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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト候補選手~厳選50名

 各チームから戦力補強のニュースが賑わいを見せ、いよいよキャンプも間近になってきた。そこで今年注目のドラフト選手を紹介したいと思う。

 今年は高校生が豊作で、投打に逸材が多く高校生主体のドラフトになる可能性が高い。大学生は伸びしろのある選手がどこまで即戦力に成長するか楽しみで、社会人は今年も投手に即戦力が多い。

 

●注目の上位候補12名は投手中心

 高校生投手に上位候補の逸材が多く、現段階で世代ナンバーワンと言われているのが①小園健太(市和歌山高・投手)だ。最速152キロのストレートに加え、変化球の精度が高く、ゲームメーク能力の高さは高校生離れしている。昨秋の県大会と近畿大会ではタレント集団の智弁和歌山高を下し実力の高さを証明している。随時ストレートの速さが維持できれば一気に今年のドラフトの主役になれる。

 中学時代に軟式で150キロを計測し注目されていた②森木大智(高知高・投手)も上位候補。高校に進学したあとは故障で苦しんだが、ストレートの速さは健在で、今夏の甲子園までにどこまで伸びるか楽しみだ。

 小園と森木に続く好素材と評価が高いのが③風間球打(明桜高・投手)で、長いリーチを活かしたスケール感の大きいピッチングは、ポテンシャルの高さが注目されている素材型で、この1年で大化けする可能性が高い。

 昨年は中日1位の高橋宏斗の陰に隠れていたが、④畔柳亨丞(中京大中京高・投手)も着実に力をつけた。安定した下半身から最速151キロのストレートに、変化球の精度も高く完投能力に長けている。総合力だけ見れば高橋以上とも言われており、2年連続でドラフト1位投手が誕生することも夢ではない。

 大阪桐蔭高のWエースの⑤松浦慶斗と⑥関戸康介にも注目だ。松浦は185センチの長身から、最速150キロのストレートとスライダーが武器のサウスポー。関戸は進学時は小さな故障が多く粗削りな面もあるが、昨夏の公式戦で154キロを投げ、素材の高さを印象づけた。ともに一冬を超えて、どこまでスケールアップしているか楽しみだ。

 投手と野手の両方で注目を集めているのが⑦阪口楽(岐阜一高・投手/内野手で、投手でも143キロを投げる本格派だが、野手としての評価が高い。広角に打ち分ける抜群の打撃センスに加え、昨夏の県大会では、中日5位の加藤翼から完璧な本塁打を放った。二刀流へのこだわりはなく、「打つほうが好き」と述べており野手として期待が高まる。 

 大学生投手にも楽しみな素材が多く、注目は⑧佐藤隼輔(筑波大・投手)で、現段階では大学ナンバーワンサウスポーと言える。キレのある145キロのストレートをコンスタントに投げ、大学2年生時より日本代表に名を連ね頭角を表してきた。

 同じ先発では、⑨徳山壮磨(早大・投手)も総合力が高い。大阪桐蔭高で甲子園制覇した際も、高校生離れした完成度の高い投球を見せていたが、大学でさらに「大人の投球」が身についた。⑩木蓮東北福祉大・投手)大学野球界を代表する本格派右腕で、故障の癒えた昨秋にストレートが150キロを超え、スライダーとフォークも質が高く、こちらはリリーフへの適性が高い。

 社会人投手では、⑪広畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ・投手)の評価が断トツで、即戦力として間違いない実力者。都市対抗では昨年覇者のJFE東日本相手に1失点完投勝利を納め、見事に大舞台でも結果を残した。制球力にも長け、球速表示よりも速く見える150キロ右腕は、日増しに注目が高くなっている。

 広畑と同様に即戦力としての評価が高いのが、⑫森翔平(三菱重工エスト・投手)で、最速149キロのサウスポーだ。抜群の制球力に豊富な変化球を交え、ゲームメークに長けている先発型だが、プロではリリーフも面白い。

 

高校生~今年は北海道、神奈川、静岡、岐阜、愛知、和歌山のライバル争いに注目

 今年は高校生が豊富と言われ、特に投手に逸材が多い。そのなかで⑬達孝太(天理高・投手)は、大化けが期待される大型右腕。身長193センチの長身からの角度のあるストレートは、まさにダルビッシュを彷彿させるスケール感の大きさがある。

 最速147キロの⑭田中楓基(旭川実高・投手)も右の本格派で、昨秋のセンバツをかけた試合で、敗れはしたものの北海高との手に汗握る投手戦は見事だった。その田中と投げ合った⑮木村大成(北海高・投手)はサウスポーで、キレのあるスライダーを武器に全道大会で30回2/3無失点の圧巻の投球を見せ、今春のセンバツでお披露目になる。

 中学時代より森木のライバルだった⑯伊藤樹(仙台育英高・投手)も、最速147キロのストレートにマウンドさばきに定評があり、⑰高須大雅(静岡高・投手)は、190センチの長身からキレのあるボールを投げ込むともにの右の本格派だ。

 左腕投手にも逸材が多い。⑱石田隼都(東海大相模高・投手)は昨夏の甲子園交流試合で大阪桐蔭高相手に好投を見せ、好不調の波が少なくスライダーが持ち味。⑲金井慎之介(横浜高・投手)もスライダーを武器に最速148キロの角度のあるストレートを投げ、打者としても非凡なセンスがある。

 ⑳沢山優介(掛川西高・投手)も140キロ中盤のキレのあるストレートとテンポの良い投球が身上で、抜群のフォームバランスが評価されている。今年、好投手が多いチームで1年からエースを任せられている㉑田村俊介(愛工大名電高・投手)も最速145キロの左腕で打撃にも定評がある。

 捕手では、㉒高木翔斗(県岐阜商高・捕手)が頭一つ抜けている。大柄だが動きが良く、広角に打ち分ける打撃も魅力だ。小園と中学時代からバッテリーを組む㉓松川虎生(市和歌山高・捕手)も遠投100メートル、二塁送球タイム1秒8の強肩で、高校通算30本塁打の長打力も注目されている。内野手では日本ハム・清宮の弟である㉔清宮福太郎(早実高・内野手は右のスラッガーで、粗削りだがツボに入ったときの飛距離はケタ違いで、早くもヤクルトがリストアップしている。

 今年は投手と並んで外野手に上位候補が多く、その一番手と言えるのが㉕池田陵真(大阪桐蔭高・外野手)で、1位候補にも入ってくる。走攻守三拍子揃った中堅手で、旧チームでは1番、新チームでは4番を務め、上背はないがパンチ力もある。名門校でキャプテンで任される抜群のリーダーシップもプロでは利点になる。

 今年は外野手に魅力的なスラッガーが多く、㉖前川右京(智弁学園高・外野手)は、1年夏から4番を務め、選球眼に優れ飛ばす力は同世代でも群を抜いている。㉗徳丸天晴(智弁和歌山高・外野手)も上位候補で、一昨年は楽天2位の黒川史陽、昨年は日本ハム4位の細川凌平がいたタレント集団のなかで、1年時より4番を務めた実力は折り紙つきで、昨秋からは三塁にもチャレンジしている。

 外野手はまだまだ逸材が多く、㉘吉野創士(昌平高・外野手)も上位候補だ。関東を代表するスラッガーで、シュアな打撃で右方向にも長打を打て、50メートル6秒1の俊足に遠投110メートルと身体能力が高い。

 このほかにも㉙中田達也(星稜高・外野手)は、懐の深いフォームから対応力の高い打撃技術に長けている。小学校まではゴルフ選手で、野球は中学から始めたポテンシャルの高さは一冬超え大化けする可能性がある。㉚福本綺羅(明石商高・外野手)は、旧チームでは4番を務め、オリックス3位の来田涼斗のあとを受け、新チームでは1番打者を務めている。

●大学生~法大と慶大に注目!今年はサウスポーと捕手に逸材多し

 投手で上位候補に名を連ねるのは、㉛鈴木勇斗(創価大・投手)で3年秋に最速152キロを計測して一躍脚光を集めたサウスポーだ。昨秋の東京新大学リーグでは4勝を挙げ、MVPのタイトルを獲得。まだまだ伸びしろもあり今秋のドラフトの目玉になる可能性もある。同じ左腕の㉜隅田知一郎(西日本工大・投手)も、鈴木同様に昨秋150キロを超え、更なる成長が注目されている。

 昨年に続き、今年も法大に好投手が揃っている。㉝山下輝(法大・投手)は、木更津中央高時代より注目された大型左腕で、高校時に志望届を出していたら1位で消えていただろう大器だ。入学早々に左肘を痛め手術も経験し、3年春に初登板し150キロを計測し復活を果たした。

 チームメートの㉞三浦銀二(法大・投手)も高校卒業時の上位候補で、志望届を出さずに大学へ進んだ。最速150キロのストレートを武器に、先発と抑えを務めた器用なタイプで、どちらにも適性がある。㉟森田晃介(慶大・投手)にも注目で、150キロを計測する右の本格派だが、コーナーにカットボールツーシームを投げ分け、打たせて取る投球も出来る。

 大学生野手では㊱古賀悠斗(中大・捕手)と㊲正木智也(慶大・外野手)が上位候補だ。古賀は福岡大大濠高で法大の三浦とバッテリーを組み、三浦同様に志望届を出さずに進学し、大きく成長を遂げた。強肩と正確なスローイングに磨きがかかり、大学1年秋から正捕手を務め試合経験も豊富だ。パンチ力はあるが好不調の波のある打力が改善できれば、育成が難しいポジションだけに注目が高い。正木はプロが待望する右のスラッガーで、東京6大学で通算6本塁打、打率も3割を超え確実性もある4番候補で、長打力は今年のアマ球界のなかでトップクラスの評価だ。

 今年は大学生捕手に上位候補が多く、古賀と同様に高い評価を集めるのが㊳岩本久重(早大・捕手)で、2年秋より正捕手を務め、昨秋は楽天1位の早川隆久をリードしリーグ優勝に貢献した。打てる捕手を目指し3年春からは4番を務める攻守の要。㊴福井章吾(慶大・捕手)は投手から全幅の信頼を受け、視野が広く的確な指示でチームをまとめる司令塔として評価されている。

 このほかの野手では㊵野口智哉(慶大・内野手は、走攻守三拍子揃った遊撃手で、通算打率.321のヒットメーカー。㊶丸山和郁(明大・外野手)も広角に打つ巧打者で、50メートル5秒8の俊足で走塁技術も高い。㊷福元悠真(大商大・外野手)は、高校時より注目されていた右のスラッガーで、豪快なスイングから規格外の飛距離が魅力。最終学年でさらに成長が期待できる。

●社会人~投手に即戦力多いが、野手は低調気味…指名漏れ大卒2年目の成長に期待

 即戦力が期待される社会人投手の上位候補では、昨年の都市対抗を制し、若獅子賞に輝いた㊸朝山広憲(ホンダ・投手)は、シュートを習得したことで投球の幅が広がり安定感を増した。高校~大学と故障に苦しんだが社会人1年目で主戦に成長した。昨年、まさかの指名漏れだった152キロ右腕の㊹森井紘斗(セガサミー・投手)は、先発・クローザーともに適性があり、更なる経験を積んでプロ入りを目指す。

 一昨年、指名漏れを味わった㊺稲毛田渉(NTT東日本・投手)も着実に成長を遂げている。最速153キロの本格派右腕で、今年はエースとして主戦の座を掴み念願のプロ入りを果たしたい。㊻八木玲於(ホンダ鈴鹿・投手)も右の本格派で、最速154キロのストレートで、強気に打者に向かっていく投球スタイルはリリーフへの適性が高い。

 即戦力左腕では、金農フィーバーで沸いた甲子園100回大会(2018年)で、ナンバーワン左腕と言われた㊼山田龍聖(JR東日本・投手)も長身から角度のあるボールを投げ込み着実に成長を遂げている。㊽高橋佑樹(東京ガス・投手)は試合勘に長け、投球術に優れた技巧派で、入社1年目からエース級の働きを見せた。

 ここ数年、指名人数が少ない社会人野手には是非奮闘してもいらいたい。㊾中川智裕(セガサミー内野手は勝負強い打撃がセールスポイントの大型遊撃手で、アグレッシブな守備も魅力。㊿菅田大介(JR東日本・外野手)は、大学時代は投手との二刀流で注目を集めたが、社会人では野手に専念。名門チームで4番を任せられ、パンチ力のある打撃に磨きをかけ、大学時の指名漏れの悔しさを晴らしたい。

この選手を獲れ!セ・リーグ編

 今年はセ・リーグストーブリーグが賑やかだ。FAや自由契約選手の獲得はすでにセ・リーグが7名を数えるが、パ・リーグではまだ能見1名だけだ。

 セ・リーグは補強、パ・リーグは現有戦力に自信があるのか底上げ、もしくは残留交渉を優先しているからだろうか?

 ※( )は契約保留者+新入団選手、下記指名は自由契約選手(下線は育成契約)

 

巨人(53名+7名)

 昨年、苦汁を味わったFA選手の獲得だったが、今年はともにDeNAから梶谷隆幸と井納翔一の獲得に成功した。たが、最大の懸案事項は絶対的なエース菅野智之の去就で、ハッキリ言えば菅野の代わりはいない。菅野が残れば問題はないが、MLBへ移籍すれば井納も含め全体でカバーしていくしかない。

 現状は60名だが、梶谷はBランクの選手で、原監督が嫌がる人的補償が発生しプラスマイナスはゼロ。菅野が残留し井納を獲得しても62名で余裕があるが、鍬原や直江、山下など有望な若手に、実績のある高木の故障が癒えれば、直ぐにでも支配下登録されるであろう枠を残さなくてはならない。外国人選手は既に6名を数え、菅野の残留交渉とFAでの獲得のあとは、外国人野手の補強で終わる可能性が高い。

 外国人選手の補強は打者が優先で、長打力のあるボーア(阪神)にアベレージヒッターのアルモンテ(中日)は実績もあり、ある程度計算できるのが強みだ。補強ポイントは投手優先(特に先発)だが、先発で実績のある選手は少なく村田透(日本ハム)くらいしか思い浮かばない。そうなるとやはり井納の獲得は正解と言えるが、同一リーグの戦力を剃って独走しても、結果「井の中の蛙」になりやしないだろうか? 

・投手~岩隈久志/堀田賢慎/原拓也/藤岡貴裕/直江大輔/高木京介

    宮國諒丞/田原誠次/ディプラン

・野手~吉川大幾/モタ/村上海斗/パーラ/加藤脩平/山下航汰 

 

阪神(55名+8名)

 今年はFA戦線には目もくれず、外国人選手の補強を中心に戦力強化を図っている。ロッテからチェン・ウェインを獲得し、今年も韓国から両打のスラッガーロハスJrを日米韓の争奪戦を制した。また、韓国の20勝右腕のアルカンタラも大筋合意したと伝えられ、韓国リーグとのパイプの強さが際立つ。

 また、内野守備に定評のある山本泰寛(巨人)、リリーフ投手の加治屋蓮(ソフトバンク)を獲得し、鈴木翔太(中日)は育成契約で加入した。クローザーのスアレスも合意して、支配下は69名になり補強もトレード以外は終了だろう。

 アルカンタラの入団が決まれば、昨年に続き外国人8名体制になり、ここは賛否の分かれるところ。故障で育成契約になった島本と才木も戻れば戦力になり、育成からの支配下枠もある程度空けてかなくてはならならず、ストーブリーグを賑わしたにも関わらず、やや搔き集めの印象を受ける。

・投手~能見篤史/藤川球児/呂彦青/高野圭佑/才木浩人/福永春吾

    島本浩也/スアレス/ガルシア/横山雄哉

・野手~岡崎太一/上本博紀/ボーア/福留孝介/伊藤隼太 

 

中日(58名+6名)

 今オフ最大の課題だった大野雄大の残留が決まり、中日としてはこれ以上のない朗報になり、福留孝介阪神)の復帰が決まった。現在64名で外国人選手は4名と、1~2名加えても余裕がある。垣越と竹内は育成契約になるが、ともに20歳前後の若い投手で支配下を焦る必要はなく、上位を狙うためにも補強を進めたい。

 中日の課題はやはり打撃陣で、長打力不足と大島と京田に頼りきりの機動力強化に努めたい。長打力ならボーア(阪神)やブラッシュ(楽天)、ロドリゲス(オリックス)は広い名古屋ドームも苦にしない長打力があるし、燿飛(楽天育成)は遠くにとばすだけならパワーはけた違いで可能性を感じる。

 他にはビシエドが故障の治療で来シーズン冒頭に間に合わない可能性もあり、長打力はないが守備も巧く勝負強いロペス(DeNA)は、日本人扱いになりチームにフィットすると思う。また、山下斐紹(楽天)を育成での獲得したが、正捕手が定まらないチームのなかで、直ぐにでも支配下登録の可能性がある。

 最後に今年のオフに耳を疑うようなことが2つあった。1つは契約交渉の席上で福谷浩司がチームの方針やビジョンを球団に訊いたところ、球団代表が答えられなかったこと。そして高校生ルーキーの石川昴弥が年俸を減額されたことで、理由が「即戦力としての評価だったため」と聞いて、前段の方針の無さに結びつく。中日を強くするには申し訳ないが、まずは戦力補強よりも、フロントの強化が優先事項だと思った。

・投手~吉見一起/阿知羅拓馬/ゴンサレス/垣越建伸/竹内龍臣

    小熊凌祐/伊藤準規/ロメロ/鈴木翔太

・野手~石川 駿/アルモンテ/シエラ

 

DeNA(58名+6名)

 今年の最大の懸案事項だったソトの慰留に成功、オースティンの残留も決まり、ヤクルトを自由契約になったリリーフの風張蓮を獲得した。一方で、FA宣言していた井納翔一と梶谷隆幸の2人が揃って巨人への移籍が決まった。今オフでベテランが多くチームを去ることになり、投手の最高齢は31歳の平田真吾ほか2名、野手も33歳の大和と一気にチームの若返りが進んだ。

 まずは梶谷の人的補償がポイントになるだろう。井納が抜けた分の先発投手候補、梶谷の代わりの外野手、課題の二遊間のいずれかを強化したい。プロテクトから外れる選手を個人的に予想し、先発投手では桜井俊貴や古川侑利、外野手では石川慎吾に重信慎之介、二遊間強化の選手は見当たらなかったが、北村拓己や香月一也のスラッガーの獲得のチャンスがあり、個人的には桜井や石川がベストだと思う。

 現在64名で育成で外国人選手2名を獲得しているが、支配下の外国人選手が4名でもう1~2名は必要か。先ほどの人的補償と同じ条件であれば宮國椋丞(巨人)や村田透(日本ハム)、二遊間強化では若返りには逆行するが上本博紀阪神)や西田哲朗(ソフトバンク)のベテラン、永江恭平(西武)も遊撃守備に定評がある。細谷圭(ロッテ)は内外野守れる右打ちで補強ポイントに合うと思う。

・投手~赤間 謙/パットン/浜矢廣大/古村 徹/藤岡好明

・野手~ロペス/飛雄馬/石川雄洋/百瀬大騎

 

広島(59名+6名)

 正直、こんな補強で良いのかな?と思ってしまう。今シーズンは優勝争いに絡むこともなく終始Bクラス、自慢の育成力も影を潜め若手も育っておらず、来シーズンへは期待より不安が多いのが事実ではないだろうか。

 現在の補強は外国人のみで、投手でバードとネヴァラウスカス、野手でクロンを獲得し現状65名。外国人選手は6名で十分なので、あと1~2名は補強したいところだと思うが、現状動きがない。

 補強はやはり投手陣で、今オフはドラフトで5名、新外国人で2名補強しているが、実績のある投手も獲得したい。今年はリリーバーの自由契約選手が多く、松田遼馬(ソフトバンク)や近藤一樹(ヤクルト)、田原誠次(巨人)はまだ行く先が決まっていない。直球がMLBに評価された高野圭佑(阪神)、左腕の藤岡貴裕(巨人)にもチャンスがあると思う。

・投手~藤井皓哉/ジョンソン/戸田隆矢/平岡敬人/モンティージャ

・野手~石原慶幸/小窪哲也/ピレラ

 

ヤクルト(54名+6名)

 今年、FA選手を多く抱えていたが、チームの顔である山田哲人と、クローザーの石山泰稚が残留を決めたものの、エース小川泰弘の去就が未定だ。驚いたのは、そんななかで課題は投手陣にも係わらず、引退の五十嵐を含み8名に戦力外通告を行った。今年は不振だったがリリーフの近藤や風張はまだ出来ると思ったが…。

 投手陣はFAの井納獲得とはならなかったが、新外国人のサイスニード、左腕の宮台康平(日本ハム)は3球団との競争のなか獲得した。育成で近藤弘樹(楽天)と小澤怜史(ソフトバンク育成)の獲得が決まった。

 野手では、この間チームの若返りを進めているなか、内川聖一ソフトバンク)を他チームより終始先行して獲得できた。ただ、山田哲と村上以外は30歳を超えており、短期的に見ると内川の獲得は正解だと思うが、レギュラー不在の遊撃手含め若手の有望株を獲得したい。外国人選手はオスナとサンタナの長距離砲を獲得しており、現状64名であと2~3名は余裕がある。

 投手では計算のできるベテランで村田透(日本ハム)は先発、リリーフの内竜也(ロッテ)や高野圭佑(阪神)はチームにフィットすると思う。野手は外野手が不足しており、候補は少ないが神宮で復活したい伊藤隼太阪神)や田城飛翔(ソフトバンク育成)にはもう一花咲かせたいところだ。

・投手~近藤一樹/イノーア/クック/山田大樹/五十嵐亮太/中澤雅人/田川賢吾

    風張 蓮/平井 諒/山中浩史

・野手~井野 卓/エスコバー/藤井亮太/上田剛史/田代将太郎

 

 最後に、トライアウトで新庄剛志の獲得が話題になり、数多くの意見があった。私は獲得を見送った12球団の判断は正しいと思う。そりゃファンからすれば新庄をもう一度観てみたい気もするが、たった4打席で復帰できるほど甘い世界ではないと思う。

 パフォーマンスや経済効果を口にする人もいるが、それは選手として一軍で活躍することが前提で、パフォーマンスが先に来ることはない。それこそ1年間でも独立リーグでもプレーして、「1年間できるんだぞ」という証明が 欲しかった。ファームでも良いという言葉も聞くが、ファームは育成の場であり、若手のチャンスを摘むことになってしまう。48歳であれだけ体を作り、そして動け、夢を与えてくれた姿勢を賞賛したい。

この選手を獲れ!パ・リーグ編

 日本シリーズが終了し、今年はロッテから澤村拓一と松永昴大、西武の増田達至と熊代聖人、DeNAの井納翔一と梶谷隆幸、ヤクルトから小川泰弘の計7名がFA宣言をし、増田と熊代は宣言後チームに残留し、澤村は海外を含む、他の4選手は国内の移籍を含む交渉がスタートになった。

 また、巨人の菅野智之日本ハムの有原航平、西川遥輝は、ポスティングでMLBへの移籍を目指す。加えて12/7にトライアウトが開催され、翌日から交渉が可能になる。そこで、各チームの状況から補強に合った選手を挙げてみたい。題して「この選手を獲れ!」です。 

 ※( )は契約保留者+新入団選手、下記指名は自由契約選手(下線は育成契約)

 

ソフトバンク(61名+5名)

 ムーアが保留者名簿から外れたが、今シーズンの復調でMLB復帰が濃厚になっている。ただ、4連覇しているぶ厚い戦力をほこり補強を急ぐ必要はない。支配下人数も66名になり、育成選手の層も厚いために。あと1~2名くらいで終了になるだろう。

 強いて言えばムーアに代わる外国人の先発投手、甲斐野央と板東湧悟が肘の手術で来シーズンの復帰が難しいため、中継ぎの補強、内野の層を厚くするために控え野手の獲得くらいだろうか。

 中継ぎなら近藤弘樹(楽天)は速球に力があり、3年目という若さも魅力だ。野手は残念ながらホークスの現有戦力からは見当たらなかったが、楽天と交渉が難航しているロメロはなんかは、キューバナショナルチーム参加で離脱を余儀なくされるデスパイネやグラシアルがチームを離れたときにフィットすると思う。

・投手~加治屋蓮/吉住晴斗/ムーア/松田遼馬/バンデンハーク

・野手~内川聖一/西田哲朗/コラス

 

ロッテ(61名+5名)

 澤村と松永の2名のリリーバーがFA宣言したが、唐川侑己荻野貴司清田育宏の主力が揃って残留したのは大きかった。一方でチェン・ウェインの退団が決定し、ハーマンとの交渉が継続中のなか、チェン・グァンユウの退団も決まった。

 補強ポイントは、肘の手術で来シーズンも治療に専念する種市篤暉と西野勇士に代わる先発投手、今年苦労した右の長距離砲、また澤村と松永、ハーマンが残留するかしないかで、チームの編成が変わってくる。全員が残留すれば、現在4名しか決まっていない外国人選手の補強で終了しそうだ。

 先発投手ではアルバースオリックス)は不足する先発左腕、同じく今年は不振だったがジョンソン(広島)は狙い目だと思う。野手ではロメロ(楽天)は好不調の波は大きいが実績は十分、長打力はないがアルモンテ(中日)はアベレージヒッターで、ともにケガが多いのが気掛かりだが、今年の助っ人野手の状況を考えれば心強い。

 中継ぎの3名がチームを去ることになれば、松田遼馬(ソフトバンク)や村田透(日本ハム)は実績があり、左腕の宮台康平(日本ハム※ヤクルトが有力)や野田昇吾(西武)、変則右腕の田原誠次(巨人)などは強力リリーフ陣に厚みを持たせると思う。 

・投手~大谷智久/内 竜也/渡邊啓太/ハーマン/原 嵩/チェン・ウェイン

・野手~細川 亨/細谷 圭/三家和真

 

西武(58名+7名)

 増田の残留が決まりまずは一安心といったところで、あとはギャレットの残留がポイントだが、現状では難しそうだ。外国人選手がニールとメヒア、スパンジェンバーグの3名で、ギャレットが残留しても、投打にもう1~2枚は欲しいところで、そうなると補強の枠は意外に多くない。

 課題は先発投手と不足している左腕、野手の控えの層を厚くしたい。先発では故障の不安はあるがマルティネス(日本ハム)や宮國椋丞(巨人)は、十分に復活できると思うし、近藤弘樹(楽天)は若く将来性も備えている。日本ハムから吉川光夫をトレードで獲得したが、それでも不足気味でFAで松永昴大(ロッテ)や藤岡貴裕(巨人)などは貴重な戦力になると思う。

 野手ではレギュラーと控えの差が大きく、内野手なら石川雄洋(DeNA)や白崎浩之(オリックス)の打力はまだ衰えていないし、細谷圭(ロッテ)は外野も守れるユーティリティプレーヤー、捕手の補強で山下斐紹(楽天)も面白い。

・投手~多和田真三郎/野田昇吾/ギャレット/ノリン/相内 誠/藤田航生

・野手~水口大地/永江恭平/森越祐人

 

楽天(57名+6名)

 現在、ロメロとの交渉が難航し、外国人選手で残留が決まっているのがブセニッツと宋家豪のみで、外国人選手の獲得が優先になる。育成の池田隆英(投手)が支配下登録の予定で、外国人選手を5~6名とすると1~2名程度の余裕しかない。

 昨年、大型補強をしたが今年は動きが少ない。ともにFAの小川泰弘(ヤクルト)は不足の先発候補、松永昴大(ロッテ)は不足している左のリリーバーで、補強ポイントに合致しているが獲得の動きは現時点ではない。

 打線に問題はなく、先発・リリーフともに投手陣の補強が必要だ。先発候補は少ないが、松田遼馬(ソフトバンク)や左腕の藤岡貴裕(巨人)、経験豊富なベテラン内竜也(ロッテ)や近藤一樹(ヤクルト)にはもう一花咲かせてほしい。

・投手~近藤弘樹/シャギワ/青山浩二/DJジョンソン/渡邊佑樹/熊原健人

    由規/久保裕也

・野手~山下斐紹/渡辺直人/ロメロ/ブラッシュ/フェルナンド

 

日本ハム(58名+6名)

 正直、前途多難だ。有原航平と西川遥輝の主力が抜ければ、戦力ダウンは必至で、今シーズン以上の苦戦が予想される。有原と西川が抜けると63名で、あと2~3名は余裕がある。

 有原の流失に備えて小川泰弘(ヤクルト)の獲得を目指しているが、広い札幌ドームにフィットする投手で、是が非とも獲得したいところだ。また、新外国人選手で技巧派左腕のアーリンと長打力に期待がかかるロドリゲスを獲得している。

 とにかく投打に戦力が不足気味で、課題は山積している。投手は先発もリリーフどちらも欲しいい…。野手はもっと深刻で、ホームが広い球場といっても長打力不足は顕著で、西川が抜けると機動力もダウン、リーグワーストの失策で守備もダメ…と優先順位をつけて臨む必要がある。

 投手では大谷智久(ロッテ)は先発もリリーフもこなせるベテラン、東明大貴オリックス)は先発、リリーフで内竜也(ロッテ)は抱えても問題ないと思うし、風張蓮(ヤクルト)は大学時代を北海道で過ごした縁もある。野手では、白崎浩之(オリックス)も地元出身のスラッガー、長距離砲ではボーア(阪神)は、もう一シーズンくらいは見てみたい。機動力と守備力では永江恭平(西武)は、打撃に期待しなければ両方の課題を埋めてくれると思う。

・投手~浦野博司/マルティネス/村田 透/鈴木遼太郎/宮台康平/吉田侑樹

・野手~黒羽根利規/ビヤヌエバ/白村明弘/姫野優也

 

オリックス(55名+6名)

 黒木優太と山崎颯一郎の両投手の支配下登録と、コーチ兼任だが能見篤史阪神)の入団が決まり、現時点で64名になる。外国人選手は4名で、投打に1名の補強で済みそうで、あと2~3名は余裕がある。2年連続最下位で課題は多いが、着実に駒は揃ってきており、ピンポイントで補強を進めたい。

 投手では左腕が不足気味だが、大学~社会人を関西で過ごした松永昴大(ロッテ)への興味はないようだ。チームは即戦力より若手育成に舵を取っており、近藤弘樹(楽天)や藤井皓哉(広島)は25歳と若く、獲得しても面白いかもしれない。

 野手では捕手と三塁手、外野手の層を厚くしたい。捕手では山下斐紹(楽天)に黒羽根利規(日本ハム)は守備に定評があり、内野ならどこでも守れる西田哲朗(ソフトバンク)や藤井亮太(ヤクルト)、外野では田代飛翔(ソフトバンク育成)あたりはチームにフィットするように思える。

 投手~近藤大亮/東明大貴/アルバース/左澤 優

 野手~飯田大祐/山崎勝己/白崎浩之/小島脩平/ロドリゲス/西浦颯大

    松井佑介/根本 薫 

【番外編】日本シリーズ、私にも言わせて

 今年の日本シリーズは、ソフトバンクが巨人を圧倒した。史上初の2年連続4タテで、セ・リーグを独走した巨人は何もできないままの惨敗だった。私は物心ついた頃からパ・リーグ派、それもロッテのファンで、筋金入りのアンチ巨人だったため、結果だけを見れば大満足だが、プロ野球ファンとしては、こんな日本シリーズは見たくないです。そこで私にも少し言わせてください。

 

1.パ・リーグが圧倒するセ・リーグに危機感はあるのか

 ここ10年で、セ・リーグが日本一になったのは、12年の巨人(相手は日本ハム)のみで、8年連続でパ・リーグが制している。実は01年~10年の間もセ・リーグが制したのは、09年の巨人と07年の中日(相手はともに日本ハム)、02年の巨人(VS西武)、01年のヤクルト(VS近鉄)で、2000年代はパ・リーグが15勝5敗と圧倒している。

 今年は中止になったが、05年から始まった交流戦も15年の歴史でセ・リーグが勝ち越したのは09年の1回のみで、05年~09年まではそれなりに拮抗していたものの、10年からはパ・リーグが圧倒しており、通算成績はパが1,102勝、セが966勝が現状だ。

 こういった分かりやすい数値に顕れている結果を、セ・リーグ6球団がどう捉えたのか甚だ疑問でしょうがない。少なくとも今年、巨人の独走を許した5球団の責任は大きいと思う。

 パ・リーグには盟主はいない。60年代は南海、70年代は阪急、80年代は西武が黄金期を迎え、90年代は西武とオリックス近鉄が鎬を削った。00年代前半はダイエー、後半は日本ハムがリーグの主役で、10年代はソフトバンクの牙城に西武と楽天、そしてロッテがその座を脅かすようになった。

 セ・リーグは今も昔も巨人だ。「巨人が優勝から何年遠ざかった」「やはり巨人が強くなくては面白くない」など、私が幼いころに聞いた声が今でも聞こえる。巨人さえいてくれれば興行面では何とかなるだろうという、他の5球団の巨人に依拠する過去からの甘えの体質がリーグの停滞を招いたのではないだろうか?

 

2.リーグ全体の意識があるパ・リーグと、個のセ・リーグ

 ダルビッシュツイッターで、パとセの体質の違いについて述べていた。パ・リーグはトレーニング設備や方法などが自由に共有できる環境だったが、交流戦などでセ・リーグの球場に行くと、立ち入り禁止の場所やグラウンドの使用時間の制限などが多く驚いたとコメントしていた。

 こういった意識はドラフトにも見れる。パ・リーグは力のある選手には、リーグ上げて獲りに行く傾向が強い。

 ・岡田彰布(79年)…西武、ヤクルト、南海、★阪神、阪急、近鉄

 ・清原和博(85年)…南海、日本ハム、中日、近鉄、★西武、阪神

 ・野茂英雄(89年)…ロッテ、大洋、日本ハム阪神ダイエー、ヤクルト

             オリックス、★近鉄

 ・小池秀郎(90年)…西武、近鉄日本ハム、★ロッテ、広島、中日、ヤクルト、

             阪神

 ・福留孝介(95年)…ヤクルト、オリックス、ロッテ、巨人、日ハム、中日、★近鉄

 ・菊池雄星(09年)…日本ハム、中日、楽天、ヤクルト、阪神、★西武

 ・大石達也(10年)…★西武、阪神オリックス、広島、楽天、横浜

 ・清宮幸太郎(17年)…ソフトバンク阪神楽天、巨人、★日本ハム、ヤクルト

              ロッテ

 6球団以上、1位で重複した選手を並べてみたが、セ・リーグパ・リーグの指名を上回った選手はいない。6球団以下の主な選手でも、松坂大輔は3球団競合でパが2球団、田中将大中田翔は4球団競合でパが3球団、松井裕樹も5球団競合でパが3球団と、近年でセが多かったのは松井秀喜(4球団競合でパはダイエーのみ)くらいで、スター選手をリーグ全体で獲りに行く姿勢が窺える。

 例え自分のチームに入団しなくても、リーグの活性化に繋がるのであれば、全体で獲得していく姿勢も差になっているんだろうと以前から感じていた。今年のドラフトもともに4球団競合の佐藤輝明はセパ半々だったが、早川隆久はパが3球団だった。広島とDeNAはともに2年連続で単独指名を成功させて評価する声もあるが、私は評価できない。

 良い投手が良い打者を育て、良い打者が投手を育てることで、リーグ全体のレベルアップに繋がり、スター選手を見るために球場に足を運ぶ。今じゃ人気も実力もパ・リーグのほうが上になってしまった。昨年のドラフトも、佐々木朗希を指名したのは4球団すべてパ・リーグ、奥川恭伸の3球団はすべてセ・リーグ…。この辺りにリーグが求めるものの違いを感じるのは私だけだろうか?

 

3.残念だった丸キック

 今回の日本シリーズで、不名誉な名前が付いたプレーが「丸キック」で、これは本当に残念だった。野球を経験した人なら多くの人が断言すると思うが、あれは故意プレーと言われても致しかたない。

 私も草野球愛好者で、ここ4~5年はファーストを守る機会が多くなったが、一度も足を蹴られたことはない。17年の夏の甲子園大会の大阪桐蔭VS仙台育英戦で、仙台育英の打者走者が一塁を駆け抜ける際、今回と同じように大阪桐蔭一塁手の足を蹴り上げたプレーがあった。私は学生時代に野球部に所属したことがなく、初めて見たプレーだったので、草野球チームで硬式野球部に所属していたメンバーに聞いてみた。答えは全員「あれは故意」という返答だった。

 そんなプレーが、いきなり日本シリーズの初戦で出てしまった…。翌日、丸は中村に謝罪して和解したと言ったが、謝って済む問題なのだろうか。実際に中村が蹴り上げられたとき、千賀は怒りの形相でアピールしていた。当人同士たちが和解して済んだから良しではなく、巨人も注意を促すとか、何らかのペナルティ的な措置を取る必要もあると思う。日本最高峰のゲーム、しかもその初戦で起きたことが残念でならない。

 その丸のプレーをさらに印象を悪くさせたのが、第3戦で見せた長谷川のヘッドスライディングだった。35歳でかつて首位打者を獲ったベテランが、追加点を狙う場面でヒット性の当たりを、二塁手・吉川尚の好捕でアウトになったが、一塁にヘッドスライディングをし、悔しさを露わにグラウンドに拳を叩きつけたシーンは、如実にチームの違いを顕していた。負けても勝っても、こういったプレーを観たいんです。ファンは!

 

4.セ・リーグパ・リーグの差を埋められるのか

 最後に、現在のセ・パの差は埋められるかと言えば、答えは否だと思う。ラミレス監督は、「パ・リーグの野球は、セ・リーグの5年先を行っている。150キロを超える投手はパは7割いるが、セは4割」というコメントを見たが、現場責任者の声だけに重みを感じる。

 DH制の是非が違い(個人的は思わないが…)とも言われている。元ロッテの里崎氏がTV番組で、「セが勝てば、DH制の有無が原因なんていう議論はなくなります」と言っていて、なるほどその通りだと思ったが、ここまでコテンパンにされると導入の論議が活発になってくるだろう。

 個人的には、「つべこべ言わず1年限定でも良いので、一度やってみれば良いのでは?」と思う。やってみることでどういう風にセの野球が変わり、パとの差が縮まるのか試してみれば良いと思う。合わなければ戻せば良いだけの話だと思うが、どうもそうはいかないらしい…。

 それよりドラフト愛好者から見れば、ドラフトから違うんだよな~と突っ込みたくなる。今年もソフトバンクの井上朋也、ロッテの中森俊介に西川僚祐、西武の渡部健人に山村崇嘉、楽天の早川隆久、日本ハムには五十幡亮汰、オリックスの山下舜平大に元謙大、来田涼斗などスケール感のある選手が多く指名されている。

 巨人は今年もFAで、DeNAの井納翔一や梶谷隆幸の獲得を検討しているらしいが、本当に2年連続4連敗を学んでいるのか疑問に思ってしまう。同じリーグの相手チームの戦力を削いでどうする?リーグ全体でレベルアップしていかなくてはならないのに、自軍の戦力だけを厚くして独走してもチームは強くならない。また、日本シリーズパ・リーグのチームに返り討ちになるだけだ。

 ここは思い切って、例えばJリーグのような期限付き移籍でも良いので、大胆なトレードでも実現すれば本気度が伝わるのではないか。例えば丸とオリックスの山本、岡本とソフトバンクの東浜、坂本とロッテの石川など、主力の武者修行など自軍の選手のレベルアップが何よりも必要だと思うのは私だけだろうか? 

20年セ・リーグの退団選手~最多は巨人、最小はDeNAと広島

 選手の現況は11/23時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

読売ジャイアンツ(24名)

 チーム強化のため、大きく選手を入れ替えると宣言した通り、なんと両リーグ最多の24名(うち育成選手10名)が戦力外通告を受けた。ただ、ともにドラフト1位の鍬原と堀田をはじめ、高木と直江、山下の6名は育成契約になる。宮國が現役続行を希望しているが、他の選手は去就未定。引退は岩隈のみで、MLBからNPBに復帰したものの一度も登板することなくチームを去る。

 今年は支配下→育成契約への変更に賛否両論が起きた。個人的には制度としての運用は間違っておらず、故障を治すために契約を変更することも良いと思うが、今回に至っては評価できない。鍬原は3年、堀田は僅か1年でドラフト1位選手が育成契約では、「巨人の1位指名って、そんなに軽かったっけ?」と考えてしまう。また山下と直江は故障の治療が理由だが、山下は昨年支配下になり1年で逆戻り…故障したら即育成契約では、選手もやり切れないと思う。

 ここで惜しいのは藤岡だ。本格派左腕として3球団競合のなかロッテへ入団し、入団時はルーキーではなく、FAで二桁勝てる投手が入団したくらいの評価だった。ただ、メンタル面や制球力、ストレートを活かす球種が課題で、いつの間にか自慢のストレートも通用しなくなってしまった…。個人的に応援していた選手なので、移籍した日本ハムや巨人での復活を期待したが、その力を発揮することはできなかったのが残念だ。

 支配下選手は55名まで減り、今ドラフトで7名(投手④/捕手①/内野手②)を指名し62名。外国人ではパーラの去就が不明だが、得意のFAで2~3名獲得しても65名前後で、これ以上の戦力外通告はないと思うが…。

 投 手…岩隈久志(99年/近⑤)宮國椋丞(10年/②)藤岡貴裕(11年/ロ①)

       高木京介(11年/④)田原誠次(11年/⑦)鍬原拓也(17年/①)

       直江大輔(18年/③)堀田賢慎(19年/①)※巽 大介(15年/⑥)

       ※橋本篤郎(15年/育⑥)※高井 俊(16年/育①)

 捕 手…※高山龍太朗(16年/育⑥)

 内野手…吉川大幾(10年/中②)※比嘉賢伸(17年/育①)※折下光輝(17年/育⑦)

      ※山上信吾(17年/育②)

 外野手…加藤脩平(16年/育②)村上海斗(17年/⑦)山下航汰(18年/育①)

       ※笠井 駿(17年/育③)※荒井颯太(17年/育⑧)

 外国人…ディプラン(投手)※ラモス(投手)モタ(外野手)

【予想背番号】

 ①平内/15 ②山崎/54 ③中山/46 ④伊藤/32 ⑤秋広/63 ⑥山本一/57

 ⑦萩原/66 

 

阪神タイガース(10名)

 平均年齢が高いチームにあって、今年もベテランには風当たりの強いオフになった。藤川は盛大な花道のなか引退したが、能見と福留、上本、伊藤隼は現役続行を希望し、高野と福永はトライアウトを受験する。

 昨年の鳥谷に続き、今年もかつての功労者に対し、後味の悪い退団劇になった。能見はエースとして103勝を上げ、昨年からはチームのために中継ぎを務め、今年は黙々と敗戦処理をこなした。福留も将来の幹部候補生として、MLBから三顧の礼で迎えられた。確かにコロナ禍のなかで軽率な行為は褒められたものではないが、それが今回の退団の理由にはならないと思う。選手会長も務めた上本へも非情な通告になった。

 結局は引退を決めて欲しい選手には、シーズン中に冷や飯を食わせて、引退への雰囲気作りをし、それでも現役続行を希望する選手は、バサッと切るスタイルは阪神の体質とも言える。巨人と並ぶ人気チームだが、このようなことを続けていれば、FAでの移籍やドラフトでも敬遠され、決して良い結果にはならないと思うが…これも伝統か…。

 支配下選手は60名で、今ドラフトの8名(投手④/捕手①/内野手③)を加え、支配下は68名になった。外国人選手が8名おり、ボーア(これも毎年恒例のバース二世)は退団、ガルシアと呂彦青も退団濃厚、スアレスはMLB移籍の可能性もあり、外国人選手を5~6名にするのであれば、もう1~2名は空けておきたいところだ。 

 投 手…藤川球児(98年/①)能見篤史(04年/自)横山雄哉(14年/①)

       高野圭佑(15年/ロ⑦)福永春吾(16年/⑥)

 捕 手…岡崎太一(04年/自)

 内野手上本博紀(08年/③)

 外野手…福留孝介(98年/中①)伊藤隼太(11年/①)

 外国人…ボーア(内野手

【予想背番号】※佐藤輝は決定

 ①佐藤輝/8 ②伊藤将/13 ③佐藤蓮/30 ④榮枝/40 ⑤村上/41 ⑥中野/00

 ⑦高寺/57 ⑧石井/54

 

中日ドラゴンズ(13名)

 エース大野雄の残留に成功した中日。その反動ではないと思うが5名の外国人(育成1名含む)がチームを去る。日本人選手では投手が6名と多く、吉見は引退、小熊と伊藤準、鈴木翔はトライアウトを受験、唯一の野手の石川駿は引退を決めた。

 鈴木翔はエース候補として期待されたが、18年オフに右手の血行障害の手術を受け、徐々に回復を見せていたが無念の戦力外になってしまった。まだ若く素質は申し分ないだけに、再起を果たしてほしい選手だ。

 石川駿は、昨年ウエスタンリーグで最高打率と最高出塁率を記録し、遅咲きのブレイクが期待されたが、故障で結果を出すことができなかった。これで14年のすべて大学・社会人で占めた即戦力ドラフトで、獲得した9名中6名がチームを去ることになった。

 支配下選手は60名で、今年指名した6名(投手④/内野手①/外野手①)を加え66名。外国人選手が現段階で3名しかおらず、もう2~3名は必要になり、支配下に余裕がなく、トレードや戦力外通告がまだあるかもしれない。

 投 手…吉見一起(05年/希)伊藤準規(08年/②)小熊凌祐(08年/⑥)

       鈴木翔太(13年/①)阿知羅拓馬(13年/④)大蔵彰人(17年/育①)

       ※浜田智博(14年/②)

 捕 手…なし

 内野手…石川 駿(14年/④)

 外野手…なし

 外国人…ゴンサレス(投手)ロメロ(投手)アルモンテ(外野手)

       シエラ(外野手)※ブリトー(投手)

【予想背番号】

 ①高橋宏/20 ②森/19 ③土田/39 ④福島/64 ⑤加藤翼/65 ⑥三好/45

 

★横浜D℮NAベイスターズ(9名)

 昨年は退団する選手の半数が引退を決めたが、今年は引退を表明している選手は現段階ではゼロで、石川とロペス(来年から日本人選手扱い)、パットンが現役続行を希望している。また、井納と梶谷がFAを検討しており去就が未定だ。

 今回の戦力外通告を見ても、正直驚きはなかったが、ロペスとパットンの退団は意外だった。ロペスは来日10年目を迎え、来シーズンからは日本人選手扱いになる。衰えは隠せないが、ソトの去就が微妙のなか、代打や堅実な一塁守備はまだまだ戦力になると思う。パットンは在籍4年で、219試合登板で101ホールドを上げたセットアッパー。奪三振率が高く(反面、与四球率も高いが…)、MLBからも注目されており、ロペスともにやや不可解な戦力外になった。

 支配下選手は58名で、今年のドラフトで6名(投手④/内野手②)をを指名し64名になる。ただ、通算50勝の井納、今年打率2位の梶谷、ソトの残留交渉が課題になるが、マネーゲームになると太刀打ちすることが難しく、この3名が残るか、移籍するかでチームの補強方針が変わり、まだ動きがありそうだ。

 投 手…藤岡好明(05年/ソ大社③)古村 徹(11年/⑧)浜矢広大(13年/楽③)

       赤間 謙(15年/オ⑨)

 捕 手…なし

 内野手…石川雄洋(04年/⑥)飛雄馬(11年/⑦)百瀬大騎(14年/⑥)

 外野手…なし

 外国人…パットン(投手)ロペス(内野手

【予想背番号】※入江・牧は決定
 ① 入江 /22 ②牧/2 ③松本/40 ④小深田/46 ⑤池谷/49 ⑥高田/56 

   

広島東洋カープ(9名)

 昨年は退団選手の半分が引退を決めたが、今年は石原慶のみで、小窪は他球団のオファーを待って、トライアウト受験も検討している。他に藤井がトライアウト挑戦、戸田は育成契約を打診された。また、沢村賞も獲得したジョンソンがチームを去る。

 覚悟はしていたが、石原慶が引退を決めた。ロッテの細川と並び、捕手らしい捕手だった。キャッチングとリードが巧く、強肩で意外なところで長打を打つ。まさに8番捕手の似合う選手で、ベテランになり出場機会は減ったが、ベンチにいるだけで安心感があり、こういった選手が引退するのはやはり寂しいものだ。ただ、石原慶の背番号31は、若手の坂倉に受け継がれ、こういった配慮は観ていて嬉しい。

 支配下選手は58名で、今年指名した6名(投手③/捕手①/内野手①/外野手①)に、新外国人選手を加えると支配下ギリギリで、田中広にFA移籍の可能性があるが、逆にFAでの獲得がない分、更なるトレードや戦力外の動きがありそうだ。 

 投 手…戸田隆矢(11年/③)藤井皓哉(14年/④)平岡敬人(17年/⑥)

 捕 手…石原慶幸(01年/④)

 内野手小窪哲也(07年/大社③)

 外野手…なし

 外国人…ジョンソン(投手)モンティージャ(投手)ピエラ(外野手)

       ※メナ(投手)

【予想背番号】
 ①栗林/20 ②森浦/13 ③大道/12 ④小林/68 ⑤行木/61 ⑥矢野/53

 

東京ヤクルトスワローズ(15名)

 阪神と並び平均年齢の高いチームで、今年も多くのベテランがチームを去る。投手では五十嵐と中澤、山中、捕手の井野が引退する。近藤と平井、藤井が現役続行を希望しており、藤井はトライアウト受験を表明している。

 驚いたのはリーグ最下位の投手陣にあって、大量8名の投手を戦力外にした。チーム成績も2年連続の最下位で、チームを刷新する意味もあると思うが、リリーフの近藤や引退を決めたがサブマリンの山中の両ベテランなどは、若手が多くなった投手陣のなかで、必ず経験が活きてくる場面はあり、正直勿体ない印象のほうが強い。

 今オフ、風張が戦力外を受けて14年に入団した選手がすべて退団した。7名入団して在籍2年で2名、3年目にはドラフト1位の竹下を含む3名が退団した。この年は1位で投手では山崎康(横浜)や有原(日本ハム)、高橋光(西武)。野手でも中村奨(ロッテ)や岡本(巨人)、下位指名でも西野や小田(ともにオリックス)がおり悪い年ではなかったが、僅か6年で全員退団はスカウティングや育成能力が疑われても致し方なく、ここ数年の低迷も頷ける。

 支配下選手は55名で、今ドラフトの6名(投手③/捕手①/内野手①/外野手①)を加えても61名と少ない。チームの顔である山田哲とクローザーの石山の慰留に成功し、小川を残すだけだ。外国人選手は現在3名で、もう2~3名は必要だがそれでも人数に余裕はあり、あとはチームの補強に努めていくだけだ。

 投 手…五十嵐亮太(97年/②)近藤一樹(01年/近⑦)山田大樹(06年/ソ育①)

       中澤雅人(09年/①)平井 諒(09年/④)山中浩史(12年/ソ⑥)

       田川賢吾(12年/③)風張 蓮(14年/②)※ジュリアス(15年/④)

 捕 手…井野 卓(05年/楽大社⑦)

 内野手…藤井亮太(13年/⑥)

 外野手…上田剛史(06年/高③)田代将太郎(11年/西⑤)

 外国人…イノーア(投手)エスコバー内野手

【予想背番号】
 ①木澤/20 ②山野/34 ③内山/33 ④元山/0 ⑤並木/50 ⑥嘉手苅/54

20年パ・リーグの退団選手~最多はソフトバンクと楽天、最小は千葉ロッテ

 選手の現況は11/19時点のもので、選手名の横の年数は指名年度、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約の選手です。

 

福岡ソフトバンクホークス(14名)

 日本シリーズで巨人に圧勝して、パ・リーグ初の4連覇を決めた翌日に3選手が加わり、13選手が戦力外通告を受けた。吉住と田代が育成契約を打診されているが、吉住は態度を保留、田代は自由契約選手を選択しトライアウト受験を決めた。内川は他球団へ移籍、松田遼と加治屋も現役続行を表明し、ホークスの強力投手陣からはじき出されたよう格好で、他球団からのオファーは十分に可能性はある。このほかに堀内と大本がトライアウトに向け準備をしている。

 驚きは内川の退団だろう。FAで横浜より移籍し、セ・パ両リーグで首位打者を獲得し、主力中の主力としてホークスを支えた。今年は故障もなく、ファームでも打率.327の好成績を残しており、39歳とは言えまだまだやれる。ヤクルト移籍が有力視され、10年振りにセ・リーグで内川が見られるかもしれない。

 17年のドラフト1位の吉住は、1位指名も驚きだったが、3年で戦力外(育成契約打診も保留)も驚きで、今年は2軍でも登板がなかった。育成の田代は昨年、ファームで打率3割を超え支配下目前だったが、育成契約継続を打診され、自由契約を選んだ。昨年同様の理由で退団し、ヤクルトで44試合に登板した長谷川宙輝の活躍が刺激になったのかもしれない。

 支配下選手63名に、今年のドラフトではすべて高校生で5名(投手②/捕手①/内野手①/外野手①)を指名し、現状68名で支配下ギリギリだ。6名いる外国人選手(バレンティンを除く)ではサファテとバンデンハークの去就が微妙で、長谷川がFA行使を検討しているが、更なる戦力外やトレードで2~3名程度は空けておく必要があり、まだ動きがまだありそうだ。

 投 手…松田遼馬(11年/神⑤)加治屋蓮(13年/①)吉住晴斗(17年/①)

       ※小澤怜史(15年/②)※野沢佑斗(15年/育成①)※渡辺健史(15年/育⑤)

 捕 手…※堀内汰門(14年/育④)

 内野手内川聖一(00年/横①)西田哲朗(09年/楽②)※古沢勝吾(14年③)

 外野手…※大本将吾(16年/育①)※田代飛翔(16年/育③)※清水陸哉(16年/育⑤)

       ※日暮矢麻人(17年/育⑤)

【予想背番号】

 ①井上/22 ②笹川/26 ③牧原巧/43 ④川原田/46 ⑤田上/70

 

千葉ロッテマリーンズ(8名)

 若手の活躍もあり、07年以来の2位で終えたロッテ。戦力外の顔ぶれを見ても驚きはなく、細川が引退を決め、内と大谷、渡邊が現役続行を希望し、原は育成契約を打診されており、この他の選手の去就は未定だ。ただ、内も大谷も実績は十分だが、ともに35歳でハードルは高いだろう。

 内ほど、“”たら、れば”の選手もいないだろう。1年目からファームで最優秀救援投手に輝き、誰もがクローザー誕生を予感したが、右肩に右肘、右足首と再三の故障に見舞われた。17~18年のシーズンで42セーブを上げ、クローザーとして活躍したものの、昨年また右肘を手術し一軍登板はなかった。まさしくケガさえなければの好投手だった。

 支配下選手は63名で、今年指名した5名(投手③/内野手①/外野手①)を加えて68名になった。ただ、今年のロッテはこれからが大変で、今年の強力リリーフ陣を形成した唐川と澤村に加え、貴重な左のリリーバー松永、ベテランの荻野貴と清田がFAを検討している。ハーマンやチェン・ウェインフローレスも残留は決まっておらず、最悪の場合、益田のみを残してリリーフ陣の再編成が迫られるかもしれない。

 当然、全員の残留交渉が最優先する一方、戦力強化のために更なる補強も検討している。仮に全員の残留が決まれば、支配下枠は1名しなかなく、育成選手の左腕・本前の評価が高く支配下目前で、あと3~4名ほどは空けておく必要があり、まだ動きがありそうだ。

 投 手…内 竜也(03年/①)大谷智久(09年/②)原  嵩(15年/⑤)

       渡邊啓太(17年/⑤)※鎌田光津希(18年/育①)

 捕 手…細川 亨(01年/西自)

 内野手…細谷 圭(05年/高④)

 外野手…三家和真(11年/広育④)

【予想背番号】

 ①鈴木/21 ②中森/55 ③小川/35 ④河村/56 ⑤西川/61

 

埼玉西武ライオンズ(9名)

 現役引退は3名で、相内は相次ぐトラブルで球団も遂に見切りをつけ、藤田はイップスに陥り引退を決めた。クローザーとして通算52セーブの高橋朋は、故障で育成契約となったが、遂に復活することなくアカデミーコーチでチームに残る。18年最多勝の多和田は病気療養のため育成契約、野田がトライアウト受験を表明している。

 正直、野田以外は驚きがなかったが、永江は残念だった。16年に源田が遊撃手の定位置を掴むまでは、西武の遊撃はレギュラー不在で、永江は候補の一番手だった。堅実な守備に俊足を誇ったが、通算打率.153となんせ打てなさ過ぎた…。源田入団以降、出場試合数が激減し、何度もチャンスを与えられるはずもなく無念の戦力外になった。

 支配下選手は59名で、今ドラフトで最多の7名(投手②/内野手③/外野手②)を指名し66名になり、戦力外通告もほぼ終わったと言える。毎年、恒例しつつあるFA移籍では、クローザーの増田が態度を表明しておらず、今年負けなしの絶対的な守護神だけに全力で慰留したい。外国人選手ではノリンのみ残留が微妙で、FAでの選手獲得も名前が挙がっていないが、左腕の先発候補で日本ハムの吉川を獲得し、補強はトレードや外国人選手が中心になりそうだ。

 投 手…相内 誠(12年/②)多和田真三郎(15年/①)野田昇吾(15年/③)

       國場 翼(15年/⑧)藤田航生(16年/⑦)※高橋朋己(12年/④)

 捕 手…なし

 内野手永江恭平(11年④)森越祐人(10年/中④)水口大地(12年/育①)

 外野手…なし

【予想背番号】

 ①渡部/8 ②佐々木/23 ③山村/32 ④若林/0 ⑤大曲/57 

 ⑥ブランドン/59 ⑦仲三河/67 ※吉川/41

      

東北楽天ゴールデンイーグルス(14名)

 昨年はリーグ最多の17名、今年も現段階でリーグ最多の14名がチームを去る。久保が2軍投手コーチ、渡邊直は一軍打撃コーチに就任し、渡邊佑は育成契約を打診されている。わずか3年でクビになった近藤、2度目の戦力外を受けた由規が現役続行を希望し、近藤はトライアウト受験を表明している。

 昨年も後味の良くない戦力外になったが、今年も同じだった…。青山は通算15年で625試合で45セーブ、159ホールドの功労者で、昨年の嶋同様にもう少し上手いやり方があっただろう。結果、青山は引退を決めたが、これほどの実績を残した生え抜きの選手が公式戦で引退試合もなく、チームを去るのは寂しい限りだ。近藤も驚きで、17試合登板で未勝利で結果は出ていないが、即戦力のドラ1が大きなケガがあった訳でもないのに3年で戦力外は首を捻ってしまう。

 支配下選手は61名で、今ドラフトで6名(投手⑤/内野手①)を加え、支配下は67名になった。塩見や島内、岡島のFA取得選手も残留を決め、今年はFA選手の獲得はしないが、もう1~2名は空けておきたい。外国人選手ではブラッシュの去就が不明のなか、新外国人選手で右の大砲ディクソンを獲得した。

 投 手…久保裕也(02年/巨自)由規(07年/ヤ高①)熊原健人(15年/横②)

       近藤弘樹(17年/①)渡辺佑樹(17年/④)青山浩二(05年/大社③)

     ※木村敏(16年/育④)

 捕 手…山下斐紹(10年/ソ①)

 内野手渡辺直人(05年/大社⑤)※南 要輔(16年/育②)

       ※松本京志郎(17年育②)

 外野手…フェルナンド(14年/④)※耀飛(17年/⑤)※中村和希(17年/育③)

【予想背番号】
 ①早川/26 ②高田/12 ③藤井/47 ④内間/40 ⑤入江/50 ⑥内/63

      

 北海道日本ハムファイターズ(9名)

 戦力外通告は7名で、浦野と白村は現役引退。吉田侑と黒羽根は現役続行を希望し、鈴木遼と宮台、姫野は育成契約を打診されている。また、吉川は西武へ金銭トレードされ、現在、支配下登録選手は59名で、ドラフト指名6名(投手②/捕手①/内野手①/外野手②)を加えてようやく65名になった。

 申し訳ないが、吉田侑や姫野あたりの戦力外を判断するのに、随分と時間がかかったなというのが正直な感想である。エースの有原と主力の西川がポスティングでのMLB挑戦を表明し、2年連続5位に沈み、チーム再建が必要のなか、スピードを上げて対応していかないところを、何をモタモタしていたのかと思う。

 育成の日ハムも最近は若手が伸び悩み、元々FA獲得には消極的なチームで、外国人選手もバーヘイゲンとロドリゲス以外は未定等々、来年に向けてのスタート遅れは否めない。歴代チーム最長の10年目を迎える栗山監督。昨年は「鬼になる」と言い、今年は「情を捨てる」と言う。今後、その言葉がどう結果として出るか注目したい。

 投 手…浦野博司(13年/②)吉田侑樹(15年/⑦)鈴木遼太郎(17年/⑥)

       宮台康平(17年/⑦)

 捕 手…黒羽根利規(05年/横高③)

 内野手…なし

 外野手…白村明弘(13年/⑥)姫野優也(15年/⑧)

 外国人…マルティネス(投手)ビヤヌエバ内野手

【予想背番号】
 ①伊藤/17 ②五十幡/52 ③古川/43 ④細川/50 ⑤根本/56 ⑥今川/44

 

オリックスバファローズ(11名)

 戦力外通告支配下登録10名と育成契約1名の11名で、チームを支えた山崎と小島、松井佑が引退を決めた。東明と白崎が現役続行を模索しており、白崎は貴重な右の長距離砲で、欲しがるチームはあるかもしれない。近藤と西浦はオフに手術を要するため、一旦は育成契約になる。特に西浦は「特発性大腿骨頭壊死症」をいう国が指定する特定疾患の難病で、簡単に口に出せる病気ではないが、病に打ち勝ち元気な姿で戻ってきてほしい。

 チームを去る選手に思いで深い選手が多い。試合中に打球を顔面に受け前歯を折りながらマスクを被り続けた山崎、内外野守れたユーティリティプレーヤーの小島、松井佑も中日から移籍後よく打った。子連れルーキーで話題になった飯田などは、密かに応援していたが、在籍4年で1本のヒットも打つことも出来なかった。

 支配下選手は59名で、今ドラフトの6名(投手③/捕手①/外野手②)を加えても64名と、戦力外はほぼ終わったと言える。外国人選手もアルバースとロドリゲスが残留微妙だが、ここは新外国人2名での穴埋めになる。阪神の能見獲得に興味を示すなど、昨年もFAには参戦していないが、ドラフトが育成主体になっていることを鑑みれば、今年はFAで戦力の底上げが必要だと思う。

 投 手…東明大貴(13年/②)近藤大亮(15年/②)左澤 優(18年/⑥)

 捕 手…山崎勝己(11年/横②)飯田大祐(16年⑦)

 内野手…白崎浩之(12年/横①)小島脩平(11年/⑦)※比屋根彰人(17年/育③)

 外野手…松井佑介(09年/中④)根本 薫(16年/⑨)西浦颯大(17年/⑥)

【予想背番号】
 ①山下/12 ②元/37 ③来田/38 ④中川颯 /45 ⑤中川拓/62 ⑥阿部/56

 

2020年ドラフト寸評~成功・失敗した球団(後編)

 ドラフトが終了し、いよいよペナントレースも大詰め。同時に戦力外通知も始まりました。毎年、入る人がいれば、出る人もおり、期待が膨らむ反面、寂しい時季になる。では後半にお付き合いください。

 

△ロッテ(65点)

 ここ数年、秀逸なドラフトを展開していたロッテ。今年は千葉出身でロッテファンを公言していた早川(楽天)の指名をいち早く公言したが、4球団競合のなか既に当たりクジは残っておらず、早川を外したあと、同じ左腕の鈴木昭汰(法大・投手)をヤクルトとの競合の末獲得した。

 とにかく今年は不足している左腕投手の強化が最優先課題で、徹頭徹尾で即戦力左腕の獲得を優先した。その鈴木は早川と同様に高校時代から注目された投手で、内角への制球に長けた左のパワーピッチャーで、スタミナもあり先発ローテ候補だが、強気な投球スタイルを活かしリリーフへの期待も高まる。

 2位で中森俊介(明石商高・投手)の獲得は大きかった。外れ1位指名もあると思っていたので、ロッテの指名順位が21番目でよく残っていたと思う。今年の高卒投手のなかでは実績は一番で、高校生ながら即戦力評価を受けるのも頷ける。

 3位の小川龍成(国学院大・内野手指名も悪くはないが、小川は遊撃の守備はピカ一で俊足だが、打力に課題がある。リーグで最も失策数が少なく、レギュラーの藤岡と同じタイプだけにどう活用するか注目したい。

 4位の河村説人(星槎道都大・投手)は190センチの長身右腕で、即戦力と言うよりは伸びしろが期待される大学生。5位の西川僚祐(東海大相模高・外野手)は、高校通算55本塁打スラッガーで、まだ粗削りだが将来性は高く、3~4年後の主力を目指したい。

 育成選手は4人の指名で、注目は育成3位の山本大斗(開星高・外野手)。西川と同様、右打ちのスラッガーで逆方向にも長打を打て、強肩で守備も良く2年以内での支配下が目標になる。

 1~2位の指名は上出来で、全体的に的確な補強ができ悪くないが、3位以降で最大の弱点である打てる野手の獲得(特に右打ち)が出来ず、高校生捕手の獲得も育成での補強になった。事前に本指名が5名と表明し、育成を増やすと言っても4名ではインパクトも不十分だった。

 

△広島(65点)

 リーグ3連覇したのは僅か3年前だが、もっと経ったような感じを受け、Bクラス常連だった暗黒期の不安が押し寄せてきた。私は以前より極端に育成路線に舵を取ったドラフトに過信とも言える心配があった。思った以上に若手が伸びず、自慢の育成が進まないなか今年は即戦力中心の指名になった。

 今年は投手陣が崩壊したなか、1位は単独で栗林良史(トヨタ自動車・投手)を指名した。高橋(中日)が進学していれば、中日と間違いなく競合していたので、広島にはラッキーな形になった。栗林は153キロのストレートを軸に変化球の精度も高く、高校時代は野手でフィールディングも良く、先発ローテでも計算できる即戦力だ。

 2位以下も即戦力投手で占め、森浦大輔(天理大・投手)は、細身だが大きな故障もない体の強さもセールスポイントで、制球力の良い技巧派左腕だ。高い制球力ゆえにゲームメークにも長け、栗林とともに先発ローテ入りの期待がかかる。

 3位の大道温貴(八戸学院大・投手)もゲームメークに長け、スライダーが武器のバランスの良い投手で、制球力も良くスタミナも十分だ。タフな選手だけにリリーフでの適性もあるが、先発が主戦場でルーキー3人開幕ローテ入りも夢ではない。

 4~5位も投手で、4位の小林樹斗(智弁和歌山高・投手)は外れ1位指名の可能性もあった逸材で、昨夏より急成長した将来のエース候補だ。5位の行木俊(四国IL徳島・投手)は、高身長から投げ下ろす速球とスライダーが武器の本格派。まだ19歳で投手経験は高2からという素質型の投手。

 6位で唯一の野手で、強肩と堅守、俊足の矢野雅哉(亜大・内野手を指名した。3年秋には首位打者も獲得しており、6位ながら即戦力として評価が高い。育成指名は二俣翔一(磐田東高・捕手)一人だけで、本指名されなかったのが意外だった。捕手ながら一番打者を務める俊足で打撃も良く、育成から正捕手を目指す。 

 ドラフト自体は悪くなく、かつての十八番の社会人1本釣りは広島らしく、現状を考えれば投手中心の指名は納得できる。また、ポスト鈴木で元(オリックス)を2~3位で指名を検討していた記事を見てさすがだと思った。

 ただ、3連覇しているときのドラフトの失敗(言い切るのはまだ早いが…)から大きく方向転換し補強型のドラフトになったのがチーム方針として疑問が残った。

 

ソフトバンク(60点)

 昨年は1位で石川昂(中日)、今年も佐藤輝(阪神)を指名したように野手の世代交代が喫緊の課題と言える。確かにあの投手陣なら、即戦力投手は必要ない。今年はオール高校生の指名になったが、このような指名ができるのも選手層の厚いホークスならではで、補強ポイントを抑えたブレない姿勢はさすがと言える。

 1位指名の井上朋也(花咲徳栄高)は、高校通算50本塁打スラッガー三塁手で、1年夏はレギュラーとして甲子園優勝を経験している。遠くへ飛ばすパワーよりも、逆方向にも打てる技術も持ち合わせており、将来の中軸を担える素材。また、3年夏には一番打者を務めるなど足も早く、しっかり体を作りポスト松田の座を射止めたい。

 2位以降の指名は名前を呼ばれるたびに驚いた。2位の笹川吉康(横浜商高・外野手)は名前を聞いたときは、思わず「誰?」と思った隠し玉だった。ただ、プロフィールを見てみると193センチの大型外野手で、高校通算40本塁打、50メートル6秒の俊足で、柳田を彷彿させるようなスケール感の期待が高まる。

 3位の牧原功太(日大藤沢高・捕手)は総合力の高い捕手で、二塁送球1秒8の強肩だが、一番の自信は打撃と言い切る。2年時には50メートル6秒台の俊足で一番打者も務めた。本人も驚いていたが、下位指名予想のなか3位指名の高評価を受けた。

 4位の原田純平(青森山田高・内野手隠し球で、小兵ながらパンチ力もあり、守備範囲の広さと強肩、且つ俊足で今宮を思い起こさせる選手だ。5位はもっと隠し球田上奏大(履正社高・投手)で、今年の6月までは中堅のレギュラーから投手へ転向し、短い期間にストレートが150キロを超え、ドラフト指名までこぎつけた。

 育成選手は8名で高校生、大学生4名を指名した。育成1位の佐藤宏樹(慶大・投手)は、ケガさえなければ上位指名間違いないしの左腕。ドラフト直前の10月にトミージョン手術を受け、リハビリを兼ねながら育成からの主力を目指す。育成選手が数多く活躍しているチームだけに、佐藤宏にはベストなチームだったと言える。

 正直、井上以外はこの順位以外でも獲得できたと思う。ただ、クローザーの森も指名当初は無名の2位指名で、見込んだ選手を他球団との駆け引きなしに上位でも指名していく根本イズムを感じた指名になった。

 一方であまりにも隠し玉すぎたのも事実で、今回の指名が結果が出るのは3~4年後で、これはこれで楽しみが増えた。

 

△DeNA(60点)

 ここ数年、DeNAをドラフト巧者と呼ぶ声もあるが、私はそうは思えない。おそらく単独指名の成功を見て評していると思うが、ここ数年は重複抽選のリスクを回避して本気でチームを強くしようとする姿勢を感じない。

 おそらく今年も単独指名になるんだろうな…と思って中継を見ていて、早川(楽天)に栗林(広島)、佐藤輝(阪神)を避けての入江大生(明大・投手)指名を見て驚きさえ感じなかった。

 確かに競合は外したときのリスクはあるが、結果抽選で外したが有原(日本ハム)や東浜(ソフトバンク)、松井(楽天)などのエース級は競合覚悟でないと獲得できない。ここを避けていてばかりでは強いチームにはならないと思う。

 前置きが長くなったが、入江は甲子園で優勝したときは4番一塁だったが、今井(西武)が台頭するまではエースで、大学で投手に専念した。3年時までは素質は評価されつつも結果が出なかったが、今年のリーグ戦で153キロ右腕まで成長し、伸びしろもある素質型と言える。

 2位の牧秀悟(中大・内野手の指名は良かった。巧みなバットコントロールで広角に打てる右のスラッガーで、レギュラー不在の二塁と遊撃を本職としており、開幕スタメンも夢ではない。

 3位は地元の松本隆之介(横浜高・投手)で、将来性抜群の左腕だ。188センチの長身から肘を柔らかく使い152キロのストレートを投げ込み、変化球の精度も高い。4位の小深田大地(履正社高・内野手は、名門校で1年よりレギュラーを務め、昨夏の甲子園では3番を打った。高校通算34本塁打の長打力に加えミート力が高い。

 5位は唯一の社会人の池谷蒼大(ヤマハ・投手)で、社会人3年目の21歳の若さも魅力。最速140キロ後半の本格派左腕で、リリーフで結果を出しそうだ。6位も左腕の高田琢登(静岡商高・投手)は、もっと順位が高いと思っていた。最速140キロのストレートを軸に、変化球を駆使した巧みな投球術が武器に三振を奪う。

 育成指名は2名で、いずれも投手。育成1位の石川達也(法大・投手)は、同じ左腕の鈴木(ロッテ)や高田(楽天)の陰に隠れたが、プロでの逆転を狙う。

 今年も指名自体は悪くないが、投手偏重の指名になり。正捕手不在のなか即戦力捕手の獲得や、リーグ最下位の盗塁数を補える俊足の選手の獲得がなかったのはマイナスポイントだ。それよりも1位指名が軽い印象を受け、楽天と同様に場当たり的な指名でチームの方針を感じないのが残念だ。

 

△巨人(55点)

 今年は早々と、1位指名は即戦力野手で、外したときは即戦力投手と明言し、ドラフト前に予想通り佐藤輝(阪神)指名を公言した。ただ、クジ運の悪さは相変わらずで、原監督は引くときにすでに当たりクジはなく、遂に連敗が10まで伸びた。

 佐藤輝を外したあとの即戦力投手を誰にするか注目していたが、平内龍太(亜大・投手)指名は驚いた。右肘手術後の今夏より一気に評価を上げて、外れ外れ1位くらいかなと思っていたところ、いの一番に平内にいった。最速150キロのストレート制球力も高く、抑えの適性が高いが、先発でも結果を残しており起用法に注目したい。

 2位の山崎伊織(東海大・投手)も驚いた。肘の故障さえなければ間違いなく1位で消えていた選手だったが、6月にトミージョン手術を受け、今年は登板なし。社会人志望からプロ志望に切り替えての指名だった。

 3位の中山礼都(中京大中京高・内野手は、走攻守三拍子揃った遊撃手で、左右に打ち分けるバットコントロールに守備も堅実。50メートル5秒9の俊足で、将来のリードオフマン候補。4位の伊藤優輔(三菱パワー・投手)は、総合力の高いパワーピッチャーでプロではリリーフに適性がありそうで、巨人では出番が増えそうだ。

 5位の秋広優人(二松学舎大高・内野手は身長2メートルの大型野手で、高校では投手で4番。規格外のパワーが魅力で高校通算24本塁打で二刀流での活用もあるかもしれない。6位の山本一輝(中京大・投手)は珠持ちの良い左腕で、フォームから技巧派と思われがちだが、ストレートとカットボールが武器の本格派。7位の萩原哲(創価大・捕手)は強肩とインサイドワークの評価が高いが、打点王も獲得した打力も魅力だ。山本と萩原ともに指名をほぼ公言したなか、その通りの指名になった。

 今年の巨人は育成を史上最高の12名を指名した。指名した選手を見ても本指名も有力視された選手が並び魅力的だ。完全に贔屓だが、注目は私の地元北海道の育成8位の阿部剣友(札幌大谷高・投手)で、秋広と同じ身長2メートルの大型選手。この身長の左腕は見たことがなく、どう成長するか楽しみだ。

 今年の巨人は下位指名は良かったが上位指名が気になった。菅野の流失が懸念されているなか、即戦力投手の獲得は絶対に必要だが、平内も山崎も故障明けで補強よりも将来性を感じた指名になった。また、課題の即戦力野手の指名もゼロで、当初の課題を十分に埋めたドラフトにはならなかった。

 また、今ドラフトとは直接関係ないが、鍬原と堀田のドラ1投手がオフに育成選手になった。鍬原は今年、原監督の薦めでフォームを変えたばかり、堀田は故障中とは言え昨年の1位投手である。ドライと言えばそれまでだが、1位選手をおいそれと育成に直ぐにする姿勢は如何かと思う。時期は前後するが、こういった現状を見ると本当に山崎をきちんと面倒を見るのか疑問に思ってしまう。

 

×西武(50点)

 評価は低くしたが、個人的には好きなドラフトになった。昨年までの山賊打線が影を潜め、主力と控え選手の差を埋めれなかった。頼りはともに38歳の栗山と中村の両べテランで野手の補強と世代交代が課題だった。一方で投手陣はリリーフ陣の底上げは進んだが、先発陣がピリっとせず相変わらずチーム防御率最下位に沈み、特に先発左腕の不足は深刻だった。

 早川(楽天)と佐藤輝(阪神)が候補のなか、ここ数年のウィークポイントである先発投手陣強化を選択した。早川を外したあと呼ばれた名前は渡部健人(桐蔭横浜大内野手で、この日1番のサプライズになった。

 渡部は体重112キロの巨漢の大砲で、とにかく遠くに飛ばす能力はけた違いで、さらにバットコントロールも良く、打撃も柔らかい。中村と同様に、巨漢ながら器用で足も遅くなく、三塁守備も巧く、ポスト中村にはもってこいの選手だ。個人的に注目していた選手で、下位指名を予想していただけに、1位指名は嬉しかった。

 2位の佐々木健(NTT東日本・投手)も驚きで、社会人投手ながら、粗削りの未完成選手で、投手が豊富なチームならまだしも、西武が2位指名するとは思わなかった。ボール自体は悪くないが、総合力に欠点がありどう成長するか期待して見てみたい。

 3位の山村崇嘉(東海大相模高・内野手は、2年夏から名門校で4番を打った左のスラッガーで、高校通算49本塁打を放った。今年は投手も務め、本来の三塁から遊撃も守るなど野球センスの塊で、将来の中軸候補。

 4位も野手で若林楽人(駒大・外野手)は、50メートル5秒8の俊足で1番中堅候補。今夏パワーアップしてパンチ力もつき、急成長を遂げた。5位の大曲錬(福岡大・投手)は準硬式で154キロを投げる本格派で、こういった隠し玉選手の指名は西武の十八番で“らしさ”を感じた。

 6位のタイシンガー・ブランドン大河(東農大北海道オホーツク・内野手)は、名前にインパクトで話題になったが、1年から主力を務めるスラッガーで対応力が高い。8位の三河優太(大阪桐蔭高・外野手)は、投手として入学するも打力を買われて野手へ転向。パワフルなスイングで長打力があり、山村と並び将来の主軸候補だ。

 育成は5名で、ここでも野手を2名指名している。注目は育成1位の赤上優人(東北公益文化大・投手)で、元々は内野手で入学も1年秋に投手へ転向し、リーグ戦で2年連続最多勝を獲得した先発候補で、早く支配下で見てみたい選手の一人だ。

 

 今年のドラフトでは数々の驚きがあったが、嬉しかったのは私の地元北海道関連の選手が、育成含め8名も指名された。ついに道内のレベルもここまで上がったかと嬉しかった。個人的な話になったが、是非このなかから主力選手や記憶に残る選手が数多く現れることを期待したい。