ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆ヤクルト~若手とベテランが融合して優勝争い!さらなる強化策は即戦力か、育成か?

●予想外(失礼…)の健闘で最下位からの下克上!阪神とのデッドヒートの行方は

 今シーズン、ファンは別にして優勝争いを予想した専門家が何人いただろう。前半から阪神が独走するなか離されることなく、終盤の連勝で首位に躍り出た。若手とベテラン、新外国人選手が融合し、前年最下位からの優勝を目指す。

 昨年はチーム防御率も打率もリーグ最下位で、打てない守れないチームだったが、今年はともにリーグ2位まで成績が上昇した。特に、ここ数年投壊状況が続いていた投手陣の改善には驚きである。

 その投手陣だが、規定投球回数をクリアしている投手はいない。先発は小川泰弘(創価大~12年②)と田口麗斗(広島新庄高~13年巨③)、奥川恭伸(星稜高~19年①)、石川雅規青学大~01年自)、スアレスを軸にやり繰りしているなか、エースの小川と次期エース候補の奥川がともに8勝を上げているのが大きい。

 先発陣以上に頑張っているのがリリーフ陣だ。クローザーのマクガフが24セーブ、清水昇(国学院大~18年①)は60試合に登板し、リーグ最多の40ホールドを上げている。今野龍太(岩出山高~13年楽⑨)は、リリーフだけで7勝負けなしの22ホールド、抑えから中継ぎに回った石山泰稚ヤマハ~12年①)、左腕の坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年⑤)が勝ちパターンを担っている。昨年、清水のリリーフ転向がハマり、楽天を戦力外になって獲得した今野の活躍などを見ると、二軍監督からチームを見てきた高津監督の手腕には感心するしかない。

 打線は村上宗隆(九州学院高~17年①)が、巨人の岡本と本塁打王打点王を争い、毎年期待されていた塩見泰隆(JX-ENEOS~17年④)が、ようやく期待に応えリードオフマンに定着した。主力の山田哲人履正社高~10年①)と中村悠平福井商高~08年③)が復調し、ここに新外国人のオスナとサンタナが加わった。ベテランの青木宣親早大~03年④)が規定打席をクリアし、代打の切り札で川端慎吾(市和歌山商高~05年③)など、若手とベテラン、新外国人が噛み合った勝負強い打線が形成できている。 

【10/4現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 123試合 63勝44敗16分①

 防御率…3.44②(4.61⑥)打率….257②(.242⑥)

 本塁打…126(114③)盗塁67②(74③)

 得点…556①(468⑤)失点…451②(589⑥)

 

●若き主砲・村上が傑出しているが、全体的には物足りないドラフト

 昨年は早川(楽天)と鈴木(ロッテ)2回連続で1位抽選を外し、課題の投手力強化で木澤尚文(慶大~20年①)を獲得した。2位以降も大学生を中心に指名したが、一軍で戦力になったのは内野手の元山飛優(東北福祉大~20年④)だけでは、寂しいドラフトになっている。

 ここ5年のドラフトでは、16年は梅野雄吾(九産大九州高~16年③)、17年は村上と塩見、18年が清水と坂本、19年は奥川と大西広樹(大商大~19年④)と、村上の存在が傑出しているが、全体的にやや物足りない。投手では金久保優斗(東海大市原望洋高~17年⑤)、野手では古賀優大(明徳義塾高~16年⑤)が出てきているが、決して成功とは言えない。

 ただ、ファームでは、杉山晃希(創価大~19年③)がイースタン2位の7セーブ、野手では太田賢吾(川越工高~14年日⑧)は首位打者、3位に武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)、4位長岡秀樹(八千代松陰高~19年⑤)と25歳以下の選手が結果を残し、来シーズンの活躍が今から楽しみだ。

【ヤクルトの補強ポイント】 

 投 手…先発候補(将来性と即戦力)

 捕 手…年齢バランスで大学生

 内野手…高校生・大学生の右打ち

 外野手…高校生のリードオフマン候補

 

☆投手~先発候補(将来性と即戦力)

 先発陣は小川に奥川、田口、石川が中心で、高梨裕稔(山梨学院大~13年日④)に高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)がおり、前半は金久保が好投したが、不足感は否めない。石川は41歳、小川と高梨も30代になり、将来性を見据え先発投手の層を厚くしたい。特に25歳以下の先発タイプは、奥川のほかに金久保と木澤、寺島成輝(履正社高~16年①)くらいしかおらず、即戦力も含めて補強が必要だ。

 一方でリリーフ陣は当面心配はない。清水はクローザー候補の一番手で、実績のある梅野に今野、坂本が経験を積み、故障で戦列を離れたが、前半戦好投した近藤弘樹(岡山商大~17年楽①)が戻れば、盤石なリリーフ陣を形成できる。強いて言えば、リリーフ左腕が坂本しかおらず、今年豊富な大学生左腕から補強したい。

 1位入札候補では小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)風間球打(明桜高)達孝太(天理高)の将来性十分のエース候補に、即戦力では隅田知一郎(西日本工大廣畑敦也(三菱自動車倉敷)をリストアップしている。昨年の指名状況から即戦力左腕の隅田が欲しいところだが、個人的には一昨年、即戦力が欲しいなか奥川を指名した姿勢から、今年も小園や風間の高校生に行って欲しい。

 上位候補では、1位で高校生を獲得できたなら即戦力投手で層を厚くしたい。大学生では佐藤隼輔(筑波大)鈴木勇斗(創価大)黒原拓未(関学大の今年豊富な大学生左腕、三浦銀二(法大)木蓮東北福祉大が候補になる。さすがに佐藤は1位以外では厳しいが、鈴木と黒原はともに球威があり、三浦はタフな先発候補。速球派の最速149キロの椋木はリリーフへの適性が高い。

 社会人では山田龍聖(JR東日本森翔平(三菱重工エスト)の両左腕をリストアップしているが、山田と森もともにこの間評価が上がっている。山田はまだ21歳で伸びしろがあり、森は安定感抜群のローテーション候補。

 高校生では、松浦慶斗(大阪桐蔭高)木村大成(北海高)の両左腕、畔柳享丞(中京大中京高)の評価が高く、特に木村は消えると言われるスライダーが高評価で、世代ナンバーワン左腕にと言われており、1位指名で消える可能性もある。

 下位指名候補では、高校生投手が多く190センチの大型左腕の羽田慎之介(八王子高)、安定感のある花田侑樹(広島新庄高)寺嶋大希(愛工大名電高)、キレのある直球が武器の黒木優九州文化学園高)、速球派の竹山日向(享栄高)は151キロ右腕。即戦力では強気な長身右腕の飯田琉斗(横浜商大、投球術に長けた米倉貫太(ホンダ)、八木彬(三菱重工エスト)は奪三振率の高いリリーバー候補。

☆捕手~年齢バランスで大学生

 捕手は必要なく、中村がシーズン通して健在であれば問題ない。年齢も31歳でこれから円熟味を増していく。中村は来年で14年目になり、やはり高校生が主力になると戦力的には安定する。中村のあとにも控えているのも古賀や内山壮真(星稜高~20年③)の有望な高卒選手で、強いて言えば年齢バランスで大学生を抑えておきたい。

 捕手は古賀悠斗(中大)の評価が高いが、上位で消える選手で獲得の可能性は低く、岩本久重(早大)は守備型の選手で打撃も勝負強い。じっくり育てるのなら高木翔斗(県岐阜商高)で、古賀と内山の良きライバルになる。松川虎生(市和歌山高)は打者としての評価が急上昇中で、村上のようにコンバートしても面白い。

内野手~高校生・大学生の右打ち

 今シーズンは一塁にオスナ、二塁に山田、三塁に村上がおり、若き21歳のスラッガー村上は、これから10年はチームの柱だけではなく、プロ野球を代表する打者になる。唯一、遊撃にレギュラーがおらず西浦直亨(法大~13年②)とルーキーの元山が務めている。打力なら西浦、守備力なら元山で、年齢的に元山がレギュラー候補に近いと言える。

 補強ポイントは山田が30歳になり、ポスト山田の育成が必要になり、右打者が少ないので高校生・大学生ともに獲得が必要だ。また、控え選手が弱く、二遊間を守れる内野のユーティリティプレーヤーが欲しい。

 ポスト山田と右打者の補強では、三塁手有薗直輝(千葉学芸高)は、高校通算70本塁打を記録している右の大砲候補。川口真宙(高梁日新高)は強肩強打の遊撃手、即戦力では池田来翔(国士館大)は、力強い打撃でパンチ力もあり、現在は二塁だが昨年までは三塁を守っており内野の層を厚くする。

 このほか、水野達稀(JR四国)をリストアップしており、水野は小兵ながら走攻守揃った巧打者で意外に長打力もある。二遊間を守れることも魅力で、チームの補強ポイントに合う選手だと思う。

 ☆外野手~高校生のリードオフマン候補

 外野は左翼に青木、中堅に塩見がレギュラーだが、さすがに青木も元気とは言え来年40歳、塩見も遅咲きの選手で29歳になり、世代交代の準備が必要だ。外野は内野とは逆に左打ちが少なく、長距離タイプが多い。今年は、ポスト青木ではないが、リードオフマン候補を抑えておきたい。

 ただ、今年はリードオフマンタイプが少ない。リストアップしている阪口楽(岐阜一高)田村俊介(愛工大名電高)はいずれも左のスラッガー吉野創士(昌平高)も将来的はクリーンアップ候補だ。大学生でも正木智也(慶大)ブライト健太(上武大)は長距離打者で、走攻守揃った梶原昂希(神奈川大)も柳田タイプで中軸候補になる。

 そこで俊足巧打の丸山和郁(明大)藤井健平(NTT西日本)を狙ってみても良いと思う。一方で、左打ちの阪口や田村、梶原はチームの補強ポイントに合うし、ブライトは足が速く、攻撃的な1番打者になれる。

 

●今年は即戦力投手で選手層を厚くするか、奥川に続く次世代エース獲得かに注目

 安定した戦力確保のためには、投手が1位指名になるだろう。短期的に見れば廣畑敦也(三菱自動車倉敷)隅田知一郎(西日本工大が最適で、廣畑は最初の1位指名なら単独で獲得できる可能性もある。一方で奥川の続くエース候補で、高校生もあり小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)が候補になる。個人的には高校生指名にいってもらいたい。

【指名シミュレーション】 

1位~廣畑 敦也(三菱自動車倉敷・投手)

 …150キロの直球を武器に、ゲームメークに長けた即戦力でローテ候補

2位~椋木  蓮(東北福祉大・投手)

 …最速149キロの速球とキレのある変化球に制球力も高いクローザー候補

3位~森  翔平三菱重工エス・投手)

 …カウントも稼げ、勝負球にもなる精度の高い変化球で完成度の高い左腕

4位~水野 達稀(JR四国・内野手

 …身長170センチの小兵ながら、走攻守三拍子揃った巧打者でパンチ力もある

5位~寺嶋 大希愛工大名電高・投手)

 …レベルの高い投手陣のなかエースナンバーを獲得。安定感のある投球が光る

6位~岩本 久重(早大・捕手)

 …強肩から安定感のある二塁送球で2年秋から正捕手。打撃もチャンスに強い

7位~川口 真宙(高梁日新高・内野手

 …強肩強打の遊撃手で、ミート力も高い中距離打者。伸びしろのある隠し玉

21年ドラフト予想☆ロッテ~若手が主力に成長し、黄金時代到来を予感させる

●高い得点能力とリーグ屈指のリリーフ陣で、逆転のロッテは今年も健在

 51年振りのマジック点灯を目前に足踏みをして2位に転落したが、47年振りの勝率1位のリーグ優勝を目指している。昨年は9月に主力選手のコロナ感染で失速しただけに、今年こそは悲願の優勝を果たしたい。

 今年のオリンピックでは、12球団で唯一チームから選出がなく、投打に飛び抜けた選手はいない。前半は打線が奮起、後半は投手陣が復調を見せ、チーム一丸で向かってくる戦いかたが、昨年に続き優勝を狙える位置につけている。チーム防御率も打率も決して良くはないが、リーグ1位の得点数をたたき出している。

 まず投手陣から見ると、リーグで唯一規定投球回数をクリアした選手がいない。小島和哉(早大~18年③)と二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)、岩下大輝(星稜高~14年③)、美馬学東京ガス~10年楽②)がローテーションの中心だが、エース候補は多いものの、エースと呼ばれる選手が不在だ。

 一方でリリーフ陣は盤石で、クローザーの益田直也関西国際大~11年④)が最多登板と最多セーブで大車輪の働きを見せている。佐々木千隼(桜美林大~16年①)がセットアッパーにハマり、トレードで獲得した国吉佑樹秀岳館高~09年横育①)から繋ぐ形が出来ている。ここに唐川侑己(成田高~07年①)が復帰し、ハーマンに小野郁(西日本短大高~14年楽②)、田中靖洋(加賀高~05年西④)が控えるリリーフ陣はリーグ屈指の陣容だ。

 野手陣は不動のリードオフマン荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が最多安打、レアードがリーグ打点2位、マーティンと並んで本塁打は3位で、2人でチームの約半分の本塁打を占めている。両外国人が長打を放ち、荻野がケガなくここまで来ているのが大きい。

 このほかチームリーダーの中村奨吾(早大~14年①)と藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)、安田尚典(履正社高~17年①)が規定打席をクリアしている。また、代走専門だが和田康士朗(BC富山~17年育①)は盗塁王争いをしている。

 昨年もそうだったが、今年も期中のトレードが秀逸だ。前半の投壊状況を見て、打力に課題はあるが強肩捕手の加藤匠馬(青学大~14年中⑤)を獲得し、リリーフ陣の強化で国吉、先発左腕の補強で元中日のロメロ、右の代打要員で小窪哲也青学大~07年広③)を獲得しており、地味だが的確な補強になって結果に繋がっている。

【10/1現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 122試合 58勝47敗17分②

 防御率…3.73⑤(3.81②)打率….244④(.235⑥)

 本塁打…109③(90④)盗塁101①(87③)

 得点…524①(461⑤)失点…487⑤(479②)

 

●25歳以下の若手に主力がズラリ!目指すは常勝チームで今年は左腕がポイント

 昨年は相思相愛だった早川を入札するも抽選で外し、先発左腕不足の状況から鈴木昭汰(法大~20年①)を獲得した。鈴木は現在リリーフに回っているが、12試合に先発している。入れ替わるように、開幕は中継ぎだった河村説人(星槎道都大~20年④)が先発に回り3勝を上げている。野手では、小川龍成(国学院大~20年③)が出番は少ないが一軍に帯同しており、即戦力を期待されたルーキーがまずまず結果を出している。

 ここ5年のドラフトでは、16年は佐々木千と種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)、17年は安田と藤岡、菅野剛士(日立製作所~17年④)が戦力になっている。18年は当たり年で、投手では小島と東妻勇輔(日体大~18年②)、中村稔弥(亜大~17年⑤)に土居豪人(松山聖陵高~18年⑦)、野手では藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)と山口航輝(明桜高~18年④)を獲得している。19年は佐々木朗希(大船渡高~19年①)と佐藤都志也(東洋大~19年②)、高部瑛斗(国士館大~19年③)に、横山陸人(専大松戸高~19年④)も今年一軍デビューを果たしている。

 今季ファームでは、2位に10ゲーム差で優勝し、25歳以下の選手を羅列しても、投手では小島、岩下、東妻、小野、中村稔、種市、土居、佐々木朗、横山にルーキーの鈴木と河村が加わる。野手は佐藤、小川、安田、高部、和田、藤原、山口がおり、井口監督が目指す常勝チームの礎が出来つつある。

【ロッテの補強ポイント】 

 投 手…先発とリリーフ左腕

 捕 手…正捕手候補 年齢的に高校生がベスト

 内野手…次世代のレギュラー候補(二遊間)

 外野手…将来の主軸候補

 

☆投手~先発とリリーフ左腕

 現在の先発ローテーションは、石川歩(東京ガス~13年①)に美馬、小島、岩下、二木、ロメロ、河村、佐々木朗が間隔を空けて回している。エースが不在だが、量的には問題なく、石川の後継でシーズンを任せられるエースの誕生が待ち遠しい。

 とにかく先発陣は若い。二木が26歳、岩下と小島が25歳、河村が24歳、23歳の鈴木に20歳の佐々木朗に、翌年は故障明けの23歳の種市が加わる。さらに石川と美馬、こちらもリハビリ明けの西野勇士(新湊高~08年育⑤)が控え、末恐ろしい先発陣になる。やはり期待は佐々木朗で、名実ともに大エースに成長して欲しい。

 リリーフ陣は益田と唐川、国吉が円熟期を迎え、27歳の佐々木千に、25歳の小野と東妻がポスト益田の座を争うことで、着実に投手王国への準備が整っている。

 ただ、今あげた選手のなかで左腕は小島と鈴木しかいない。鈴木はリリーフでの適性もあるが、個人的には先発が向いていると思う。どちらにしろ、左腕は不足しており、今年は大学生左腕が豊富のなか、先発・リリーフともに獲得したい。

 補強ポイントの左腕では佐藤隼輔(筑波大)と地元出身の山下輝(法大)の評価が高く、高校生では松浦慶斗(大阪桐蔭高)も1位入札候補の一人だ。佐藤は重複が予想されるが、山下や松浦は単独で獲得できる可能性が高い。また重複覚悟で、将来のエース候補として小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)の入札も十分ある。

 このほか上位候補では、即戦力左腕では隅田知一郎(西日本工大鈴木勇斗(創価大)がおり、鈴木はリリーフへの適性もある。高校生左腕では完成度の高い木村大成(北海高)と、素質は1位クラスの羽田慎之介(八王子高)をリストアップしている。

 右腕では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)三浦銀二(法大)は先発の層を厚くし、畔柳享丞(中京大中京高)と合わせて、いずれも2位以内で消える選手だ。

 下位指名候補では、この間評価が上がっている市川祐(関東一高は打者としての評価も高く、地元の深沢鳳介(専大松戸高)は今夏の甲子園センバツ準優勝の明豊高を完封し実力を証明した。九州ナンバーワンの呼び声高い黒木優九州文化学園高)にも注目している。

 即戦力では徳山壮磨(早大はゲームメークに長け、岡留英貴(亜大)は変則フォームからキレのある速球がを投げ込むリリーフ候補。長身の飯田琉斗(横浜商大山崎凪(中央学院大古田島成龍中央学院大はともに直球に力のあるパワーピッチャーで、山崎はメンタルが強くリリーフ向き。西垣雅矢(早大はスリークオーター右腕で伸びしろのある大学生、社会人では好不調の波はあるが、好調時には手のつけられない横山楓(セガサミーをリストアップしている。

☆捕手~正捕手候補 年齢的に高校生がベスト

 正捕手は不在で、攻守に精彩を欠いている田村龍弘光星学院高~12年③)の復調が一番だ。加藤と柿沼友哉(日大~15年育②)は余りにも打撃に課題がありすぎで、打撃の良い佐藤は逆に野手で育てたほうが良いと思う。年齢バランスも悪く、12年の田村指名以来、高校生捕手の支配下指名はなく、19歳~22歳で一人も選手がいないのはロッテだけだ。

 一番の候補は古賀悠斗(中大)で、二塁送球1秒8の強肩で、パンチ力のある打撃も魅力だ。高校生では、地元の村山亮介(幕張総合高)も古賀にも負けない強肩で、高校通算38本塁打を放っている。味谷大誠(花咲徳栄高)も二塁最速1秒8を切る強肩、東出直也(小松大谷高)は終始プロ志望一本で絞っている気持ちの強さがプロ向きと言える。

内野手~次世代のレギュラー候補(二遊間)

 今シーズンは一塁にレアード、二塁に中村奨、遊撃はエチェバリアが入ると、藤岡が三塁に回り、後半戦は安田の出番が減少している。課題はやはり遊撃で、なかなかレギュラーが決まらない。平沢大河(仙台育英高~15年①)の伸び悩みから始まり、藤岡、小川と獲得しているが、今ひとつ決め手に欠ける。

 中村奨と藤岡が20代後半で、まだまだ焦る時期ではないが、次世代に向けたの育成は必須で、19歳~21歳が不在ということもあり、高校内野手を獲得したい。またシーズン途中に小窪を獲得したように右打者が不足しており、ここも補強しておきたいところだ。

 二遊間の補強では、今年は有望な選手が少ない。そのなかでも粟飯原龍之介(東京学館高)は俊足巧打の大型遊撃手で、長打力もあり高校通算33本塁打を放っている。大学生では、池田来翔(国士館大)は右打ちの二塁手で、力強い打撃でパンチ力もあり、ポスト中村奨にはピッタリの選手。遊撃手では、峯村貴希(日大)への評価が高く、守備は問題ないだけに打撃で確実性を増せばレギュラー候補になれる。

 このほか、阪口楽(岐阜一高)も上位指名候補で、広角に長打を打て将来主軸を任せられる。また、有薗直輝(千葉学芸高)は右打ちの三塁手で、高校通算70本塁打を記録している右の大砲候補。右の長距離打者では、捕手の松川虎生(市和歌山高)は打撃面の評価が高くなっており、内野へのコンバートも面白い。福永裕基(日本新薬は、社会人屈指の右の長距離砲だ。粟飯原と有薗、池田、峯村は地元千葉出身で、1人は確実に獲得したいところだ。

 ☆外野手~将来の主軸候補 

 外野は左翼に荻野、右翼にマーティンがおり、中堅には藤原が定着してきた。荻野が36歳、角中勝也(四国IL高知~06年⑦)も34歳で世代交代が心配だが、藤原に山口、高部、和田が控えており、上手く進んでいる印象を受ける。ここは将来の主軸になる選手を獲得したい。

 将来の4番候補で、正木智也(慶大)は守備走塁に目を見張るものはないが、チャンスに強く、ハイレベルな環境で成長してきた長打力は特筆できる。高校生では、吉野創士(昌平高)池田陵真(大阪桐蔭高)の評価が高く、吉野は細身だが高校通算56本塁打、バットにボールを乗せるのが上手い長距離打者で、守備走塁もレベルが高い。池田も小柄だがチャンスに強くパンチ力のある中距離打者で、名門を引っ張ったキャプテンシーも魅力だ。走攻守三拍子揃った向山基生(NTT東日本)も、チームにフィットすると思う。

 

●今年は先発、リリーフともに不足している左腕の補強か、地元出身の逸材が揃う

 野手の1位指名候補が乏しいだけに、今年も1位は投手になるだろう。昨年の早川に続き、即戦力先発左腕なら、佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大に迷うところで、秋のリーグ戦次第では山下輝(法大)の1位指名もある。さらなる投手王国を目指して、小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)指名も状況次第では考えられ、小園はチームにフィットする気がする。

【指名シミュレーション】 

1位~山下  輝(法大・投手)

 …最速150キロの成長著しい大型左腕で、先発・リリーフともに適性が高い

2位~松浦 慶斗(大阪桐蔭高・投手)

 …世代ナンバーワンの評価が高い左腕で、中学時代から大舞台を経験している

3位~池田 陵真大阪桐蔭・外野手)

 …名門でキャプテンを務める人間力も評価が高く、チャンスに強くパンチ力がある

4位~池田 来翔(国士館大・内野手

 …守備も巧い二塁手で、チームの主砲を務める。重宝される右打ちの強打の内野手

5位~村山 亮介(幕張総合高・捕手)

 …大きい体格から高校通算38本塁打の大型捕手で、打てる捕手として期待

6位~深沢 鳳介(専大松戸高・投手)

 …制球力が抜群のサイドハンドで、今夏の甲子園では完封勝ちも収めている

7位~岡留 英貴(亜大・投手

 …速球派のスリークオーターで、強気に打者を打ち取る。リリーフとして面白い

21年ドラフト予想☆阪神~投打に欠点は少ないが、若手の底上げと野手の年齢バランスの悪さが課題…

●投打に大きな欠点なく、逆転優勝を狙う!ルーキー佐藤輝の復調に期待

 開幕から首位を走っていたが、ヤクルトの猛追により現在2位。投手力が良く、打撃も悪くないイメージがあるが、チーム防御率も打率も3、4位と中位で、得失点差も僅かに“6”と、よくこの順位で健闘していると思う。

 盗塁数は断トツの1位と、広い甲子園で本塁打が出にくいことから、機動力を活かす野球は理に適っている。ただ、この間の課題だった失策数は、今年もリーグワーストで80を数え、ここが解消できれば本当にやりたい野球が出来ると思う。

 まずは打線から見ると、今年の前半戦を支えたのは、やはりルーキーの佐藤輝明(近大~20年①)だろう。現在、55打席連続安打なしの記録を更新中だが、本塁打数23本は見事と言うしかない。当然、相手チームのマークが厳しくなるなか、臆することなく乗り越えていって欲しい。また、サンズとマルテの活躍も嬉しい誤算だった。打率こそ低いもののチャンスに強いサンズ、長打力のあるマルテがシーズン通して調子をキープできている。

 近本光司(大阪ガス~18年①)が打率3位、その近本を抑えて現在盗塁王のルーキー中野拓夢(三菱自動車岡崎~20年⑥)が遊撃のレギュラーを獲得し、2人で47盗塁を稼いでいる。このほか糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)と大山悠輔(白鷗大~16年①)、梅野隆太郎(福岡大~13年④)の8選手が規定打席をクリアし、レギュラーが確立しているのも現在の順位を維持できている要因だろう。

 投手陣では、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)と西勇輝菰野高~08年オ③)が規定投球回数をクリアし、青柳は防御率2位で10勝とまさにエース級の活躍を見せている。このほか秋山拓巳(西条高~09年④)も10勝を上げ、ルーキーの伊藤将司(JR東日本~20年②)とガンケルがローテーションを守っている。

 リリーフ陣は、スアレスが現在最多セーブ、岩崎優(国士館大~13年⑥)と岩貞祐太(横浜商大~13年①)の勝ちパターンに、馬場皐輔(仙台大~17年①)と2年目の及川雅貴(横浜高~19年③)が加わり、リーグ屈指のリリーフ陣が形成できている。

【9/30現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 123試合 65勝51敗7分②

 防御率…3.58③(3.35②)打率….248④(.246⑤)

 本塁打…109④(110④)盗塁104①(80①)

 得点…479④(494④)失点…473③(460②)

 

●毎年、主力をドラフトで獲得しているが、ほぼ大学生と社会人で育成に課題…

 昨年は佐藤輝を4球団競合のなか獲得したのち、19年とは一転して即戦力ドラフトになった。2位で7勝の伊藤、6位で中野を獲得し、5位の村上頌樹(東洋大~20年⑤)は、ファームで防御率最多勝、勝率の投手3冠を獲得しており、大成功のドラフトになるかもしれない。

 ここ5年のドラフトでは、16年は大山と糸原、17年は馬場と高橋遥人(亜大~17年①)、内野のユーティリティ熊谷敬宥(立大~17年③)を獲得している。18年は新人王の近本と木浪聖也(ホンダ~18年③)、19年では及川が主力になっており、この間安定してAクラスを維持できているのも、ドラフトが上手くいっている証だと言える。

 ただ、高校生が育っていないのが心配だ。投手は及川と西純矢(創志学園高~19年①)、野手ではひいき目で小幡竜平(延岡学園高~18年②)しか思い当たらない。現在の主力選手を見ても、生え抜きでは秋山しかいない。即戦力がそのまま戦力になっていることは悪くないが、やはり高校生が育成で伸びてこないことには、本当のチーム力の底上げにはならず、この辺のジレンマを解消したいところだ。

阪神の補強ポイント】 

 投 手…左腕のl候補(高校生と大学生)

 捕 手…将来の正捕手候補

 内野手…将来の主軸候補 右打ちならベスト

 外野手…全年代OK 左打ちならベスト

 

☆投手~左腕のl候補(高校生と大学生)

 先発ローテーションは、実績十分の西勇と青柳、秋山に、ルーキーの伊藤とガンケルに、故障から復活した高橋が加わっている。ここに復活を待ち望む藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①)が控えているが、若手の先発候補が不足している。25歳以下で見ると西純と村上しかおらず、左投手の先発候補は見当たらない。

 今年は投高打低と言われ、有望な高校生投手や豊富な大学生の先発左腕を確実に獲得したいところだ。

 リリーフ陣は岩崎と岩貞はともに30歳を迎え世代交代の準備を進めたい。20歳の及川はこれからの投手で、先発、リリーフの適性をこれから判断することになるが、馬場やファームで好投している浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)も、どちらかというとセットアッパータイプで、即戦力を含めリリーフ陣も厚くしたい。

 1位入札候補では、高校生投手なら小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)、大学生左腕では佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大が候補になる。即戦力の左腕が欲しいところだが、投手陣をもう一段スケールアップするなら、個人的には小園や森木に行って欲しい。

 このほかの上位候補で、高校生では畔柳享丞(中京大中京高)達孝太(天理高)、左腕の松浦慶斗(大阪桐蔭高)木村大成(北海高)をリストアップしており、190センチの長身左腕の羽田慎之介(八王子高)も、故障で今夏は公式戦で投げていないがポテンシャルでは引けをとらない。

 大学生では山下輝(法大)黒原拓未(関学大鈴木勇斗(創価大)桐敷拓馬(新潟医療福祉大)と先発左腕が多く、スケール感では山下が一歩リードしているが、いずれもゲームメークに長けた先発候補、右腕では北山亘基(京産大の評価も高く、北山も夏から秋にかけ評価を上げており、状況によっては1位指名もある逸材

 社会人では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)山田龍聖(JR東日本をリストアップしている。評価上昇中の山田は21歳と若く、チームにフィットしそうな気がする。

 下位指名では黒田将矢(八戸工大一高)秦勝利(神村学園高)の評価が高く、甲子園でも価値した花田侑樹(広島新庄高)に、黒木優九州文化学園大)や山本大揮(九州国際大高)の九州の逸材にも注目している。

 即戦力ではともに直球に力のある翁田大勢(関西国際大)飯田琉斗(横浜商大はリリーフ陣に厚みを持たせ、横山楓(セガサミー吉村貢司郎(東芝はともに経験豊富な先発候補で、吉村はリリーフもできる。

☆捕手~大学生または社会人

 最大の不安は正捕手・梅野のFA取得で、強肩で堅守、チャンスに強い打撃の梅野が残るか移籍するかで状況は大きく変わる。今シーズン、梅野のほかにマスクを被ったのは坂本誠志郎(明大~15年②)と原口文仁(帝京高~09年⑥)しかおらず、梅野の去就がチームを大きく左右する。ファームでも正捕手が不在の状況で、高校生・大学生のどちらかは獲得したい。

 大学生では、古賀悠斗(中大)福永奨(国学院大)は、ともに二塁送球1秒8の強肩で、古賀は上位で消えると思うが、評価が上がっている福永は上手くいけば下位でも獲得できる可能性がある。

 高校生では打撃の良い松川虎生(市和歌山高)高木翔斗(県岐阜商高)村山亮介(幕張総合高)への評価が高く、今夏の甲子園で評価を上げた中川勇斗(京都国際高)東出直也(小松大谷高)など下位指名でも捕手は抑えておきたい。

内野手~将来の主軸候補 右打ちならベスト

 今シーズンは、一塁マルテ、二塁に糸原、三塁に大山、遊撃はルーキー中野で、全員が規定打席をクリアしている。29歳の糸原に、大山が27歳、中野は25歳でまさに全盛期の選手で当面は心配ない。また、外国人選手との兼ね合いもあるが、佐藤輝の本職は三塁で、そうなると大山を一塁に回すことができ、2~3年は心配ない。

 さらに守備の巧い山本泰博(慶大~15年巨⑤)や俊足の熊谷など、控えも充実しており、内野が万全なうちに素質ある高校生を獲得したい。また、19歳~25歳までに右打者がおらず、ここは年代に関係なく埋めておきたいところだ。

 内野は高校生中心にリストアップしており、粟飯原龍之介(東京学館高)は俊足巧打の遊撃手で守備も巧く、今年はパワーも増して本塁打を増やした。阪口楽(岐阜一高)田村俊介(愛工大名電高)は、ともに二刀流のスラッガーで外野も守れる。池田来翔(国士館大)は右打ちの中距離打者で補強ポイントに合致する。

☆外野手~全年代OK 

 外野は左翼にサンズ、中堅に近本、右翼に佐藤輝がレギュラーを務めている。先述したが佐藤輝は若いうちは内野で育てたほうがよく、ファームでは井上広大(履正社高~19年②)や小野寺暖(大商大~19年育②)が育ってきている。ただ、25歳以下の外野手が井上と小野寺しかおらず、これは余りにも人数が少なすぎる。リードオフマン、主軸候補関係なく補強が必要で、内野より補強の優先順位は高い。

 主軸候補では、内野でも紹介した阪口や田村に加え、今夏の甲子園で2本塁打前川右京(智弁学園高)を上位候補に上げている。前川は守備走塁に目を瞑ってでも、長打が魅力の強打者で、将来のクリーンアップ候補。地元の米山航平(市尼崎高)も長打力が売りで足も早い。

 池田陵真(大阪桐蔭高)福元悠真(大商大)は、パンチ力のある中距離打者タイプで、池田は勝負強い打撃が魅力で、福元は選球眼の良さも評価されている。リードオフマンタイプでは、丸山和郁(明大)は俊足を活かした小技が武器で、50メートル5秒8の俊足に加え強肩で守備範囲も広く、今の機動力野球にハマる選手だ。

 

●欲しいのは即戦力左腕だが、豊富な高校生投手から将来のエース候補を獲得したい

 現段階で野手は充実しており、1位は投手になるだろう。短期的に見れば即戦力左腕が欲しいところで、3佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大の選択になるだろう。奇策ではないが、山田龍聖(JR東日本)のサプライズ指名も面白い。ただ、個人的には将来のエース候補の高校生を獲って欲しい。重複覚悟で小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)指名は、阪神が長期的にチーム作りを考えている姿勢の顕われになり、例え外してもファンは納得してくれると思う。

【指名シミュレーション】 

1位~隅田知一郎(西日本工大・投手)

 …最速150キロの手元で伸びる真っすぐと多彩な変化球が武器で総合力が高い

2位~前川 右京(智弁学園高・外野手)

 …今夏の甲子園で2発の本塁打を放った。バットにボールを乗せる力は天性

3位~黒原 拓未関学大・投手)

 …小柄だが、緩急を活かした投球で打者を打ち取るピッチングスタイルが身上

4位~花田 侑樹広島新庄高・投手)

 …制球力に優れ、ゲームメークに長けた右腕。打者としても評価が高い二刀流

5位~福永  奨国学院大・捕手)

 …二塁送球タイム1秒8の強肩で、ディフェンス能力が高い。打撃も成長中

6位~吉村貢司郎(東芝・投手)

 …伸びのある直球が武器の本格派右腕。先発だが、大学時代はリリーフも経験

7位~秦  勝利(神村学園高・投手

 …常時140キロ代のストレートを、真向から投げ込むパワーピッチャー左腕

21年ドラフト予想☆オリックス~投打の柱の存在で優勝も射程圏内。ドラフトの課題は将来性?弱点の補強?

●投の柱、山本と宮城、打の柱、吉田正と杉本の活躍で優勝も見えてきた

 2年連続最下位のチームが、今年は交流戦で優勝すると、その勢いを維持し首位争いを繰り広げている。その要因は何といっても、日本を代表する投打の柱で、エースの山本由伸(都城高~16年④)と打線の中心・吉田正尚青学大~15年①)だ。

 山本は、防御率は唯一の1点台(規定投球回数以上)で現在15勝、勝率こそ2位だが、奪三振と合わせ現在投手3冠。4完投も12球団トップで、今シーズンは沢村賞を獲得できる結果を残している。

 吉田正は2年連続の首位打者を射程圏内にし、OPSや得点圏打率もトップ、出塁率は2位、長打率は3位で、チャンスメークにポイントゲッターどちらもこなしており、まさに打線の中心的存在を担っている。

 今年はさらに投打に柱が加わり、上位躍進の要因になっている。投手では20歳の2年目、宮城大弥(興南高~19年①)が、防御率と勝利数が2位、勝率は山本を抑えて1位と、左右のWエースが確立している。

 野手では杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)が大ブレイク。昨年の序盤はファーム暮らしだったが、監督が西村徳文から中嶋聡に代わると一軍に定着。プロ通算5年で、打率,224、9本塁打(昨年は2本塁打)だった選手が、打率3割、28本塁打で現在本塁打王であり、中嶋監督の慧眼には改めて感服するしかない。

 このほか投手では田嶋大樹(JR東日本~17年①)が規定投球回数をクリアし、シーズン直前にMLBから復帰した平野佳寿京産大~05年希)が、21セーブの好成績を上げている。平野に繋ぐリリーフ陣では、ヒギンスに富山凌雅(トヨタ自動車~18年④)、比嘉幹貴日立製作所~09年②)が勝ちパターンを担っている。

 野手では宗佑磨(横浜隼人高~14年②)と紅林弘太郎(駿河総合高~19年②)が規定打席をクリアしている。特に紅林は打率最下位ながら、将来のレギュラー育成のために我慢強く起用しているスタンスは評価でき、吉田正不在時には3番に座るなど、結果も着実に付いてきている。

 ただ、得点能力には課題が残る。昨年よりは大きく改善はしているが、チーム打率も本塁打もリーグ1位ながら、得点数は3位とやや物足りない…。意外だったのは盗塁数で、西村監督時には機動力重視の野球で“走れ走れ”だったが、監督が代わると盗塁数が激減してしまった。また、犠打や四球数もリーグ最少、反面、併殺打はリーグ断トツで1位と、以前から言われていた大味な野球が得点数に繋がっていると思う。

【9/27現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 122試合 57勝49敗16分②

 防御率…3.51④(3.97③)打率….250①(.247④)

 本塁打…112①(90④)盗塁39⑥(95②)

 得点…467③(442⑥)失点…450④(502③)

 

●毎年、投打の主力を獲得!多い高校生指名も着実に戦力になっている

 昨年は阪神の佐藤を入札するも、3年連続でクジを外し、1位入札選手を獲得できなかった。佐藤を外すと、直ぐに育成型のドラフトへ切り替え、高校生4名、大学生1名、社会人1名と、決して良いドラフトとは言えなかったが、育成が主体で結果は数年後を見る必要がある。

 ここ5年のドラフトでは、16年には山本と山岡泰輔(東京ガス~16年①)のWエースを獲得、17年には田嶋とリードオフマンの福田周平(NTT東日本~17年③)、18年は富山に勝負強い中川圭太(東洋大~18年⑦)、19年は宮城と紅林など、毎年投打の主力を獲得できており、今年の躍進もこの間のドラフトの賜物だと思う。

 オリックスと言えば、社会人選手指名がお家芸だったが、ここ5年に限ると高校生を16名指名しており、日本ハムや中日、広島に次いでリーグで2番目に多い。先述したチームが今シーズン結果を残せていないなか、オリックスは山本に宮城、紅林の主力級を3名排出し、ルーキーの来田涼斗(明石商高~20年③)も一軍デビューを果たした。

 このほかにも投手では山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑤)や本田仁海(星槎国際湘南高~17年④)、野手でも大田諒(天理高~18年①)に宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)など期待の若手が揃っており、将来楽しみなチームになっている。

オリックスの補強ポイント】 

 投 手…即戦力のクローザー候補、大学生投手(年齢バランス)

 捕 手…大学生または社会人

 内野手…将来の中軸候補 左打ちならベスト

 外野手…大学生リードオフマン、将来の中軸候補 

 

☆投手~即戦力のクローザー候補、大学生投手(年齢バランス)

 現在のローテーションは、山本と宮城の両エースに、田嶋と山崎福也(明大~14年①)、ベテランの増井浩俊東芝~09年日⑤)で構成され、故障で今シーズンは絶望だが山岡が控える。

 山本と山岡、左腕で宮城と田嶋、山崎福の先発陣はリーグ随一で、山岡は26歳、田嶋は25歳、山本23歳、宮城は20歳と年齢も若く末恐ろしい布陣だ。ここに榊原翼(浦和学院高~16年育②)や山崎颯、本田が加われば、隙のない先発陣になる。

 一方でリリーフ陣には不安が多い。平野が合流するまではクローザーが不在で、勝ちパターンも定まってはいなかった。ようやく富山が7回、ヒギンスがセットアッパーを担い平野の繋ぐ形ができたが、勝利の方程式とは言い難い。

 また、先発陣とは相反してリリーフ陣は、比嘉が39歳、平野も37歳と軒並み高齢化が進んでいる。富山に続き、吉田凌(東海大相模高~15年⑤)や漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)が勝ちパターンに入ってこないと厳しい。

 まず即戦力のリリーバーであれば、高い奪三振能力の木蓮東北福祉大やストレートに力のある八木玲於(ホンダ鈴鹿、評価急上昇中の柴田大地(日本通運は弱点の補強になり、八木や柴田は中位で獲得したい。

 ただ、今年の上位候補は、高校生投手をリストアップしている。1位候補は小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)風間球打(明桜高)佐藤隼輔(筑波大)で、いずれも将来のエース候補、重複覚悟で指名する可能性が高い。

 一方で山岡や吉田正を単独指名で獲得したように、畔柳享丞(中京大中京高)達孝太(天理高)、総合力の高い隅田知一郎(西日本工大の1位入札指名も十分にあり得る。このほかには、松浦慶斗(大阪桐蔭高)木村大成(北海高)、即戦力で黒原拓未(関学大山田龍聖(JR東日本のサウスポー投手への評価が高い。

 中位以降では、ゲームメーク能力が高く打者としても評価の高い花田侑樹(広島新庄)、九州ナンバーワン投手の呼び声も高い黒木優九州文化学園大)、最速146キロで安定感の高い投球が特徴の山本大揮(九州国際大高)、1年から投手に転向した150キロ右腕の永島田輝斗(立花学園高)をリストアップしている。また、大学で急成長した長身右腕の松井友飛(金沢学院大は、伸びしろのある素材型で、今シーズン球速も150キロを超えた。

☆捕手~大学生または社会人

 今シーズンは伏見寅威(東海大~12年③)が最もマスクを被り、若月健矢(花咲徳栄高~13年③)と頓宮裕真(亜大~18年②)の併用になっている。若月も頓宮も若く、急いで補強の必要はないが、捕手の支配下選手が5名しかおらず、数的に補強に必要だ。昨年、高校生捕手を指名しており、年齢バランスで大学生または社会人を狙いたい。

 古賀悠斗(中大)福永奨(国学院大)は、ともに二塁送球1秒8の強肩で、獲得できれば打撃の良い頓宮を野手で起用できる。また、高校生で高木翔斗(県岐阜商高)も注目している。

内野手~将来の中軸候補 左打ちならベスト

 今シーズンは三塁に宗、遊撃で紅林がレギュラー起用されており、一塁はT-岡田(履正社高~05年①)とモヤの併用、二塁は安達了一(東芝~11年①)が最も出場機会が多いが、現状レギュラーは不在だ。

 ただ、一塁は外国人選手と併用でき、二塁も本来であれば福田がおり、大田や宜保の若手が確実に成長している。勝負強い中川圭に大下誠一郎(白鷗大~19年育⑥)も控え、即戦力よりはむしろ将来の中軸打者を獲得したい。

 スラッガータイプであれば、田村俊介(愛工大名電気高)有薗直輝(千葉学芸高)の評価が高く、田村は高校通算32本塁打、左打ちで補強ポイントに合う。三塁手の有薗は高校通算70本塁打で足もあり、清水武蔵(国士館高)も長打力のある遊撃手で、捕手や外野も守れる。

 俊足巧打タイプだが、左打ちなら粟飯原龍之介(東京学館高)は50メートル5秒8の俊足で、ダイナミックな守備が魅力の大型遊撃手。パンチ力もあり高校通算33本塁打を記録している。野口智哉(関大)は関西屈指の安打製造機で、守備範囲も広く守備も堅実だ。紅林の守備に不安があるだけに、粟飯原や野口の加入は若手の競争の起爆剤になる。

☆外野手~大学生リードオフマン、将来の中軸候補 

 外野は左翼に吉田正とT-岡田、中堅に福田、右翼に杉本と打線だけを考えれば外せないメンバーが揃っているが、ともに守備に不安がある。福田は元々内野手で二塁が本職、吉田正も出来ればケガ防止で指名打者と併用したい。

 要は外野は俊足巧打タイプが多く、外野守備も巧いが、いずれも打撃に課題があり、守備・走塁要員の枠から抜け出すことができない。25歳以下の中軸候補は来田と元謙大(中京高~20年②)しかおらず、将来の中軸候補と、打てるリードオフマンタイプを獲得したい。年齢バランスでも高校生よりは、大学生を狙いたい。

 正木智也(慶大)ブライト健太(上武大)はともに右打ちのスラッガーで、正木は世代ナンバーワンスラッガーの呼び声が高い。昨年、佐藤を入札指名していることから正木の1位指名の可能性もある。ブライトは4年春にブレイクし、天性ともいえる長打力と高い身体能力で足も速い。

 このほか、福元悠真(大商大)は選球眼が良くパンチ力のある中距離打者、川村友斗(仙台大)も打力が注目され評価急上昇中。藤井健平(NTT西日本)は走攻守三拍子揃った巧打者で、強肩で総合力の高い即戦力。高校生では同じく三拍子揃い、広角に長打を打てる吉野創士(昌平高)をリストアップしている。

 

●戦力が充実し、今年は将来のエース、4番候補?課題はクローザーと中軸候補

 3年連続で野手を1位指名し、獲得できたのは18年の大田だけで、意表を突いて正木智也(慶大)の1位指名も十分にあり得る。順当に考えれば、小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)風間球打(明桜高)の将来のエース候補の高校生や、即戦力左腕の佐藤隼輔(筑波大)隅田知一郎(西日本工大が候補になる。

【指名シミュレーション】 

1位~達  孝太(天理高・投手)

 …粗削りながら193センチの長身から投げ下ろすストレートは超高校級

2位~有薗 直輝(千葉学芸高・内野手

 …1年生から4番を打ち、高校通算70本塁打スラッガー。強肩の三塁手

3位~古賀 悠斗(中大・捕手)

 …二塁送球1秒8の強肩で、大学ナンバーワン捕手。打力も良い打てる捕手

4位~黒木  優九州文化学園高・投手)

 …九州ナンバーワンとも言われ、秘めたポテンシャルは高く大化けの可能性

5位~野口 智哉(関大・内野手

 …関西屈指の安打製造機で、ミート力に優れた左打者。守備範囲の広い遊撃手

6位~柴田 大地(日本通運・投手)

 …8月に最速156キロをマークし、一躍ドラフト候補になったリリーバー

7位~山本 大揮(九州国際大高・投手

 …最速146キロの直球に変化球の精度も高く、安定感のある投球が魅力

21年ドラフト予想☆巨人~若手の台頭が不足するなか、投打の世代交代に向け今年も将来性重視か

●投打に昨年より成績は後退…3連覇に向けチーム状態は上がってくるか

 2年連続で日本シリーズ4連敗の雪辱を果たすためのシーズンだったが、なかなか首位・阪神を掴まえることができない。何といってもチーム成績が、昨年と比較して軒並み後退している。チーム防御率は1位→4位、チーム打率は3位→5位と、本塁打以外はいずれも下回っている。打線は本塁打頼み、投手陣は現有戦力を何とかやり繰りしているのが実情だと思う。

 打撃陣で規定打席をクリアしているのは、坂本勇人光星学院高~06年①)と本塁打・打点トップの岡本和真(智弁学園高~14年①)2名しかおらず、さすがに2名はリーグ最少。今年は三塁と遊撃以外、なかなかレギュラーが固まらない。丸佳浩(千葉経大高~07年広③)と大城卓三(NTT西日本~17年③)、ウィーラーと松原聖弥(明星大~16年育⑤)が10本塁打を放っているが、丸の不振は想定外だったと思う。

 また、期待の新入団選手が機能せず、FA加入の梶谷隆幸(開星高~06年横③)は懸念されていた故障壁が的中し、今年もケガで離脱。新外国人選手もスモークはコロナ禍を理由に、テームズはケガで退団してしまっている。それが理由ではないが、中田翔大阪桐蔭高~07年日①)を電撃トレードで獲得し、打線のテコ入れを図ったが効果は出ていない。

 投手陣はエース菅野智之東海大~12年①)が、不調でローテーションを外れる機会が多く、14試合で5勝と勝ち星も伸びていない。3年目の戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)と高橋優貴(八戸学院大~18年①)が規定投球回数をクリアし、高橋は既に2桁勝利で先発投手陣を救う活躍を見せている。

 救援陣は言葉は悪いが綱渡り状態で、クローザーは序盤はデラロサ、その後ビエイラが務め16セーブを挙げたが、ケガで離脱している。中継ぎの柱である中川晧太(東海大~15年⑦)をはじめ、実に9投手がセーブポイントを上げており、鍵谷陽平(中大~12年日③)に高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、畠世周(近大~16年②)が勝ちゲームを担っているが、勝ちパターンは定まっていない。

【9/20現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 116試合 55勝45敗16分③

 防御率…3.64④(3.34①)打率….247⑤(.255③)

 本塁打…147①(135①)盗塁62③(80①)

 得点…467②(532①)失点…447③(421①)

 

●若手とベテランの年齢バランスは悪くないが、投打に物足りない若手の台頭

 昨年は阪神の佐藤を入札するも、クジ運の悪さは変わらず、遂に入札の抽選は10連敗になってしまった。7名指名したうち大学生4名、社会人1名、高校生2名と見た目は補強型のドラフトと言える。

 ただ、1位の平内龍太(亜大~20年①)は、故障明けで昨秋のリーグ戦で復帰し、山崎伊織(東海大~20年②)も肘の手術でリーグ戦での登板機会はなく、2人とも将来性を見越しての指名で、18年から3年続けて育成型のドラフトを展開している。

 ここ5年のドラフトは、16年は吉川尚輝(中京学院大~16年①)に畠、大江龍聖(二松学舎大高~16年⑥)、17年も大城と若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)が主力に成長している。育成型にシフトした18年も高橋と戸郷が揃って入団しており、ドラフトはまずまず成功と言える。

 ただ、鍬原拓也(中大~17年①)と堀田賢伸(青森山田高~19年①)は、故障で治療に入ると直ぐに育成契約になり、3名がトレード、2名が退団しており、順位や年数に関係なくドライなチーム運営を行っている。

 一方で、巨人で気になるのはFA選手の多さだろう。MLBから復帰した山口俊(柳ケ浦高~05年横①)を含め現在7名。FAは制度なので、活用することに何も異論はないが、12球団で最多の育成選手を抱えるチームにあって、この状況下で育成から這い上がるのは容易ではない。老婆心ながら、若手選手のモチベーションをどう保っているのか心配になってしまう。

 今年は佐藤(阪神)や早川(楽天)のような目玉はいないが、将来のエース候補となる高校生投手が豊富で、今年も重複覚悟でチームの顔となる選手を獲得したい。また、岡本以外に若手のレギュラーが不在で、投手同様に将来の主軸候補も抑えておきたい。

【巨人の補強ポイント】 

 投 手…将来のあるエース候補、即戦力の先発とリリーフ

 捕 手…大学生

 内野手…二遊間を守れる主軸候補(高校生と大学生)

 外野手…将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト 

 

☆投手~将来のあるエース候補、即戦力の先発とリリーフ

 現在のローテーションは、菅野と高橋、戸郷、メルセデスに途中加入した山口で構成され、前半は今村信貴(太成学院高~11年②)が好投した。チーム防御率に課題はあるが、菅野と山口ともにまだ32歳と、先発をやり繰りできない状況ではなく、現状で大きな問題はない。

 リリーフ陣では、鍵谷が30歳を超えたが、中川や高梨は20代後半で、ファームでは平内が抑えを務めている。畠と平内を今後もリリーフで起用するかしないかの判断はあるが、若い選手が多く強固なリリーフ陣になる可能性を秘めている。

 ただ、ファームは寂しい…。先発ローテの中心はFA加入の井納翔一(NTT東日本~12年D③)で、あとは横川凱(大阪桐蔭高~18年④)と戸田懐生(四国IL徳島~20年⑦)の登板回数が多くなっているが、若手で今ひとつ飛びぬけた選手が見当たらず、投手陣全体の底上げは必要だ。

 今年は、巨人十八番の右のエース候補が揃っている。現状、最もバランスの良い小園健太(市和歌山高)は早い段階での一軍デビューも夢ではない。森木大智(高知高)風間球打(明桜高)畔柳享丞(中京大中京高)は素材型で、じっくり育てて3~4年後エースとして活躍が期待できる逸材。大学生では左腕の山下輝(法大)も1位候補で、山下は先発もリリーフも適性があり、現有戦力のプラスになる。

 このほかの上位候補では、ポテンシャルは1位クラスの達孝太(天理高)松浦慶斗(大阪桐蔭高)。大学生ではタフネス右腕の三浦銀二、評価上昇中の隅田知一郎(西日本工大は先発左腕、鈴木勇斗(創価大)は、山下と同じくマルチに役割をこなせる。社会人ではともに先発タイプの廣畑敦也(三菱自動車倉敷)山田龍聖(JR東日本への評価が高い。また隠れた逸材で、最速149キロの大型右腕の篠原颯斗(池田高)の驚きの上位指名があるかもしれない。

 将来の主力候補では、地元の東京に逸材が揃っている。190センチの大型左腕の羽田慎之介(八王子高)、甲子園で活躍した秋山正雲(二松学舎大高)、ともに右の本格派の市川祐(関東一高床枝魁斗(修徳高)など多士済々だ。このほか、甲子園でもゲームメーク能力の高さを証明した花田侑樹(広島新庄高)、ともに長身右腕の高須大雅(静岡高)井崎燦志郎(福岡高)サイドスロー左腕の井上透摩(金沢龍谷高)をリストアップしている。

 大学生・社会人では、いずれも最速150キロを超える右の本格派で、翁田大勢(関西国際大)権田琉成(明星大)山崎凪(中央学院大古田島成龍中央学院大はともに先発候補、北山亘基(京産大古屋敷匠真(法大)は先発・リリーフともに適性があり、岡留英貴(亜大)は変則右腕でリリーフ向きだ。横山楓(セガサミー奪三振能力が高く、吉村貢司郎(東芝は変化球のレベルが高く、ともに上位指名の可能性もある。

☆捕手~大学生 ※支配下人数少ない

 捕手は大城がレギュラー務め、岸田行倫(大阪ガス~17年②)と小林誠司日本生命~13年①)が控えだが、現状人数は6名しかいない。小林もベテランの域に差し掛かっているなかで、よく炭谷(楽天)をシーズン途中に放出したものだと思う。

 大城の打撃は素晴らしく、打てる捕手として大成してくれるのが一番だが、現状を見ると野手に専念させても良いと思う。ただ、小林は打撃に課題があり、岸田も一軍での経験が不足しており、年齢バランスは詰まっているが即戦力で大学生を獲得したい。

 一番の候補は古賀悠斗(中大)で、二塁送球1秒8の強肩で打撃も良い。久保田拓真(関大)も打撃面で成長が著しい。岩本久重(早大福永奨(国学院大)は守備型の捕手だが、やはり今年は打てる捕手を獲得したい。

 将来を見据えて高校生指名も当然アリだ。ともに高校通算30本塁打以上のの松川虎生(市和歌山高)高木翔斗(県岐阜商高)は、強肩強打をリストアップしており、松川は出番が早いかもしれない。

内野手~二遊間を守れる主軸候補(高校生と大学生)

 坂本と岡本が不動のレギュラーだが、一塁は代わる代わるの起用で、長年課題だった二塁にはようやく吉川がハマりかけたが、課題の故障癖を改善できず未だに固定できていない。

 私は将来的には、一塁で岡本を起用し、坂本を三塁にコンバートしたほうが良いと思っている。坂本も33歳になり、負担の大きい遊撃から三塁に回したほうが選手寿命も延びる。そうなるとやはり二遊間の補強が必要になり、二塁は吉川と若林がいるが、遊撃は坂本の後継者候補が現段階では廣岡大志(智弁学園高~15年ヤ②)しかおらず、遊撃を優先して獲得したい。

 内野手で一番の高評価は阪口楽(岐阜一高)で、広角に長打を放つ将来のクリーンアップ候補で1位指名もある。補強ポイントの遊撃でピックアップすると、粟飯原龍之介(東京学館高)は、走攻守三拍子揃った一番打者でパンチ力もある大型遊撃手。川口翔大(聖カタリナ高)は、4番を打つチームの中心選手だ。

 大学生では、野口智哉(関大)は広角に打ち分けるヒットメーカーで、俊足で守備力も高い。社会人では、大内信之介(JPアセット証券)は野口と同じ俊足巧打タイプで二遊間を守れる。中川智裕(セガサミーは右打ちのスラッガーで、守備走塁のレベルも高い。

☆外野手~将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト

 外野は丸が復調し、梶谷も故障が無ければレギュラーはひとまず安泰と言え、松原と合わせて陣容は揃っている。ただ、内野と異なるのが高齢化の心配で、梶谷33歳、丸は32歳、亀井善行(中大~04年④)は来年40歳を迎える。亀井が若手の台頭が無いことを嘆いていたように、世代交代を進めていかなくてはならない。

 また、右打者が外国人のウィーラーとハイネマンと合わせても4名しかおらず、出来れば右打ちの選手を獲得したい。加えてチームの顔になり得る中軸候補は左右関係なく獲得したい。

 中軸候補では、正木智也(慶大)は右の長距離砲で、今年のドラフトの目玉の一人でスター性も兼ね備え、補強ポイントに合致する。甲子園で活躍した徳丸天晴(智弁和歌山高)前川右京(智弁学園高)は、知名度も抜群で将来の中軸を期待できる。吉野創士(昌平高)と内野でも紹介した阪口は外野も守れ、ともに広角に長打を打てるスラッガー福本綺良(明石商高藤井健平(NTT西日本)リードオフマン候補で、福本はパンチ力があり、藤井はバットコントロールが巧みで、ミート力が高く強肩で俊足の即戦力だ。

 

●伝統球団の看板を背負う将来のエース候補を獲得か?思い切って野手指名も

 今年の1位指名は、将来のエース候補で高校生投手を指名してくる可能性が高く、小園健太(市和歌山高)森木大智(高知高)のどちらかが有力候補になる。また、1位入札を避け、単独で獲得できる可能性の高い畔柳亨丞(中京大中京高)山下輝(法大)、将来の中心打者の獲得で阪口楽(岐阜一高)正木智也(慶大)へシフトしても面白い。阪口獲得となると、14年の岡本以来の高校生野手の1位指名になる。

【指名シミュレーション】 

1位~小園 健太(市和歌山高)

 …最速152キロの直球に、多彩な変化球を駆使し完成度の高い投球が魅力

2位~徳丸 天晴(智弁和歌山高・外野手)

 …名門校で1年生から4番を務めた。遠くに飛ばす力は抜群で三塁も守れる

3位~中川 智裕セガサミー内野手

 …長身ながら軽快な守備と強肩の大型遊撃手で、逆方向にも長打が打てる

4位~篠原 颯斗(池田高・投手)

 …最速148キロの右の本格派で、球速はまだまだ伸び、変化球の精度も高い

5位~田 大勢(関西国際大・投手)

 …スリークオーターから150キロを投げ、馬力だけではなく柔軟性もある

6位~藤井 健平(NTT西日本・外野手)

 …バットコントロールに長け、ミート力のあるヒットメーカーで足も速い

7位~久保田拓真(関大・捕手

 …捕手歴は高2からと短いが着実に成長。チャンスに強い打撃で長打力もある

21年ドラフト予想☆楽天~投打にタレントは揃っているが、成績はもう一歩…今年は将来のエースを獲得したい

●リーグ随一の先発陣に野手はレギュラー確立するも、優勝は黄色信号

 昨年オフにチームのレジェンドともいえる田中将大駒大苫小牧高~06年①)が復帰し、ドラフトでは4球団競合の末、即戦力左腕の早川隆久(早大~20年①)を獲得した。下馬評ではソフトバンクに次いで優勝候補に挙げられていたが、首位から5ゲーム差と優勝に黄色信号が灯っている。

 今年の楽天を簡単に言えば、投手陣は改善されたが、強力打線が影を潜め、今年は守りのチームになっている。18年期中の梨田昌孝監督の休養を皮切りに、直近5年間で監督は4人目。毎年、FA選手獲得など、他チームが羨むような補強をしながら、今ひとつチームカラーが定まらないのは、こういったことが要因かも知れない。

 改善した投手陣の先発陣は、ビッグネームが名を連ねる。田中将をはじめ、則本昂大三重中京大~12年②)に岸孝之東北学院大~06年西希)、涌井秀章(横浜高~04年①)に早川が加わった先発陣はリーグ随一だ。

 リリーフ陣では、24セーブのクローザー松井裕樹桐光学園高~13年①)の故障離脱は大きいが、酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)に安楽智大済美高~14年①)、宋家豪が勝ちパターンを担い、高いホールドポイントを上げている。

 影を潜めた強力打線の最大の要因は、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)の不振だろう。打率は.280と変わらないが、昨年、32本塁打、104打点の選手が、今年は13本塁打、52打点とポイントゲッターになれていない。岡島豪郎(白鷗大~11年④)が3割を打ち、4番の島内宏明(明大~11年⑥)が打点王で勝負強さを見せているが、外国人選手が揃って不振のなか、浅村の不振の影響は大きい。

 鈴木大地東洋大~11年ロ③)に茂木栄五郎(早大~15年③)、小深田大翔(大阪ガス~19年①)に辰巳涼介(立命大~18年①)と、リーグ最多の7選手が規定打席に達しているが、小深田と辰巳はともに2割台前半で、セールスポイントの機動力も2人合わせても11盗塁と、期待される働きは出来ていない。

【9/18現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 114試合 52勝49敗13分③

 防御率…3.54③(4.19⑤)打率….246④(.258①)

 本塁打…89⑤(112②)盗塁41⑥(67⑥)

 得点…435④(557①)失点…420③(522④)

 

●毎年、主戦になる選手を獲得しているが、反面、見切りも早い…

 昨年は早川を獲得でき、これだけでドラフトは大成功と言える。その早川は18試合で8勝を上げ、現時点で新人王には届かないものの、十分な活躍を見せている。上位4名を大学生・社会人投手、下位で高校生の投手と野手を獲得したのは、昨年の成績から投手力を強化する戦略は理解できる。

 ここ5年のドラフトは、16年は投手で森原康平(新日鉄住金広畑~20年④)に高梨雄平(JX-ENEOS~20年⑨)、西口直人(甲賀健康医療専門学校~20年⑩)、野手では田中和基(立大~20年③)を獲得したの当たり年だった。ただ、今年は森原と田中和が不振、高梨は既に巨人に移籍しており、やや輝きも鈍ってしまっている。

 以降は17年の山崎剛(国学院大~17年③)、18年は辰巳に太田光(大商大~18年②)、渡邊佳明(明大~18年⑥)、19年は小深田と瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿~19年⑥)と、毎年コンスタントに主力選手を獲得しており、ドラフトの慧眼には目を見張るものがある。

 一方で、見切りも早い。近藤弘樹(岡山商大~17年①)は3年で戦力外でヤクルトへ移籍、西巻賢二(仙台育英高~17年⑥)は2年で育成契約を断りロッテへ移籍し、直近5年で7名の選手がチームを去り、4名の選手が育成契約(2人は再支配下)になっており、育成に辛抱に足りない気もする。 

 また、高校生の育成は正直上手くない。投手の主力となると14年の安楽まで遡るが、安楽も期待されていたのは先発で、先発となると田中将以来出てきていない。野手も同様で、オコエ瑠偉関東一高~15年①)や黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)が出番を増やしているが、レギュラーとなると銀次(盛岡中央高~05年高③)まで遡り、打線に今ひとつ迫力が欠けているのは、こういったことが要因だと思う。 

 今年は高校生投手が豊富で、将来のエース候補を獲得したい。また、レギュラーに左打者が多く、即戦力の右打ちと将来の主軸候補も抑えておきたい。

楽天の補強ポイント】 

 投 手…将来のあるエース候補、即戦力リリーフ

 捕 手…必要なし

 内野手…右打ちの大学生

 外野手…将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト 

 

☆投手~将来のあるエース候補、即戦力リリーフ

 現在のローテーションの顔ぶれを見て心配なのは高齢化だ。岸は37歳、涌井は35歳、田中将も33歳と軒並み30代の選手でローテーションが形成されている。プロ入りが遅かった瀧中は2年目で既に27歳と、20代前半は早川しかいない。

 現在は経験も含め万全な先発陣だが、ここ2~3年で世代交代が進まないと厳しい。ファームでは釜田佳直(金沢高~11年②)と高田孝一(法大~20年②)が好投しているが、釜田も28歳で、早川に続く若手投手の奮起が求められる。

 リリーフ陣は、松井が故障で今シーズン中の復帰が難しいのは大きな痛手になった。ソフトバンクもそうだったが、「クローザー離脱→セットアッパーを転換」と簡単ではないことが見ていても理解できた。28歳の酒居、ともに25歳の安楽と西口が経験を積んでおり、リリーフ陣は若い選手が多く、今後に期待が持てる。

 ただ現在、19歳~22歳の投手は3名しかおらず、31歳以上(外国人投手を除く)は9名と最も多く、世代交代が喫緊の課題として迫ってきている。

 今年は、将来のエース候補を是が非でも獲得したい。一番の候補は地元の風間球打(明桜高)で、球速、変化球、試合での対応能力含め一級品の逸材。このほか、森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)佐藤隼輔(筑波大)を1位候補としている。いずれも重複指名が予想されるだけに、他球団との駆け引きは注目だ。このほか、畔柳享丞(中京大中京高)廣畑敦也(三菱自動車倉敷)も上位でリストアップしている。

 将来のエース候補の高校生では、伸びしろ十分の達孝太(天理高)に快足左腕の羽田慎之介(八王子高)は。ともに190センチを超える大型選手。山本大揮(九州国際大高)は、変化球を織り交ぜた安定感が評価される最速145キロの右の本格派。田中怜利ハモンド帝京五高)は高校生から投手を始めた素材型で、大化けする可能性を秘めている。高校生ではないが、17歳の最速148キロ左腕の渡辺一成(BBCスカイ)は、高校を中退しクラブチームで腕を磨き、甲子園よりプロを目標にした異色の選手で、念願の指名を待っている。

 即戦力では、隅田知一郎(西日本工大山田龍聖(JR東日本の両左腕は先発の層を厚くし、鈴木勇斗(創価大)は先発とリリーフへの適性も高く、松井以外不足している左のリリーフとしてもプラスになる。このほか徳山壮磨(早大松井友飛(金沢学院大は、ともに右の先発候補。権田琉成(明星大)は、今年になってから急成長した投手で、今年先発に転向してドラフト候補まで上り詰めた。社会人では、独特のフォームで最速154キロの鈴木大貴(TDK)にも注目している。

☆捕手~必要なし

 シーズン途中に、大ベテランの炭谷銀仁朗(平安高~05年西①)を巨人から獲得し、太田との併用になっている。打撃の良い田中貴也(山梨学院大~14年巨育③)やベテランの足立祐一(パナソニック~15年⑥)が控え、質量ともに年齢バランスも良く補強の必要はない。

 ただ、そのなかでも高校通算39本塁打松川虎生(市和歌山高)や、同じく強肩の村山亮介(幕張総合高)の高校生捕手をリストアップしている。

内野手~右打ちの大学生

 一塁に鈴木大、二塁に浅村、三塁は茂木、遊撃に小深田と4選手とも規定打席をクリアしており、レギュラーが確立している。昨年、小深田を獲得し、茂木を本来の三塁にコンバートできたのは大きい。控えでも打撃の良い山崎や渡邊、守備の上手い村林一輝(大塚高~15年⑦)、期待の若手の黒川もおり、急いで補強する必要はない。

 ただ、年齢バランスで21歳~23歳が不在で、大学生野手を獲得したい。また、左打ちの選手が多く、年齢に関係なく右打ちのスラッガーが欲しいところだ。

 大学生野手では正木智也(慶大)は右打ちのスラッガーで、一塁のほかに外野も守れる。同じく右打ちの池田来翔(国士館大)は、アベレージ型の中距離ヒッターの二塁手で、チームの補強ポイントとも合う。左打ちだが中山誠吾(白鷗大)は、長打力がウリの遊撃手で、本塁打不足の解消に繋がる。

 高校生野手の一番のお薦めは、有薗直輝(千葉学芸高)で、高校通算70本塁打の右打ちの三塁手で、ポジションは違うがポスト浅村を担える逸材。このほかに阪口楽(岐阜一高)川口翔大(聖カタリナ高)の左打ちのスラッガーをリストアップしている。

☆外野手~将来の主軸候補のスラッガー(高校生・大学生)右打ちならベスト

 外野も左翼の島内、中堅の辰巳、そして今年は岡島が右翼で規定打席をクリアしている。岡島と島内はベテランの域だが、辰巳やオコエ、田中和に小郷裕哉(立正大~18年⑦)と期待の若手が揃っており、内野手同様に急いで補強の必要はない。

 ただ、課題は全員が俊足巧打型でスラッガータイプがいない。また、19歳~23歳に外野手は、武藤敦貴(都城東高~19年④)しかおらず、今年は高校生、大学生ともに補強する必要がある。

 内野で先述したが、正木と阪口は外野も守れ、ブライト健太(上武大に鵜飼航丞(駒大)は右打ちの長距離砲で、福元悠真(大商大)は中距離打者だがパンチ力がある。梶原昂希(神奈川大)は、柳田二世の呼び声高いパワーヒッターで、それぞれチームの補強ポイントにはピッタリだ。

 高校生では、今夏の甲子園で逆風のなかバックスクリーンに本塁打を打ち込んだ田村俊介(愛工大名電高)や、甲子園で2本塁打前川右京(智弁学園高)は将来の主軸候補。吉野創士(昌平高)は、まだ体の線は細いが柔らかいリストワークで広角に長打が打て、体が出来てくれば広島の鈴木誠のような選手になれる可能性がある。このほか徳丸天晴(智弁和歌山高)前田銀治(三島南)など、スラッガータイプを確実に獲得したい。 

 

●高齢化している先発の世代交代で、将来のエース候補を獲得したい

 今年は打撃陣が不振だが、レギュラーは確立しており、1位指名は将来のエース候補を獲得してくるだろう。一番の候補は地元の風間球打(明桜高)だが、最後まで森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)、即戦力左腕の佐藤隼輔(筑波大)の指名で駆け引きが行われるだろう。

【指名シミュレーション】 

1位~畔柳 亨丞(中京大中京高・投手)

 …躍動感あふれるフォームから、最速150キロもまだまだ伸びしろ十分

2位~田村 俊介(愛工大名電高・外野手)

 …投げては最速145キロ左腕も、プロからは野手の評価が高い将来の中軸候補

3位~徳山 壮磨(早大・投手)

 …大阪桐蔭で全国制覇し、名門に進んだ投手で、経験値なら誰にも負けない

4位~松井 友飛金沢学院大・投手)

 …190センチの長身からのストレートには力があり、変化球の精度も高い

5位~山本 大揮(九州国際大・投手)

 …キレのある変化球を駆使し、完成度の高い右腕。ストレートも145キロ

6位~福元 悠真(大商大・外野手)

 …高校時代はスラッガーも、大学でアベレージタイプに変えたがパンチ力は健在

7位~渡辺 一成(BBCスカイホークス・投手

 …プロを目指し高校を中退した異色左腕。最速148キロの直球が武器

21年ドラフト予想☆中日~21年シーズンは期待を裏切るBクラス…課題は貧打で長距離砲が欲しい

●打線で怖いのは大島とビシエドだけ…リーグ最下位の貧打で再びBクラス

 良い意味で期待を裏切ったのがヤクルトなら、本当に期待を裏切ってしまったのが中日だ。昨年は長いトンネルを抜けて、12年以来のAクラスになり、今年は優勝候補にも挙げられていたが、優勝争いに絡むことなく、Bクラスが確定的になっている。

 昨年と同じで、今年もとにかく打てない。広いバンテリンドームだから、本塁打が少ないのは百歩譲って理解しても、今年はチーム打率もリーグ最下位で、貧打に益々磨きがかかっている。長打が出ないなら四球で粘るとか、機動力を使うなどの対策も考えられるが、盗塁はリーグ4位、四球はリーグ最下位で、要は打てないから相手投手にガンガン攻められており、チームの出塁率は12球団で唯一3割に届いていない。

 今年も規定打席に達成しているのは、大島洋平日本生命~09年⑤)と高橋周平(東海大甲府高~11年①)、ビシエドの3名で昨年と変わらない。言い換えれば絶対的なレギュラーはこの3名だけで、あとは捕手の木下拓哉トヨタ自動車~15年③)と遊撃の京田陽太(日大~16年②)が主力を担っている。ただ、昨年3割の高橋周は今年は打率.250で低迷し、京田は守備は一級品だが打撃に課題があり、このチャンスを掴む若手がひとりも出てこないのはとにかく寂しい。

 一方で投手陣は、チーム防御率リーグ1位で、失策数も巨人に次いで少ない。柳裕也(明大~16年①)は防御率1位を独走し、エースの大野雄大(佛教大~10年①)は3位、小笠原慎之介東海大相模高~15年①)は5位と好成績を収めている。ただ、大野は6勝、小笠原は7勝と防御率とは裏腹に勝ち星は上がっていない。

 リリーフ陣も盤石で、Rマルティネスがチーム最多の18セーブ、リーグ最多登板の又吉克樹(四国IL香川~13年②)に祖父江大輔トヨタ自動車~13年⑤)、福敬登(JR九州~15年④)の勝利の方程式は今年も健在。藤嶋健人(東邦高~16年⑤)や谷元圭介バイタルネット~08年日⑦)も加わり、質量ともにリリーフ陣の層は厚い。

【9/15現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 114試合 46勝54敗14分④

 防御率…3.16①(3.84④)打率….242⑥(.252④)

 本塁打…63⑥(70⑥)盗塁54④(33⑤)

 得点…350⑥(429⑥)失点…373①(489④)

 

●着実に投手王国の道は出来ているが、若手野手の伸び悩みが課題

 昨年も打撃陣強化が課題のなか、地元の高橋宏斗(中京大中京高~20年①)を単独1位指名し、投手4名、野手2名を指名し、うち高校生4名の将来性を重視したドラフトになった。これはこれで良いし、評価できるドラフトで、根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)や石川昂弥(東邦高~19年①)の台頭を見越したうえでの戦略だったと思うが、ここまで若手が伸び悩むのは想定外だったと思う。

 ここ5年のドラフトでは、16年は柳に京田、藤嶋に笠原祥太郎(新潟医療福祉大~16年④)を指名し大当たりだったが、17年以降は梅津晃大(東洋大~18年②)や勝野昌慶(三菱重工名古屋~18年③)など、投手はそれなりに成績は残しているが、一軍半の選手が多い。野手に至っては京田以降、レギュラーはおろか一軍定着すらままならない状況になっている。

 ファームではチーム打率は決して高くないが、有望な若手は揃っている。チーム最多本塁打の石垣雅海(酒田南高~16年③)や最多盗塁の岡林勇希(菰野高~19年⑤)、長打率が高く足も速い伊藤康祐(中京大中京高~17年⑤)は、是非一軍で経験を積ませて欲しいと思う。

 今年は高校生投手が豊富で、エース候補を獲得したいところだが、やはり打撃強化が課題になる。特に上位候補の野手が限られているため、昨年とは逆に野手+即戦力中心のドラフトになると予想する。

 個人的には走攻守3拍子揃った好打者より、西武の山川やオリックスの杉本のように、走力や守備に目をつぶってでも、広いバンテリンドームを苦にしない長距離砲を獲得して欲しい。

【中日の補強ポイント】 

 投 手…高校生を中心にした素材型

 捕 手…将来のレギュラー候補の高校生 ※左打ちならベスト

 内野手…長打力のある即戦力社会人選手

 外野手…即戦力スラッガー ※右打ちならベスト 

 

☆投手~高校生を中心にした素材型

 現在のローテーションは、左右のWエース大野と柳、小笠原を中心に、福谷浩司(慶大~12年①)に勝野、松葉貴大(大体大~12年オ①)で形成されている。左右それぞれ3枚ずつ、年齢も20代後半から30代前半ずつで、経験も体力も充実している選手が多い。故障で戦列を離れているが、梅津や笠原が復調すれば暫く心配する必要はない。

 一方でリリーフ陣は高齢化が心配だ。谷元の36歳を筆頭に、祖父江が34歳、又吉が31歳と経験がモノを言う役割だけに、若手の台頭が必要だ。ただ、23歳の藤嶋が強力リリーフ陣の一角を担い、鈴木博志(ヤマハ~17年①)や佐藤優東北福祉大~15年②)のリリーバーや、ファームではマルク(龍谷大~17年育②)が好投を見せており、投手陣には隙はない。

 今年は、将来の投手王国を見据えた将来性豊かな高校生と、左のリリーバーを補強したたい。

 将来のエース候補では、中日も森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)を高く評価し、併せて即戦力の佐藤隼輔(筑波大)が1位候補だ。近年、地元志向が強く、今年も畔柳享丞(中京大中京高)がいるが、投手1位指名なら重複覚悟で森木や小園、風間に行くだろう。

 このほか上位候補で、高校生では達孝太(天理高)松浦慶斗(大阪桐蔭高)木村大成(北海高)、大学生では三浦銀二(法大)に、今年豊富な左腕で鈴木勇斗(創価大)隅田知一郎(西日本工大黒原拓未(関西学院大、社会人では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)山田龍聖(JR東日本を漏れなくマークしており、着実に投手王国の準備を進めている。

 下位指名候補では、高校生では細谷怜央(中央学院高)床枝魁斗(修徳高)篠原颯斗(池田高)は直球で押すパワーピッチャーで、井崎燦志郎(福岡高)福島蓮(八戸西高)はフォークが武器の右の本格派。市川祐(関東一高は精度の高い変化球が武器の技巧派で、甲子園でも活躍した阪上翔也(神戸国際大高)は打者としても評価が高い。また、地元枠で成長著しい竹山日向(享栄高)や甲子園でも好投した寺嶋大希(愛工大名電高)をリストアップしている。

 左腕では代木大和(明徳義塾高)は粘り強くゲームを作れる投手、秦勝利(神村学園高)は148キロの本格派左腕、左のスリークオーター井上透摩(金沢龍谷高)は、リリーフで貴重な戦力になるだろう。

 大学生では北山亘基(京産大扇田大勢(関西国際大)は直球に威力があり、飯田琉斗(横浜商大は長身から投げ下ろす右の本格派。伊藤綾(中京大松井友飛(金沢学院大はキレのある直球が武器で、徳山壮磨(早大と左腕の桐敷拓馬(新潟医療福祉大)は、バランスに長け総合力が高く、北山、伊藤、松井、桐敷は今秋のリーグ戦で評価をさらに上げている。 

☆捕手~将来のレギュラー候補の高校生 ※左打ちならベスト

 昨年から木下がレギュラーを獲得したが、控えはAマルティネス以下、どうにも決め手を欠いており、木下が離脱でもしたら一気にチーム状況が厳しくなる。期待の若手で郡司裕也(慶大~19年④)や石橋康太(関東一高~18年④)がいるが、将来の正捕手候補を獲得したい。

 一番の候補は地元の高木翔斗(県岐阜商高)で、強肩で高校通算30本塁打スラッガーで正真正銘の打てる捕手になれる逸材。即戦力では古賀悠人(中大)が今年のドラフトのナンバーワン捕手で、二塁送球タイムは一番の1.8秒で、打力も申し分なく木下の即ライバルになれる可能性を秘めている。

 下位指名では、村山亮介(幕張総合高)も右打ちの長距離砲で強肩、久保田拓真(関大)も勝負強い打撃がセールスポイントの打てる捕手で今年は補強が必要だ。

内野手~長打力のある即戦力社会人選手

 内野はドラフトよりも現有戦力の底上げが課題になる。高橋周と京田はともに27歳と、これから全盛期を迎える。23歳以下に石橋に根尾、石川、先日一軍デビューした土田龍空(近江高~20年③)も控え、期待の若手を徹底的に鍛え、起用していくほうが良い。強いて言えば、年齢バランスで、24歳~26歳が不在なので、即戦力の社会人野手の獲得を推したい。

 中川智裕(セガサミーは、逆方向にも長打が打て遊撃守備も堅実。走攻守揃った杉崎成輝(JR東日本に、守備に定評のある和田佳大(トヨタ自動車は、スラッガーではないが、いずれも戦力になると思う。

 一方で、打力が課題なだけに将来性を見据えて高校生野手も当然リストアップしている。広角に打てるスラッガー阪口楽(岐阜一高)、1年から4番を打つ高校通算70本塁打有薗直輝(千葉学芸高)は上位で確実に消える選手。ともに遊撃手の粟飯原龍之介(東京学館高)と地元の星野真生(豊橋中央高)もパンチ力があり、指名の可能性が十分にある。大学生では、飛距離が魅力の中山誠吾(白鷗大)への評価が高く、中山あは遊撃の守備も巧い。 

☆外野手~即戦力スラッガー ※右打ちならベスト 

 深刻なのが外野だ…。レギュラーの大島は36歳、平田良介大阪桐蔭高~05年①)は33歳、福留孝介日本生命~98年①)は44歳で、主力がいずれも高齢化している。トレード加入の加藤翔平(上武大~12年ロ④)は、リーグが変わっても残念ながらレギュラー候補の殻を破れていない。

 ポスト大島がは大きなか課題だが、私は根尾を推している。京田がいる以上、遊撃のレギュラーポジションを奪うのはなかなか難しく、外野に専念して打撃を磨くのも手だと思う。また、2年目の岡林も控えており、この2人がポスト大島にハマることを期待したい。

 外野はとにかく長打力にこだわった指名で良いと思う。一番の候補は正木智也(慶大)で、守備と走塁に課題はあるものの、大学ナンバーワンスラッガーで中軸を期待できる。その正木にひけをとらない長打力を秘めているのがブライト健太(上武大)で、今春から急成長してドラフト候補まで成長して選手で、まだまだ伸びしろがある。鵜飼航丞(駒大)も、100キロの恵まれた体からの飛距離は抜群で、大型選手の割に足も遅くない。

 高校生でも今夏の甲子園で活躍した前川右京(智弁学園高)田村俊介(愛工大名電高)はともに左のスラッガーで、地元の田村は是非とも欲しい選手だ。このほか、広角に長打が打てる吉野創士(昌平高)、スイングスピードの早い前田銀治(三島南高)をリストアップしている。即戦力では、向山基生(NTT東日本)は右の巧打者で走攻守3拍子揃っており、ポスト大島を考えれば指名の可能性が高い選手だ。

 

●今年は長打を打てる即戦力野手指名か?投手王国をさらに強化するか?

 今年の1位指名は、即戦力野手でいってほしい。一番の候補は正木智也(慶大)で、阪神の佐藤やDeNAの牧の活躍を見れば、来年開幕メンバーに名前を連ねる可能性もある。一方で投手王国を目指して、森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)の高校生に、即戦力左腕の佐藤隼輔(筑波大)を重複覚悟で指名する可能性も高い。

【指名シミュレーション】 

1位~正木 智也(慶大・外野手)

 …飛距離が魅力の強打者で、勝負強い打撃で打点も多い。一塁と外野を守れる

2位~ブライト健太(上武大・外野手)

 …高い身体能力から、フルスイングで驚異の飛距離で圧倒!50M5秒8の俊足

3位~高木 翔斗(県岐阜商高・捕手)

 …高校通算30本塁打の打てる捕手。二塁送球タイム1.85秒の強肩の正捕手候補

4位~北山 亘基京産大・投手)

 …最速151キロ、スプリットが武器の右の本格派。先発・リリーフともに適性

5位~桐敷 拓馬(新潟医療福祉大・投手)

 …豊富な変化球と最速149キロを武器に大崩れしない左腕、今春5勝を挙げた

6位~鵜飼 航丞(駒大・外野手)

 …100キロの大柄な体格から本塁打を量産する長距離砲で、守備や走塁も無難

7位~代木 大和(明徳義塾高・投手

 …今夏の甲子園でも粘り強い投球で、打たせて取る能力に長けた技巧派左腕