ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

今年のルーキー選手の活躍を予想する

 いよいよプロ野球の開幕が決まった。もう春先のオープン戦からはかなり経過したが、改めてオープン戦の結果から、19年度ルーキーたちの活躍を予想したいと思う。

◇ヤクルト

 黄金ルーキーの1位~奥川恭伸(星稜高)は、体のケアを重点にキャンプより調整し、ようやくブルペンで投球練習を開始し、受けたベテラン捕手の嶋が絶賛していた。シート打撃などの実践登板はまだ先になるが、焦る必要は全くない。

 即戦力の大学生投手だが、2位の吉田大喜(日体大と3位の杉山晃基(創価大)は、ともにオープン戦では課題を残した。特に杉山は4イニング5四球では厳しい。良かったのは4位の大西広樹(大商大)で、ルーキーでは最多の4試合で6イニング、防御率4.50だが8奪三振は評価でき、実戦向きの評判通り貴重な戦力になりそうだ。

オリックス

 ここ数年、育成に大きく舵を取った感のあるオリックス。3名の高校生はオープン戦での出場はなかったが、1位の宮城大弥(興南高)は、先日の紅白戦で登板するなど、着実に経験を積んでいる。

 そのなかで大学生2人が結果を出している。3位の村西良太(近大)は、3試合9イニングを投げ、開幕一軍をほぼ手中にした。5位の勝俣翔貴(国際武道大・内野手も打率は.222と高くないが、本塁打を放つなど持ち前のパンチ力を発揮しており、昨年、頓宮を開幕スタメンで起用したように、西村監督の大抜擢があるかもしれない。

◇中日

 3球団が競合した1位の石川昂弥(東邦高・内野手は、オープン戦での出場はなかったが、順調な成長を見せており、シート打撃で本塁打を放つなど目標の開幕一軍も視界に入っている。

 他のルーキーも好調で、2位の橋本侑樹(大商大)は4イニング、3位の岡野祐一郎(東芝は6イニングを投げ防御率はともに0.00で、橋本は先発、岡野は中継ぎでの開幕一軍が濃厚だ。4位の郡司裕也(慶大・捕手)も10試合でマスクを被り、19打数5安打、打率.357は立派な数字で、正捕手不在のなか開幕スタメンの可能性も十分だ。

日本ハム

 従来の育成路線から、昨年は即戦力指名に舵を取り、オープン戦ではまずまずの手応えだった。1位の河野竜生(JFE西日本)はさすがの実力で、3試合で1勝1敗、9イニングを投げ防御率4.00は合格点で、不足している先発に貴重な左腕が加わった。

 河野以上のインパクトを見せたのが、4位の鈴木健矢(JX-ENEOS)と育成の長谷川凌汰(BC新潟)で、ともにチーム最多の5試合に登板し防御率0.00は、中継ぎで十分な戦力になり、長谷川はチーム初の育成→支配下選手1号を期待できる。5位の望月大希(創価大)も少ない登板機会で結果を残した。

◇広島

 まずは1位の森下暢仁(明大)が、評判通りの結果を残した。ルーキーで唯一、規定投球回数をクリアし、4試合15イニングを投げ防御率4.20。奪三振16は投球回数を上回っており、開幕ローテはもちろんのこと、現時点では新人王の最右翼と言える。

 2位の宇草孔基(法大・外野手)も悪くない。8打数3安打、打率.429はプロでの適応能力の高さを見せ、開幕一軍は間違いなく上位指名の2名がしっかり結果を残した。5位の石原貴規(天理大・捕手)は、正捕手の曾澤の他に、ベテランの石原慶や若手の坂倉などライバルが多いなか、オープン戦で1試合のみだが出場を果たした。

千葉ロッテ

 奥川と並ぶ黄金ルーキーの佐々木朗希(大船渡高)の評価が、日に日に高まっている。開幕が遅れたことで一軍デビューも近づき、早い段階で観られるかもしれない。日本ハムの中田や西武の中村が早くも対戦を熱望しており、期待は膨らむばかりだ。

 オープン戦でインパクト大だったのが、5位の福田光輝(法大・内野手で、4本のヒットのうち本塁打が3本と、スケールの大きさを感じる選手で開幕スタメンも夢ではない。2位の佐藤都志也(東洋大・捕手)は、ややプロの壁にぶつかっているが、骨折が癒えた3位の高部瑛斗(国士館大・外野手)とともに開幕一軍も夢ではない。

阪神

 まだチームとしての方向性は見えないが、昨年に限ると育成ドラフトで高校生主体の指名になった。1位の西純矢(創志学園高)は2軍で経験を積み、2位の井上広大(履正社高・外野手)に4位の遠藤成(東海大相模高・内野手は、キャンプでの評価も高く、オープン戦にも出場したが、ここは戦力としてではなく経験の意味合いだった。

 順位は6位ながら、唯一の即戦力・小川一平東海大九州・投手)は、キャンプこそ出遅れたが、オープン戦で2試合に登板し無失点に抑えた。結果以上に投球内容が評価され中継ぎ陣の貴重な戦力になりそうだ。

楽天

 ある意味1位サプライズ指名だった小深田大翔(大阪ガス内野手は、文字通り即戦力の活躍を見せ、ルーキーでは唯一オープン戦の規定打席に達した。打率こそ.227だったが、遊撃で何度も好守備を見せ、セールスポイントの俊足を活かし3盗塁を記録するなど、盗塁数が少ないチーム状況から開幕スタメンも現実味を帯びてきた。

 2位の黒川史陽(智弁和歌山高・内野手も、高校生ルーキー最多の14試合に出場し打率.222と、開幕一軍の大抜擢も期待できる。投手では6位の瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿が4試合5イニング無失点、3位の津留崎大成(慶大)も中継ぎで適性を見せた。 

◇DeNA

 将来の正遊撃手候補の森敬斗(桐蔭学園高・内野手は、2軍でじっくり育成中だが、練習試合で早くも結果を残すなど、プロの水にも慣れ着実に成長を重ねている。

 注目はむしろ即戦力投手の2人で、先発候補の2位・坂本裕哉(立命大)は2試合に登板し防御率3.86、7イニングで四球がわずかに1つというのが素晴らしい。安定感のある投球が期待でき、左腕王国のDeNAにまた一人貴重な戦力が加わった。3位の伊勢大夢(明大)は中継ぎで、2試合2イニングを無失点で抑えており、坂本とともに開幕一軍は当確と言える。

ソフトバンク

 意外と言ったら失礼だが、1位の佐藤直樹JR西日本・外野手)がバットでも結果を残した。11試合に出場し打率.368の好成績で、ルーキーで10打席以上打席に立った選手の最高打率。元々守備走塁には定評があったので、外国人選手の状況次第では開幕スタメンもあるかもしれない。5位の柳町達(慶大・内野手も9試合で打率.231と適応力を見せ、内外野を守れ、足もありベンチに置いておきたい選手の一人だ。

 評価を上げたのが3位の津森宥紀(東北福祉大・投手)で、6試合で6イニング無失点。変則右腕は初見で攻略するのは困難で、鉄壁の投手陣に楽しみな選手が加わった。

◇巨人

 原監督がキャンプ前に、昨秋のドラフト結果に不満を漏らしたという記事を目にしたが、その気持ちが十分に分かる。メジャー志望の1位の堀田賢慎(青森山田高・投手)は、新人の合同自主トレ中に右肘の違和感で別調整のうえ、トミージョン手術を受けることになり、これから長いリハビリ生活が待っており、出番はかなり先になりそうだ。

 唯一の即戦力の2位・太田龍JR東日本・投手)も、調整が間に合わずキャンプは2軍スタート。結果、オープン戦に出場したルーキーは12球団で唯一ゼロ…。紅白戦での太田の好投がせめてもの救いになりそうだ。

◆西武

 2年連続チーム防御率が最下位で、1~2位で即戦力投手を獲得したが、オープン戦では明暗が分かれた。1位の宮川哲(東芝は、キャンプ中に負傷し2軍に降格し、オープン戦で登板の機会はなかった。3月下旬の2軍戦で実戦登板を果たしており、開幕には間に合いそうだ。評価を上げたのは2位の浜屋将太(三菱日立PS)で、3試合に登板し、6イニング防御率3.00で先発ローテを手繰り寄せた。

 野手では4位の柘植世那(ホンダ鈴鹿・捕手)が5試合に出場し少ないチャンスのなか2安打を放ち、森や岡田に続く第3の捕手の座に近づいた。8位の岸潤一郎(四国IL徳島・外野手)も1試合だけだが出場し、まずは自慢の走力で一軍に喰い込みたい。

 

 育成選手からの支配下登録を見てみよう。投手ではソフトバンク尾形崇斗(学法石川高~17年育①)の評価が高まり、5試合11イニングを無失点に抑えた。昨年、ウエスタンでセーブ王を獲得したオリックス漆原大晟(新潟健康福祉大~18年育①)もオープン戦で結果を残し、ともに支配下登録を勝ち取った。

 日本ハム長谷川凌汰(BC新潟~19年育②)は5試合を投げ無失点、巨人の沼田翔平(旭川大高・18年育③)も6回1/3を投げ、イニングを上回る7奪三振防御率1.42は高卒2年目では立派な成績で、支配下登録の可能性が十分にある。

 野手ではソフトバンク砂川リチャード(沖縄尚学高~17年育③)が大暴れし、22打数6安打、うち本塁打が2本と抜群の長打力を見せ支配下登録された。この間の課題だったポスト松田の有力な候補が現れた。

 早くから素質が注目されていたロッテの和田康士朗(BC富山~17年育①)は、チーム1、2の俊足で、オープン戦終盤まで一軍に帯同し、支配下登録にもっとも近い選手の一人だ。また、阪神小野寺暖(大商大~19年育①)もキャンプから好調を維持し、僅か1試合の出場ながら安打を放ち、少ないチャンスで結果を残した。 

平成ドラフトプレイバック~1989年

 新年早々に時代が「昭和」から「平成」に変わった。この年、セ・リーグは巨人が斎藤雅樹槙原寛己桑田真澄の3本柱を擁し2年振りに優勝。パ・リーグ近鉄が、2位オリックスとゲーム差なし、3位西武と0.5ゲーム差の大接戦を制し、9年振りに優勝を果たした。日本シリーズでは、巨人が3連敗から4連勝する大逆転劇で日本一を果たした。

 この年のドラフトは、社会人ナンバーワン投手の野茂英雄新日鉄堺・投手)が最大の目玉で、大学生・社会人の即戦力選手が豊作の年だった。このほかには、甲子園のスター選手、元木大介(上宮高・内野手が「巨人以外には行かない」と宣言、東京六大学スラッガー大森剛(慶大・内野手も巨人志望で、巨人が元木と大森のどとらを指名するかに注目が集まった。

 この年から、昨年まで指名選手は手書きだったが、OA機器が導入され、TVで生中継もされ、新時代ドラフトの幕開けになった。

●ノモ、ノモ、ノモ…史上最多の8球団が競合!巨人は元木か、大森か?

 まず最大の注目だった野茂は、12球団OKで条件はただ一つ、「フォームを変えないこと」だった。高校時代は無名だったが、既にこのとき代名詞のトルネード投法で頭角を表し、入社した新日鉄堺でさらに磨きをかけ、ドラフト1位候補にまで上り詰めたプライドだろう。

 指名は前年最下位のロッテから始まり、ドラフト会議の名司会者、伊東一雄氏が「野茂英雄」の名前を読み上げた。その後、大洋(現D℮NA)、日本ハム阪神ダイエー(現ソフトバンク)、ヤクルトと6球団が続けて野茂を指名した。

 どこまで野茂の指名が続くかと思ったとき、次に西武が相思相愛の潮崎哲也松下電器・投手)を、次いで中日がロッテを除く在京球団希望の与田剛(NTT東京・投手)を指名した。再びオリックスが野茂、広島も地元出身で、これも相思相愛の佐々岡真司(NTT中国・投手)近鉄の野茂指名を挟み、いよいよ巨人の番を迎えた。静まりかえる会場のなか、読み上げられた名前は大森だった。巨人からの1位指名を確信していたような笑顔を見せていた元木は、下をうつむき顔を上げず、希望選手を単独指名できた藤田元治監督にもなぜか笑顔がなかった。

 競合したのは野茂一人で、史上最多の8球団指名のなか運命の抽選になった。だが、一斉に開封したがどこも手を上げない、怪訝そうに周りの顔を窺うなか、最後にクジを引いた近鉄仰木彬監督は、どこかが当たっていると思いなかなか封を切らなかったが、それが当たりクジだった。

 この後、野茂を外した7球団の指名に注目が集まった。まずはロッテが小宮山悟早大・投手)、大洋が腰痛を理由にプロ入りに難色を示していた佐々木主浩東北福祉大・投手)を敢然と指名した。続く日本ハム酒井光次郎(近大・投手)阪神は元木をスルーして葛西稔(法大・投手)、そして次にダイエーが元木を指名し、会場がざわついた。ヤクルトは西村龍次ヤマハ・投手)オリックスが最後に佐藤和弘熊谷組・外野手)を指名し、12名のドラフト1位選手が出揃った。

 錚々たる選手が並ぶが、野茂はまさしく本物だった。1年目に18勝を上げ、最多勝、最高防御率、最高勝率、沢村賞の投手タイトルを総ナメにしMVPに選出。その後、日本人メジャーリーガーのパイオニアとなった。佐々木は大魔神と呼ばれ屈指のクローザーに成長し通算252セーブ、小宮山も精密機械の異名のもと117勝を上げ、ともにメジャーでも活躍した。

 佐々岡もエースとして、138勝106Sと先発・クローザーで活躍し、潮崎は魔球シンカーを武器にセットアッパーとして西武の黄金時代を築いた。西村は近鉄ダイエーの3球団で5度の開幕投手を務め75勝、指名当初は散々言われた葛西も、実働13年で331試合に登板しブルペン陣を支えた。活躍した年数は短かったものも、与田は1年目31セーブで新人王、酒井もルーキーイヤーに10勝を上げた。

 話を元木に戻すと、元木と大森から逆指名を受けた巨人だが、高校生ナンバーワンの元木は2位では獲れない。ただ大森本人は本心ではなかったと述懐しているが、「高校生の次は嫌」と宣言したこともあり、どちらを1位指名するかで揺れていた。

 大森も確かに良い選手であったが、当時の巨人には、駒田徳広吉村禎章など同じタイプの選手がレギュラーにいるなか、敢えて1位で行く必要はあったのか…。素人目で見ても1位~元木、2位~大森が良いと思ったが、慶大OBの正力亨オーナーの慶大ラインの強さが大森指名に動いたとも言え、笑顔なき藤田監督の心中はさぞ複雑だったと思う。その大森だが、レギュラーはおろか一軍にさえ定着することなく、98年に近鉄へトレードされ翌年引退した。 

 その元木を指名したのは、かつて巨人入団を熱望しながら叶わなかった田淵幸一監督で、同じ境遇だったこともあり元木の説得に期待がかかったが、元木はあくまで巨人志望を貫き浪人を選択しハワイへ渡った。翌年、元木は念願叶い巨人へ入団するが、巨人ではスラッガーの影は潜め、スーパーサブとして曲者と呼ばれたが、そのままダイエーに入団していたら、どうなっていただろうか…。

●2位以下でも古田に前田の名選手が誕生、稀代のパフォーマー新庄は5位指名

 この年、2位以下で2人の名球会プレーヤーがいる。ヤクルト2位の古田敦也トヨタ自動車・捕手)と、広島4位の前田智徳熊本工高・外野手)である。

 古田は2年前(立命大)に指名間違いなしを言われながら、名前が呼ばれることはなく、報道陣の前で悔し涙を流した男が遂に入団。ディフェンスに優れた強肩選手が、野村克也監督のもとID野球の申し子として、ヤクルトの黄金時代を支え、首位打者も獲得した。前田は素質と努力で打撃に関しては一切の妥協も許さない天才打者で、落合博満イチローが認めた数少ない選手である。

 この年のドラフトで最も成功したのは広島で、2位で他球団もマークしていた仁平馨(宇都宮工高・外野手)を指名した瞬間、会場から「やられた」の声が上がった。3位で福岡に移転したダイエーが、下位指名見え見えの前間卓(鳥栖高・投手)を、そして4位で前田をそれぞれ順位を上げて指名し、6位で社会人が内定していた浅井樹富山商高・外野手)も獲得するなど、抜群のスカウトセンスを見せた。

 ヤクルトと近鉄も大成功のドラフトになった。ヤクルトは西村と古田以外は戦力にならなかったが、この2人の活躍で十分だった。近鉄も3位で石井浩郎プリンスホテル内野手を獲得し、近鉄の4番としてのちに打点王も獲得している。ヤクルト、近鉄ともにエースと主力野手を獲得した会心のドラフトになった。

 西武と中日も悪くなかった。西武は2位で、大学卒業時にプロ拒否で社会人に進んだ鈴木哲(熊谷組・投手)を指名し驚かせた。ただ、素材は1位級だったが鈴木が、通算成績僅か7勝は大誤算だった。3位では大舞台に強かった大塚孝二東北福祉大・外野手)、4位で宮地克彦尽誠学園高・投手)を獲得している。宮地は打者へ転向し、西武では芽が出なかったが、移籍したダイエーで活躍した。

 中日2位の井上一樹(鹿児島商高・投手)は、野手に転向しレギュラーを獲得、5位でセンバツ優勝投手の山田喜久夫(東邦高・投手)、6位で専大進学が濃厚だった元木のチームメイト種田仁(上宮高・内野手を強行指名し見事獲得。その種田は元木以上の成績を残した。

 阪神日本ハムは今ひとつだったが、チームを代表する2人の個性派選手が入団している。阪神は5位で新庄剛志西日本短大付高・外野手)を獲得。高校時代から守備と強肩がウリだったが、華のあるプレーで一躍阪神のスター選手になり、その後メジャー挑戦を経て、日本ハムへ移籍した。その日本ハムは2位で、エースとして活躍した岩本勉阪南大高・投手)が入団し、ユニークなキャラクターでも人気を博した。

 大洋はドラフト当初、2位で東瀬耕太郎(明大・投手)、3位で平塚克洋(朝日生命・外野手)の即戦力を指名し評価が高かったが、佐々木以外は不発。ロッテも1~4位まで大学・社会人の即戦力を指名したが小宮山以外は戦力にならなかった。

 大失敗だったのがオリックスダイエー、そして巨人だ。オリックス1位の佐藤は、パンチの愛称で親しまれ、爆笑コメントを連発し一躍人気者になったが、本業の野球はさっぱりで、わずか5年で引退しタレントになった。3位~高橋功一(能代高・投手)の通算24勝が唯一の救いになった。

 ダイエーも散々で、元木を逃したうえ、井上や前田、新庄といった九州の原石はすべて他球団に奪われた。3位で橋本武広プリンスホテル・投手)、5位で馬場敏史新日鉄堺・内野手を獲得するも、橋本は移籍した西武で中継ぎで活躍、馬場も移籍したオリックスで守備職人としていぶし銀の活躍を見せ、95~96年のオリックス優勝に貢献し、逃した魚は大きかった。

 巨人は最初からミソがつき、2位の川辺忠義川崎製鉄千葉・投手)は会社残留、4位の佐久間浩一(東海大・外野手)は故障、6位の浅野智治(岡山南高・投手)は社会人内定で3人が入団を拒否した。ただ、川辺と浅野が折れ、最後まで渋った佐久間も入団にこぎつけたが、佐久間と浅野は一軍出場ないまま引退し、川辺も1勝で現役を終えた。唯一の救いは、甲子園優勝投手の吉岡雄二(帝京高・投手)の3位指名だったが、吉岡は野手転向後、近鉄へ移籍したのちの活躍が光り、誰一人戦力にならなかった。

 この年にプロ拒否したのは元木の他に、ヤクルト3位の黒須陽一郎(立大・外野手)で、黒須は野球部のない一般企業に就職し完全に野球から離れた。ただ、黒須の拒否にはすったもんだがあり、立大からヤクルト入団が暫くシャットアウトされる後味の悪いものになった。他に甲子園準優勝投手の大越基仙台育英高・投手)、仁志敏久常総学院高・内野手)が大学に進学している。

 最後にこの年は監督も多く輩出している。監督兼選手の古田(ヤクルト)をはじめ、昨年には与田(中日)、そして今年は佐々岡(広島)と3名の監督が誕生し、潮崎も西武の2軍監督、小宮山は母校・早大、大塚も東北福祉大の監督を務めている。

 一方でタレントに転向した元木やパンチ佐藤、稀代のパフォーマー新庄など、多種多様な選手がおり、元木はヘッドコーチとして巨人へ復帰、新庄も現役再挑戦を表明するなど、まだこの世代からは目が離せない。

20年ドラフト候補中間報告~厳選50名

 今年のドラフトは、とにかく難しい。新型コロナウィルスの影響により、選手を見極める機会が失われている。そもそも休校による部活動の自粛や、相次ぐ大会の中止で活動が停止していることに加え、全国を飛び回るスカウトも、県の往来が制限されているなか従来のように動くことができない。

 一番難しいのが高校生の判断だ。大学生や社会人はまだ秋に大会があり、それぞれ甲子園や過去の主要な大会での実績もあるので、何とか見極めることができる。ただ、高校生は成長のスピードが驚くほど早く、2年の冬から一冬超えて大きく化ける選手がたくさん出てくる。その成長度合いを春のセンバツから始まり、練習試合や春季大会を経て、夏の大会で見極めていく。

 しかしセンバツが中止になり、その後の春の地区大会も中止になっている。それどころか休校により、練習自体も行われていない。こうなると夏の甲子園と地区予選しかないが、地区大会で負ければ7月で引退を迎える。以降、公式戦の機会がないため、上位候補の選手ならいざ知らず、指名が当落選上の選手ならば、アピールする機会が限られてしまう。 

 いくら練習で良くても、試合で結果を出せなければ意味がない。私は学生時代、陸上競技をしていたが、陸上の結果はタイムとして明確な指標が残る。ただ、野球やサッカーの場合は、やはりゲームを見ないことには始まらない。大学生も今年は6月から8月に延期された全日本大学選手権が史上初めての中止になり、より少ない機会でアピールをしなくてはならない状況になってきた。

 今年はそもそも夏季東京五輪の関係で、ドラフト会議が例年より遅い11月5日に予定されている。ドラフトの延期も協議の席上に上がるかもしれないが、高校生と大学生の進路選択を考えれば、それ以上延ばすのは難しい。ドラフトまであと半年、少しでも好転していくように応援していきたい。

 しかしそんななか、正式決定ではないにせよ夏の甲子園大会中止の報道が出た。コロナウィルス感染予防については、自分なりの意見はあるが、ここでは述べない。ただ、このままの状況で甲子園大会中止は避けて欲しい。従来の形に捉われず開催形式や時季など、甲子園を目指した3年生に、どんな形でも公式戦として引退の花道は用意してあげるべきだ。これは野球に限らず、すべての競技やコンテストで大人が考えるべき課題だと思う。 

●昨年はS評価が4人でいずれもドラフト1位!2選手は一気に評価を上げた

 まず昨年、この時点で「S」評価だったのは、佐々木朗希(大船渡高→ロッテ①)、奥川恭伸(星稜高→ヤクルト①)、西純矢(創志学園高→阪神①)、森下暢仁(明大→広島①)のいずれも投手で、結果、佐々木は4球団、奥川は3球団、森下は単独で1位入札されている。

「A」評価の選手では、投手では井上広輝(日大三高→西武⑥)、及川雅貴(横浜高→阪神③)、宮城大弥(興南高→オリックス①)、津森宥紀(東北福祉大ソフトバンク③)、太田龍JR東日本→巨人②)、河野竜生(JFE西日本→日本ハム①)、立野和明(東海理化日本ハム②)、宮川哲(東芝→西武①)で、故障を不安視された井上以外はすべて上位指名されている。

 野手では森敬斗(桐蔭学園高→DeNA①)、石川昂弥(東邦高→中日①)、海野隆司(東海大ソフトバンク②)、佐藤都志也(東洋大→ロッテ②)が「A」評価で、石川は3球団競合、森も1位入札指名になった。

 この他、昨年のドラフト1位の小深田大翔(大阪ガス楽天①)は「B」評価、堀田賢慎(青森山田高→巨人①)と佐藤直樹JR西日本ソフトバンク①)に至っては、名前すら挙がっていなかった。小深田は元々評価が高かったが、堀田は夏以降に急成長し、佐藤は数少ない即戦力外野手として、各球団の動向から指名順位が上がった。

●今年は大学生と社会人に逸材多い!高校生は実績十分の候補者が並ぶ

 今年は現時点で「S」評価の選手はいないが、不作と言えばそうではない。大学生全般と社会人投手に逸材が多い。今年は高校生の評価が難しく、中位から下位指名評価の選手の進学や就職を選択する選手が増えると思われ、大学生・社会人からの指名が中心になるかもしれない。

【A⁺…1位競合が予想される選手】

 中森俊介(明石商高・投手)…先発・リリーフどちらでもいける150キロ右腕

 伊藤大海(苫小牧駒大・投手)…155キロの直球と強気がウリのクローザー候補

 来田涼斗(明石商高・外野手)…走攻守3拍子揃った野球センス抜群の巧打者

 佐藤輝明(近大・外野手)…将来トリプルスリーを狙えるスラッガーの糸井2世

 中森と来田は、ともに昨年の春夏甲子園でベスト4の中心選手で実績も十分。伊藤はリリーフ陣に不安を抱えるチームには魅力で、佐藤は現時点ではナンバーワン野手で、外野のレギュラーを1年目から狙える。

【A…1位入札が予想される選手】

 高橋宏斗(中京大中京高・投手)…昨秋の明治神宮大会で鮮烈デビューし全国区へ

 早川隆久(早大・投手)…総合力に優れ、ゲームメークに長けた大学NO1左腕

 山崎伊織(東海大・投手)…伝家の宝刀スライダーとカットボールを駆使する本格派

 栗林良史(トヨタ自動車・投手)…最速153キロが武器にタフネス右腕で高い総合力

 西川僚祐(東海大相模高・外野手)…名門校で1年生から4番、高校通算53本塁打

 早川と栗林は即戦力で、特にサウスポーの早川は左腕不足のチームは是非とも欲しい。高橋は速球派で伸びしろ十分、西川も将来の主軸候補で評価が高い。山崎は実力と実績は申し分ないが、昨年11月に肘の違和感を訴え、夏ごろの復帰になりそうで回復が待たれる。

【A⁻…1位指名が予想される選手】

 宇田川優希(仙台大・投手)…長身から投げ下ろすフォークが武器で成長を続ける

 佐藤宏樹(慶大・投手)…キレのあるスライダーが武器の左腕で故障も癒えた

 木澤尚文(慶大・投手)…最速155キロの直球で押し込む投球が魅力で抑えにも適性

 入江大生(明大・投手)…恵まれた体格で打者としても評価が高く、伸びしろ十分

 森 博人(日体大・投手)…直球に磨きをかけたクローザーも、今年は先発に挑戦

 佐々木健(NTT東日本・投手)…最速152キロ左腕で、課題は制球力とメンタル

 山本晃希(日本製鉄かずさマジック・投手)…i威力抜群のストレートに長けた投球術

 小野大夏(ホンダ・投手)…高校時代は捕手の強肩で、威力のあるストレートが武器

 大江克哉(NTT西日本・投手)…経験豊富なスリークオーターで課題は制球力

 牧 秀悟(中大・内野手)…大学日本代表の4番で、高い守備力とシュアな打撃

 五十幡亮汰(中大・外野手)…“超”がつく韋駄天で、将来のリードオフマン候補

 中野拓夢(三菱自動車岡崎・内野手)…フォア・ザ・チームの打線のつなぎ役で堅守

 今川優馬(JFE東日本・外野手)…スケール大きい大砲で明るい性格のスター候補

 このなかでは、佐々木と小野と、五十幡と今川は以前より評価が高かったが、大学生では宇田川は変化球の質が高まり、木澤と森は役割の変更にチャレンジ、社会人の山本と大江は投球術を覚えピッチングの幅が広がることで評価が高まった。佐藤と牧は、1位候補に名前を挙げるチームもおり、入江は今年いっぱいで最も伸びしろが期待できる選手だ。

【B⁺…外れ1位指名もある上位候補】

 小林樹斗(智弁和歌山高・投手)…キレで勝負する総合力の高い右腕で安定感が抜群

 村上頌樹(東洋大・投手)…智弁学園で春センバツ優勝投手。着実に成長したエース

 内山壮真(星稜高・捕手)…名門校で1年から遊撃レギュラー。今年は主将も務める

 井上朋也(花咲徳栄高・外野手)…高校通算47本塁打で逆方向にも長打を打てる

 古川裕大(上武大・捕手)…広角に打てる巧打者で3年時に大学選抜に選出された

 小林は昨夏の甲子園3回戦で星稜高の奥川と投げ合った実績があり、内山は昨夏準優勝の主力、井上も1年生から甲子園を経験しており、実績は証明されている。

【B…上位指名が有力視される選手】

 川瀬堅斗(大分商高・投手)…長身から投げ下ろす角度のあるストレートが武器

 笠島尚樹(敦賀気比高・投手)…スリークオーターの制球力の高い技巧派右腕

 鈴木昭汰(法大・投手)…両サイドに投げ分ける制球力とスライダーが武器

 平川裕太(鷺宮製作所・投手)…小柄だが大学時代からクローザーを務めた強心臓

 度会隆輝(横浜高・内野手)…名門校で1年からベンチ入り。広角に打ち分ける技術

 山村崇嘉(東海大相模高・内野手)…高校通算44本塁打スラッガーで投手も兼任

 榮枝裕貴(立命大・捕手)…大学屈指の強肩と守備力で評価が急上昇中で期待値高い

 元山優飛(東北福祉大内野手)…広角に打ち分ける技術と高い守備力の遊撃手

 矢野雅哉(亜大・内野手)…50メートル5秒9の俊足と強肩で広角に打つ打撃も非凡

 並木秀尊(独協大・外野手)…大学屈指の俊足と脚力で典型的なリードオフマン

 この他の有力選手を紹介すると、高校生では岩崎峻典(履正社高・投手)は昨夏の甲子園優勝の主力、入江大樹(仙台育英高・内野手)は大型遊撃手、鵜沼魁斗(東海大相模高・外野手)は俊足にパンチ力もあるリードオフマンだ。

 大学生では高い奪三振率を誇る大道温貴(八戸学院大・投手)、高野脩汰(関大・投手)は関西No1サウスポーだ。小川龍成(国学院大・内野手)はアグレッシブな守備でキャプテンシーもあり、児玉亮涼(九産大内野手)も遊撃守備は一級品だ。赤尾光祐(東海大札幌・外野手)は右の長距離砲で注目されている。

 社会人では、本格派右腕の伊藤優輔(三菱日立パワーシステムズ・投手)はクローザー、変則右腕の川瀬航作(日本製鉄広畑・投手)はニーズがありそうだ。野手では峯本匠(JFE東日本・内野手)は左の巧打者、チームメイトの平山快(JFE東日本・内野手)は右のスラッガー、向山基生(NTT東日本・外野手)は高いレベルの走攻守にパンチ力もある。

 最後に甲子園大会の開催が危ぶまれているが、報道通り中止だと本当に寂しい。甲子園は選手の野球人生を変える場だ。近年では16年の今井達也(作新学院高→西武①)、18年の吉田輝星(金足農高日本ハム①)は、大会が始まるまでは単なる好投手だったが、大会終了後には1位候補までに成長した。こういう成長の機会が無くなるのは本当に残念だ…一縷の望みに期待したい。

20年ドラフト候補選手~投手は右の本格派、野手は大卒2年目が多い社会人35名

 昨年は社会人には厳しいドラフトになった。指名人数は一昨年の19名から11名に減少し、特に野手は佐藤直樹ソフトバンク)と小深田大翔(楽天)の2人の1位指名はあったものの、全体で3名と低調だった。

 今年も残念ながら、現時点では豊作とは言えず、即戦力としてどのチームにフィットするか強みをアピールしていきたい。特に投手は本格派右腕の候補が多く、数少ない実戦で結果を残さないと厳しい。

●投手~栗林、森井と右の本格派がズラリ、即戦力として実戦で結果を残したい

 現時点で1位候補として名前が挙がるのが、栗林良史(トヨタ自動車で、名城大で投手に転向。最速153キロのストレートを軸に、選手層の厚いチームで1年目から登板機会を掴み、都市対抗準優勝に貢献した。

 栗林に次いで評価が高いのが、森井紘斗(セガサミーだ。板野高(徳島)時代より注目された右腕で、高卒3年目でのプロ入りを目指す。150キロ超のストレートと鋭いカットボールを軸に、力で押す投球は将来性も十分だ。

 同じ高卒3年目では、小野大夏(ホンダ)松本竜也(ホンダ鈴鹿も上位候補になる。小野は上半身に頼ったフォームが社会人で修正され、球速が150キロを超え制球力が増し、先発・抑えのどちらでも行けるのも強みだ。松本は140キロ中盤のストレートが武器で、低めに決まる伸びのあるボールは球速以上と言われ、まだまだ伸びしろを感じさせる。山本隆広(日本生命は、172センチと小柄だが150キロの直球は威力十分。関大時代には、リーグ戦20勝に完全試合も達成した。

 この後に続く有力選手では、山本晃希(日本製鉄かずさマジック)平川裕太(鷺宮製作所はともに最速150キロを超える本格派右腕だ。山本は伸びのある直球とフォークが武器、平川も直球の質が素晴らしく、リリーフとして1年目からフル回転した。森田駿哉(ホンダ鈴鹿も本格派左腕で、富山商高で甲子園で活躍しドラフト候補に挙がるも法大へ進学、残念ながら大学では結果を残せなかったが素質は申し分ない。

 評価が分かれるのが、152キロ左腕の佐々木健(NTT東日本)で、打者のタイミングを崩すチェンジアップの精度も高い。ただ、安定感に乏しく、良いときは手も足も出ないが、ダメなときも多い…。いわゆるロマン枠(化ければ凄い選手)で、大卒2年目の社会人選手としては、コンスタントに結果を残さないと候補で終わってしまう。

 このほかにも本格派右腕が並ぶ。小山台高(東京)で都立勢初のセンバツ出場経験を持つ伊藤勇輔(三菱日立パワーシステムズは、最速150キロの直球で押すパワーピッチャーで、馬場康一郎(シティライト岡山)も最速151キロと速い。菅野秀哉(東京ガス山上大輔(日本新薬はともに直球と多彩な変化球が武器で、菅野は長身から投げ下ろす直球が150キロを超え、山上は恵まれた体格から放つ直球の球質が重い。須永悦司(JR東日本も、190センチの長身からの150kキロを超える直球が魅力、チームメイトの西田光汰(JR東日本も最速147キロの直球を武器に、昨年ドラフト候補だったが不調で指名漏れし、今年はプロ入りを果たしたい。

 青野善行(日立製作所は、国際武道大でリーグ通算13勝を上げた球持ちの良いピッチングは健在、青島凌也(ホンダ)カットボールなどの変化球の精度が高く、釘宮光希(日本通運もキレのあるスライダーでさらに成長を続けている。大江克哉(NTT西日本)は、140キロ後半の直球と変化球を巧みに操るスリークオーター、川瀬航作(日本製鉄広畑)は変則のサイドスロー右腕だ。 

 

●野手~峯本、今川とJFE東日本勢に注目!大卒2年目で悲願のプロ入りを目指す

 捕手では、神戸国際大高(兵庫)から強打で注目されていた猪田和希(JFE東日本)は、社会人でも打てる捕手として着実に成長している。保坂淳介(NTT東日本)も強肩強打の社会人屈指の捕手で、昨年に続き候補に名を連ねている。

 内野手では峯本匠(JFE東日本)の評価が高い。大阪桐蔭高には高3夏の甲子園で香月一也(ロッテ)等とともに全国制覇を経験し、立大時代にはケガで結果を残せなかったが、社会人で見事に打撃の天才が復活した。1年目から二塁のレギュラーを獲得し、昨夏の都市対抗では打率.412でチーム初優勝に貢献した。

 峯本とチームメイトの平山快(JFE東日本)も上位候補の一人で、東海大時代の4年秋のリーグ戦では三冠王を獲得し、勝負強い打撃で社会人1年目から4番に座っている。岩城駿也(西濃運輸スラッガーで、九産大時代は通算19本塁打を放ち、社会人でもその強打は変わらない。

 吉田叡生(ホンダ)は、中大4年春にリーグ戦首位打者を獲得した巧打者で、強豪ホンダでも1年目からレギュラーを獲得し、内外野守れるのも強みだ。高瀬雄大明治安田生命は、社会人で伸びた選手で、巧打の遊撃手としてチームのリードオフマンを務める。岡田耕太(JFE東日本)は右の巧打者、諸見里匠(日本通運は身体能力の高さを活かした守備力が評価されている。

 外野手では今川優馬(JFE東日本)は、超攻撃的2番打者のパワーヒッターで、逆方向にも伸びのある打球を放つ打撃技術も向上した。昨夏の都市対抗では峯本とともに若獅子賞を受賞し、初優勝に貢献した。2人のリードオフマンにも注目で、向山基生(NTT東日本)は50メートル6秒の俊足で、走攻守揃った右打ちの外野手。逢澤峻介(トヨタ自動車も、1年目から不動の1番打者として都市対抗準優勝に貢献した。

 長沢吉貴(東芝も50メートル5秒6の俊足にミートの巧い巧打者で、楠研次郎(東京ガスも富士大時代にリーグ通算102安打を放った。越智達矢(日本生命はパンチ力のある右の大砲で、都市対抗では4番に座った。

 

20年ドラフト候補選手~豊作の年になる予感漂う大学生40名

 今年は大学生に目玉となる選手が多く、特に投手が豊作で上位指名候補が並ぶ。一方で野手は、全体的に即戦力が少ないため、順位を上げてでも獲得することも想定でき、各球団がチーム戦略でどんな選手を指名してくるか楽しみだ。

●投手~伊藤、早川、山崎を中心に、バラエティに富んだ有望選手が並ぶ

 特Aのドラフト1位候補の1番手は、伊藤大海(苫小牧駒大)だ。国際大会でも通用した最速154キロのパワーピッチャーで、とにかくハートが強い。大学日本代表でもクローザーを務め、プロでも抑えの適性が光る守護神候補だ。

 早川隆久(早大は、木更津総合高(千葉)時代よりドラフト上位候補で、大学でも着実でに成長した150キロ左腕だ。力で抑えるスタイルに加え、上級生になるにつれ駆け引きを覚え球術も身につけた。同じ左腕では、佐藤宏樹(慶大)にも注目だ。151キロのストレートとキレのあるスライダーが武器で、ここ一番で三振を取れる球威は、先輩の郡司裕也(中日)をして、受けるのが怖いと言わしめた。

 山崎伊織(東海大も堂々の1位候補。お手本のような整った投球フォームから、153キロのストレートに分かっていても打てないスライダーが武器で、リーグ戦で2季連続MVPを獲得しており、現在最も注目されている選手の1人だ。

 この4人に続く上位候補選手には、即戦力と伸びしろをさらに期待できる素材型が並ぶ。まず即戦力では、村上頌樹(東洋大は、智弁学園高(奈良)でセンバツ優勝したときのエースで、投手としての経験値が高い。直球で緩急をつけられ制球力が高く、抜群の安定感をほこる。

 山崎とチームメイトの小郷賢人(東海大は、150キロのストレートでグイグイ押してくる馬力のある投手で、兄の小郷裕哉(楽天)の後を追いプロ入りを目指す。森博人(日体大も速い。最速155キロのストレートで、2年続けて右の本格派を上位で送り出している日体大から、また有力選手がでてきた。無名だが赤上優人(東北公益文科大)の評価も高く、赤上も速球派で最速153キロで三振を取れるのが強みだ。

 素質型では、宇田川優希(仙台大)木澤尚文(慶大)の2人が面白い。宇田川は184センチ95キロの恵まれた体格から、真上から最速152キロのストレートに威力があり、高校時代は激戦区の埼玉で公立高ながらスカウトの注目を浴びた。木澤も長身を活かしたダイナミックなフォームから、最速154キロを計測している。ともに今年のリーグ戦の成績次第では一気に評価が上がる可能性がある。

 この後に続く中位候補では、内間拓馬(亜大)吉川貴大(大商大)は、ともに最速149キロの本格派右腕で、内間は直球と精度の高い変化球を駆使して、試合で結果を残す実戦派、吉川はストレートで押す強気なピッチングが身上だ。右腕。吉高壮(日体大は、170センチと小柄ながら、ストレートに威力があり、森と2本柱を形成している。ちなみに高校は山崎と同じ明石商高(兵庫)で、改めて明石商の育成力に驚いた。

 左腕では、鈴木昭汰(法大)山野太一(東北福祉大の評価が高く、鈴木は中学時代にU-15の日本代表で、常総学院高(茨城)時代に3季甲子園に出場しており、大舞台での経験値が高い。山野は最速149キロに加え投球術に優れ、ピンチでギアを上げたときに圧巻の投球を見せる。

  このほかの有望株では、大道温貴(八戸学院大は最速148キロの本格派右腕で、平内龍太(亜大)も最速151キロと速く、力でグイグイ押していくパワーピッチャー。高田孝一(法大)も右の本格派で、角度のあるストレートが魅力。秀岳館高(熊本)時代に、夏4強の有村大誠(立命大)も大学で着実に力をつけ、球速が150キロを超えた。

 大関竜斗(白鷗大)も大学で素質を開花させた投手で、スリークオーターから放つスライダーが生命線、重川恵詩(東京国際大)も監督からの勧めで、サイドスローへ転向し、持ち前のストレートの威力が増した。面白いのはアンダースロー中川颯(立大)で、柔軟性がありキレのあるボールを投げ込む。桐光学園高(神奈川)時代は強打者として活躍するなど野球センスが高く、大学では投手に専念しさらに成長を遂げている。

 左腕にも有力選手が多い。今西拓弥(早大は身長2メートルの大型左腕で、振りかぶった時の威圧感と、異次元の角度から投げ下ろす球はまさに大器だ。一方で武次春哉(関西国際大)は、身長164センチと小柄ながら、ストレートの最速は今西と同じ147キロ。キレのあるストレートと変化球に、スタミナもあるタフな投手。

 加藤三範(筑波大)も多彩な変化球で勝負する完成度が高く、長谷部銀次(慶大)はしなやかな腕の振りからキレのあるストレートを投げ込み、森浦大輔(天理大)最速148キロの本格派だ。佐藤奨真(専大は140キロ中盤でも、打者の手元で伸びるストレートが武器。藤村哲之(横浜商大も大学で球速が伸び、主戦として成長著しい。東邦高(愛知)時代に同級生の藤嶋健人(中日)とエースの座を争った松山仁彦(東海大は、試合のカギを握る終盤の大事な場面で起用されることが多く、プロでもリリーフとしての適性がある。

●野手~古川と佐藤の1位候補に、守備職人やスピードスターの一芸選手も面白い

 昨年、豊作だった大学生捕手は、今年はやや寂しい。そのなかでも、古川裕大(上武大)は、堂々のドラフト1位候補の1人だ。昨年、大学日本代表で先輩を押しのけて、海野隆司(ソフトバンク)に次ぐ2番手捕手として選出され、二塁送球1.8秒、遠投100メートルの強肩だが、とにかく打撃が素晴らしく、遊撃手へのコンバートもプランもあり正真正銘の打てる捕手だ。岡澤智基(大商大)智弁学園高(奈良)に、東洋大の村上とバッテリーを組み全国制覇した経験を持つ。

 内野手では、牧秀悟(中大)が目玉選手の一人だ。昨年の日米大学選手権で4番を打ち、戦国東都リーグで4割を打ち首位打者も獲得した。広角に打ち分ける屈指の打撃力に、二塁守備も堅実で上位で間違いなく消えるだろう。山優飛(東北福祉大もクセのないスイングから、シュアな打撃で広角に打つ技術が高く、遊撃の守備も安定感があり大学球界屈指のショートストップ

 遊撃の守備だけなら瀬戸西純(慶大)は大学トップクラスで、的確なポジショニングから、捕球して送球までの安定感が抜群で、打撃が課題だが守備だけでも飯が食える名手。矢野雅哉(亜大)も堅い守備の遊撃手で、50メートル5秒9の俊足が魅力だ。

 ブランドン大河(東農大北海道オホーツク)は、高校時代は二刀流で注目され、大学では野手に専念し、高い身体能力を活かしたパワーに加え、スピードのあるプレースタイルにさらに磨きがかかっている。公家響(明大)は中学時代に全日本の4番を務め、横浜高(神奈川)~明大でプレーするまさに野球エリートのスラッガーだ。

 外野手では佐藤輝明(近大)は、大注目の選手の1人だ。1位入札競合も予想される大学ナンバーワン野手で、ずば抜けた身体能力を活かして逆方向でもスタンドインできるスラッガーだ。特にパワーはケタ違いで、既にリーグ通算11本塁打を放ち、打った瞬間に外野手が諦める弾道は驚異だ。足もあり守備も巧く、将来はトリプルスリーを狙える逸材で、既に阪神が1位指名を明言している。。

 五十幡亮汰(中大)の魅力は足で、とにかく速い。佐野日大高(栃木)時代から俊足は注目され、中学時代に陸上競技サニブラウンに勝ったのは有名な話だ。どれだけ速いかといういと、三塁到達タイムが周東佑京(ソフトバンク)よりも速く、打撃力と苦手な盗塁のスタートが向上すれば、驚異のリードオフマンになる。並木秀尊(独協大も、高校時代は捕手だったが、俊足と強肩を活かして外野手へ転向した成長株だ。

20年ドラフト候補選手~将来性抜群の高校生45名

 春のセンバツに続き、全国で春季大会も中止になり、何とか夏の甲子園大会開催に向けて事態が良くなることを祈るばかりだ。

 高校生は2年から3年になる冬に一皮も二皮も向け、夏に向けてさらに成長する。ただ、そのことを証明するには実戦に勝るものはないが、その機会がないことが本当に残念。そこで、今春時点でのドラフト有力選手を紹介する。

●投手~中森、高橋、小林、川瀬など本格派右腕が上位候補に名を連ねる

 特Aのドラフト1位候補の一番手は、中森俊介(明石商高で、最速151キロのストレートに変化球も申し分なく、馬力もある世代ナンバー1投手。2年生エースとして、昨年は春・夏ともに甲子園ベスト4と経験値も高く、上位指名は揺るがない。

 高橋宏斗(中京大中京高)は昨秋の明治神宮大会で圧巻の投球を見せて、一気に上位候補に名を連ねた。対戦した明徳義塾高(高知)の馬淵監督が、「松坂以上のストレート」と評したように、伸びしろ十分の素質型。

 昨夏の甲子園を経験している小林樹斗(智弁和歌山高)も評価が急上昇している。将来性を感じる140キロ中盤のストレートに、超高校級のスライダーを含めた変化球の精度が高い。

 上位候補選手では、川瀬堅斗(大分商高が1位指名もある逸材だ。昨秋の九州大会準優勝で一気に素質の開花とともに知名度を上げ、150キロも夢ではない覚醒を予感させる。笠島尚樹(敦賀気比高)にも注目だ。昨夏の甲子園で2年生エースとして全国大会を経験し、スリークオーターから球持ちが良く、手元で伸びるストレートが最大の魅力だ。

 高田琢登(静岡商高)は、出所の分からないストレートと多彩な変化球が武器の左腕で、奪三振が多い。同じ左腕では松本龍之介(横浜高)は粗削りながら、将来性十分の187センチの大型選手だ。内田了介(埼玉栄高)奪三振が多く、フォークなどの変化球が武器で、4番・ピッチャーはセンスの高さを証明している。篠木健太郎木更津総合高)はスライダーが武器だが、ストレートの球速も上がっており上位候補。ただ、進学が不文律の高校だけに進路に注目が集まる。

 上位から中位では、根本悠楓(苫小牧中央高)は最速146キロの本格派左腕で、無名校だが中学時代には全国制覇した逸材で上位指名もあり得る。菊池竜雅(常総学院高)は、既にストレートが150キロ超えており、変化球の完成度も高い。山下舜平大(福岡大大濠高)は緩急をつけたピッチングが身上の本格派右腕、豆田泰志(浦和実高)は、昨夏の県大会で浦和学院高を完封し評価を上げた。

 このほかには、北嶋宏太(駒大苫小牧高)は146キロのストレートとキレのあるスライダーが武器で、根本と同地区でしのぎを削っている。児玉悠紀(日大三高は縦横のスライダーを使い分ける技巧派左腕。同じ左腕の安達壮太(桐光学園高)は、ゲームメークに長け、投手の他にも打者としても評価されている。松本のチームメイトの木下幹也(横浜高)はストレートが自慢で、秘めたポテンシャルは高い。

 嘉手苅浩太(日本航空石川高)は最速147キロの本格派右腕、寺西成騎(星稜高)も一学年上の先輩・奥川恭伸(ヤクルト)に続く右の本格派で変化球も多彩だ。上田洸太朗(享栄高)も本格派右腕で常時140キロのストレートとカットボールが武器だ。昨夏の甲子園の準決勝で明石商の中森に投げ勝った岩崎峻典(履正社高)も145キロのストレートを軸に安定感のある投球は大舞台で証明済みだ。

●捕手~頭一つ抜けている内山をはじめ、打てる捕手が勢ぞろい

 昨夏の甲子園で準優勝した内山壮真(星稜高)は、1年からクリーンアップを打ち、昨夏はショート、そして捕手へ再コンバートするなど、守備位置がセンスの高さを証明している。キャッチングと正確なスローイングは、先輩・山瀬慎之介(巨人)以上だ。

 関本勇輔(履正社高)の評価も高い。強肩強打で内山と同様に名門高で4番・主将を務める。特に肩は2塁送球タイムが1.8~1.9秒台をコンスタントに計測する。父親は元阪神関本賢太郎でまさに球界のサラブレッドだ。

 今年は内山のほかにも打てる捕手が多い。山下航汰(京都外大西高は高校通算30本塁打スラッガー印出太一(中京大中京高)も広角に長打を打て、古谷将也(成田高)もシュアな打撃が魅力だ。一方、栗田勇雅(山梨学院大高)は4番も務めるが、リード面が評価されている頭脳派の選手だ。

内野手リードオフマンスラッガー、今後の成長に期待したい選手が並ぶ

 まずは2人の遊撃手に注目だ。土田龍空(近江高)は一塁到達4.27秒の俊足で、守備の巧い正真正銘のリードオフマン候補。角田勇斗(習志野高)は抜群の守備力に加え足も早い。ミートが巧く、「ここぞ」というときに結果を出す集中力も魅力だ。

 スラッガーでは、西野力也(大阪桐蔭高)は将来の4番候補。右のパワーヒッターだが、魅力は遠くに飛ばす技術力の高さだ。大先輩の中村剛也(西武)に似たタイプで、「おかわり君二世」の呼び声が高い。山村崇嘉(東海大相模高)も高校通算41本塁打の不動の3番打者で、フォロースルーの大きいスイングで変化球も苦にしない。

 小深田大地(履正社高)は、昨夏の優勝チームで3番を打ち、甲子園で打率.360を記録した。無駄のない動きとスイングスピードで、ミートのポイントが近くパワーもある。同じ巧打者では度会隆輝(横浜高)も上位候補で、1年秋より二塁のレギュラーを務め、卓越したバットコントロールで3番打者を務める。ちなみに小深田の兄は、楽天の小深田大翔、度会の父は元ヤクルトの度会博文と素質の塊だ。

 以上が上位指名候補で、このほかには小松涼馬(帝京高)杉崎成(東海大菅生高)はクリーンアップを務めるスラッガー知田爽汰(星稜高)もフルスイングが身上で、加えて足もある。リードオフマンタイプでは、宗山塁(広陵高)は一塁到達4秒の俊足で守備は抜群、中村敢晴(筑陽学園高)は右打ちのショートストップで、チームでは一番を務め、兄はソフトバンクの中村宜聖の野球一家だ。

●外野手~今年は来田と西川、井上と1位候補が並ぶ逸材揃い

 今年の高校生外野手は逸材が多く、特に来田涼斗(明石商高西川僚祐(東海大相模高)は堂々の1位候補だ。来田は走攻守に頭一つ抜けており、50メートル5秒9のスピードスターで、甲子園でも本塁打を放つ長打力と集中力、外野守備を見ても運動能力の高さが窺える。来田と双璧なのが西川で、高校通算51本塁打、名門高で1年生から4番を打ち、打球スピードは超高校級、甘いボールを一発で仕留める集中力もある。

 もう一人忘れてはならないのは、井上朋也(花咲徳栄高)だ。1年生から甲子園の舞台を経験し、タイミングの取り方が上手で変化球も苦にしない。また、俊足ではないが足も使える。

 横山陽樹(作新学院高)も評価が高い。昨夏の甲子園で打率.571、U-18にも選出された。木製バットへの対応力も既に備えており、勝負強い打撃が魅力だ。1位以外は進学が基本の学校なので、どこまで成長するかが楽しみだ。その横山と一緒に昨年U-18に選出された鵜沼魁斗(東海大相模高)も高校通算21本塁打の攻撃的一番打者だ。

 このほかには三河優太(大阪桐蔭高)は入団時は投手だったが、現在は野手に専念し4番に定着している。細川凌平(智弁和歌山高)は昨夏攻撃的2番打者として、甲子園でも活躍し、打撃センスの良さが際立っている。

 

 物事に“たら、れば”は禁物だが、幻の今春センバツでは、今回紹介した花咲徳栄(埼玉)、山梨学院(山梨)、星稜と日本航空石川(石川)、中京大中京(愛知)、履正社大阪桐蔭(大阪)、明石商(兵庫)、智弁和歌山(和歌山)、大分商(大分)が出場を決めており、やはり観てみたかった。

20年ドラフト1位候補12名を予想する

 楽しみにしている野球シーズンの到来はまだもう少し先ですが、今年のドラフトの注目選手やチームの動向が目立ってきた。そこで早速、今年のドラフト1位候補選手12名をリストアップしてみました。

 今年は昨年の佐々木朗希(大船渡高→ロッテ)や奥川恭伸(星稜高→ヤクルト)のような超目玉はいないものの、大学生に有力選手が揃っている。超目玉がいない分、逆に各チームがどういう戦略で臨んでくるのか、楽しみドラフトになる。

 まずは1位で重複が予想される選手だが、投手では高校、大学、社会人それぞれ候補がいる。即戦力の呼び声が高いのは、栗林良史(トヨタ自動車・投手)伊藤大海(苫小牧駒大・投手)の2人だ。

 栗林は最速153キロのストレートを武器に、社会人1年目の昨年、チームを都市対抗準優勝に導いた。高校時代は遊撃手で、名城大進学時に本格的に投手に転向し、大学卒業時にプロ志望届を出すも、内定していたトヨタ自動車の上位指名縛りがあったため指名漏れ。ただ、社会人でさらに力をつけ、地元の中日が高く評価している。

 栗林が先発なら、伊藤はクローザー候補で、獲得したチームは暫く抑えには困らないだろう。抜群のコントロールに加え、最速155キロのストレートを軸に、何よりもハートが強く正真正銘のクローザーだ。既に、地元の日本ハムが上位指名候補位に名前を挙げている。

 高校生では、やはり昨夏の甲子園ベスト4の中森俊介(明石商高・投手)の評価が高く、特にオリックスが熱心だ。現時点では間違いなく高校生ナンバーワン投手で、最速151キロのストレートに変化球の精度も高く、パワーも兼ね備えている。大舞台での経験値が多く、そこで培われたマウンド度胸も魅力の投手だ。

 その中森のチームメイトで、来田涼斗(明石商高・外野手)も1位候補。昨春のセンバツでは、1番打者として先頭打者とサヨナラホームランを放つ離れ業を演じたのは記憶に新しい。50メートル5秒9の俊足に、確実にパワーもついてきており、将来はトリプルスリーも狙える逸材で、巨人とロッテが高く評価している。

 中森と来田擁する明石商高(兵庫)は、中止になった今春のセンバツ出場が決まっていて、一冬超えてどれだけ成長したのかを観たかった。

 野手でもう一人、糸井2世の呼び声高いスラッガー佐藤輝明(近大・外野手)は数少ない即戦力野手で、既に阪神が1位指名を表明(本当にここ最近の阪神は大学生の外野手が好き…)している。抜群の身体能力をほこり、強肩に俊足。1年秋から4番を務め、昨秋まで通算11本塁打。打った瞬間に外野が追うのを諦める打撃は、逆方向にもスタンドインできるパワーを持っている。日ごと評価が高まり、全球団がリストアップしており重複は必須だ。 

 ここまで5選手紹介したが、次の外れ1位候補では、大学生投手に逸材揃っている。まずは山崎伊織(東海大・投手)で、最速153キロのストレートに、変化球も多彩で、特に分かっていても打てないキレのあるスライダーは、元ヤクルトの伊藤智仁級とも言われている。ムダがなく申し分のないピッチングフォームに、テンポの良い投球が持ち味で、1位入札の可能性も十分にある。ちなみに母校は明石商で、中森と来田、山崎が1位指名されたら同じ高校から3人の1位選手が誕生することになり凄い。

 左腕で評価が高いのが早川隆久(早大・投手)木更津総合高(千葉)時代より上位候補で、プロ志望届を出さずに大学に進学し、着実に成長した。最速151キロのストレートが武器だが、元ロッテの小宮山悟監督の指導のもと、間合いを取ったり、変化球でかわすなどクレバーな投球術が身につき、勝てる投手に成長した。左腕投手が少なく、でしかも地元のロッテなどは相性ピッタリだと思う。

 村上頌樹(東洋大・投手)は、高3春のセンバツ智弁学園高(奈良)初優勝のときのエース。ストレートの最速は149キロで、直球で緩急をつけることができ、先輩の甲斐野央(ソフトバンク)直伝のフォークでさらに投球の幅が広がった。昨秋のリーグ戦では4完封で6勝、防御率0.77の好成績を残した。全日本では山崎や早川の後塵を拝したが、先輩たちの活躍を目の当たりにし、満を持して今秋のドラフトを待つ。

 外れ1位候補はすべて投手だが、高橋宏斗(中京大中京高・投手)が中森に続く逸材だ。無名だった高橋は、昨秋の明治神宮大会で鮮烈デビューを果たし、初戦の明徳義塾高(高知)戦で4安打完封、毎回の10奪三振で一気に1位候補に名乗り出た。ストレートは最速148キロでまだ伸びる。現時点では進学と半々らしく、今後の動向に注目が集まる。 

 最後に野手を3人紹介する。今年の東海大相模高(神奈川)には、将来を嘱望される選手が3選手いるが、そのなかでも一番の評価を得ているのが西川僚祐(東海大相模高・外野手)だ。激戦区神奈川で高校通算50本塁打、名門高で1年夏から4番を任されている逸材で、スイングスピードが早く、186センチ92キロの大柄な体の割に器用さも兼ね備えている。来田や佐藤を外したチームは西川を狙ってくるだろう。

 同じ外野手で、今川優馬(JFE東日本・外野手)は即戦力野手だ。超攻撃野球で都市対抗を制したJFE東日本の攻撃型2番打者で、若獅子賞も受賞した。逆方向にも打てるパワーヒッターで、昨秋の都市対抗の決勝戦で今川を観たが、力強いスイングで一番印象に残った選手だ。即戦力の右の長距離砲は少なく、十分1位指名が予想される。

 捕手では古川裕大(上武大・捕手)も1位で消える可能性のある選手だ。昨年、豊作だった大学生捕手を差し置いて3年生ながら日本代表に名を連ね、抜群の打力で一時期4番を期待された打てる捕手。当然、捕手としての能力も高く二塁送球1.8秒、遠投100メートルの強肩だが、遊撃手転向のプランもあるほど打力が評価されており潜在能力は高い。

 現時点でのドラフト1位指名選手12名を予想したが、当然、今秋には大きく変ってくる。有力選手、サプライズの無名選手をチェックし、自分の応援するチームに思いを馳せていきましょう。