)が候補になる。最大の補強ポイントは長打力のある野手だが、残念ながら候補はおらず、ここは外国人選手の補強やトレードが有効だろう。

 ロッテのレアードや井上、日本ハムの大田、ソフトバンクの上林やデスパイネオリックスのモヤの復帰や思い切って巨人の中田の獲得など、アッと言わせるような大型トレードがあるかも知れない。

 投 手…三ツ間卓也(15年/育③)山井大介(01年/⑥)※丸山泰資(16年/⑥)

 捕 手…なし

 内野手…なし

 外野手…遠藤一星(14年/⑦)井領雅貴(14年/⑥)武田健吾(12年/オ④)

       藤井淳志(05年/③)

 外国人…ロサリオ(投手)ガーバー(外野手)

【予想背番号】

 ①ブライト/4 ②鵜飼/23 ③石森/26 ④味谷/43 ⑤星野/56 ⑥福元/39

 

★横浜D℮NAベイスターズ(59名+6名)

 投打の主力選手のFA移籍、投手陣は先発中心にケガ人が続出、外国人選手の来日遅れなど、シーズン前から課題が山積で、結果として序盤の不振が尾を引いて最下位と、三浦新監督には厳しいシーズンになった。ただ、今年のヤクルトの例もあるように、考えかたを変えれば、あとは上がっていくだけで、FA取得の宮崎敏郎(12年/⑥)も残留を決め、来シーズンに向け戦力を整備していきたい。

 投手では斎藤と武藤、野手では中井が引退を決め、風張は昨年に続き無情の戦力外になった。唯一、勝又のみが育成契約になり、高校時代より評価されていた打撃を活かし野手に転向する。

 感心したのは乙坂の戦力外で、チームの規則を破り、コロナ禍の外出した件を重く見ての判断で、主力でもルールを破れば厳しい処分を課す、信賞必罰の姿勢はチーム(=組織)を運営するうえで大事だと思う。

 オースティン以外の外国人選手の残留が濃厚で、今ドラフトの新入団選手6名(投手④/内野手①/外野手①)を加えても65名と、戦力外通告は終わったと言える。ただ、山崎康晃(14年/①)が、MLB移籍も視野にしたFA移籍の可能性があり、チームの看板選手だけに今後の動向に注目したい。

 課題は投打の底上げになるが、優先事項は投手力の強化だろう。特に山崎が移籍すればリリーフ投手を優先的にを強化したい。球に力のある今村(広島)や金田(オリックス)、川原(ソフトバンク)、変則投手では牧田(楽天)や渡邊(ソフトバンク)がおり、三浦監督がどういったピースをはめるか注目していきたい。

 野手ではリーグ最少の盗塁を補うために機動力重視でいきたい。スピードのある釜元(ソフトバンク)や武田(中日)は補強ポイントに合致する。また、若いチームだけにベテランの力も必要で、藤田(楽天)の古巣への復帰や、勝負強い打撃で内野ならどこでも守れる川島(ソフトバンク)は心強い存在になると思う。

 投 手…斎藤俊介(17年/④)飯塚悟史(14年/⑦)勝又温史(18年/④)

       進藤拓也(16年/⑧)武藤祐太(10年/中③)風張 蓮(14年/ヤ②)

       笠井崇正(16年/育①)

 捕 手…なし

 内野手中井大介(07年/巨③)

 外野手…乙坂 智(11年/⑤)

 外国人…※コルデロ(投手)※デラロサ内野手

【予想背番号】※入江・牧は決定
 ① 小園 /18 ②徳山/24 ③粟飯原/33 ④三浦/28 ⑤深沢/43 ⑥梶原/58   

21年パ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 11/5で、第一次の戦力外通告の期間が終了した。そこで、退団する選手と補強ポイント選手を挙げたいと思います。

 なお、選手の現況は11/13時点のもので、選手名の横の年数は指名年度、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。 

 

オリックスバファローズ(59名+7名)

 25年振りにリーグ優勝を果たし、日本シリーズ進出も決めた。ここ数年の育成型ドラフトが功を奏し、黄金時代到来を予感される布陣になった。

 戦力外通告支配下登録10名と育成契約8名の18名で、リーグ優勝に沸くなか、リリーフ陣を支えた吉田一や金田がチームを去る。投手では榊原やファームで2番目の88イニングを投げた東、野手では2年目の勝俣など、見切りが早い印象を受けたが、故障からの復帰を期す近藤に廣澤を合わせた5選手は育成契約を打診されている。

 一方で24歳の鈴木優や3年目の荒西は退団になり、ファームではレギュラー並みの成績を残している育成の田代は、昨年に続き戦力外通告になってしまった。岡崎と育成の古長以外は、現役続行を表明しているが、今年一軍経験があったのは金田と鈴木優のみで、ともに成績は芳しくない。吉田一もファームで防御率7点台と、経験がモノを言うリリーバーとは言え成績だけを見ると厳しい。唯一、西浦が引退を決め、「特発性大腿骨頭壊死症」という難病からの復帰を目指したが叶わなかった。 

 育成だが勿体なのは佐藤優で、打率は低いが長打率が4割を超え、フェニックスリーグでも結果を残しているだけに、将来性を見越した獲得があるかも知れない。また、コロナ禍で退団したロメロも、条件さえクリア出来れば再契約しても良いと思う。

 支配下選手は59名で、今ドラフトの7名(投手③/捕手①/内野手①/外野手②)を加えても66名と、戦力外通告もほぼ終わったと言える。6名いる外国人選手はヒギンス以外は成績的に残留が微妙なラインだが、同数の新外国人で穴埋めすることになる。

 チーム防御率リーグ2位、打率もリーグ1位と、急いで補強するポイントは少ない。ただ、少ない盗塁数を補う機動力のある選手や左のリリーフ投手が欲しいところで、釜元(ソフトバンク)は俊足の外野手、左のリリーフでは川原(ソフトバンク)や小川(西武)などはフィットすると思う。また、ファームでのチーム成績が芳しくなく、選手層の底上げで育成で有望な選手を獲得しても面白い。

 投 手…金田和之(12年/神⑤)吉田一将(12年/①)荒西祐大(18年/③)

       飯田優也(12年/ソ育③)榊原 翼(15年/育②)鈴木 優(13年/⑨)

       神戸文也(15年/育③)※近藤大亮(15年/②)※東 晃平(17年/育②)

 捕 手…※稲富宏樹(17年/育①)※フェリペ(17年/育④)

 内野手…勝俣翔貴(19年/⑤)廣澤伸哉(17年/⑦)岡崎大輔(16年/③)

      ※古長 拓(20年/育⑥)

 外野手…※佐藤優悟(19年/育⑦)※田代飛翔(16年/ソ育③)※西浦颯大(17年/⑥)

 外国人…ディクソン(投手)ロメロ(外野手)

【予想背番号】

 ①椋木/15 ②野口/0 ③福永/32 ④渡部 /39 ⑤池田/64 ⑥横山/56 

    ⑦小木田/58

 

千葉ロッテマリーンズ(60名+5名)

 51年振りにマジックを点灯しながら、最後の最後で優勝を逃し、CSの善戦空しく敗れ2年連続の2位で終了した。投手は絶対的なエースが不在、打者は外国人選手頼みで、チームの総合力は高いだけに「個」の力のレベルアップが課題になる。

 献身的プレーで若手の手本となった鳥谷、腰痛から再起した高濱、今年途中加入した小窪のベテラン勢に、投手では難病と闘った南が引退を決め、ハーマンとフローレスもチームを去る。全体的に若手への世代交代を印象付けた。

 戦力外通告を見ても驚きはなく、広場恐怖症のなか奮闘した永野のほかに、石崎と宗接が現役続行を表明し、松田と昨年から育成契約の原は去就が未定だ。このなかで、石崎は今季一軍出場こそなかったが、ファームで26試合に登板して防御率1点台と結果を出しており、リリーフ陣の層を厚くしたいチームの需要は高いと思う。

 支配下選手は60名で、今年指名した5名(投手③/捕手/①内野手①)を加えて65名になった。シーズン途中の補強が上手なだけに、昨年同様3~4名ほど空けておきたいのと、ファームで最多勝を獲得した森や、フェニックスリーグで5本塁打の山本大など有望な育成選手がファームに多く、あと2~3名は戦力外通告があるかもしれない。

 FAでは、かねてよりMLB挑戦を希望していた石川歩(13年/①)は残留が濃厚だが、最大の課題は今年が契約最終年のレアードの残留交渉で、本塁打・打点ともにリーグ2位の大砲の流失は避けたい。また、守備は超一級品のエチェバリア、4試合の登板ながら防御率1点台のロメロの去就にも注目したい。

 今年の状況から課題は打線の強化とリリーフ左腕の獲得になる。シーズン途中に小窪を獲得したように、右の代打に苦労している状況のなか、勝負強く左投手キラーの川島(ソフトバンク)は適任だと思う。また、左のリリーフでは,奪三振率の高いバード(広島)、ファームで防御率1点台の渡邊(ソフトバンク)、右投手だが牧田(楽天)はともに変則投手で、千葉マリンの風を活かした投球は個人的にはハマると思う。

 投 手…石崎 剛(14年/神②)永野将司(17年/⑥)南 昌輝(10年/②)

       ※原  嵩(15年/⑤)

 捕 手…宗接唯人(16年/⑦)

 内野手…鳥谷 敬(06年/神自)高濱卓也(07年/神①)松田 進(18年/⑦)

       小窪哲也(07年/広③)

 外野手…清田育宏(09年/④)

 外国人…ハーマン(投手)フローレス(投手)※アコスタ(投手)

【予想背番号】

 ①松川/10 ②池田/33 ③廣畑/30 ④秋山/45 ⑤八木/36

 

東北楽天ゴールデンイーグルス(59名+7名)

 今シーズンは田中将大(06年/①)の電撃復帰や、ドラフトで早川隆久(20年/①)を獲得し優勝候補にも挙げられていたが、攻守に決め手を欠き順位を1つ上げて3位で終了した。投打にベテラン頼みで若手の底上げが急務になる。

 一昨年は17名、昨年14名と2年連続でリーグ最多の戦力外通告をし、チームの刷新が進んでいる。今年は2年目の福森、ともに高卒3年目の引地と佐藤が育成選手契約になるが、支配下10名、育成選手1名がチームを去る。池田と足立、下妻が引退を決め、足立と下妻は球団スタッフになる。一方で、コーチ就任を打診された藤田は現役続行を目指し、退団が濃厚になっている。

 驚いたのは牧田の戦力外で、今季は一軍登板には恵まれなかったが、ファームでは26試合で防御率は0点台と力は衰えていない。貴重な下手投げに加え、先発・中継ぎどちらでも出来る選手なだけに、獲得を検討するチームは多いと思う。また、藤田も堅守は相変わらずで、ファームで打率.292は、本人ではないがまだできると思う。

 支配下選手は57名で、今ドラフトで7名(投手④/捕手①/外野手②)を加え、支配下は63名になった。外国人選手はブセニッツ以外の3選手が退団し、外国人選手を4~5名で仮定すると、戦力外通告はほぼ終了したと言える。FA選手の獲得は今年は消極的で、トレード等で現有戦力の底上げを図る。

 補強ポイントは、右打者の補強と若手投手の獲得で、右打者の一番の候補は阪神退団が濃厚なサンズで、広い甲子園で20本塁打は魅力的だ。また、長打力はないが俊足の釜元(ソフトバンク)は、機動力不足のチームにフィットすると思う。

 若手投手の底上げは必須の課題で、ルーキーを除けば、19~22歳の投手は内星龍(20年/⑥)しかいないなか、堀田(巨人)は狙い目だと思う。故障も回復しフェニックスリーグでも好投を見せた。現状、育成契約を前提にした自由契約選手なので、支配下で獲得を検討しても良いと思う。

 投 手…牧田和久(10年/西②)菅原 秀(16年/④)福森耀真(19年/⑤)

       引地秀一郎(18年/③)佐藤智輝(18年/⑤)池田 駿(16年/巨④)

     ※則本佳樹(18年/育②)

 捕 手…足立祐一(15年/⑥)下妻貴寛(12年/④)

 内野手…藤田一也(04年/横④)

 外野手…下水流昂(12年/広④)

 外国人…コンリー(投手)ディクソン(外野手)カスティーヨ(外野手)

【予想背番号】

 ①吉野/9 ②安田/22 ③前田/44 ④泰/46 ⑤松井/39 ⑥西垣/49 ⑦吉川/59

 

福岡ソフトバンクホークス(62名+5名)

 今年も断トツの優勝候補だったが、まさかのBクラスに沈んだシーズン。多くのケガ人が出て、ベストメンバーで臨めた時期が少ないこともあったが、かねてより懸念されていた世代交代の遅れが顕在化したことも事実だと言える。

 こういった状況のなか、長谷川と高谷、川島と長年チームを支えたベテランが戦力外になり、長谷川と高谷は引退しコーチに就任する。このほかの戦力外通告は驚きの連続で、左腕で150キロを投げる川原に、ファームで防御率1点台の変則左腕の渡邊への通告は、改めてソフトバンクの選手層の厚さを思い知らされた。野手でも、終盤に代走から守備固めに入っていた釜元も新天地でのプレーが十分に期待できる。

 支配下選手は62名、ルーキー5名(投手③/内野手①/外野手①)を加え67名と、もう少し余裕が欲しいところだが、外国人選手が7名と多めで、ここを5~6名にすれば余裕が生まれ、戦力外通告はほぼ終了したと言える。

 ただ、その外国人選手の去就が最大の課題で、投手ではMLBが強い関心を示しているマルティネスとモイネロは退団が濃厚、打者ではデスパイネとグラシアルの残留が未定で、特にグラシアルには何としてでも残留して欲しいところだろう。 

 補強ポイントは抜けた左右の代打の切り札を含めた野手が優先になる。FAでの獲得が噂されていたDeNAの宮崎は残留を決め、今後の所属球団との交渉次第になるが、阪神のマルテやサンズ、ロッテのレアードも候補になる。ただ、残念ながら外国人選手以外の候補者が見当たらず、唯一、ベテランの高谷が抜けたあとの控え捕手で、鶴岡(日本ハム)の再入団はチームのプラスになると思う。

 層の厚い投手陣は現有戦力の底上げで乗り切ることができるので、補強するなら豊富な投手陣を軸に野手とのトレードが中心になると思うが、シーズン中に家族の事情で帰国したレイとの再契約は、何とかして成立させたいところだ。また、個人的に地元九州出身の多和田(西武)を育成で獲得し、是非再起させて欲しい。

 投 手…渡邊雄大(17年/育⑥)川原弘之(09年/②)※吉住晴斗(17年/①)     

 捕 手…高谷裕亮(06年/③)

 内野手川島慶三(05年/日③)

 外野手…長谷川勇也(06年/⑤)釜元 豪(11年/育①)

 外国人…レイ(投手)アルバレス(外野手)バレンティン(外野手)

【予想背番号】

 ①風間/1 ②正木/31 ③木村/48 ④野村勇/4 ⑤大竹風/63

 

北海道日本ハムファイターズ(59名+9名)

 3年連続5位と不振が続くなか、大方の予想に反して新庄監督を新たに迎え、オフの話題を独占している日本ハム。今からどんな選手を活用し、どのような野球をするのか興味というか、楽しみが尽きない。

 チームを去るのは、ともに人気選手だったハンカチ王子こと斎藤とヒザの故障から復活を期した谷口、育成の海老原が引退する。鶴岡はコーチ専任を断り現役続行を希望し、昨年交渉で揉めた村田含め4名が退団する。

 一方で、投手では田中と長谷川、野手では樋口と難波が育成契約になる。ただ、樋口は昨年途中、長谷川は今年開幕前に支配下になったが、直ぐに育成契約に逆戻りになった。樋口と長谷川より結果が出ていない選手が多数いるなかで、この辺りに何となく育成選手への厳しい扱いを感じるのは私だけだろうか?

 支配下選手は59名で、今ドラフトで最多の9名(投手⑤/内野手④)を指名しており、既に68名いる。外国人選手ではBロドリゲスと王伯融が残留を決め、既に新外国人選手も1名も獲得した。外国人選手を今季同様5名で考えると、支配下枠は一杯で、新たな戦力外通告や複数トレードなどが考えられ、新庄監督の動向から目を離せない。

 戦力的には全体不足しているが、結果は出ていないものの打者は若手に良い選手が揃っており、投手陣の底上げが優先課題になる。ただ先発候補が少なく、若い鈴木優(オリックス)や飯塚(DeNA)、実績のある多和田(西武)などは育成などで獲得しても面白いと思う。リリーフでは経験豊富な金田(オリックス)や今村(広島)、ファームで結果を残している石崎(ロッテ)や渡邊(ソフトバンク)、先発もできる牧田(楽天)、まだ29歳と若いギャレット(西武)など補強候補は多い。

 野手は候補は少ないが、若手の多いチームのなかベテランの藤田(楽天)は心強い存在になるし、高校時代に新庄2世とも言われた武田(中日)は、それこそ新庄監督が好むプレーヤーかも知れない。

 投 手…村田 透(07年/巨①)長谷川凌汰(19年/育③)田中瑛斗(17年/③)

       斎藤佑樹(10年/①)※鈴木遼太郎(17年/⑥)

 捕 手…鶴岡慎也(02年/⑧)

 内野手…樋口龍之介(19年/育②)難波侑平(17年/④)今井順之助(16年/⑨)

 外野手…谷口雄也(10年/⑤)※海老原一佳(18年/育①)

【予想背番号】
 ①達/22 ②有薗/55 ③水野/4 ④阪口/31 ⑤畔柳/43 ⑥長谷川/46

 ⑦松浦/69 ⑧北山/58 ⑨上川畑/53

 

埼玉西武ライオンズ(53名+6名)

 所沢移転以来、42年振りの最下位に沈んだ西武。課題だった投手陣を補った強力打線が陰りを見せ、渡辺GMの「山賊打線はもう既に終わっている…」の言葉通り、この後2~3年はチーム刷新のシーズンになる。

 現役引退は3名で、昨年古巣に復帰した松坂は一軍登板のないまま引退し、駒月は球団スタッフ、4年目の21歳に綱島も引退を決め第二の人生に進む。戦力外通通告は投手に集中し、12年最多勝&MVPの吉川、故障からの復帰を目指した榎田、病気療養のため育成契約になった18年最多勝の多和田のドラ1トリオが退団する。今年それぞれ肘の手術をした伊藤と斎藤大、粟津は育成契約で復活を目指す。

 今回の戦力外に大きな驚きはなく、私の同僚で西武の大ファンがおり、戦力外を予想したがほぼ合っていた。外国人選手5名もすべて退団し、支配下選手は53名で、今回満点ドラフトだった新入団選手(投手④/捕手①/内野手①)と、今年の同じ数の外国人選手を合わせても64名と戦力外通告は終了したと言える。

 FAの岡田雅利(13年/⑥)は残留が基本路線で、今年もFA選手の流失は無さそうだ。補強ポイントはやはり投手になるが、来年ともに40歳を迎える中村剛也(01年/②)と栗山巧(01年/④)の後釜も必要になる。

 他球団の戦力外を見ても投手では先発タイプは少なく、ここはトレードや外国人投手の補強が現実的だ。リリーフでは経験豊富な金田や吉田一(ともにオリックス)、今村(広島)、左のリリーバーの川原と渡邊(ともにソフトバンク)は投手陣の底上げになると思う。

 野手ではルーキーの古賀を入れても6名しかいない捕手で宗接(ロッテ)、戦力外通告の多かった外野手では、釜元(ソフトバンク)や武田(中日)、乙坂(DeNA)など機動力が使える選手がおり、獲得しても面白いと思う。最後に松坂が復帰したように、牧田(楽天)の獲得を期待しているのは私だけだろうか。

 投 手…伊藤 翔(17年/③)吉川光夫(06年/日①)中塚駿太(16年/②)

       斎藤大将(17年/①)粟津凱士(18年/④)榎田大樹(10年/神①)

       小川龍也(09年/中②)松坂大輔(97年/①)※多和田真三郎(15年/①)

     ※大窪士夢(18年/育②)

 捕 手…駒月仁人(11年/③)※中熊大智(18年/育③)

 内野手綱島龍生(17年/⑥)

 外野手…なし

 外国人…ギャレット(投手)ニール(投手)ダーモディ(投手)メヒア(内野手

     スパンジェンバーグ(内野手

【予想背番号】

 ①隅田/18  ②佐藤/16 ③古賀/22 ④羽田/43 ⑤黒田/57 ⑥中山/50

2021年ドラフト寸評~成功・失敗した球団(後編)

 後編は辛口かもしれませんが、やや評価を厳しくしたチームを紹介してきたいと思います。

△DeNA(65点)

 良くも悪くも重複を避けての単独指名が続いていたので、今年の小園健太(市和歌山高・投手)指名は個人的には嬉しかった。単独指名は悪いことではないし、戦略的にも必要だが、リスク覚悟でも将来の主戦になる選手を獲りに行く姿勢は長期的に見て大事で、そうしないとチームは強くならない。

 小園は高校生ながら完成度が高く、来季の後半あたりには一軍デビューしているかもしれない。ただ心配なのは、DeNAはここ数年、高校生投手が大成しておらず育成手腕が試させられる。同じ高校生で5位の深沢鳳介(専大松戸高・投手)は、技巧派のサイドスローで、小園、深沢とタイプの違う投手をどう育成していくか注目したい。

 2位の徳山壮磨(早大・投手)、4位の三浦銀二(法大・投手)は、ともに高校時代から注目されていた投手で、大学でも順調に成長したが、徳山は安定感に課題があり、三浦は最終学年で評価を落とした。2位はウェーバーで一番先に指名できたので、投手なら佐藤(西武)や鈴木(阪神)の両左腕や、野手なら正木(ソフトバンク)が残っていたので、先発ローテを任せらる即戦力や課題の外野手補強でも良かったと思う。

 野手の課題はセンターラインの強化で、即戦力捕手、二遊間の強化、そして外野の層を厚くすることだったが、一つも出来なかった。捕手は指名がなく、3位の粟飯原龍之介(東京学館高・内野手は走攻守揃った大型遊撃手だが、森というレギュラー候補がいるのにどう活用するか疑問で、補強ポイントとは違う気がした。

 6位の梶原昂希(神奈川大・外野手)も柳田2世と呼ばれる走攻守揃った外野手だが、センターラインを任せられる守備力は疑問で、しかも19歳から22歳まで外野手が不在のなか、今年も高校生外野手の指名はなかった。将来性なのか課題の補強なのか、どちらとも取れないドラフトになった印象を持った。

 ただ、育成指名は良かった。育成1位の村川凪(四国IL徳島・外野手)は、超がつく俊足で、脚力だけで飯が食える選手。リーグワーストの盗塁数改善には打って付けの選手で支配下登録も早いだろう。育成2位の東出直也(小松大谷高・捕手)はプロ意識の高い選手で、甲斐(ソフトバンク)のように這い上がってきて欲しい。

 

△巨人(65点)

 クジ運の悪さは別にして、今年も外れ1位指名を評価できなかった。翁田大勢(関西国際大・投手)の名前が呼ばれたとき、アンチ巨人の私でさえ頭を抱えた…。翁田は当然、良い投手には間違いないが、1位ではなくても獲得できた。故障で4年時の登板が限られ、即戦力と言うよりは育成型の選手で、補強ポイントと合致したとは言えない。

 今年は7名中、6名が投手と巨人の現状の課題が如実に顕われている。2位の山田龍聖(JR東日本・投手)は、高卒3年目の21歳の急成長中の左腕。3位の赤星優志(日大・投手)は制球力に優れ、打たせて取る投球でゲームメークに長けている。

 下位では高校生を獲得し、4位の石田隼都(東海大相模高・投手)は、今春のセンバツの優勝投手で制球力に優れた左腕。6位の代木大和(明徳義塾高・投手)は巧派左腕だが、体が出来上がればまだ球速は上がる。7位の花田侑樹(広島新庄高・投手)は、よくここまで残っていたと思う。花田はゲームメークに長けた先発型の右腕で、打者としての評価も高く、打者へのコンバートも予想される。

 ただ、これだけ獲得したものの、本当に即戦力と呼べるのはは赤星くらいであとは全員育成型だ。結果が出なかったり、ちょっとケガでもすれば、直ぐに育成契約が待っている堪え性のないチームが、そこまで腰を据えて育成するのか注視していきたい。

 野手では唯一、5位で岡田悠希(法大・外野手)を指名した。走攻守揃ったバランスの取れた選手だが、今ひとつセールスポイントに欠ける。野手はFAで獲れば良いという考えなのか、ポスト坂本の遊撃手やレギュラー不在の二塁手、極端に少ない右打ちの外野手など課題の補強は出来なかった。

 育成選手は8名指名し、育成1位の鈴木大和(北海学園大・外野手)は広角に打ち分けるスピードスター、育成2位の高田竜星(BC石川・投手)は、今季高卒新人ながら開幕投手を任せられた期待の右腕で、し烈な競争を勝ちぬき支配下を目指す。

 最後に、「巨人が強くないと野球は面白くない」ということは微塵も思わないが、いまの巨人を見て、次世代のスター候補が岡本しかいないのは寂しいと思う。なぜ、森木や正木など補強ポイントに合ったスター性もある選手をなぜスルーしたのか…。

 

×ヤクルト(60点)

 優勝が秒読みだが、来季も優勝争いができるほど選手層は決して厚くない。そのなかで本指名5名、育成選手1名は人数が少なすぎると思う。また、指名した選手の順位が全体的に高く、決して失敗ドラフトではないが今一つ評価できなかった。

 1位で隅田を指名したのち、抽選で外れ同じ大学生左腕の山下輝(法大・投手)を、広島との競合で獲得した。山下は長身から球速150キロを超える大型左腕で、未完の大器と言う言葉がピッタリの投手で、先発・リリーフともに適性がある。

 捕手以外の課題はすべて補強できたと思うが、2位以降の順位が高いと感じた。2位では、欲しかったリードオフマン候補で丸山和郁(明大・外野手)を指名したが、逆ウエーバーで直ぐに3位指名ができ、同じ課題を持つオリックスとの兼ね合いを考えて順位を上げたのかなと推測したが、廣畑(ロッテ)や赤星(巨人)の即戦力投手を獲得してからでも良かったと思う。

 3位の柴田大地(日本通運・投手)も今季急成長を遂げたが、故障から回復して活躍し始めたのは今季からで、即戦力という面では疑問が残る。4位の小森航太郎(宇部工高・内野手も、補強ポイントの右打ちの内野手で俊足巧打の選手。ただ、中央では無名の隠し玉的存在で、柴田同様にもう一つ下位でも獲得できたと思う。

 5位の竹山日向(享栄高・投手)の指名は絶妙だった。今夏、最速150キロを超えた本格派右腕で、現状では制球力に課題は残るものの、体が出来上がれば素材は申し分なく、エースにもなれる可能性を秘めている。

 個人的には2位で即戦投手をもう一人獲得して、3位丸山、4位柴田、5位竹山、6位小森でも良かったと思う。

 また、育成選手も1人では少なすぎる。育成1位の岩田幸宏(BC信濃は、丸山同様に俊足の外野手で、チームに不足している左打ちだが、昨年の並木と合わせて丸山とも被る。同じ左打ちなら川村(ソフトバンク)のようなスラッガーを指名しても良かった。20歳代が3名しかいない捕手も必要で、東出(DeNA)や村山(ロッテ)など有望な高校生を指名して欲しかった。

 

×広島(60点)

 1位で隅田(西武)と山下(ヤクルト)を指名し、何よりも即戦力左腕が欲しい意図は伝わった。徹頭徹尾最後の12人目で、黒原拓未(関学大・投手)を1位指名した。黒原は小柄だが最速151キロの馬力のある左腕で、課題の多い先発陣だけに先発ローテーションに食い込む力は十分にある。

 2位も即戦力左腕の森翔平(三菱重工エスト・投手)を指名。森は直球を軸に、制度の高い変化球が決め球の完成度の高い投手で、黒原と一緒に先発ローテーションを任せられる。大瀬良と九里のFAの去就が決まらないなか、最悪流失に備えて上位で即戦力で揃えたのは理解できる。ただ、即戦力の次に欲しかったのは、将来性のあるエース候補となり得る高校生投手、小園と林に続く内野のレギュラー候補、外野はポスト鈴木誠の獲得だった。

 投手は5位で松本竜也(ホンダ鈴鹿・投手)を指名。松本は高卒4年目で年齢的には22歳と若く、即戦力として課題の投手陣には必要なピースだが、残念ながら高卒投手の指名は1名もなかった。

 野手は結果外野手中心に、3位で中村健人トヨタ自動車・外野手)、6位で末包昇大(大阪ガス・外野手)の社会人と、4位で田村俊介(愛工大名電高・内野手、最後の最後で、数的に少なくなることが予想されるの高木翔斗(県岐阜商高・捕手)を7位で獲得した。このなかでポスト鈴木誠に近いのは中村で、広角に打ち分ける長打力が持ち味だが、手薄な外野陣を埋める即戦力だが、スケール面では鈴木誠には及ばない。

 4位の田村は二刀流挑戦を公言しており、広島がどういった判断をするか注目したい。末包は110キロを超える巨体からの長打力が魅力だが、こういった選手が大成したケースは少なく、ましてや25歳で直ぐにでも結果が求められる。

 育成では4名指名し、1位で新屋颯(田辺高・投手)、3位で中村来生(高岡一高・投手)の左右の高校生投手、内野手前川誠太(敦賀気比高・内野手を獲得し、何とか課題を埋めきった感はある。ただ、やはり3位以降が全体的に即戦力、育成とも図りかねる指名になり、敢えて評価を低くさせてもらった。

 

×楽天(55点)

 一言でいうと、今年も石井ワールドというか…良く分からないドラフトになった。課題は明確で、早川以外ほぼ皆無と言っても過言ではない将来のエース候補。そして野手はチームに少ない右打ちの野手獲得の2つだった。

 1位は将来のエース候補で、小園(ヤクルト)や風間(ソフトバンク)、2年続けてだが大学生で隅田や佐藤(ともに西武)に行くのかと予想していたところに、まさかの吉野創士(昌平高・外野手)で驚いた。吉野は良い選手で上位候補には間違いないが、地元の風間や即戦力の佐藤も仙台出身で、別に地元出身に縛られる必要はないが、次の入札で1位指名でも良かったのではないかと思う。

 2位の安田悠馬(愛知大・捕手)と3位の前田銀治(三島南高・外野手)も驚いた。捕手は既に8名いるものの、炭谷を期中で獲得したように、捕手が課題なのは理解するが、安田は打撃面が評価されており、チームに多い左打ちでどう活用していくのか。

 前田も俊足で守備も巧く、長打力のある右打ちで吉野と同じタイプ。オコエに代表されるように、このような右打ちの選手育成の実績がないチームが、どう育成するか不安が残る。吉野と前田を競い合わせる意図もあると思うが、吉野を1位で獲得したのなら、中村(広島)や福元(中日)の即戦力でも良かったと思う。

 4~7位はすべて投手で、4位は泰勝利(神村学園高・投手)、5位で松井友飛(金沢学院大、6位は西垣雅矢(早大・投手)、7位で吉川雄大(JFE西日本・投手)を指名した。西垣は最終学年で評価を上げたが、泰と松井も0か100の投手で、育成には時間がかかる。大化けすれば将来のエース候補になるかもしれないが、松井も西垣も3年も経てばすぐに25歳を迎え中堅になる。左腕の吉川も先発よりは、チームに少ない左のリリーフ候補で、課題を解消できたとは言えない。。

 3名の育成選手も1位の宮森智志(四国IL高知・投手)は23歳の本格派右腕、2位の柳澤大空(日大藤沢高・外野手)と3位の大河原翔(東海大山形高・外野手)もともに右打ちのスラッガー。言い方は悪いがギャンブルのようなドラフト戦略で、長い目で5年後にどういう評価になるか見てみたい。

 

×中日(50点)

 前編で何事にもバランスが大事と書かせたもらったが、今年でいえば中日のドラフトは極端すぎた。確かに誰の目から見ても課題は長打力不足だが、一気に右打ちの大学生を3名も獲得した。年齢的にも必要なポスト大島を無視して、一気に3名である…。 

 1位は半ば公言していたブライト健太(上武大・外野手)を指名。ブライトは最終学年で一気に素質を開花させた選手で、高い身体能力からの守備走塁のレベルも高く、長打力もあり広い球場で高いパフォーマンスを発揮するだろう。ただ、打ち始めたのは今年からで、大学生とは言えど育成型の選手で時間を要する。

 先行投資でのブライト指名は理解できるが、首を傾げたのは2位鵜飼航丞(駒大・外野手)の指名だった。鵜飼も恵まれた体格からの長打力が魅力だが、ブライト同様に育成型。この時点で正木(ソフトバンク)や、同じ地元出身なら中村(広島)も残っており、この2人のほうが即戦力と言え、敢えて1~2位で育成型の大学生を揃える必要があったのか疑問だ。

 さらに追い打ちをかけるように、6位で福元悠真(大商大・外野手)を指名。福元は中距離打者だが守備走塁には課題があり、同じ育成型なら左打ちのスラッガー川村(ソフトバンク)や、年齢的に柳澤(楽天)など高校生外野手でも良かったと思う。

 今年は6名中5名が野手で、4位で味谷大誠(花咲徳栄高・捕手)と5位で星野真生(豊橋中央高・内野手を指名した。味谷の指名は補強ポイントに合致するが、星野は長打力が持ちの右打ちの遊撃手。ただ、遊撃候補には根尾と土田がおり、石川昂と石垣も同じ右の長距離砲で被るところが多く、今一つ意図が理解できなかった。

 投手は唯一、3位で石森大誠(火の国サラマンダーズ・投手)を獲得。最速155キロの速球派の左腕で、リリーフとして期待が高まる。ただ、リーグ随一の投手陣を誇るが、又吉や祖父江のFA移籍の可能性があるなか、投手1名はやはり少なすぎる。

 中日のドラフトを評価しなかった理由が、これだけ偏ったドラフトにも係わらず、育成選手を1名も指名しなかったことだ。将来性豊かな投手や、ポスト大島の候補で鈴木(巨人)や阿部(日本ハム)などの指名があっても良かったと思う。

 

 最後に、有力ながら指名されなかった選手をピックアップしてみた。高校生では本格派右腕の市川の指名漏れは意外だった。野手では、捕手も内・外野手もこなせる清水も指名がなかった。それぞれ進路は違うが、3~4年後の成長に期待したい。

 ・高校生…市川 祐(関東一高・投手)寺嶋大希(愛工大名電高・投手)

        山本大揮(九州国際大高・投手)清水武蔵(国士館高・内野手

 大学生では、特番でも取り上げられていた長谷川は、社会人で1位候補まで成長できる選手。安定感抜群の森田の指名漏れも意外だった。強肩の久保田も攻守で更に力をつけて、ここ最近社会人捕手の評価が厳しいなか2年後のドラフトに臨みたい。

 ・大学生…長谷川綾佑(青森大・投手)森田晃介(慶大・投手)

        久保田拓真(関大・捕手)峯村貴希(日大・内野手

 社会人では、通信制高校に通いながらプロを目指した渡辺が指名されなかったが、まだ17歳・これからの成長に期待したい。藤井の指名漏れも意外で、俊足巧打で堅守の即戦力だが、残念ながら今回の補強ポイントには合致しなかった。

 ・社会人…米倉貫太(ホンダ・投手)渡辺一成(BBCスカイホークス・投手)

        大内信之介(アセット証券・内野手)藤井健平(NTT西日本・外野手)

2021年ドラフト寸評~成功・失敗した球団(前編)

 1位指名を公言したチームが2球団しかなかった本命なきドラフト。最終的には単独指名が6名と、各チーム補強ポイントを見据えたドラフトになった。事前より投手が豊富で、有望な野手が少ないと言われたなか、1~2位指名24名中10名が野手指名になり、その傾向が顕われたドラフトになった。

 昨年に続きコロナ禍で、十分に選手の実力を測れず、昨年以上に不作と言われるなかで、蓋を開けてみれば本指名選手は77名で昨年より3名増え、育成選手は過去最高のの51名が指名された。高校生が30名(±0名)、大学生が31名(▲1名)、社会人・独立リーグが16名(+4名)と社会人野手の指名が今年は増えた。

 最多指名は日本ハムの9名、最小はソフトバンク、ロッテ、ヤクルトの5名で、ソフトバンクとロッテは3年連続で最小の指名になった。 

【12球団ドラフトの評価】

 ◎成功…西武

 〇合格…日本ハム阪神・ロッテ・ソフトバンクオリックス

 △普通…DeNA・巨人

 × 失敗…ヤクルト・広島・楽天・中日  

 個人予想では、1位指名は3名的中(公言は除く)、指名予想の100名は74名が指名を受けたので、まずまずかなと自分では思っています。 

 

◎西武(95点)

 久々の会心ドラフトになったと思う。ドラフトは1位選手が獲得できれば、成功と言えるが、1位で隅田知一郎(西日本工大・投手)と2位で佐藤隼輔(筑波大・投手)の実質1位クラスの投手を2名獲得できた。

 佐藤の評価が今一つだったのは意外だったが、佐藤はケガで今年は今ひとつ結果を残せなかったが、総合力では佐藤のほうが上だと思う。今シーズン左先発投手2勝のチームに隅田と佐藤の即戦力左腕が加わり、早くも来シーズンのローテーション争いが楽しみになってきた。

 3位の古賀悠人(中大・捕手)も、良くこの順位で残っていたと思う。FA間近の森の去就を見越して、捕手は左投手と同様に優先する補強ポイントの一つだっただけに、今年の大学生ナンバーワン捕手の呼び声高い古賀を獲得できたのも大きかった。

 ここまで十分に成功を確信していたが、4位で羽田慎之介(八王子高・投手)、5位で黒田将矢(八戸工大一高・投手)を指名したことで満点ドラフトになった。羽田は故障で今年の公式戦登板はなかったが、190センチの長身から最速149キロを投げ込む本格派左腕で、3~4年後は隅田、佐藤とともに先発ローテを担える逸材だ。

 黒田も中央球界では無名だが、上位指名の可能性もあった選手。早くより西武が指名を確約しており、シミュレーション通りに下位で獲得できた。黒田も188センチの長身右腕で伸びしろは十分。今年のドラフトで獲得した投手が、数年後の西武の台所事情を大きく変えているかもしれない。

 6位の中山誠吾(白鷗大・内野手は素直に良いチームに指名されたと思う。190センチの大型遊撃手で守備も巧く、チームには源田というこれ以上いない手本がいる。また打撃(左打)でも、森や栗山という手本がおり、レギュラーの世代交代のなかチャンスは十分にある。

 育成選手は4名指名し、育成1位の古市尊(四国IL徳島・捕手)は、超がつく強肩で、打撃に難はあるものの、守備だけで飯が食える選手。育成4位の川村啓真(国学院大・外野手)は長打力が魅力選手で、ともに早い段階で支配下登録の可能性がある。

 

日本ハム(80点)

 正直、1位で達孝太(天理高・投手)を単独で指名したとき、不安が頭を過った。達は確かに良い投手で、将来性は高校BIG3にも劣らないが、現状では0か100の可能性もある選手で、即戦力とも育成のどちらとも言えない指名で、1位入札指名に頭を傾げた。正直、まだ奇をてらうというか、話題づくりというか、そんな感想を覚えた。

 ただ、2位指名以降からその思いはなくなり、今年の日本ハムの確固たる戦略を感じることになった。2位ですかざす高校通算70本塁打有薗直輝(千葉学芸高・内野手を指名。有薗は打撃に注目が集まっているが、強肩の三塁手で守備からでもレギュラーを掴むこともできる。即戦力野手を一人挟んだあとに、4位で阪口楽(岐阜一高・内野手を指名し、左右のスラッガーを獲得。今から野村や清宮との競争が楽しみだ。

 高校生投手では5位で畔柳亨丞(中京大中京高・投手)、7位で松浦慶斗(大阪桐蔭高・投手)の左右のエース候補を獲得した。阪口と畔柳、松浦は最終学年で評価がやや落ちたが、今年の春先は1位にも挙げられた逸材で、畔柳と松浦は「もしかしたら指名がないかな…」と思っていたところで、順位も含め絶妙な指名だったと思う。

 即戦力選手も指名枠をフルに活用した指名になった。課題の二遊間には、攻撃型の水野達稀(JR四国・内野手を3位で、守備型の上川畑大悟(NTT東日本・内野手は9位でタイプの違う選手を補強できた。

 投手では、6位の長谷川威展(金沢学院大・投手)は左のサイドハンドで、早くもリリーバーとしての期待が高まり、左の好打者が多いパ・リーグでは貴重な戦力になる。8位の北山亘基(京産大・投手)も、よくここまで残っていたなというのが率直な感想で、キレのある直球で先発、リリーフとも可能性がある。

 育成でも育成1位の福島蓮(八戸西高・投手)と育成3位の柳川大晟(九州国際大付高)はともに190センチの長身右腕、育成4位の阿部和広(平塚学園高・外野手)は小柄ながら両打ちでパンチ力もあり、楽しみな選手が揃っている。

 目先の即戦力に拘らず、23年の新球場での優勝争いを目標に、将来性を前面に押し出した育成主体の日本ハムらしさを取り戻した良いドラフトになった。

 

阪神(75点)

 17年の清宮(日本ハム)から始まり、藤原(ロッテ)、奥川(ヤクルト)そして佐藤輝と、重複してでも1位で今年一番の選手を獲得する姿勢は今年も健在で、臆することなく隅田(西武1位)に入札した。残念ながら隅田は外したが、課題を埋める会心のドラフトになった。これまで、決してドラフトの上手な球団ではなかったが、直近5年を見ると、中長期的な視点を持つドラフトに変わりつつあることを実感できる。

 矢野監督が言うように、外れ1位で森木大智(高知高・投手)を獲得できたのは大きかった。体力面や技術面でまだ課題は多いが、ポテンシャルは本物。3~4年じっくり育成すれば球界を代表するエースになれる。少し気は早いが、同じ高知出身の藤川の背番号22を是非受け継いで欲しい。

 2~3位では課題の左腕投手を獲得できた。2位の鈴木勇斗(創価大・投手)は小柄ながら馬力のある投球が魅力で、先発候補だが状況によってはリリーフもできるマルチな投手。3位の桐敷拓馬(新潟医療福祉大・投手)は、最速150キロを誇る左腕で、こちらは先発候補で奪三振率が高い。

 阪神のもう一つの課題は外野手不足で、4位で前川右京(智弁学園高・外野手)を、6位で豊田寛(日立製作所・外野手)を獲得したのも見事だった。前川は今夏の甲子園で2本塁打を放った左の長距離砲で将来の中軸候補。右の外野手が多いなかで補強ポイントと合致する。右打ちのスラッガーの豊田は、小笠原(中日)とともに東海大相模で全国制覇したときの4番で、大振りせずに広角に打ち分けることのできる勝負強さも光る即戦力で、右の代打などで早くから出番が回ってきそうだ。

 5位の岡留英貴(亜大・投手)は変則右腕の直球派で、リリーバーとして直ぐに出番がありそうだ。7位の中川勇斗(京都国際高・捕手)は今夏の甲子園で評価を上げた選手で、守備の評価が高いが打撃もパワーがあり将来の正捕手候補。

 育成選手は1名のみで伊藤綾(中京大・投手)も左の速球派で、支配下も早いかもしれない。強いて言えば、昨年も高校生投手を獲得しておらず、森木以外に育成でも、もう1~2名は高校生投手を獲得して欲しかった。

 

〇ロッテ(70点)

 1位指名は高校生投手か即戦力左腕と思っていたので、1位で松川虎生(市和歌山高・捕手)の名前が呼ばれたときは驚いた。松川は捕手の評価も高いが、それ以上にミート力が高く広角に打てる長打力が評価されており、確かに2位以降では獲得は難しかった選手。

 捕手としては覚えることが多く時間がかかるが、森(西武)が捕手のレギュラーとなったのは4年で、得意の打撃を磨きながら、正真正銘の打てる捕手として成長を期待したい。村上(ヤクルト)のように、打撃を活かしコンバートの可能性も十分にある。

 2位ではポスト中村奨を見越して、同じ右打ちの二塁手池田来翔(国士館大・内野手を指名した。池田はパンチ力のある中距離打者で守備も巧く、中村奨のバックアップとして、右打者の少ないチーム状況から出番が早いかもしれない。

 ただ、松川も池田もチーム事情から順位を上げての指名で、ここまでは普通のドラフトだったが、一気に成功ドラフトになったのは、3位で社会人ナンバーワンの廣畑敦也(三菱自動車倉敷・投手)を獲得できたことだ。廣畑は今年のドラフト候補のなかで、即戦力中の即戦力とも言われ、1位指名が確実視されていた投手。まさかロッテも3位で獲得できるとは思っていなかっただろう。球威、スタミナ、制球力ともに一級品で、先発、リリーフともに重要なピースにはまる選手になる。

 廣畑以降、とにかく下位指名が光った。4位の秋山正雲(二松学舎大付高・投手)は、今夏の甲子園でも好投を見せた左腕で、強気に内角を攻める投球は将来性十分。5位の八木彬(三菱重工ウェスト・投手)は、最速152キロにフォークが武器の奪三振率の高い投手で、強固なリリーフ陣をさらに厚くすることができた。

 育成選手は4名指名したが、育成1位の田中楓基(旭川実高・投手)は速球と変化球の完成度が高く、育成4位の村山亮介(幕張総合高・捕手)も強打の捕手で、育成3位の永島田輝斗(立花学園高・投手)と合わせて会心の指名になった。

 マイナス点は、課題と言われた左腕を、今年豊富だった大学生投手をが獲得できず、年齢的に穴のある高校生内野手を獲得できなかったのが勿体なかった。

 

ソフトバンク(70点)

 今年は風間球打(明桜高・投手)の1位指名を公言して臨んだドラフト。間違いなく重複するだろうと思っていたが、蓋を開ければ単独指名になり、希望通りの投手を獲得できた。最速157キロの直球が注目されるが、変化球の精度も高く、ゲームメークにも長けたエース候補で、メジャー移籍が噂されるエース千賀の後継者になれる。

 2位で大学ナンバーワンスラッガー正木智也(慶大・外野手)を指名できたのも大きい。外れ1位もあると思っていた選手で、変化球への対応など課題はあるが、ストレートに力負けしない強打者で、柳田や松田などお手本になる選手は多く、リチャードと並んで将来の中軸を担える。

 3位の木村大成(北海高・投手)も大成功だった。消えると言われるキレのあるスライダーが武器の左腕で、正木ではないがよく3位まで残っていたと思う。風間とともに左右のエースを形成できる可能性が高い。

 下位の4位の野村勇(NTT西日本・内野手と5位の大竹風雅(東北福祉大・投手)の指名は驚いた。野村は昨年のドラフト解禁イヤーで候補に挙がっていたが、残念ながら指名漏れ。今年ようやくプロの道をこじ開けた。身体能力が高く、内外野守れる守備力と広角に打ち分ける即戦力。大竹はソフトバンク得意の隠し玉で、奪三振能力の高い本格派右腕。

 支配下の指名は、ほぼ例年通り5名で終えたが、育成選手を過去最高の14名(高校生9名、大学生5名)を獲得した。注目選手は、育成2位の川村友斗(仙台大・外野手)は、大学で三冠タイトルを獲得した強肩俊足の強打者。3位の井崎燦志郎(福岡高・投手)は県内屈指の進学校に通うクレバーな投手、7位の山崎琢磨(石見智翠館高・投手)は、今夏の県大会決勝でノーヒットノーラン、甲子園で好投を見せドラフト候補に駆け上がった。

 それぞれの課題は育成指名ですべてカバーでき、育成という制度をフルに活用し、原石を発掘していく姿勢は素晴らしい。施設面や経費面で簡単ではないが、近年ホークスが球界の中心であることは事実で、なぜ真似しようとしないか不思議でしょうがない。

 

オリックス(70点)

 ここ数年の育成路線から、今年は即戦力重視に切り替えてきた。これまでの育成が成功を見せ、優勝争いをできるチームに成長した。来年さらに優勝を狙うには、不足しているピースを埋めることを優先したドラフトで評価できる。ドラフトはなんでもかんでも高校生主体の育成が正しい訳ではなく、中長期的な視点でどういうチームを築きあげるかで、大切なのはバランス。オリックスはここ数年そのことを体現している。

 1位は大方の予想に反して、木蓮東北福祉大・投手)を指名した。椋木は150キロを超える本格派右腕で、リリーフへの適性が高く、課題であったリリーフ陣強化につながる。

 投手は今年、高校生指名はおらず6位で横山楓(セガサミー・投手)と7位で小木田敦也(TDK・投手)の社会人投手を獲得した。横山は好不調の波があるのが課題だが、ハマったときの投球は素晴らしい。小木田は昨年、上位候補に挙げられていた実力派で、順位は低いが最後の最後で即戦力投手を見逃さず獲得した。

 野手は2位で安打製造機と言われる野口智哉(関大・内野手を指名。広角に打ち分ける強打の遊撃手で、吉田正や福田など、左打ちのお手本が多いチームで、さらに打撃が開眼すれば中軸を担える。

 3位では、古賀(西武)をスルーして福永奨(国学院大・捕手)を獲得した。捕手は人数も少なく補強が必須で、誰を選ぶかに注目していたが、高い守備力が評価されている福永を選択した。福永はキャプテンシーも強く、扇の要として良い補強になった。

 4~5位は外野手を指名。4位の渡邊遼人(慶大・外野手)は攻守のスピードスターでリードオフマン候補。盗塁数の少ないチームだけに、代走も含めて出番が早そうだ。5位の池田陵真(大阪桐蔭高・外野手)も、」キャプテンシーの溢れ、広角かつ勝負強い打撃が持ち味の右打者で、将来の主軸が期待されている。この指名を見ると、元の内野手コンバートに備えた指名とも言える。

 育成は3名指名し、いずれも野手。育成2位の園部佳太(BC福島・内野手は、高校時代から注目されたスラッガーで、大学を中退し独立リーグに進み夢の扉を開いた。